2025年06月24日

ゲーム紹介:ストゥポル・ムンディ



数寄ゲームズは、「ストゥポル・ムンディ:リテール版」日本語版を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間90-150分で、希望小売価格は税込9350円となります。

6月30日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行発売を行い、その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しています。


※写真はリテール版ではなく、特別版。見た目の差としては城がプラ駒(特別版)から木製駒(リテール版)に変わります。


「ストゥポル・ムンディ」は、「ニュートン(2018)」「ダーウィンズ・ジャーニー(2023)」(どちらもシモーネ・ルチアーニとの共作)などで知られるネスター・マンゴーネの手による単独作品です。イタリア人デザイナーあるあるなんですが、この人の作品は共作がほとんどで、本作は極めて珍しい単独作です。いかんせん舌を噛みそうなタイトルではありますので、ストポでもストムンでも好きなように略してお呼びください。

出版社のQuined Gamesは「カーネギー」などで知られるオランダの出版社で、その代名詞でもあるMaster Printシリーズはハイレベルなゲーマーズゲームの作品群として知られています。「ストゥポル・ムンディ」の特別版はMaster Printシリーズの28作目となります(なお、リテール版は背表紙に番号はありません)。

そのマンゴーネとQuined Gamesのコラボ作品ということもあり、事前から注目度の高かった本作は、遊びやすくも特徴的なシステムを備えた優れたゲーマーズゲームとして結実しています。マンゴーネのデザインの特徴はユニークな作りのインタラクションにあると感じているのですが(言うても「ニュートン」なんかはほぼインタラクション皆無な作品ですが)、このゲームでもそうした独自性が如実に現れています。


本作においてプレイヤーは「世界の驚異(ストゥポル・ムンディ)」と称された神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の臣下となり、中世の地中海沿岸を舞台に王国の繁栄を目指します。プレイヤーは協力者を集め、城を建設し、専門家を昇進させることで、フリードリヒ2世への影響力を高め、最終的な勝利点獲得を目指します。

プレイ時間からもわかる通り、要素の多いゲームではありますが、ゲームの特徴はハッキリしていまして、この記事では、ゲームエンジン、成長要素、インタラクションの3点に絞ってご紹介していきたいと思います。


◆カードを表裏で使い分ける悩ましさが特徴のデッキ構築型ゲーム

本作のゲームエンジンはデッキ構築に分類されます。プレイヤー駒が輪状のマップを移動する要素もありますが、これをロンデルとか呼ぶ人にはロンデル警察が令状片手に押しかけますからねー。


ちなみに移動「しない」ことを選ぶこともできます。

さて、ラウンド開始時にプレイヤーは手札としてカードを5枚持ち、手番にはカードを1枚プレイしてアクションを実行します。ツイストとして、この時、プレイヤーはカードをオモテ向きでプレイするか、ウラ向きでプレイするかを選択します。

オモテ向き → カードに書かれている効果を実行する
ウラ向き → ボードのスロットに差し込んで槍が示した先のボードアクションを実行する



基本的には穀物、石材、お金といった資源を獲得するためにカードをオモテ向きでプレイし、集めた資源の消費先としてウラ向きでカードをプレイする、という流れになります。ウラ向きのアクションには「専門家の昇進」「市場の訪問」「建造物の建設」「協力者の招集」「アクションカードの購入」の5種があり、どれも重要なアクションです。



オモテ向きでもウラ向きでも、カード1枚のプレイによってボードのスロットが1つ埋まり、すべてのスロットが埋まるとそのラウンドはパスするしかなくなります。

ラウンド終了時には残った手札を好きなだけ捨て、手札上限になるまでカードを引きます。「手札上限」という概念のあるゲームではありますが、手札枚数をチェックするのはラウンド跨ぎの処理だけとなるため、ラウンド中は手札上限を越えてカードを保持する場面もあります。

ちょっとした捻りこそあれ、基本的にはスタンダードなUIなので、ゲームの進め方で戸惑うことは少ないかと思います。ただ、オモテ向きでカードをプレイする場合にもカードスロット1つを埋める必要があるため、どのスロットを埋めるかは悩ましい選択と言えるでしょう。

また、こうしたメインエンジン部分は、後述する「天守」の建設によって強化することができます。


◆カード、建物、専門家の3本柱が織り成す成長要素

最初はできなかったことがゲームの進展に応じてできるようになる、成長・強化要素は重量級ゲームの快楽装置の最たるものです。これをもって拡大再生産などと呼ぶこともあります。

本作における成長・強化要素は大きく3種類あります。

1つ目。新カードの購入によるデッキの充実
2つ目。建物の建設による能力の強化
3つ目。専門家の昇進による特殊能力

です。それぞれについて説明しましょう。




新しいカードを購入することでデッキの質をより高める楽しさはデッキ構築というエンジンの存在意義と言えるでしょう。本作ではボードアクションの1つ、「アクションカードの購入」によって上級アクションカードを購入できます。

で、この購入したカードの処理に工夫がありまして、新しいカードを購入するとその効果を即時で使用することができます。展開が早い!

すなわち「カード購入アクション」=「新カードをプレイするアクション」でもあるのです。……カード購入コストが払えればね。

また、こうして購入したカードは効果を使用したあと、捨て札に置かれずに手札に入ります。この手のデッキ構築ゲームでは購入したカードは一旦捨て札に置かれるのが通例ですが、このゲームでは即時で使用した上に手札に入り、さらに次の手番で使用することもできるという…… 実にリターンの速いゲームとなっています。

まあ、基本的には1手番にはカードを1枚しか使わず、慣れてくればゲームはおおよそ20手番前後で終わるため、デッキがぐるぐる回転する類のゲームではないのですね。なので、わざわざ手番を使って購入したカードがちゃんと利益を出せるようにアウトプットが早い設計になっているわけです。

また、初期カードの効果は「資源1個を得ます」とか「3金を得ます」とか、まあ、シンプル弱いです。いかに初期カードを使わずに回していくかが攻略のポイントと言えます。



それに対して上級アクションカードは「資源2個を得ます」とか、「6金得ます」とか単純に2倍や3倍強い効果だったりするので、じゃんじゃんカードを買ってじゃんじゃんデッキを強化していきましょう。……そしてデッキが太る!



そう言えば、圧縮戦術を好む諸兄にお伝えしておきますと、このゲームでは能動的にデッキを圧縮する手段はありません。一部のカードは購入コストとして手札か捨て札からカードを1枚廃棄するものがあるのですが、これが唯一の圧縮要素です。

デッキの回転効率を上げる方法は、どちらかと言えば手札上限を増やしてドロー数を増やすというアプローチになります。


2つ目の成長要素は、建造物の建設によるプレイヤー能力の強化です。このゲーム、結局は何をするゲームなのかと言えば、資源を集めて建物を建てるゲームです。よくあるやつ!

で、建物には「塔」「壁」「天守」の3種があり、それぞれ建設することで対応した利益がアンロックされるようになっています。



1つ目の「塔」は、建設することでプレイヤーは協力者を置くための部屋を作ることができます。協力者はこのゲームの主要な得点源で、塔を建てることでより多くの協力者を獲得できるようになります。

2つ目の「壁」は、資源を保管する倉庫の役割を持ちます。初期状態ではプレイヤーは資源を最大3つしか持つことができません。壁を建設することでプレイヤーは資源をより多く持つことができ、資源のやりくりが簡便になります。地味ながら重要!

3つ目の「天守」は、様々なプレイヤー能力がアンロックされます。例えば手札上限が5枚から7枚に増えたり、1ラウンド中の行動回数が1回増えたり、1回の手番で2つのボードアクションが行えたりします。

天守の能力解放は実に強力なのですが、天守の建設にはコストとして資源が4つ必要です。そしてプレイヤーが初期状態で持てる資源の上限は3つ…… おわかりですね、天守を作るためにはまず壁を作って倉庫のキャパを広げる必要があるのです。

また、塔と壁はセットで作ることでラウンドごとに収入をもたらすようになります。これは「マルコポーロの旅路(2015)」よろしく、完成した瞬間にも1回収入を得られる仕組みなので、なるべく早く完成させたいところですね。


収入は「石材」「穀物」「3金」「交易1回」「1勝利点」の5種。どれから作る?


最後の3つ目の成長要素は専門家の昇進です。
ゲームボードには3つの進路、特殊能力トラックがありまして、プレイヤーは自分の持っている3つの専門家をこの進路に沿って進めることで様々な特殊能力を得ることができます。



ゲーム好きなら「ツォルキン(2012)」の頃から見知っている技術トラック(注1)的なものなんですが、特徴的なのは「今、専門家がいるスペースの特殊能力のみ使用できる」点です。専門家が昇進して次のスペースに移動すると、今まで使用していた特殊能力は失われて、新しい特殊能力だけが使用できるようになるのです。


昇進によって「天守を建てると4点」の能力は失われ、これからは「塔か壁を建てると3点」の能力を得た、という例。

なので、ゲーム中に「専門家の効果を使います」「あ、それ昇進しちゃったんでもう使えないっすよ」みたいな会話が起きたりします。再びその能力を使うためには別の専門家をそこまで持ってこなければならない……!

それを踏まえて、さて、手元にいる3つの専門家をどう進めるか。得られる効果は最大3つまで。専門家同士のコンボが発生するような効果もあるので、セットアップを見てどのような戦略を取るかの組み立ても重要です。


以上、3つの成長要素についてさっくりとご紹介しました。手札を強めるか、建物を建てるか、専門家を昇進させるか、成長の方向性が色々あり、なおかつどこからアクセスしてもよい自由度も担保されているのがワクワクするところです。強いて言えばカードだけは現品1枚限りの早い者勝ちなので、欲しいカードは人に先んじて確保した方がいいかもしれませんね。


◆NPC皇帝を介した間接的マジョリティ争いと布告による盤面操作

さて、このゲームの最たる特徴は得点にまつわるインタラクションの仕組みです。

このゲームのテーマは神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の家臣として王国(帝国ではない)の発展に努めるといったものなのですが、このゲームではNPCプレイヤーとしてフリードリヒ2世が登場します。他のゲームでもソロプレイなどでNPCプレイヤーが登場することはありますが、本作ではプレイ人数に関わらずNPCプレイヤーが常に登場します。

ちなみにフリードリヒは常に黄色の駒を使うので、プレイヤー色として黄色を使用している方は本作では別の色をご使用ください。ぼくも黄色使いの身なのですが、このゲームではやむなく別の色を使ってます。

あと、プレイヤー色と言えば、色によって初期カードの構成が異なる非対称の作りなので、色々なプレイヤー色を試してみるのもいいと思います。上級カードを購入できる赤のサヴォイア家なんかは安定して強いんじゃないでしょうか。まあ、とは言え、このカードを最初に引けるかどうかは運なんですが……



……話が逸れました。NPCプレイヤーのフリードリヒはプレイヤーのように手番を行うことはありませんが、様々なタイミングでマジョリティ比べに出張ってきます。先ほど、プレイヤー色によって初期カードの構成が異なることをお伝えしましたが、各プレイヤーはフリードリヒの盤面に応じて得られる効果が変わるカードをそれぞれ持っています。

例えば赤のサヴォイア家であれば「フリードリヒの協力者1枚ごとに穀物1個を得る」という効果です。ですから、フリードリヒのお城に協力者がいればいるほどこのカードによる実入りが増える…… ので、このプレイヤーはフリードリヒの協力者を増やすことにメリットが生まれます。相対的に、他のプレイヤーにとってはフリードリヒの協力者は邪魔だ、という話にもなります。


さて、プレイヤーは「協力者の招集」アクションで協力者を得ることができます。協力者は各ラウンドでの収入としてプレイヤーに1勝利点をもたらすのですが、フリードリヒの城と自分の城を比較して協力者特有の条件を満たしている場合、さらにボーナスとして追加の2勝利点ももたらします。



そのため、自分の確保した協力者の条件に沿って自分の盤面を充実させることが点数行動としては重要になります。また、逆にフリードリヒの盤面を弱体化させるのも手です。

弱体化……? はい、このゲームでは「布告」を介することで、フリードリヒの盤面を弄り回し、建造物や資源や協力者を増やしたり減らしたりできるのです。ゲーム中、プレイヤーは様々な方法で布告を発令することができるので、自分の都合のいいようにバシバシ布告を発令していきましょう。


例えば一番上の布告はフリードリヒの城に壁2つと天守1つをそれぞれ建設するか取り除くかを選ぶ、という内容。

フリードリヒには布告に逆らう権限はないので(神聖ローマ皇帝……!)、当初は立派だった城郭があっという間に取り壊されたりもします。このゲームの建物はタイルでも事足りるのですが、わざわざ立派な木駒がごっそり用意されていて、家臣の損得勘定に振り回される光景が愉快な作りとなっています。

こうした協力者と布告の政治力学が本作の独特なインタラクションを形作っています。通常のゲームではプレイヤー間のリソースの多寡でマジョリティ比べを行うところ、このゲームではフリードリヒというNPCプレイヤーを介した間接的なマジョリティ比べを行うのです。

なので、他プレイヤーの取った何気ない布告の選択が自分にとって致命的な一手になりえることもあります。布告は他のプレイヤーの盤面をよーく確認してから選びましょう。



通常、緑の独立派(皇帝うるせえよ派)と赤の王党派(皇帝大好き派)の条件は対立します。独立派の「テオフィロス」は自分がより多く穀物を持っているとボーナスが得られ、王党派の「シゲベルト」はフリードリヒがより多く穀物を持っているとボーナスが得られます。


◆内向きの成長と外向きの政治が融合した、中世テーマの重量級戦略ゲーム

「ストゥポル・ムンディ」は様々な成長要素にアクセスして自分の能力を高めていく箱庭ゲームの内向きの楽しさと、協力者の条件を満たしたり、他プレイヤーを牽制するために布告を発令するポリティクスの外向きの楽しさが高度にミックスされたゲームと言えます。

慣れないうちは他人の発令した布告によって自分の意思の範囲外から振り回されるゲームとも感じるかもしれませんが、実のところ、しっかりと自分のエンジンを形作れば収入も増えて布告の発令回数も増えるため、アドバンテージを握りやすくなります。

エンジン強化で力押しもできますし、そうした派手なエンジンを作った人を布告で刺すこともできるので、「結局強いエンジンを作った人が勝つんでしょ」とも「結局マルチ的に得した人が勝つんでしょ」とも言い難い絶妙なバランスのゲームに仕上がっています(初プレイの人が経験者に勝つのは結構難儀かなーと思えるくらいには習熟の段階があるゲームなので、どちらかと言えばエンジンでねじ伏せられると思ってはいますが、自分vs他3人の構図になったらさすがにしんどいかな)。

プレイ人数的には1〜4人のどの人数でも変わらず楽しめる内容です。インタラクションの強いゲームは少人数だと楽しめない向きもあるのですが、このゲームは先述の通り、NPCプレイヤーを介してインタラクションを生んでいるゲームなので、少人数でも本質が損なわれることはありません。ダウンタイムが気になる方は3人までの方がいいかもしれませんが、ここは好みかなと思います。


唯一注意するべき点は、ゲームの終了条件が固定ラウンドではないので、初回プレイは特にプレイ時間が延びやすいということでしょうか。これは「ドミニオン(2008)」や「カタン(1994)」を初プレイの人が遊ぶと間延びしやすいのと同じ話ではありまして、ゲームに慣れるに連れてより効率的な行動が取れるようになり、結果として手数が少なくなるということです。

「地味なゲーム」という感想を目にすることもたまにあるんですが「手番に石1個貰って終わり」「次の手番に3金貰って終わり」という動きを続けてたら、まあ、そういう印象にもなるかな、という気はします。で、この記事をここまで読んで貰った方には通じると思うんですが、そういうプレイをしてる限りは勝てないゲームです。

それだけ乗りこなし甲斐があるゲームとも言えますので、こうした重量級ゲームがお好きな方はぜひぜひ遊んでみて頂ければと思います。プレイ時間自体は結構ゴツい表記ではありますが、要素の繋がりが複雑な捻くれた作りではなく、モダンユーロ本流の素直な部類の作りです。


まあ、やることは資源集めて建物建てて協力者集めて布告を出すだけですからね。リソースも3種だけですし、穀物は基本的に協力者に使い、石材は建設に使うと用途もわかりやすいです。

こうした中世ヨーロッパテーマの戦略ゲームも考えてみれば最近はかなり少数派なので(宇宙or自然ばっかり)そうしたゲームを久々に遊びたいなーという方もぜひ触ってみて貰えればと思います。面白いですよ!

ストゥポル・ムンディ:リテール版


プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:90-150分

ゲームデザイン:Nestore Mangone
アートワーク:Maciej Janik
希望小売価格:9350円(税込)


(注1) トラックを進めることで累積的に別種の能力を獲得する仕組みって「ツォルキン」以前のゲームがちょっと思い当たりません。単一の要素(カードドロー数とか)がインクリメントしていく仕組みだと「ゴア(2004)」とか「インドネシア(2005)」とかが思い浮かびますが。「ケイラス(2005)」は即時効果であって能力の強化ではないのでこれも違うかも。今では「サルトフィヨルド(2024)」のように当たり前に使われてる仕組みですが、そういう意味でも「ツォルキン」はエポックだったのかも。
posted by 円卓P at 11:47| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年06月23日

「ネオドリームズ」質問と回答



「ネオドリームズ」のよくある質問とその回答について掲載します。

Q1.
L03のカードコストは知識(黄色)と記憶(緑)のどちらが正しいですか?


A1.
アイコンの記憶(緑)が正しいものとなります。

Q2.
アップグレードされたR07のカードをプレイして、赤枠で囲まれたアクションを行った場合、カードの効果で貰える物品はいくつかですか?





A2.
この場合、「物品の獲得」で1個、「物品の配置」で1個の計2個を獲得します。
「物品の獲得」で得た物品1個は「物品の配置」で配置することもできます。


もし、他にカードの効果について疑義がありましたらこちらまでお問い合わせください。
posted by 円卓P at 11:17| Comment(0) | マニュアル改訂・エラッタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月14日

ゲーム紹介:ネオドリームズ



数寄ゲームズは、「ネオドリームズ」日本語版を発売します。プレイ人数2-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間30-60分で、希望小売価格は税込4950円となります。

5月17日、18日開催のゲームマーケット2024春にて先行発売を行い、その後、数寄ゲームズ通販サイトや全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しています。




「ネオドリームズ」は、「スマートフォン株式会社(2018)」「ファーナス(2020)」などで人気を博したロシア人デザイナーIvan Lashinの最新作です。夢の作成&販売ビジネスが盛況な未来の世界でプレイヤーは夢制作会社の社長となって市場の覇権を争います。未来の夢グループ……ってコト!?

蛇足ながら、この舞台設定を説明する際、ぼくは「寺沢武一のコブラの第1話みたいな……」という言い方をするのですが、「コブラ知らないです」というレスポンスが毎度返ってきて話がそこで終わります。

「その世代じゃないんで……」と言われることもありますが、ぼくも直撃世代ではないですよ! どちらかと言えばぼくよりも5歳、10歳年上の人の方が通じるんじゃないかなあ…… ともあれ、こうした舞台設定の例え話はなかなか世代間の断絶があって難しいものではあります。


さて、こんな話をぶん投げておいてなんですが、この舞台設定、実はゲーム内容とはほぼほぼ関係ありません! 建付けとしては夢市場を巡る会社同士の競争といった表現をしているものの「スマートフォン株式会社」のような需要と供給を巡るインタラクションが主軸に据えられたゲームでもないです。敢えて言えばカードイラストが夢っぽいのでこのテーマを選んだのかな、くらいな風味ですね。


ゲームの中心的なメカニクスはワーカープレイスメントとタブロービルドで、プレイヤーはアクションスペースにワーカーを配置することで様々なリソースを集め、リソースを支払って手札をプレイすることで様々な特殊能力を獲得していきます。獲得した特殊能力によって、よりリソースが集めやすくなり、カードプレイも加速していく…… 皆さん大好きな拡大再生産の構造となっています。

ゲーム構造としては実に王道的な、翻って言えばよくある組み立てなのですが、そこは「スマートフォン株式会社」で新世代の経済ゲームを生み出したIvan Lashin、興味深いツイストを仕込んでこのゲームならではの独自性を生み出しています。


結論から言ってしまえば、このゲームはよいです! もう少し具体的に言えばゲーム全体のバランスがよく、お値段は高すぎず、時間は長すぎず、やることはシンプルで、それでいてコクがある。王道的な作りでありつつ独自性も備えているゲームと言えます。

つまり、すごく多くの人に愛されるゲームなんじゃないかなと思っているので、この記事ではそうした独自性に焦点を当てて紹介していきたいと思います。




◆王道かつ捻りのあるワーカープレイスメントとタブロービルド

まず本作は「誰かがカードを12枚プレイしたらゲーム終了」というゲーム終了トリガーを持っています(と言いつつ、プレイヤーは便宜的なカード2枚をプレイ済みの状態からゲームを始めるので実質的にはカードを10枚プレイしたところでゲームが終了します)。ゲーム終了後に一番多くの勝利点を獲得したプレイヤーがゲームに勝ちます。

プレイしたカードには勝利点がついているので、基本的にはより多くのカードをプレイしたプレイヤーが勝利に近づくことになります。こうした組み立てのゲームと言えば「サンファン(2004)」や「レースフォーザギャラクシー(2007)」といった古典的名作が思い浮かぶ人もいるかもしれませんが、「ネオドリームズ」もそうした諸作の系譜にある作品と表現できるでしょう。


カードをプレイするためにはコストとなるリソースを集める必要があります。リソースはピンクと黄色と緑の3種類がありますが、このうちピンクは黄色と緑のどちらとしても使用できるワイルドなリソースなので、実質的には黄色と緑の2種類のリソースが存在します。

こうしたリソースは主にワーカーをオナイロスフィアと呼ばれるメインボードに配置することで獲得することができます。メインボードには全部で12個のアクションスペースがあり、そのうちいくつかのスペースで黄色、緑、ピンクの各リソースを獲得することができます。



プレイヤーはワーカーを3個持っていて、手番には「ワーカーの配置」を行うか、「配置されたワーカーの回収」を行います。この手のワーカーの配置と回収を選択する作りのゲームは「The Manhattan Project(2012)」が走りとなっていて、その後様々なワーカープレイスメントゲームで採用されています。最近のゲームだと「エイピアリー(2023)」がそういう作りでしたね。


さて、リソースを集めたら今度はカードをプレイしたいのですが、肝心のカードをプレイできるアクションスペースはボード上に12個中1個しかありません。な、なんだってー!? メインボード右下のアクションスペースがそれです。


赤丸で囲んだところだけ(「緑のリソース1個を得てカードをプレイする」のアイコン)

あまりにカードプレイの機会少なすぎんか? こ、こんなことが許されていいのか!?
……と思わせておいて、ここでこのゲームならではのツイストが登場します。


実はこのゲーム、カードをプレイする方法がもう一つあります。それがメインボード右端のアイコン群の利用です。右端のアイコン群は「特定色のカード1枚を得る」か「手札のカード1枚をプレイする」を意味していますが、先述の通りカードをプレイする機会が貴重なゲームなので、基本的にはこれを使ってカードをプレイしたいところです。


3つの段それぞれにカードプレイのアイコンがあります。

そして、このアイコン群にアクセスする方法がさっき少しだけ触れた「配置されたワーカーの回収」アクションなのです。

「配置されたワーカーの回収」とは言いましたが、実はこのアクション、自分のワーカーを回収するアクションではありません。具体的には「配置されたワーカーの回収」を選ぶと、メインボードの上部にある睡眠サイクルトラックにあるマーカーを1スペース前進させます。その後、進んだ先の列と同じ列にあるワーカーだけが持ち主の手元に回収され、ついでにワーカーの持ち主は配置していたワーカーの段の右端にあるアクションを行うことができるのです。

ここ! ここの作りがIwan Lashinらしいナイスな仕掛けですよ!



「配置されたワーカーの回収」は自分のワーカーだけを回収するアクションではなく、特定の列に配置されたワーカー全部を持ち主の手元に戻すアクションです。つまり、自分の手番外にワーカーが手元に返ってくることもあれば、付随してカードをプレイする権利を得られる局面もあるということです。


このゲーム、なるべく多くのカードをプレイしたいゲームなのですが、能動的にカードをプレイできるアクションスペースは先述の通り1か所だけしかなく、それ以外はこの「ワーカーの回収」を通してカードをプレイするしかありません。たくさんカードをプレイしたいのにプレイ機会が限られている実にイジワルな作りのゲームなのです。


先日「ネオドリームズ」を試遊した超新作体験会では、手札からカードをプレイしようとして「違います、それ、カードをプレイするアクションじゃないです!」と止めるシーンが何度もありました。繰り返しになりますが、このゲーム、能動的にカードをプレイできるアクションスペースは1つしかありません。

こうしたプレイミスは「やりたいことをやらせてもらえないストレス下」で起きやすくなります。この例は、本来はカードプレイではないアイコンを自分にとって都合がいいようにカードプレイのアイコンと解釈してしまった認知ミスの一例と言えます。

翻って言えば、それだけこのゲームは「カードをすぐにプレイしたい」けども「カードをプレイするには手順を踏む必要がある」ジレンマに満ちているゲームと言えます。このプレイミスをした方はまさに作者の思惑通りにこのゲームのジレンマに浸っているのですね。


この「ワーカーの回収」の仕組みと「カードプレイの機会制限」の組み合わせが本作のユニークかつ秀逸な点で、UI自体は実に王道的で見慣れた作り、遊びやすい作りなのですが、このツイストの盛り込み1つで、簡単で遊びやすいだけではない、このゲームでしか味わえない深みとジレンマを生み出しているのです。

それに伴ってアクションスペースも単純なリソースを提供する場というだけでなく、より豊潤で多義的な価値を持っています。

例えば次にワーカーが回収される列のアクションスペースは言い換えると「すぐにカードをプレイできるアクションスペース」でもあります。また、同じ列に複数のワーカーを配置するとそのワーカーの回収の際にはカードプレイの機会が同時に複数回訪れるのでリソース管理が難しくなりますし、ワーカーの回収が遠いアクションスペースであれば、カードプレイの機会が遠くなるもののそれまでにリソースを整える準備に時間がかけられるスペースという意味合いも持ちます。


この辺りのカードプレイのタイミングとアクションスペース自体の価値を見積もってワーカー配置を計算する点がこのゲームならではの独特な味わいとなっています。

ワーカープレイスメントは言ってしまえば価値の高いアクションスペースから先に占有していけばいいだけのものなのですが、このゲームでは進行とともにアクションスペースの価値が淀みなく変化していくため、一手一手の最適解がとかく悩ましいものとなっています。しかも資源補充といった手間も省かれている…… めちゃくちゃ合理的で完成度の高いシステムなのです。


◆多様なカードを組み合わせて強力なシナジーを生もう



さて、ゲームには様々なカードが登場します。大きく分けて3種類、3色があり、それぞれカードの特殊能力を起動する方法によって色分けされています。




黄色のカード(明晰)は、ゲーム中1回しか使えないものの強力な効果を持つカードです。これはワーカーを特定のアクションスペースに配置した際に起動することができます。起動後は起動済みマーカーを配置するため、以降は起動できなくなるのですが、カードの中には「黄色のカードから起動済みマーカーを取り除く効果を持つカード」があったりもするので、こうしたカードでコンボを組むと強力な効果を何度も使い倒すことができたりもします。あくどいですね!




ピンクのカード(願望)は、ゲーム中に特定のアクションを選ぶことで起動できるカードです。この時、ピンクのカード1枚を選んで起動するのではなく、すでにプレイ済みのピンクのカードすべてが起動するので、ピンクのカードは出せば出すだけアクション効率がバカ上がりします。様々なシナジー要素を持つゲームではありますが、ピンクのカードはわかりやすく出せば出すだけリターンがあるのでシンプルに強いです。黄色のカードと違ってゲーム中1度だけしか起動できないといった制約もありませんが、その分1枚あたりの効果は控え目となってはいます。




緑のカード(再帰)は、いわゆる永続効果のカードです。「○○した時に××を得る」的な。処理を忘れやすい手合いのカード筆頭とも言えますが、特定の行動にオマケがくっついてくるのが嬉しいですし、特定の行動を連打することで何度もオマケを貰えるので特化戦術のキーカードになることもあります。永続効果のカード同士を組み合わせることで強烈なシナジーを生む場合もあり、これまた色々な悪さのできるカードが揃っています。


とまあ、3種の起動方法の違いから分類されている各カードですが、各カードには上下に分かれた2種類の起動効果が記されています。上段の効果は通常効果でカードをプレイした後に使用できる効果、下段の効果は向上効果でカードをアップグレードすることで使用できる効果となります。

カードをアップグレードするにはメインボードで「物品トークンを獲得」し、それを「物品トークンの配置」アクションでカード上に配置する必要があります。

ちょっと面白いのは、「物品トークンの配置」アクションは手持ちの物品トークンを好きな数だけ配置できるルールになっています。そのため、物品トークンを溜めて溜めて溜めて一気に配置すると手番効率がいいのですが、カードを素早くアップグレードすれば強力な効果を使い倒せるメリットもあるので、この辺りのアクセルの踏み方もまた問われる作りになっています。


◆戦略性とバランスの妙が光る、工夫と悩みどころ満載の本格派ワーカープレイスメント

とまあ、様々な効果を持つカードが手札に色々とあるのでアレも出したい、コレも出したい、となるのですが、先述の通りにカードプレイの機会が限られるゲームなだけにゲーム全編を通して悩ましさが続くゲームです。カード効果は乗りこなし甲斐があるものが多いので、堅実なワーカープレイスメントと派手なタブロービルドがうまく噛み合った実にバランスのいいゲームになっていると言えます。ゲーム終盤はプレイヤー全員がコンボを悪用した何らかの悪さをしでかしているのでベスト悪さ選手権といった様相を呈したりもします。


先述の通り、誰かがカードを12枚分プレイしたところでゲームは終了します。最終的な得点計算としてはカードが持つ基礎的な得点にカードに配置された物品トークンが1枚につき1点となります。あとは余ったリソースがちょちょっと得点にもなり。

カード1枚の持つ点数が3〜6点なので、物品トークン1枚1点はかなり優秀な得点源です。ただ、物品トークンを数多く置くためにはプラットフォームとなるカードが必要なので、やはりカードをより多くプレイしたプレイヤーが勝利に近づくという基本線は変わりません。

トータルではリソース、カード、得点トークンをどのように集め、どのようにプレイしていくか、様々な要素をバランスよく扱うマネジメント性の巧拙を求められるゲームとなっています。


プレイ人数幅について言えば対応人数は2‐4人となっていて、最近のゲームとしては珍しくソロプレイルールがありません。基本的にワーカープレイスメントは人数が多いほどアクションスペースの取り合いが激しくなり、タブロービルドは人数が少ないほどダウンタイムが少なくなって自分の手元に集中できる、といった向きがありますが、その原則はこのゲームにも当てはまります。

そのため、人数が多ければワーカープレイスメントならではのアクション選択肢の良し悪しを競う成分が強くなり、人数が少なくなれば自分の手元のシナジー要素の組み立て方が重要になります。そうしたグラデーションはあるにせよ人数によって大幅にゲーム性が大きく変わることはないため、何人で遊んでも安定して楽しめる内容と言えるでしょう。


長所だけでなく短所もお伝えするのであれば、カード効果はすべてテキストなので、それらを把握するのがちょっと大変という点でしょうか。ゲーム中は6枚のカードが場に並んでいて、それらの中から最適な1枚を選び取る場面も多く、それらのカード効果を読み解くには少し慣れが必要です。ゲーム用語もまあまあ出てきます(よくある質問として「ワーカーを使ってオナイロスフィアでリソースを取った場合〜」は、書いてある通りワーカーを使った配置アクションのみ起動して、「サイクルトラックアクション」は、メインボード上部のトラックにあるアクションを指します)。


こういうカードです


また、物品トークンが大きくテキストが隠れることがあったり、リソースを管理するリソースマーカーがズレやすかったりと、プロダクト面で不便を感じる箇所が目に付くこともあります。この辺りもね、遊びやすさを追求して貰えればよかったんですけどもね。

そうした遊びにくさ、気持ち悪さ、みたいなものが滲み出てはいるにしても、そうした欠点を無視できるほどの面白さがあるゲームなのでこれは日本語版を出版した方がいいよなー、と、確信できたタイトルではあります。


また、日本語版ではプロモカード6種が最初から同梱されています。ちょっとクセのある効果を持つカードではありますが、こうしたゲームでカードプールが増えるのは単純に嬉しいよねと思って同梱としました。


テキストが多い!


そう言えば、日本語版では箱絵を原版から改めています。原版ではかなりサイバーパンク感が強かったので日本語版ではその辺りをやや柔らかく改めています。欧米の方はこういう方がクールでいいんでしょうけどね。日本人の好みとしてはやや色味がキツいかなと。皆さんに気に入って貰えると嬉しいのですが、さて、どうでしょうか。




ゲームマーケットではイベント価格5000円にてご提供します。オペレーションの都合できりのいい価格にしているのですが、これだと希望小売価格より高い値段でのご提供となってしまうため、ゲムマでの販売に限り特別に専用のスリーブをおつけします。

カードサイズが「世界の七不思議」と同サイズのため、専門店などに行かないと調達しづらいタイプのスリーブです。入手困難な部類ではないですが、まあ、ゲムマでご購入頂くとシンプルにオトクだと思います。


ネオドリームズ



プレイ人数:2-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:30-60分

ゲームデザイン:Ivan Lashin
アートワーク:Nick Gerts, Evgeny Zubkov
希望小売価格:4950円(税込)
posted by 円卓P at 11:58| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする