2026年04月13日

「Goa」の予約販売お知らせとゲーム紹介



数寄ゲームズはQuined Gamesの新作「Goa」日本語版の予約販売を行います。「Goa」は「イスタンブール」などで知られるリュディガー・ドーンの代表作の一つで、プレイヤーはインド第2の都市ゴア近辺を舞台に最も裕福な商人となるべく競りとパラメータ上げにいそしみます。……そう言えば「Movers & Shakers」もインド舞台のゲームなんですけど、Quined Gamesはインドが好きなんですかね。

Goa(仮題)
プレイ人数:1-4人
プレイ時間:90分
対象年齢:12歳以上



大航海時代テーマのゲームではありますが、マップ上の航行などの要素はなく、ユーロゲームらしいテーマ性が薄く抽象度の高いゲームです。このゲームの魅力的なポイントは90年代ドイツゲームの魅力であるシビアな競りと、00年代以降のユーロゲームの魅力である顕著なパラメータ上げ、成長要素を巧みにミックスしたところにあります。

2つの時代のいいとこどりのデザインなので、インタラクションを豊富に備えつつも自分の手元を育てていかないと勝てない作りのゲームです。とは言え、ルールは平明でわかりやすく、特殊効果をまぶした華やかさもあり、多くの人が楽しめるバランスのいい内容となっています。程々の運要素もありますが、より競技的に遊びたい人向けに今回のDX版では運要素を低減するオプションルールを選ぶこともできます。


さて、このゲームの特徴的かつ中核部分となるのが「競り」で、各ラウンドの前半部分でプレイヤーはボード上の様々なタイルを競りあうことになります。

どのタイルが競りにかけられるかは「ドーン歩き」的な動きで決まります。各プレイヤーは自分の駒を置いて競りにかけるタイルを選ぶのですが、この時に前のプレイヤーが置いたタイルに隣接する(斜めも含む)タイルを選ばなければならない縛りがあります。

逆に言えば、自分の選択によって次のプレイヤーが競りにかけるタイルを縛れるということで、そうした駆け引きも踏まえてタイルを選ぶ必要があります。

ちょっと面白いのは各ラウンドで競りはプレイ人数+1回行われます。この+1回とはなんぞやというと、これが「スタートプレイヤーの権利の競り」なんですね。

まあ、どちらかと言えばこれは落札のおまけで、ついてくる追加アクション1回分の権利がメインだったりもするんですけども、スタートプレイヤーになると次ラウンドの競りをどこから始めるか決められるので、ゲーム後半はこれがかなりのアドになってきたりもします。



画像で示すと、1の駒がスタートプレイヤーの権利の競りです。で、2番手のプレイヤーは1の駒に隣接する3枚のタイルから競りにかけるものを選ばないといけないので、左のタイルを選んだという形になりますね。

競りにかけられるタイルは大きく5種類に分けられます。商品を保管する倉庫となる茶色タイル、即時効果で様々なものが得られる水色タイル、毎ラウンド収入が得られる青タイル、ゲーム中1回だけ使用できる効果を得る黄色タイル、ゲーム終了時得点の紫タイルです。


で、各プレイヤーが1枚ずつ、今回競りにかけるタイルを決めたところで実際の競りが始まります。本作の競りは1周競りで、値付けできる回数は各人1回だけです。

値付けは自分の駒を置いたプレイヤー(競り主)の左隣から始めます。つまり、競り主は1番最後に競り値をつけられる優位な立場にありますね。

さて、競りは1番手から順番に競り値を吊り上げるかパスをします。ただし、最後のプレイヤー、つまり競り主は最高額より1金安い金額で落札することができます。



イラストでは最高額は緑プレイヤーがつけた5金となりますが、競り主でもある紫プレイヤーは最高額より1金安い4金で落札できるわけです。

さて、競り主が自らタイルを落札した場合、銀行にそのお金を支払います。イラストで言えば紫プレイヤーは銀行に4金を支払います。

しかし、例えば、紫プレイヤーが落札せずにパスした場合、代わりに落札した緑プレイヤーは競り値の5金を銀行ではなく紫プレイヤーに支払うことになるのです。

なので、紫プレイヤーは実際にはこの局面では「4金を支払ってタイルを落札する」か「緑プレイヤーから5金をもらう」かを悩み、前者を選択した、という場面になるのです。

先ほど、駒を置いた競り主は落札しやすい立場で有利と言いましたが、一方で自分にとってはいらないタイルでも、他人が高値をつけるようなタイルを選ぶことで人からお金を巻き上げることもできます。自分が落札すべきなのか、それとも他人に譲るべきなのか…… 本作はこのゼロサム的な競りのインタラクションが実に熱く激しいゲームと言えます。


さて、競りは最も所持金の多いプレイヤーが相場を牛耳るリーダーとなるメカニクスです。そりゃ全額突っ込んだら絶対競り落とせるワケですからね。

本作の競りはそうしたリーダーの役回りがコロコロ入れ替わるダイナミクスが大きな魅力です。さっきまでリーダーだったプレイヤーが次の瞬間にはリーダーに従う立場に後退したり、逆に目立つ動きのなかったプレイヤーが高額を得て突如リーダーに上り詰めたりと。一瞬たりとも気の抜けない相場の荒波を肌身に感じることができる作品です。


さて、競りが終わるとラウンドは後半に移ります。ラウンド後半では各プレイヤーは様々なリソース(船、商品、お金、カード、交易所)を入手する5種の生産アクションに加え、アクション効率を高める開発アクションの合計6種のアクションから計3回を行います。



個人ボードには5つの列があり、それぞれの列はアクションと得られるリソース数が示されています。



図の画像では商品を生産するアクションを選択したもので4つの商品を生産して、対応する倉庫に保管しています。

各アクションで生産されるリソース数は自分の駒が置かれている段によって決まります。生産効率を高めるためには、まず「開発アクション」を行う必要があるのですが、開発アクションを行うには次の段に移るためのコストを支払わなければなりません。



このイラストでは開発のコストとして茶色とピンクの商品を支払う必要があることを示しています。さらに商品1つごとに1枚の船カード(合計2枚)も必要です。

こうした船や商品は対応する生産アクションを行うことで入手できるのですが、生産アクションを打つ前に開発アクションで生産効率を上げておきたいよね…… という「鶏が先か卵が先か」のジレンマで悩むことになります。ラウンド前半の競りもラウンド後半でどのアクションを打つべきかを考え、それに合わせてタイルを選択する必要があり、中長期的な計画性が重要なゲームと言えます。

特に商品を保管する倉庫はゲーム開始時は全くの0なので、早いうちに倉庫を入手しないと成長が止まります。商品がないと開発アクションが打てないですからね(船カードはゲーム開始時に4枚貰えます)。

そう、このゲームは倉庫が必要…… ただ、まあ、卓を囲むメンツがね…… ちゃんと空気の読める人ばかりなら、みんなが倉庫を買えるように駒を置いてくれるんですけども、そうじゃない場合はね…… まあ、不幸にも倉庫を手に入れられない人も出てくる可能性もあるかもね…… 悲しいけどね…… という、ゲーム開始直後から「君たちわかってるよね?」とお互いに牽制しあうゲームなんですこれ!

仮に倉庫が買えなかった場合は、入植地……じゃなかった、それは旧版の名称でした…… 交易所を設立するアクションを行うことで商品を保管できるようにもなりますが、交易所の設立には運要素が絡むので場合によってはスタートダッシュで躓くおそれもあります(なおDX版では交易所設立の運要素を削るバリアントルールも用意されているので、旧版でその辺の粗さが気になってたぼくのような人も安心です)。

こんな感じで競りとアクションの2フェイズで構成される全8ラウンドを行い、
最終的に勝利点が高い人がゲームに勝利します。勝利点の大半は個人ボードの成長具合から稼ぎ出すものなので、いかに効率よくリソースを集めて開発アクションを行うか、というところに焦点が当てられています。

……と言っても、成長具合は全員大体同じぐらいに着地するので、それ以外の盤外点をどう稼ぐかが実は重要だったりするんですけども。「アグリコラ」みたいなこと言ってますね。




今回数寄ゲームズで取り扱う日本語版はDX版の2種となり、リテール版は取り扱いません。これまでのタイトルで言えば「カーネギー」「ストゥポル・ムンディ」ではなく「シカゴ1875」に近い販売形態となります。

そのため、一般流通の機会は限定的になるかと思います。どうぞこの機会にお買い求め頂ければ幸いです。

製品内容については下記の比較の通りとなりますが、Merchant ecition(中央)とGovernor edition(右)の違いはタイルが木製かアクリル製かの違いだけになります。それ以外の部分についてはDX版2種に相違はありません。また今回取り扱うDX版ではQuined Gamesの得意とする機能性の高いゲームインサートもついてきます。



商品の到着は2027年の3月を予定しております。ただ、Quined Gamesは計画に遅延が生じることがままあるので、実際は3ヶ月から半年の遅れが生じる可能性が高いです(「シカゴ1875」は2025年7月到着予定とアナウンスされていましたが、実際には10月着という形になりました。現在進行中の「Movers & Shakers」も予定より遅延が起きています。)

計画の遅延等が発生した場合は適宜アナウンスさせていただきます。



同時発売のアドオン製品はCaptainsミニ拡張です。ゲーム開始時に非対称能力をプレイヤーに与える今風の追加要素で、こちらも数寄ゲームズで取り扱い予定です。

その他内容物の詳細等はGamefoundのページをご覧ください。

Goa by Quined Games

ゴアDX版は近日中に数寄ゲームズ通販サイトにて予約受付を始めたいと思いますのでどうぞ続報をお待ちいただければと思います。
posted by 円卓P at 11:33| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年06月24日

ゲーム紹介:ストゥポル・ムンディ



数寄ゲームズは、「ストゥポル・ムンディ:リテール版」日本語版を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間90-150分で、希望小売価格は税込9350円となります。

6月30日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行発売を行い、その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しています。


※写真はリテール版ではなく、特別版。見た目の差としては城がプラ駒(特別版)から木製駒(リテール版)に変わります。


「ストゥポル・ムンディ」は、「ニュートン(2018)」「ダーウィンズ・ジャーニー(2023)」(どちらもシモーネ・ルチアーニとの共作)などで知られるネスター・マンゴーネの手による単独作品です。イタリア人デザイナーあるあるなんですが、この人の作品は共作がほとんどで、本作は極めて珍しい単独作です。いかんせん舌を噛みそうなタイトルではありますので、ストポでもストムンでも好きなように略してお呼びください。

出版社のQuined Gamesは「カーネギー」などで知られるオランダの出版社で、その代名詞でもあるMaster Printシリーズはハイレベルなゲーマーズゲームの作品群として知られています。「ストゥポル・ムンディ」の特別版はMaster Printシリーズの28作目となります(なお、リテール版は背表紙に番号はありません)。

そのマンゴーネとQuined Gamesのコラボ作品ということもあり、事前から注目度の高かった本作は、遊びやすくも特徴的なシステムを備えた優れたゲーマーズゲームとして結実しています。マンゴーネのデザインの特徴はユニークな作りのインタラクションにあると感じているのですが(言うても「ニュートン」なんかはほぼインタラクション皆無な作品ですが)、このゲームでもそうした独自性が如実に現れています。


本作においてプレイヤーは「世界の驚異(ストゥポル・ムンディ)」と称された神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の臣下となり、中世の地中海沿岸を舞台に王国の繁栄を目指します。プレイヤーは協力者を集め、城を建設し、専門家を昇進させることで、フリードリヒ2世への影響力を高め、最終的な勝利点獲得を目指します。

プレイ時間からもわかる通り、要素の多いゲームではありますが、ゲームの特徴はハッキリしていまして、この記事では、ゲームエンジン、成長要素、インタラクションの3点に絞ってご紹介していきたいと思います。


◆カードを表裏で使い分ける悩ましさが特徴のデッキ構築型ゲーム

本作のゲームエンジンはデッキ構築に分類されます。プレイヤー駒が輪状のマップを移動する要素もありますが、これをロンデルとか呼ぶ人にはロンデル警察が令状片手に押しかけますからねー。


ちなみに移動「しない」ことを選ぶこともできます。

さて、ラウンド開始時にプレイヤーは手札としてカードを5枚持ち、手番にはカードを1枚プレイしてアクションを実行します。ツイストとして、この時、プレイヤーはカードをオモテ向きでプレイするか、ウラ向きでプレイするかを選択します。

オモテ向き → カードに書かれている効果を実行する
ウラ向き → ボードのスロットに差し込んで槍が示した先のボードアクションを実行する



基本的には穀物、石材、お金といった資源を獲得するためにカードをオモテ向きでプレイし、集めた資源の消費先としてウラ向きでカードをプレイする、という流れになります。ウラ向きのアクションには「専門家の昇進」「市場の訪問」「建造物の建設」「協力者の招集」「アクションカードの購入」の5種があり、どれも重要なアクションです。



オモテ向きでもウラ向きでも、カード1枚のプレイによってボードのスロットが1つ埋まり、すべてのスロットが埋まるとそのラウンドはパスするしかなくなります。

ラウンド終了時には残った手札を好きなだけ捨て、手札上限になるまでカードを引きます。「手札上限」という概念のあるゲームではありますが、手札枚数をチェックするのはラウンド跨ぎの処理だけとなるため、ラウンド中は手札上限を越えてカードを保持する場面もあります。

ちょっとした捻りこそあれ、基本的にはスタンダードなUIなので、ゲームの進め方で戸惑うことは少ないかと思います。ただ、オモテ向きでカードをプレイする場合にもカードスロット1つを埋める必要があるため、どのスロットを埋めるかは悩ましい選択と言えるでしょう。

また、こうしたメインエンジン部分は、後述する「天守」の建設によって強化することができます。


◆カード、建物、専門家の3本柱が織り成す成長要素

最初はできなかったことがゲームの進展に応じてできるようになる、成長・強化要素は重量級ゲームの快楽装置の最たるものです。これをもって拡大再生産などと呼ぶこともあります。

本作における成長・強化要素は大きく3種類あります。

1つ目。新カードの購入によるデッキの充実
2つ目。建物の建設による能力の強化
3つ目。専門家の昇進による特殊能力

です。それぞれについて説明しましょう。




新しいカードを購入することでデッキの質をより高める楽しさはデッキ構築というエンジンの存在意義と言えるでしょう。本作ではボードアクションの1つ、「アクションカードの購入」によって上級アクションカードを購入できます。

で、この購入したカードの処理に工夫がありまして、新しいカードを購入するとその効果を即時で使用することができます。展開が早い!

すなわち「カード購入アクション」=「新カードをプレイするアクション」でもあるのです。……カード購入コストが払えればね。

また、こうして購入したカードは効果を使用したあと、捨て札に置かれずに手札に入ります。この手のデッキ構築ゲームでは購入したカードは一旦捨て札に置かれるのが通例ですが、このゲームでは即時で使用した上に手札に入り、さらに次の手番で使用することもできるという…… 実にリターンの速いゲームとなっています。

まあ、基本的には1手番にはカードを1枚しか使わず、慣れてくればゲームはおおよそ20手番前後で終わるため、デッキがぐるぐる回転する類のゲームではないのですね。なので、わざわざ手番を使って購入したカードがちゃんと利益を出せるようにアウトプットが早い設計になっているわけです。

また、初期カードの効果は「資源1個を得ます」とか「3金を得ます」とか、まあ、シンプル弱いです。いかに初期カードを使わずに回していくかが攻略のポイントと言えます。



それに対して上級アクションカードは「資源2個を得ます」とか、「6金得ます」とか単純に2倍や3倍強い効果だったりするので、じゃんじゃんカードを買ってじゃんじゃんデッキを強化していきましょう。……そしてデッキが太る!



そう言えば、圧縮戦術を好む諸兄にお伝えしておきますと、このゲームでは能動的にデッキを圧縮する手段はありません。一部のカードは購入コストとして手札か捨て札からカードを1枚廃棄するものがあるのですが、これが唯一の圧縮要素です。

デッキの回転効率を上げる方法は、どちらかと言えば手札上限を増やしてドロー数を増やすというアプローチになります。


2つ目の成長要素は、建造物の建設によるプレイヤー能力の強化です。このゲーム、結局は何をするゲームなのかと言えば、資源を集めて建物を建てるゲームです。よくあるやつ!

で、建物には「塔」「壁」「天守」の3種があり、それぞれ建設することで対応した利益がアンロックされるようになっています。



1つ目の「塔」は、建設することでプレイヤーは協力者を置くための部屋を作ることができます。協力者はこのゲームの主要な得点源で、塔を建てることでより多くの協力者を獲得できるようになります。

2つ目の「壁」は、資源を保管する倉庫の役割を持ちます。初期状態ではプレイヤーは資源を最大3つしか持つことができません。壁を建設することでプレイヤーは資源をより多く持つことができ、資源のやりくりが簡便になります。地味ながら重要!

3つ目の「天守」は、様々なプレイヤー能力がアンロックされます。例えば手札上限が5枚から7枚に増えたり、1ラウンド中の行動回数が1回増えたり、1回の手番で2つのボードアクションが行えたりします。

天守の能力解放は実に強力なのですが、天守の建設にはコストとして資源が4つ必要です。そしてプレイヤーが初期状態で持てる資源の上限は3つ…… おわかりですね、天守を作るためにはまず壁を作って倉庫のキャパを広げる必要があるのです。

また、塔と壁はセットで作ることでラウンドごとに収入をもたらすようになります。これは「マルコポーロの旅路(2015)」よろしく、完成した瞬間にも1回収入を得られる仕組みなので、なるべく早く完成させたいところですね。


収入は「石材」「穀物」「3金」「交易1回」「1勝利点」の5種。どれから作る?


最後の3つ目の成長要素は専門家の昇進です。
ゲームボードには3つの進路、特殊能力トラックがありまして、プレイヤーは自分の持っている3つの専門家をこの進路に沿って進めることで様々な特殊能力を得ることができます。



ゲーム好きなら「ツォルキン(2012)」の頃から見知っている技術トラック(注1)的なものなんですが、特徴的なのは「今、専門家がいるスペースの特殊能力のみ使用できる」点です。専門家が昇進して次のスペースに移動すると、今まで使用していた特殊能力は失われて、新しい特殊能力だけが使用できるようになるのです。


昇進によって「天守を建てると4点」の能力は失われ、これからは「塔か壁を建てると3点」の能力を得た、という例。

なので、ゲーム中に「専門家の効果を使います」「あ、それ昇進しちゃったんでもう使えないっすよ」みたいな会話が起きたりします。再びその能力を使うためには別の専門家をそこまで持ってこなければならない……!

それを踏まえて、さて、手元にいる3つの専門家をどう進めるか。得られる効果は最大3つまで。専門家同士のコンボが発生するような効果もあるので、セットアップを見てどのような戦略を取るかの組み立ても重要です。


以上、3つの成長要素についてさっくりとご紹介しました。手札を強めるか、建物を建てるか、専門家を昇進させるか、成長の方向性が色々あり、なおかつどこからアクセスしてもよい自由度も担保されているのがワクワクするところです。強いて言えばカードだけは現品1枚限りの早い者勝ちなので、欲しいカードは人に先んじて確保した方がいいかもしれませんね。


◆NPC皇帝を介した間接的マジョリティ争いと布告による盤面操作

さて、このゲームの最たる特徴は得点にまつわるインタラクションの仕組みです。

このゲームのテーマは神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の家臣として王国(帝国ではない)の発展に努めるといったものなのですが、このゲームではNPCプレイヤーとしてフリードリヒ2世が登場します。他のゲームでもソロプレイなどでNPCプレイヤーが登場することはありますが、本作ではプレイ人数に関わらずNPCプレイヤーが常に登場します。

ちなみにフリードリヒは常に黄色の駒を使うので、プレイヤー色として黄色を使用している方は本作では別の色をご使用ください。ぼくも黄色使いの身なのですが、このゲームではやむなく別の色を使ってます。

あと、プレイヤー色と言えば、色によって初期カードの構成が異なる非対称の作りなので、色々なプレイヤー色を試してみるのもいいと思います。上級カードを購入できる赤のサヴォイア家なんかは安定して強いんじゃないでしょうか。まあ、とは言え、このカードを最初に引けるかどうかは運なんですが……



……話が逸れました。NPCプレイヤーのフリードリヒはプレイヤーのように手番を行うことはありませんが、様々なタイミングでマジョリティ比べに出張ってきます。先ほど、プレイヤー色によって初期カードの構成が異なることをお伝えしましたが、各プレイヤーはフリードリヒの盤面に応じて得られる効果が変わるカードをそれぞれ持っています。

例えば赤のサヴォイア家であれば「フリードリヒの協力者1枚ごとに穀物1個を得る」という効果です。ですから、フリードリヒのお城に協力者がいればいるほどこのカードによる実入りが増える…… ので、このプレイヤーはフリードリヒの協力者を増やすことにメリットが生まれます。相対的に、他のプレイヤーにとってはフリードリヒの協力者は邪魔だ、という話にもなります。


さて、プレイヤーは「協力者の招集」アクションで協力者を得ることができます。協力者は各ラウンドでの収入としてプレイヤーに1勝利点をもたらすのですが、フリードリヒの城と自分の城を比較して協力者特有の条件を満たしている場合、さらにボーナスとして追加の2勝利点ももたらします。



そのため、自分の確保した協力者の条件に沿って自分の盤面を充実させることが点数行動としては重要になります。また、逆にフリードリヒの盤面を弱体化させるのも手です。

弱体化……? はい、このゲームでは「布告」を介することで、フリードリヒの盤面を弄り回し、建造物や資源や協力者を増やしたり減らしたりできるのです。ゲーム中、プレイヤーは様々な方法で布告を発令することができるので、自分の都合のいいようにバシバシ布告を発令していきましょう。


例えば一番上の布告はフリードリヒの城に壁2つと天守1つをそれぞれ建設するか取り除くかを選ぶ、という内容。

フリードリヒには布告に逆らう権限はないので(神聖ローマ皇帝……!)、当初は立派だった城郭があっという間に取り壊されたりもします。このゲームの建物はタイルでも事足りるのですが、わざわざ立派な木駒がごっそり用意されていて、家臣の損得勘定に振り回される光景が愉快な作りとなっています。

こうした協力者と布告の政治力学が本作の独特なインタラクションを形作っています。通常のゲームではプレイヤー間のリソースの多寡でマジョリティ比べを行うところ、このゲームではフリードリヒというNPCプレイヤーを介した間接的なマジョリティ比べを行うのです。

なので、他プレイヤーの取った何気ない布告の選択が自分にとって致命的な一手になりえることもあります。布告は他のプレイヤーの盤面をよーく確認してから選びましょう。



通常、緑の独立派(皇帝うるせえよ派)と赤の王党派(皇帝大好き派)の条件は対立します。独立派の「テオフィロス」は自分がより多く穀物を持っているとボーナスが得られ、王党派の「シゲベルト」はフリードリヒがより多く穀物を持っているとボーナスが得られます。


◆内向きの成長と外向きの政治が融合した、中世テーマの重量級戦略ゲーム

「ストゥポル・ムンディ」は様々な成長要素にアクセスして自分の能力を高めていく箱庭ゲームの内向きの楽しさと、協力者の条件を満たしたり、他プレイヤーを牽制するために布告を発令するポリティクスの外向きの楽しさが高度にミックスされたゲームと言えます。

慣れないうちは他人の発令した布告によって自分の意思の範囲外から振り回されるゲームとも感じるかもしれませんが、実のところ、しっかりと自分のエンジンを形作れば収入も増えて布告の発令回数も増えるため、アドバンテージを握りやすくなります。

エンジン強化で力押しもできますし、そうした派手なエンジンを作った人を布告で刺すこともできるので、「結局強いエンジンを作った人が勝つんでしょ」とも「結局マルチ的に得した人が勝つんでしょ」とも言い難い絶妙なバランスのゲームに仕上がっています(初プレイの人が経験者に勝つのは結構難儀かなーと思えるくらいには習熟の段階があるゲームなので、どちらかと言えばエンジンでねじ伏せられると思ってはいますが、自分vs他3人の構図になったらさすがにしんどいかな)。

プレイ人数的には1〜4人のどの人数でも変わらず楽しめる内容です。インタラクションの強いゲームは少人数だと楽しめない向きもあるのですが、このゲームは先述の通り、NPCプレイヤーを介してインタラクションを生んでいるゲームなので、少人数でも本質が損なわれることはありません。ダウンタイムが気になる方は3人までの方がいいかもしれませんが、ここは好みかなと思います。


唯一注意するべき点は、ゲームの終了条件が固定ラウンドではないので、初回プレイは特にプレイ時間が延びやすいということでしょうか。これは「ドミニオン(2008)」や「カタン(1994)」を初プレイの人が遊ぶと間延びしやすいのと同じ話ではありまして、ゲームに慣れるに連れてより効率的な行動が取れるようになり、結果として手数が少なくなるということです。

「地味なゲーム」という感想を目にすることもたまにあるんですが「手番に石1個貰って終わり」「次の手番に3金貰って終わり」という動きを続けてたら、まあ、そういう印象にもなるかな、という気はします。で、この記事をここまで読んで貰った方には通じると思うんですが、そういうプレイをしてる限りは勝てないゲームです。

それだけ乗りこなし甲斐があるゲームとも言えますので、こうした重量級ゲームがお好きな方はぜひぜひ遊んでみて頂ければと思います。プレイ時間自体は結構ゴツい表記ではありますが、要素の繋がりが複雑な捻くれた作りではなく、モダンユーロ本流の素直な部類の作りです。


まあ、やることは資源集めて建物建てて協力者集めて布告を出すだけですからね。リソースも3種だけですし、穀物は基本的に協力者に使い、石材は建設に使うと用途もわかりやすいです。

こうした中世ヨーロッパテーマの戦略ゲームも考えてみれば最近はかなり少数派なので(宇宙or自然ばっかり)そうしたゲームを久々に遊びたいなーという方もぜひ触ってみて貰えればと思います。面白いですよ!

ストゥポル・ムンディ:リテール版


プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:90-150分

ゲームデザイン:Nestore Mangone
アートワーク:Maciej Janik
希望小売価格:9350円(税込)


(注1) トラックを進めることで累積的に別種の能力を獲得する仕組みって「ツォルキン」以前のゲームがちょっと思い当たりません。単一の要素(カードドロー数とか)がインクリメントしていく仕組みだと「ゴア(2004)」とか「インドネシア(2005)」とかが思い浮かびますが。「ケイラス(2005)」は即時効果であって能力の強化ではないのでこれも違うかも。今では「サルトフィヨルド(2024)」のように当たり前に使われてる仕組みですが、そういう意味でも「ツォルキン」はエポックだったのかも。
posted by 円卓P at 11:47| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月14日

ゲーム紹介:ネオドリームズ



数寄ゲームズは、「ネオドリームズ」日本語版を発売します。プレイ人数2-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間30-60分で、希望小売価格は税込4950円となります。

5月17日、18日開催のゲームマーケット2024春にて先行発売を行い、その後、数寄ゲームズ通販サイトや全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しています。




「ネオドリームズ」は、「スマートフォン株式会社(2018)」「ファーナス(2020)」などで人気を博したロシア人デザイナーIvan Lashinの最新作です。夢の作成&販売ビジネスが盛況な未来の世界でプレイヤーは夢制作会社の社長となって市場の覇権を争います。未来の夢グループ……ってコト!?

蛇足ながら、この舞台設定を説明する際、ぼくは「寺沢武一のコブラの第1話みたいな……」という言い方をするのですが、「コブラ知らないです」というレスポンスが毎度返ってきて話がそこで終わります。

「その世代じゃないんで……」と言われることもありますが、ぼくも直撃世代ではないですよ! どちらかと言えばぼくよりも5歳、10歳年上の人の方が通じるんじゃないかなあ…… ともあれ、こうした舞台設定の例え話はなかなか世代間の断絶があって難しいものではあります。


さて、こんな話をぶん投げておいてなんですが、この舞台設定、実はゲーム内容とはほぼほぼ関係ありません! 建付けとしては夢市場を巡る会社同士の競争といった表現をしているものの「スマートフォン株式会社」のような需要と供給を巡るインタラクションが主軸に据えられたゲームでもないです。敢えて言えばカードイラストが夢っぽいのでこのテーマを選んだのかな、くらいな風味ですね。


ゲームの中心的なメカニクスはワーカープレイスメントとタブロービルドで、プレイヤーはアクションスペースにワーカーを配置することで様々なリソースを集め、リソースを支払って手札をプレイすることで様々な特殊能力を獲得していきます。獲得した特殊能力によって、よりリソースが集めやすくなり、カードプレイも加速していく…… 皆さん大好きな拡大再生産の構造となっています。

ゲーム構造としては実に王道的な、翻って言えばよくある組み立てなのですが、そこは「スマートフォン株式会社」で新世代の経済ゲームを生み出したIvan Lashin、興味深いツイストを仕込んでこのゲームならではの独自性を生み出しています。


結論から言ってしまえば、このゲームはよいです! もう少し具体的に言えばゲーム全体のバランスがよく、お値段は高すぎず、時間は長すぎず、やることはシンプルで、それでいてコクがある。王道的な作りでありつつ独自性も備えているゲームと言えます。

つまり、すごく多くの人に愛されるゲームなんじゃないかなと思っているので、この記事ではそうした独自性に焦点を当てて紹介していきたいと思います。




◆王道かつ捻りのあるワーカープレイスメントとタブロービルド

まず本作は「誰かがカードを12枚プレイしたらゲーム終了」というゲーム終了トリガーを持っています(と言いつつ、プレイヤーは便宜的なカード2枚をプレイ済みの状態からゲームを始めるので実質的にはカードを10枚プレイしたところでゲームが終了します)。ゲーム終了後に一番多くの勝利点を獲得したプレイヤーがゲームに勝ちます。

プレイしたカードには勝利点がついているので、基本的にはより多くのカードをプレイしたプレイヤーが勝利に近づくことになります。こうした組み立てのゲームと言えば「サンファン(2004)」や「レースフォーザギャラクシー(2007)」といった古典的名作が思い浮かぶ人もいるかもしれませんが、「ネオドリームズ」もそうした諸作の系譜にある作品と表現できるでしょう。


カードをプレイするためにはコストとなるリソースを集める必要があります。リソースはピンクと黄色と緑の3種類がありますが、このうちピンクは黄色と緑のどちらとしても使用できるワイルドなリソースなので、実質的には黄色と緑の2種類のリソースが存在します。

こうしたリソースは主にワーカーをオナイロスフィアと呼ばれるメインボードに配置することで獲得することができます。メインボードには全部で12個のアクションスペースがあり、そのうちいくつかのスペースで黄色、緑、ピンクの各リソースを獲得することができます。



プレイヤーはワーカーを3個持っていて、手番には「ワーカーの配置」を行うか、「配置されたワーカーの回収」を行います。この手のワーカーの配置と回収を選択する作りのゲームは「The Manhattan Project(2012)」が走りとなっていて、その後様々なワーカープレイスメントゲームで採用されています。最近のゲームだと「エイピアリー(2023)」がそういう作りでしたね。


さて、リソースを集めたら今度はカードをプレイしたいのですが、肝心のカードをプレイできるアクションスペースはボード上に12個中1個しかありません。な、なんだってー!? メインボード右下のアクションスペースがそれです。


赤丸で囲んだところだけ(「緑のリソース1個を得てカードをプレイする」のアイコン)

あまりにカードプレイの機会少なすぎんか? こ、こんなことが許されていいのか!?
……と思わせておいて、ここでこのゲームならではのツイストが登場します。


実はこのゲーム、カードをプレイする方法がもう一つあります。それがメインボード右端のアイコン群の利用です。右端のアイコン群は「特定色のカード1枚を得る」か「手札のカード1枚をプレイする」を意味していますが、先述の通りカードをプレイする機会が貴重なゲームなので、基本的にはこれを使ってカードをプレイしたいところです。


3つの段それぞれにカードプレイのアイコンがあります。

そして、このアイコン群にアクセスする方法がさっき少しだけ触れた「配置されたワーカーの回収」アクションなのです。

「配置されたワーカーの回収」とは言いましたが、実はこのアクション、自分のワーカーを回収するアクションではありません。具体的には「配置されたワーカーの回収」を選ぶと、メインボードの上部にある睡眠サイクルトラックにあるマーカーを1スペース前進させます。その後、進んだ先の列と同じ列にあるワーカーだけが持ち主の手元に回収され、ついでにワーカーの持ち主は配置していたワーカーの段の右端にあるアクションを行うことができるのです。

ここ! ここの作りがIwan Lashinらしいナイスな仕掛けですよ!



「配置されたワーカーの回収」は自分のワーカーだけを回収するアクションではなく、特定の列に配置されたワーカー全部を持ち主の手元に戻すアクションです。つまり、自分の手番外にワーカーが手元に返ってくることもあれば、付随してカードをプレイする権利を得られる局面もあるということです。


このゲーム、なるべく多くのカードをプレイしたいゲームなのですが、能動的にカードをプレイできるアクションスペースは先述の通り1か所だけしかなく、それ以外はこの「ワーカーの回収」を通してカードをプレイするしかありません。たくさんカードをプレイしたいのにプレイ機会が限られている実にイジワルな作りのゲームなのです。


先日「ネオドリームズ」を試遊した超新作体験会では、手札からカードをプレイしようとして「違います、それ、カードをプレイするアクションじゃないです!」と止めるシーンが何度もありました。繰り返しになりますが、このゲーム、能動的にカードをプレイできるアクションスペースは1つしかありません。

こうしたプレイミスは「やりたいことをやらせてもらえないストレス下」で起きやすくなります。この例は、本来はカードプレイではないアイコンを自分にとって都合がいいようにカードプレイのアイコンと解釈してしまった認知ミスの一例と言えます。

翻って言えば、それだけこのゲームは「カードをすぐにプレイしたい」けども「カードをプレイするには手順を踏む必要がある」ジレンマに満ちているゲームと言えます。このプレイミスをした方はまさに作者の思惑通りにこのゲームのジレンマに浸っているのですね。


この「ワーカーの回収」の仕組みと「カードプレイの機会制限」の組み合わせが本作のユニークかつ秀逸な点で、UI自体は実に王道的で見慣れた作り、遊びやすい作りなのですが、このツイストの盛り込み1つで、簡単で遊びやすいだけではない、このゲームでしか味わえない深みとジレンマを生み出しているのです。

それに伴ってアクションスペースも単純なリソースを提供する場というだけでなく、より豊潤で多義的な価値を持っています。

例えば次にワーカーが回収される列のアクションスペースは言い換えると「すぐにカードをプレイできるアクションスペース」でもあります。また、同じ列に複数のワーカーを配置するとそのワーカーの回収の際にはカードプレイの機会が同時に複数回訪れるのでリソース管理が難しくなりますし、ワーカーの回収が遠いアクションスペースであれば、カードプレイの機会が遠くなるもののそれまでにリソースを整える準備に時間がかけられるスペースという意味合いも持ちます。


この辺りのカードプレイのタイミングとアクションスペース自体の価値を見積もってワーカー配置を計算する点がこのゲームならではの独特な味わいとなっています。

ワーカープレイスメントは言ってしまえば価値の高いアクションスペースから先に占有していけばいいだけのものなのですが、このゲームでは進行とともにアクションスペースの価値が淀みなく変化していくため、一手一手の最適解がとかく悩ましいものとなっています。しかも資源補充といった手間も省かれている…… めちゃくちゃ合理的で完成度の高いシステムなのです。


◆多様なカードを組み合わせて強力なシナジーを生もう



さて、ゲームには様々なカードが登場します。大きく分けて3種類、3色があり、それぞれカードの特殊能力を起動する方法によって色分けされています。




黄色のカード(明晰)は、ゲーム中1回しか使えないものの強力な効果を持つカードです。これはワーカーを特定のアクションスペースに配置した際に起動することができます。起動後は起動済みマーカーを配置するため、以降は起動できなくなるのですが、カードの中には「黄色のカードから起動済みマーカーを取り除く効果を持つカード」があったりもするので、こうしたカードでコンボを組むと強力な効果を何度も使い倒すことができたりもします。あくどいですね!




ピンクのカード(願望)は、ゲーム中に特定のアクションを選ぶことで起動できるカードです。この時、ピンクのカード1枚を選んで起動するのではなく、すでにプレイ済みのピンクのカードすべてが起動するので、ピンクのカードは出せば出すだけアクション効率がバカ上がりします。様々なシナジー要素を持つゲームではありますが、ピンクのカードはわかりやすく出せば出すだけリターンがあるのでシンプルに強いです。黄色のカードと違ってゲーム中1度だけしか起動できないといった制約もありませんが、その分1枚あたりの効果は控え目となってはいます。




緑のカード(再帰)は、いわゆる永続効果のカードです。「○○した時に××を得る」的な。処理を忘れやすい手合いのカード筆頭とも言えますが、特定の行動にオマケがくっついてくるのが嬉しいですし、特定の行動を連打することで何度もオマケを貰えるので特化戦術のキーカードになることもあります。永続効果のカード同士を組み合わせることで強烈なシナジーを生む場合もあり、これまた色々な悪さのできるカードが揃っています。


とまあ、3種の起動方法の違いから分類されている各カードですが、各カードには上下に分かれた2種類の起動効果が記されています。上段の効果は通常効果でカードをプレイした後に使用できる効果、下段の効果は向上効果でカードをアップグレードすることで使用できる効果となります。

カードをアップグレードするにはメインボードで「物品トークンを獲得」し、それを「物品トークンの配置」アクションでカード上に配置する必要があります。

ちょっと面白いのは、「物品トークンの配置」アクションは手持ちの物品トークンを好きな数だけ配置できるルールになっています。そのため、物品トークンを溜めて溜めて溜めて一気に配置すると手番効率がいいのですが、カードを素早くアップグレードすれば強力な効果を使い倒せるメリットもあるので、この辺りのアクセルの踏み方もまた問われる作りになっています。


◆戦略性とバランスの妙が光る、工夫と悩みどころ満載の本格派ワーカープレイスメント

とまあ、様々な効果を持つカードが手札に色々とあるのでアレも出したい、コレも出したい、となるのですが、先述の通りにカードプレイの機会が限られるゲームなだけにゲーム全編を通して悩ましさが続くゲームです。カード効果は乗りこなし甲斐があるものが多いので、堅実なワーカープレイスメントと派手なタブロービルドがうまく噛み合った実にバランスのいいゲームになっていると言えます。ゲーム終盤はプレイヤー全員がコンボを悪用した何らかの悪さをしでかしているのでベスト悪さ選手権といった様相を呈したりもします。


先述の通り、誰かがカードを12枚分プレイしたところでゲームは終了します。最終的な得点計算としてはカードが持つ基礎的な得点にカードに配置された物品トークンが1枚につき1点となります。あとは余ったリソースがちょちょっと得点にもなり。

カード1枚の持つ点数が3〜6点なので、物品トークン1枚1点はかなり優秀な得点源です。ただ、物品トークンを数多く置くためにはプラットフォームとなるカードが必要なので、やはりカードをより多くプレイしたプレイヤーが勝利に近づくという基本線は変わりません。

トータルではリソース、カード、得点トークンをどのように集め、どのようにプレイしていくか、様々な要素をバランスよく扱うマネジメント性の巧拙を求められるゲームとなっています。


プレイ人数幅について言えば対応人数は2‐4人となっていて、最近のゲームとしては珍しくソロプレイルールがありません。基本的にワーカープレイスメントは人数が多いほどアクションスペースの取り合いが激しくなり、タブロービルドは人数が少ないほどダウンタイムが少なくなって自分の手元に集中できる、といった向きがありますが、その原則はこのゲームにも当てはまります。

そのため、人数が多ければワーカープレイスメントならではのアクション選択肢の良し悪しを競う成分が強くなり、人数が少なくなれば自分の手元のシナジー要素の組み立て方が重要になります。そうしたグラデーションはあるにせよ人数によって大幅にゲーム性が大きく変わることはないため、何人で遊んでも安定して楽しめる内容と言えるでしょう。


長所だけでなく短所もお伝えするのであれば、カード効果はすべてテキストなので、それらを把握するのがちょっと大変という点でしょうか。ゲーム中は6枚のカードが場に並んでいて、それらの中から最適な1枚を選び取る場面も多く、それらのカード効果を読み解くには少し慣れが必要です。ゲーム用語もまあまあ出てきます(よくある質問として「ワーカーを使ってオナイロスフィアでリソースを取った場合〜」は、書いてある通りワーカーを使った配置アクションのみ起動して、「サイクルトラックアクション」は、メインボード上部のトラックにあるアクションを指します)。


こういうカードです


また、物品トークンが大きくテキストが隠れることがあったり、リソースを管理するリソースマーカーがズレやすかったりと、プロダクト面で不便を感じる箇所が目に付くこともあります。この辺りもね、遊びやすさを追求して貰えればよかったんですけどもね。

そうした遊びにくさ、気持ち悪さ、みたいなものが滲み出てはいるにしても、そうした欠点を無視できるほどの面白さがあるゲームなのでこれは日本語版を出版した方がいいよなー、と、確信できたタイトルではあります。


また、日本語版ではプロモカード6種が最初から同梱されています。ちょっとクセのある効果を持つカードではありますが、こうしたゲームでカードプールが増えるのは単純に嬉しいよねと思って同梱としました。


テキストが多い!


そう言えば、日本語版では箱絵を原版から改めています。原版ではかなりサイバーパンク感が強かったので日本語版ではその辺りをやや柔らかく改めています。欧米の方はこういう方がクールでいいんでしょうけどね。日本人の好みとしてはやや色味がキツいかなと。皆さんに気に入って貰えると嬉しいのですが、さて、どうでしょうか。




ゲームマーケットではイベント価格5000円にてご提供します。オペレーションの都合できりのいい価格にしているのですが、これだと希望小売価格より高い値段でのご提供となってしまうため、ゲムマでの販売に限り特別に専用のスリーブをおつけします。

カードサイズが「世界の七不思議」と同サイズのため、専門店などに行かないと調達しづらいタイプのスリーブです。入手困難な部類ではないですが、まあ、ゲムマでご購入頂くとシンプルにオトクだと思います。


ネオドリームズ



プレイ人数:2-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:30-60分

ゲームデザイン:Ivan Lashin
アートワーク:Nick Gerts, Evgeny Zubkov
希望小売価格:4950円(税込)
posted by 円卓P at 11:58| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月25日

ゲーム紹介:アクアティカ:珊瑚礁



数寄ゲームズは、「アクアティカ:珊瑚礁」日本語版を発売します。プレイ人数1-5人(5人プレイには「氷海」拡張が必要)、対象年齢14歳以上、プレイ時間60分で、小売希望価格は税込5500円となります。

3月3日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行予約を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。


「アクアティカ:珊瑚礁」は、「アクアティカ:氷海」に続く「アクアティカ」の第二拡張となります。部族モジュールの導入でゲーム構成をアグレッシブに変化させた「氷海」に対して、「珊瑚礁」では新しい得点要素となる「珊瑚」と、個人ボードの強化要素となる「岩礁」の2つによって新たなプレイフィールを創出しています。


「アクアティカ」本体及び「アクアティカ:氷海」については以前にも紹介記事を書いているので過去作についてはそちらをご覧頂くとして、この記事では「アクアティカ:珊瑚礁」の新要素を主にご紹介していきましょう。

アクアティカ
http://sukigames.seesaa.net/article/471410197.html

アクアティカ:氷海
http://sukigames.seesaa.net/article/479586750.html


◆新たな強化要素「岩礁トークン」とは?



「岩礁トークン」は、深海シーフォークとともにボード上に並べられ、対応する深海シーフォークを雇用することでオマケに獲得できるトークンです。オマケ……とは言っても実はこっちが本体かも? と言えるほどのポテンシャルも秘めています。

獲得した岩礁トークンは個人ボードのスロットの上部に配置します。以降、対応するスロットは差し込まれたロケーションカードに様々な影響を及ぼす特殊能力を持つようになります。例えば、「このスロットに差し込まれたロケーションカードは即座に完全上昇させることができる」といったようなものです。

なので、深海シーフォークの雇用アクションは、単純に手札を強化するだけでなく、どの岩礁を獲得すべきかの考慮も必要になりました。岩礁トークン自体はモノによって強かったり弱かったりとメリハリのある設計となっているため、岩礁トークンの獲得を目的として深海シーフォークの雇用やコインの支払いを検討するのも全然アリなバランスになっています。


基本ゲームでは手札の強化はそこまで重要ではなく、手札の強化に手番を割くよりもロケーションの獲得に注力した方が展開を優位に進められるゲームではありました。手札プレイをメインエンジンに据えたゲームにも関わらず、手札を強化する行動が実はそこまで強くないというちょっと罠めいた設計だったりもしたのです。

その辺りは「氷海」でゲーム自体の長期化を図ったことで大分風向きが変わってきたんですけども、それをさらにアグレッシブに推し進めようとする動きが「珊瑚礁」での岩礁トークンの役割とも言えます。岩礁トークンを効率的に獲得できる新しい深海シーフォークなんかもいて、この新要素を積極的に活用していくのも一つの手と言えるでしょう。雇用アクションを持つシーフォークの価値も俄然高まりました。


今回追加された新シーフォーク「海の歌姫」は強力な雇用能力を持つカード。


裏を返せば「アクアティカ」に習熟していない人には岩礁トークンの強弱の見極めが難しく、「わからん殺し」にあってしまう可能性がないとは言えません。そういう意味でも「珊瑚礁」は段階を追ってから導入すべき、より玄人向けの拡張セットと言えるのではないかと思います。


◆得点化のルート構築がより重要になる「珊瑚」



「珊瑚」は、岩礁トークンと並ぶ「珊瑚礁」の主要な新要素の1つで、1個あたり1点相当の価値があります。岩礁トークンの多くは珊瑚とも関係が深く、岩礁トークン特有の条件を満たすことでロケーションカード上に珊瑚駒を配置することができます。

ただ、ロケーションカード上に珊瑚を配置するだけでは得点にはならず、ロケーションを得点化することでようやく得点化できます。裏を返せばきちんと得点化まで繋げないとせっかく配置した珊瑚が無価値に終わってしまうため、アクアティカ特有の得点化までの経路をより強調する作りとなっています。よりハイリスクハイリターンに。


珊瑚自体の得点は1個1点と地味な存在なのですが、珊瑚に関係した様々な要素を組み合わせることで強力な得点産出エンジンを組み上げることもできます。盤面によってロケーションを集めた方が強いのか、珊瑚生産エンジンを組んだ方が強いのかが変わってくるため、ゲームごとの変化がこれまでよりも大きくなりそうです。


「アクアティカ:氷海」から登場した「部族モジュール」との絡みでは、部族カードの雇用のためのコストを獲得した珊瑚駒で支払うこともできます(従来通りロケーションカードの得点で支払うこともできますし、珊瑚と混ぜることもできます)
そのため、部族カードにアクセスするためのアプローチ手段が増え、よりフレキシブルに部族カードを利用することができるようになりました。今回の拡張では新しい南方部族も登場します。新要素の岩礁や珊瑚に関連する能力を持つものが多いですね。



◆初期セットアップにも変更点。まさかのさよなら「海の王」?

「珊瑚礁」では、新しい初期セットアップ方法として「手番順マンタモジュール」が加わりました。後手番ほど便利な追加のマンタを持ってゲームを始めるこのモジュール、なんとこれまで親しんできた「海の王」との差し替え、二者択一となります(従来どおり海の王を使って遊ぶこともできますよ)。



様々な特殊能力を持つ海の王と引き換えにマンタ1個を貰うだけではちょっとプレイが地味になるのでは…… と思いきや、マンタ1個から貰える1金や1武力が存外デカく、序盤からハデな動きができるようになるのでこれはこれでアリな内容になっています。

特に、これまで序盤では高額な深海シーフォークに手が出しにくかったのですが、お金を産出するマンタが1つ余計にあるだけで手が届く範囲が広がり、付随してよりよい岩礁トークンを取りやすい、という影響が出てきました。マンタ1個の違いで序盤の自由度が結構変わるので、地味な変化ではありますがぜひ試してみてほしいモジュールです。


一方で従前通りに海の王を使用することも可能です。「珊瑚礁」にも新要素を活用する新たな海の王カードが加わるのでこちらを活かした戦略を探してみるのも楽しいと思います。


初手から強力な岩礁トークンを獲得してゲームを始められる「不朽のライオネル」


また、初期手札として従来の5種に加えて新しく「メデューサ・アルカディオ」が加わります。「メデューサ・アルカディオ」は新しい効果、「駐留」を持つシーフォークです。



「駐留」は、言わばロケーションの独占予約を行う能力で、手持ちのマンタを配置することでロケーションを予約することができます。



予約されたロケーションは捨て札置き場に置かれる際、捨てられる代わりに個人ボードに差し込むことができるため、「探索」を行ってロケーションを流すことでロケーションをタダで獲得することができます(その際、駐留に使用したマンタは「活動状態」で手元に帰ってくるので使用済みマンタを駐留に使うとちょっとオトク)。

マンタ1個がしばらく使えなくなること、ロケーションの獲得までタイムラグがあることと欠点はありますが、どれだけ高額なロケーションであっても無料で獲得できる可能性があるため、「駐留」はかなり強力な効果です。「メデューサ・アルカディオ」自体はマンタを獲得できるロケーションには駐留できないという制約がありますが、新しい深海シーフォークの中には全く制限なしに駐留可能な能力を持つカードもあるため、こうした深海シーフォークをうまく活用するのも手と言えましょう。


「珊瑚鎧の騎士」は「駐留」して即時に「探索」まで行う自己完結型。


また、誰かが「駐留」を行うと、他プレイヤーの心理としては「探索」を手控えたくなったりします。そりゃあ無料でロケーションを明け渡すのはシャクですからね。逆に複数のプレイヤーが「駐留」すると互いに協力して探索を進めることもあったりして、基本的に「アクアティカ」はソロ志向なゲームでしたが、「駐留」によって今までにないインタラクションが発生するのは興味深いです。


◆「氷海」拡張との組み合わせで盛り盛りのゲーマーズゲームに

「珊瑚礁」は基本ゲームと組み合わせることも、「基本」+「氷海」+「珊瑚礁」の全盛りで組み合わせることもできます。

「氷海」との組み合わせでは様々なモジュールの取捨選択ができるのですが、ザックリ言えば「基本モジュール+珊瑚礁」と「部族モジュール+珊瑚礁」の二種に大別できるかと思います。より高難度なのは後者の「部族モジュール+珊瑚礁」で、こちらは基本からはかなり距離の離れた結構なゲーマーズゲームになります。というかテキストが多い!

なにせ手札にテキストがあり、部族カードにテキストがあり、岩礁トークンにテキストがあり、それらが相互に関連しあうため、基本と比べて見るべき情報が爆発的に増大します。そのため、全部盛りはある程度「氷海」や「珊瑚礁」に慣れてからをおススメします。


「基本モジュール+珊瑚礁」は、それよりは穏やかな組み合わせで、新要素の岩礁トークンの存在感を感じられる組み合わせだと思います。基本ゲームをもう少しディープに楽しみたいという人向けの組み合わせで、まずはこちらを試してみるのもよいのかなと思います。

もし仮に予算の都合で「氷海」か「珊瑚礁」どちらか一つしか選べない、ということがあれば、個人的にはプレイ感が大きく変わる「部族モジュール」が楽しめる「氷海」をおススメしたいところですが、実は「珊瑚礁」だけでも「部族モジュール」がお試しで遊べる作りなので、コスパがよいのは「珊瑚礁」と言えるのかもしれません。

「珊瑚礁」には部族モジュールの遊び方が記されていないので、部族モジュール周りのルールを公開します(「氷海」のルールと同一のものです)。
アクアティカ氷海(抜粋).pdf

……と言った感じで新拡張「珊瑚礁」は「アクアティカ」よりディープに楽しめる内容となっています。特に岩礁トークンを軸としたアッパーなプレイ感はより脳が煮える楽しさを味わうことができますよ。

「珊瑚礁」の発売と同時に、長らく在庫切れの続いていました「アクアティカ」「アクアティカ:氷海」も再販となります。色々と価格変更が相次ぐ世の中ではありますが、「アクアティカ」は税込5940円、「アクアティカ:氷海」は税込3520円と以前からの価格を維持させて頂きます。プレイ経験に応じて色々な遊び方ができるタイトルなので、ぜひこの機会にお買い求めいただければ幸いです。



また、ルールブックの内容物の記載に製品との相違があります。
下記が正しい内容物となります(説明書の記載に加えて合計6枚のカードが同梱されます)。

誤:
新しい深海シーフォークカード 22枚

正:
新しい深海シーフォークカード 24枚
新しい海の王カード 4枚



アクアティカ:珊瑚礁


プレイ人数:1-5人(5人プレイには「氷海」拡張が必要)
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:60分

ゲームデザイン:Ivan Tuzovsky
アートワーク:Victor Zaburdaev
小売希望価格:5500円(税込)
ラベル:アクアティカ
posted by 円卓P at 12:37| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月11日

ゲーム紹介:失われた種の探索



数寄ゲームズは、「失われた種の探索」日本語版を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢13歳以上、プレイ時間60-75分で、小売希望価格は税込6600円となります。

12月16日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行予約を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しておりますが、こちらは年明けとなる見込みです。


「失われた種の探索」は、絶滅の危機に瀕している動植物を救うため、それら「失われた種」の調査を行うゲームです。インドネシアやパプアニューギニアをイメージした島々をボートや徒歩で移動したり、現地住民に協力を仰ぎながら、失われた種をより早く発見したプレイヤーが勝利に近づきます。ただ、失われた種の発見はあくまで得点源の一つであり、最終的には発表した論文や町カードから得られる得点の合計点で勝敗を競います。


「失われた種」の一つ、アルオオコウモリ。ゲームには6種の失われた種が登場します。

手番ではアプリに質問を行い、その回答を専用シートに書きこんでいくことで情報を整理しています。現在の情報から適切な質問を考えることが勝利へ近づく要諦となるでしょう。



このゲームは太陽系10番目の惑星を探す「惑星Xの探索」の続編です。コンセプトも「惑星Xの探索」と同様に、専用アプリとの対話を通して情報を整理していく論理推理ゲームなので、ゲームの概要については「惑星Xの探索」の紹介も参考になるかと思います。どうぞこちらもご一読を。

ゲーム紹介「惑星Xの探索」

その上で、「失われた種の探索」は「惑星Xの探索」とどのように違うのか? その辺りの差異を中心に「失われた種の探索」の魅力について今回はご紹介していきたいと思います。


◆舞台は東南アジアの島々。島中を歩き回って動物の痕跡を追う!



さて、「失われた種の探索」の最も大きな変更点と言えば、ルックスからもわかる通りのテーマの変更となります。「惑星Xの探索」においてプレイヤーは、白衣に身を包み、望遠鏡をのぞき込み、遥か彼方、遠大に広がる大宇宙をコーヒー片手に仰ぎ見ていましたが、今作では草木生い茂る東南アジアの島々に単身赴き、危険生物の牙や棘を通さない厚手のサファリジャケットで身を守り、時に徒歩で、時にボートで実地調査に臨む探検隊の様相を呈しています。

これは単純なテーマの違いに留まらず、ゲームシステムの変化にも繋がっています。「惑星Xの探索」では夜間にしか見えない星の特性に沿って、調査範囲は常にボードの夜部分、半円に限られていました。

対して「失われた種の探索」ではボードの中心に舞台となる島が存在し、プレイヤー扮する科学者駒が(小さいながらも人間にとっては巨大な)島を巡り巡って調査を行います。つまり、移動力、移動範囲の概念が調査範囲を制限する要素となります。



地球の自転はさすがに人間にコントロールできる代物ではないのですが、島内をどう移動するか、どこに着地するかはコントロールできる、というのが両者の調査アプローチの大きな違いでしょうか。ざっくりと言えば「失われた種の探索」の方が、よりプレイヤーの意思を反映した、自由度の高い調査が可能になっていると言えます。様々なパターンを検討した結果、一手で多くの情報を引き出せるような調査が決まった瞬間は天才になったような気分が味わえて気持ちいいですよ。

ただ、工夫の余地があるがゆえに、よりプレイヤーのテクニックが反映されやすいというか…… 思考空間が広がって自由度が高まったために前作よりもダウンタイムは伸びがちかもしれません。また、プレイヤーの巧拙の差も出やすい作りではあるとは言えます。

そのため、「失われた種の探索」は「惑星Xの探索」から少し踏み込んだゲームではあります。とは言え、その差は0.5歩くらいなので「失われた種の探索」から遊んでも全く問題はないですけどね。

また、プレイヤーの力量差については「惑星Xの探索」と同様に、初期情報の量でハンデをつけることができる作りでもあります。なので、プレイ経験がバラバラのプレイグループであれば、初期情報をうまく調整して挑むとよいのかなと思います。公式にハンデをつけることも可能なゲームって結構珍しいですよね。


小粒ながらも大きな変更点としては「町カード」の存在があります。これは調査隊を助けてくれる現地住民などをイメージしたものなのですが、調査を補助するちょっとした特殊効果をもたらしてくれたり、ゲーム終了時にボーナス得点を貰えたりします。


町カード「道案内人」は時間コスト3の徒歩アクションをコスト2に低減する能力を与えてくれる。

「惑星Xの探索」は、ランダム要素が事実上ないアブストラクト味の強いゲームではあったのですが、「失われた種の探索」は、町カードのランダム性やちょっとした博打性が加わって前作に比べて雰囲気が柔らかくなっています。ゲーム終了時の加点要素が増えたことで、逆転の余地が増えたのは個人的にはよい味付けだと思っていますし、調査の方針決定の補助線としても役立つところもいいですね。


逆転性の強化と言えば、論文の提出のルールが微妙に変わっていて、「惑星Xの探索」では発表フェイズで0-1個の論文を発表していたのが、「失われた種の探索」では0-2個の論文を発表できるようになっています。

「惑星Xの探索」では論文発表が遅れるとその差がなかなか縮めにくい側面があったのですが、「失われた種の探索」では、論文を2個発表し続けるのは難しいため、キャッチアップがしやすい作りにはなっています。ここは後発ならではの冗長性の強化と言えましょう。


とまあ、そんな感じで全体的に「失われた種の探索」は、雰囲気が柔らかい! やっていることの本質は「惑星Xの探索」とあまり変わらないのですが、プレイ中の空気感が結構明るくなっているように感じられます。

ただ、論理推理部分は先ほど触れたように多少難しくなっているようにも思います。今回は前作の「惑星X」に相当する「失われた種」が6種類登場し、それぞれが固有の生息ルールを持っています。失われた種はそれぞれが島に登場する他の動物、ヒインコ、クスクス、ヒキガエル、ニシキヘビとの独自の関係性を持っているため、これらの動物もしっかりと生息地を調査しないと本丸に辿り着かない作りになっている気がします(と思ってたんですが、NPCのティニは一足飛びで失われた種に到達したのでそうでもないっぽい……?)。



プレイのヒントを一つ挙げるとするならば、まずは発見難易度の低いヒインコの生息地を発見し、そこを足掛かりとして他の動物の所在を探っていくのがよいのかなと思います。まあ、これはゲーム中に登場する学説(今回のゲーム特有のルール)との兼ね合いもあるのですが。


登場する学説はゲームごとに異なります。


◆専用アプリも使いやすく、ソロプレイもオススメ

専用アプリは開発元が変わっているため、UIから結構な変化があります。宇宙テーマらしくフラットデザインだった前作も遊びやすい作りではあったのですが、今作のアプリも(ボタンがちょっとわかりにくい作りではありますが)細かいフォローが行き届いていて快適なプレイが可能です。

例えば、セットアップでは様々な初期情報を教えてくれますが、「要は画像の通りにチェックしてったらええんや!」と明快。


とりあえず見たままに✗印をメモシートに書く! それだけ!

質問に対する回答では「メモにはこう書き込んだらいいよ」まで教えてくれるので初見でも遊びやすいです。


今回登場する失われた種がアッテンボローミユビハリネズミであればメモシートには「?はヒキに隣接しない」と書き込めばOK。

NPCプレイヤー「ティニ」との対戦ソロプレイもアプリの補助があって快適です。「ティニ」はソロプレイに限った対戦相手ではありますが、2人プレイに追加のプレイヤーとして加えてもいいかも(ただ、疑似3人プレイだとプレイヤー側の情報が増えるのでティニが相対的に弱体化しそうではあります)



ティニの強さは「簡単」「困難」の2段階から選べますが、困難レベルだとよくわからない調査から唐突に失われた種を発見してきたりもするので油断がならないですよ。他人を気にすることなくじっくりと心ゆくまで時間が使えて、なおかつNPCの操作はアプリが補助してくれるので、とかくソロプレイが楽しいゲームです。ぼくは普段あまりソロプレイをしないほうなんですがこのゲームは「1時間空きがあるなー」みたいな時に取り出して、すでに5回くらい遊んでますね。


◆大変お待たせしましたが、それだけに自信を持ってお届けできるタイトルです!

元々が完成度の高い「惑星Xの探索」をブラッシュアップしたタイトルなだけに「失われた種の探索」は、論理推理ゲーム好きの方には抜群にオススメのタイトルです。最大の特徴であるアプリの積極的活用は今回も健在で、それは裏を返せばアプリを使う環境を整えないと遊びにくい弱点もそのままではあるんですけども、まあ、良くも悪くもそうしたエッジの鋭さがこのゲームの魅力かなと思っています。

また、余談ではありますが、「失われた種の探索」では絶滅危惧種への興味を持ってもらおうという意図から、ルールブックには登場する動物に関するちょっとした解説記事もあります。



ローカライズ作業の難しいポイントとしまして、このゲームにはLoryとCane toadという動物が登場します。これは日本語名ではそれぞれ「ヒインコ」と「ヒキガエル」になります。

で、このゲーム、それぞれの動物の頭文字をメモする作りになっていまして、英語版ではそれぞれ頭文字が異なる「L」と「C」なのが、日本語ではどちらも「ヒ」になってしまうという問題が出てきました。

これをどう解決するかは非常に悩みました。「インコ」と「カエル」の「イ」と「カ」にするか、一方は「ヒ」で、一方を変えるか等々…… 結局、頭文字2文字を取って「ヒイ」「ヒキ」で分別するという形にしましたが、果たしてこれでよかったのかは、今でも悩むところです。

なので、もし、遊んでみて、遊びにくさを感じるようでしたら、そこは柔軟にやって貰えればと思います。自分が情報を整理する上で一番しっくりくる形でやって貰えればいいのかなと。

「惑星Xの探索」の制作の際には頭文字をアルファベットにするか、ひらがなにするか、漢字にするかで頭を悩ませたものですが、なかなかこうした問題は尽きないものです。


また、これまた余談ではありますが、最近ではドイツ製品を始めとしてシュリンク包装を排したゲームが増えてきています。本作もゲーム自体のテーマから環境保護指向の強いタイトルではあり、内容物もプラスチック製品を避けて紙包装への置き換えが進められています。箱の外装も英語版ではシュリンク包装ではなく、四辺へのシール貼りとなっています。

では、日本語版も英語版と同様にシール貼りなのか、と問われると、実は日本語版では箱にシュリンク包装を行っています。

というのは、日本市場においてシュリンク包装を好む人が(現状では)多数派だとぼくは考えているからです。日本語版の出版に際して色々と検討を行ったのですが、最終的に今回はシュリンク包装を行うこととしました。

シュリンク包装の是非については様々なご意見があるかとは思いますが、数寄ゲームズとして何を大事に考えるか、コンフリクトする諸々の事情にどのように優先順位を与えるか、という点を考えた時、「ファンの方に満足して貰うプロダクトをお届けしよう」「何よりもユーザーファーストの立場に立とう」という考えから今回の判断を行っています。

誤解を招かぬようにお伝えしておきますと、個人として、団体として、シュリンク包装の廃絶に絶対的に反対です、という立場ではありません。今回の「失われた種の探索」に限ってはこのように判断したという次第です。自然環境に対する皆様の関心は歳月と共に徐々に変化していくかとは思いますので、数寄ゲームズはアンテナを高くして都度柔軟に対応していきたいと考えていますし、今回の判断についても皆様のご意見を広く聞いてみたいところです(なので今回の判断の是非についてもツイッターとかでもいいので呟いて貰えればと)。


とまあ、そんな感じで色々と制作の際に判断に悩む箇所が多かった作品でもあり、「失われた種の探索」はそれだけに思い入れがあります。発売まで相当な時間がかかってしまいましたが、なんとか発売まで辿り着けて安堵しています。どうぞ皆様に楽しんで貰えれば幸いです。



失われた種の探索

プレイ人数:1-4人
対象年齢:13歳以上
プレイ時間:60-75分

ゲームデザイン:Matthew O'Malley, Ben Rosset
アートワーク:Anh Le Art, Anita Osburn
小売希望価格:6600円(税込)
posted by 円卓P at 14:14| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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