2022年01月18日

ゲーム紹介「ウォーターゲート」



 数寄ゲームズはマティアス・クラマーの2人用ゲーム「ウォーターゲート」の日本語版を発売します。プレイ人数2人、対象年齢12歳以上、プレイ時間30-60分で、小売希望価格は税込4290円となります。

 発売日は1月25日で、1月19日から数寄ゲームズ通販サイトでの先行予約を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。また、数寄ゲームズ通販サイトでは特殊サイズとなるウォーターゲート専用スリーブを加えた特別セットを税込4510円にて販売します。


 「ウォーターゲート」は、「グレンモア」「ロココ」などのゲーマーズゲームで知られるゲームデザイナー、マティアス・クラマーの手による2人用ゲームです。

 前述の作品からユーロ本流のデザイナーとして知られているマティアス・クラマーですが、若い頃はジャーナリストを志していたそうで社会的、歴史的な分野にも関心が高く、それらをテーマにしたゲームには目がないという側面もあります。そのため、濃厚なテーマを備えたこの「ウォーターゲート」はまさに氏にとって念願の一作なのかもしれません。

◆遊びやすい2人専用の非対称カードドリブンゲーム



 表題の「ウォーターゲート」は、1970年代のアメリカで起きた歴史的疑獄事件を指します。アメリカ大統領の中で唯一、任期中に存命のまま辞任したニクソン元大統領の一大スキャンダル事件をテーマに据え、プレイヤーは「ニクソン大統領の不正を暴く新聞編集者」と「ジャーナリストからの追求を躱して任期の終了まで逃げ延びるニクソン陣営」に分かれてそれぞれの勝利条件の達成を目指します。


 ゲームのメイン要素となる各種カードはウォーターゲート事件に纏わる人物やイベントをカード化したものとなっていて、プレイヤーは新聞記者やニクソンの立場を追体験することができます。


 それぞれが異なるカードデックを用い、それぞれが異なる勝利条件の達成を目指す非対称型の2人用カードドリブンゲームという点がこのゲームの大きな特徴の一つです。こうした非対称2人型のカードドリブンゲームは「トワイライトストラグル」「1960:大統領になる方法」などの歴史的な名作も数多いのですが、とかく重厚になりがちなこの手のジャンルのゲームを30-60分という手頃な時間に纏め上げたところがこのゲームの白眉な点と言えるでしょう。というか、実際60分もかからないんじゃないかな……

 ルールは枝葉も少なくスッキリしていて、重厚なテーマからは想像もつかないようなプレイ感の軽さも特徴です。各ラウンドで各プレイヤーは4枚ないし5枚の手札を持ち、交互に手番としてカードを1枚ずつプレイしていくのですが、カードドローのタイミングはラウンドの冒頭だけなので、どのカードをどの順番でプレイするかに焦点が絞られています。ラウンド途中にカードドローを行わないので、頻繁な路線変更が発生せず、結果としてそのラウンドで果たすべき目標の達成に集中できるんですね。

 全てのカードはオールユニークでそれぞれ異なる効果を持ち、テキスト量も決して少ないゲームではありません。それでもユーロゲームの範囲に収まっているところに、ユーロゲームデザイナーとしての氏の力量が垣間見えます。カードドリブンというシステム自体は確固としたウォーゲームの血筋なのですが、遊びやすさはぼく達の知るユーロゲームなのです。

 また、テーマ性の豊かなゲームではありますが、元となるウォーターゲート事件を知らないと楽しさが半減するタイプのゲームではありません。ここもウォーゲームの匂いを薄めている点かなと思います。

 スキャンダルを暴こうとする新聞記者とそれを妨害しようとする大統領という対立構図さえわかっていれば前提知識としては十分だと思います。真実を突き止めようとするも権力に押しつぶされそうになる正義の新聞記者のドキドキ感と、全能の立場でありながら蟻の一穴に怯える悪の大統領のハラハラする立場を体感できるゲームと言えましょう。


◆勝利条件と各種トークン


 ゲームのメインとなるのは様々な要素の綱引きです。ゲーム中にはニクソン大統領と情報提供者の関係性を示す「証拠トークン」、ニクソン大統領の勝利条件に繋がる「勢力トークン」、次のラウンドで様々な優位をもたらす「イニシアチブトークン」の3つの要素があり、これらをカードプレイによって奪い合います。2人で遊ぶ競りゲームという表現もできるかもしれません。


 中でも最も重要なのは「証拠トークン」です。証拠トークンにはニクソンの資金源を示す青のトークン、ウォーターゲートビルの図面を示す黄色のトークン、ホワイトハウスでの録音テープを示す緑のトークンの3色があり、ゲーム中は両陣営ともにこれらの証拠トークンの獲得を目指します。


 編集者が獲得した証拠トークンはゲームのメインボードとなる証拠ボードに置かれます。この証拠トークンを介して情報提供者とニクソンを繋げることができれば、ニクソンとその情報提供者の関係を証明したということになります。
 最終的に編集者は2人以上の情報提供者とニクソンを繋げることでゲームに勝利します。



 一方でニクソンが獲得した証拠トークンも同様に証拠ボードに置かれます。しかしながら、編集者と異なり、ニクソンが獲得した証拠トークンは裏向きでボード上に置かれます。この裏向きの証拠トークンは編集者の調査をブロックする働きがあり、ニクソンは情報提供者と自身の関係を断つような形で証拠トークンを置いていくことになります。


 従って編集者は、ニクソンと情報提供者を繋げるように証拠トークンを置き、ニクソンはその繋がりを断つように証拠トークンを置くことになります。証拠ボード上ではこのような形で激しい攻防が展開されます。


 証拠のやり取りで守勢に回るニクソンは、一方で勝利を収めるために「勢力トークン」を集める必要があります。ニクソンが5個の勢力トークンを集めると、即座にニクソンがゲームに勝利します。



 ニクソンの勝利条件である勢力トークンは編集者にとってはさほど重要ではないのですが、編集者がこれを集めると特殊な効果を使用できます。中には強力な効果も含まれているので、一発逆転を狙えるかもしれません。


 最後の「イニシアチブトークン」は、直接勝敗には関与しないものの、これもまた重要な要素です。このイニシアチブトークンを得ることで、プレイヤーは次ラウンドで2つの大きな利点を得ることができるのです。

 1つ目はカードを相手より1枚多くプレイすることができること。イニシアチブを持つプレイヤーは5枚のカードを、一方のプレイヤーは4枚のカードをプレイします。1枚のカード効果が強力なゲームなので、この1枚の差は大きく影響をもたらします。

 2つ目はラウンドの最後にカードをプレイすることができること。特殊な例を除き、最後のカードをプレイするのはイニシアチブを持つプレイヤーです。相手の動きを見てからの後出しができるので対戦相手にプレッシャーを与えることができます。

 また、細かいところでは、このラウンドで獲得した証拠トークンをどちらが先に置くかもイニシアチブによって決まります。両者にとってどうしても置きたいポイントを先に制することができれば、より勝利に近づくことでしょう。


◆カードには2つの使い道

 各ラウンドでは前述の3つの要素を綱引きします。そこで大きな役割を果たすのが両者の持つカードです。


 ラウンドの開始時にイニシアチブを持つプレイヤーは5枚のカードを、もう一方のプレイヤーは4枚のカードをそれぞれのデックから引きます。特殊な例を除いて、これがこのラウンドで使用できるカードの全てとなります。


 手番にはカード1枚をプレイしてその効果を解決します。カードには2つの使い道があります。



 1つはカードの左肩にある数値パートを使用する方法です。これによってカードに描かれている色の証拠トークンを自分の側に数値分だけ引き寄せることができます(証拠トラック上にあれば)。もしくは証拠トークンではなく、勢力トークンやイニシアチブトークンを引き寄せることもできます。


 もう1つは、カードのテキスト効果、アクションパートを利用する方法です。このテキスト効果こそがこのゲームの醍醐味と言っていいでしょう。

 アクションパートを使用することでプレイヤーは様々な効果を発動させることができます。単純に各種トークンを動かすような効果に始まり、ルールを逸脱するような効果まであり、勝敗に大きな影響を与えます。

 しかしながら、デックの大半を占める多くのカードは、アクションパートを使用することでゲームから取り除かれてしまうため、ゲーム中1度だけしかテキスト効果を使用することができません。強力なアクションパートをここで使うか、それとも次の機会まで取っておくかという判断をプレイヤーは求められます。


 ちなみに両陣営はそれぞれ個別の20枚のカードからなるデックを持っています。デックが尽きると捨札をシャッフルして新しいデックとする…… まあ、デック構築ゲーム的な処理を行うのですが、ゲーム中に新しいカードがデックに加わることはないため、ゲームを通してデックの圧縮を続けていくゲームという形になります。


 こうして、各プレイヤーは1枚ずつカードをプレイし、両者の手札がなくなった時点でそのラウンドの決算を行います。自分の側に引き寄せているトークンがあればそれを獲得し、次のラウンドの準備を行います。

 こうしてどちらかが勝利条件を満たすまでラウンドを繰り返します。


◆ユーロとウォーの芸術的混交。マティアス・クラマーの新たな側面

 マティアス・クラマーの著名な諸作と比べると、このゲームはかなり特殊な位置にあるゲームのように思えます。

 まず、なんと言ってもテキスト効果満載の2人用テーマチックゲームというのはウォーゲームの本流であって、ユーロの本流を歩む氏の作風からすると極めて異質な存在です。実際ゲームをプレイしてみても、カード効果には強烈なインパクトがあります。ユーロらしいジャブから互いのリーチを測る緻密な攻防というよりは、ミサイル発射で一撃離脱するアクロバチックな空中戦じみたハデハデしさがあります。

 この辺りはかなりアメリカナイズされているので、マティアス・クラマーのゲーム、という態度で挑むと驚きを覚えることでしょう。プレイフィールはTCGのそれにも近いかもしれません。

 また、人によってはこのダイナミックさは大味に感じられるかもしれません。本格的な攻防、意図の読み合いが生まれるのはカードプールを双方が理解してからというハードルの高さは感じます。お互い操作を理解してからようやく駆け引きが生まれる格闘ゲームのような。


 しかしながら、カード効果やその取扱はウォーゲームやTCGなどアメリカンな色合いを持ちつつも、ゲームの要となる綱引きや証拠トークンの配置と妨害は厳然たるユーロゲーム、古典ゲームの文脈上にあって、極めて抽象化されています。それがテキストモリモリの内容ながら遊びやすさに貢献していて、この辺りのバランス感覚というか、取捨選択の妙味はやはりユニークと言わざるを得ません。


 驚きなのはシステムとテーマの融和性の高さで、本質的にはアブストラクトチックなゲームシステムにも関わらず、まったく違和感なくウォーターゲート事件というガワを被せているところなんですよね。これはテーマとシステム、果たしてどちらが先に来たゲームなのか、ちょっと計りかねるくらいピタッとハマっているんですよね。


 テーマの特殊性を考えるとやはりテーマ先行のゲームデザインだとは思うんですが、それにしてもテーマ先行のゲームにありがちな言い訳がましさ、ぎこちなさを感じさせない点に作者の非凡さを感じさせます。これまでの氏のゲームではあんまりテーマへの関心とかって感じなかったんですけどね……


 しかし、これが氏の本領なんでしょうか、最新のゲームはこれまた政治色の強い「Weimar - The Fight for Democracy」というゲームです。ワイマール憲法ですよ。ただ、もうこれは完璧にウォーゲームっぽいんですよね。


◆ウォーゲーム由来の充実したフレーバー

 ところで、このゲームのルールブックは全24ページあります。これは2時間級のボードゲームに匹敵する結構なボリュームです。

 しかしながら、実際のゲームルールの記述はそのうち10ページだけです。ゲーム自体はさほど複雑な内容ではありません。


 では、残りの14ページはなんなのかというと、ウォーターゲート事件の解説や登場人物の解説に紙幅がみっちりと充てられているのです。これを読むだけでもちょっとしたウォーターゲート通になれるような分量です。



 しかしながら、ゲームプレイ自体には全く関係のない内容なので、ゲーム準備としてこれを読む必要はありません。人物紹介の中にはカードの注記なども書かれているのでこれに目を通しておくと便利かもというくらいでしょうか。

 ゲームを遊んでみて、ウォーターゲート事件に興味が湧いたり、登場人物がどのような役割を果たしたのかを知る上で役立つ内容と言えるでしょう。


 ウォーゲームはユーロゲームに比べてヒストリカルな側面を重視する傾向にあり、これもその流れを組むものなのでしょう。この辺りも、やはり、このゲームがユーロとウォーのハイブリッドな存在であることを示しています。

 また、各カードにも印象的なフレーバーテキストが記載されていて、ウォーターゲート事件に纏わる当時の雰囲気を如実に醸し出しています。

 写真もフレーバーも味のあるゴードン・リディ。


◆海外で高評価を得た2人用ゲーム

 ゲーム自体の内容からはやや離れますが、このゲームが2019年のゴールデンギーク賞2人ゲーム部門の勝者となった点は見逃せないでしょう。2019年の2人用ゲーム部門はハイレベルなゲームが集まった年で、最終的な勝敗を「ウォーターゲート」と「Blitzkrieg!」と「Undaunted: Normandy / 不屈のノルマンディ」の3作が争いました。

 このうち、「Blitzkrieg!」は遊びやすいユーロ/ウォーゲームという「ウォーターゲート」の同軸のコンセプトで好評を収め、続編の「Caesar! / カエサル!」が発売されました(日本語版はテンデイズゲームズから販売予定)。また「Undaunted: Normandy / 不屈のノルマンディ」もこれまた高評価を得て、続く2作目の「Undaunted: North Africa」が2020年のゴールデンギーク賞2人用ゲーム部門を受賞しています。出世魚だらけのアワードなんですね。

 面白いのはこの年の最終3作がどれもユーロ/ウォーの両性格を併せ持つ点で、システムとテーマの両方を備えたハイブリッドなゲームが2人用ゲームの最前線であることを示してもいます。まあ、これはゴールデンギーク賞の性格、BGGの参加者の性格によるところも大きいのですが、やはりどのゲームも見過ごせない存在であることには間違いありません。

 これら3作は、プレイヤーの好みによってそれぞれベストが変わるようなハイレベルなゲーム群なので、自分にとってどれが最高の一作かを遊び比べてみるのも面白いでしょうね。


◆「ウォーターゲート」日本語版を出版する意味

 ともあれ、結果としてこのゲームはウォーゲーム由来の豊かなテーマ性と、ユーロゲーム由来の洗練されたプレイアビリティを備えた極めてモダンな存在として結実しました。その辺りが世界的な評価を得た理由であることは間違いないでしょう。


 テーマとして取り上げられたウォーターゲート事件は現代にあっても、アメリカでの各種疑獄に対してオバマゲート、ロシアゲートという言葉が造語されるくらいに大きなインパクトを残した事件でもありました(ところでウォーターゲートという名前は事件の舞台となったウォーターゲートビルがその由来で、ゲートという単語自体に何かしらの意味があるワケではありません)。

 ただ、事件そのものは50年前の出来事ということもあり、若い人はその名前すら知らないかもしれません。ぼくも名前だけは聞いたことがある、程度の関心でしたし。


 まあ、アメリカでは関心を呼ぶテーマではあるでしょう。ただ、翻って「それが日本ではどうか?」というと、やはりあまり耳目を集めるテーマではないと思います。

 その辺りが、名作と言われながらも日本語版の出版がなかなか進まなかった理由の一つかもしれません。


 今回、数寄ゲームズは縁があってこのゲームの日本語版出版に携わることになりましたが、Frosted Gamesから出版を持ちかけられた際には上記の理由からやはり判断に悩みました。プレイヤーの対象が絞られるテーマ選択とプレイ人数の幅を考えると扱いの難しい商品であることに間違いはありません。


 それでも最終的に出版を決断したのは、ゲーム自体の面白さに惹かれたというか、ぼく自身が日本語版が欲しいなと思ってしまったところに尽きると思います。ぼく自身は極めて平凡な人間なので、ぼくが欲しいと思うゲームなら同じような人もいるだろうという帰納的解釈です。

 やっぱり自分の欲望こそが一番信じられると言いますか、微々たるものかもしれませんが地に足のついた確かな需要だと思うんですよね。


 本質的には喜んで貰える人の限られるゲームではないかなとは思うのですが、喜んで貰える人にとって唯一無二のゲームであるなら出版する価値があるというか、「出版したらカッコいいだろ!」という伊達と酔狂でやっています。


 ローカライズに際しては翻訳担当の永峯さんに大きなご尽力を頂きました。ありがとうございます。

 カードテキストのみならずルールブックの多量の解説文を網羅するのは相当大変だったと思いますし、テンデイズゲームズから出版された「パックス・パミール2版」と前後した作業だったので、言葉に尽くせないしんどさがあったのではないかと思っています。


 コロナウィルスの影響もあって当初の予定よりスケジュール的にも大きく崩れたプロジェクトではありましたが、ようやく皆様のお手元にお届けできる体制が整いました。


 数寄ゲームズの2022年初の日本語版がこのような尖りまくった作品なのは極めて暗示的だなとも感じるのですが、こうした路線を果たして続けていけるかどうかはこのゲームの人気次第なので、皆様のご判断を仰ぎたいと思います。どうぞご検討頂ければ幸いです!



◆ウォーターゲート事件について知りたい人に

 ゲーム自体とは全く離れてしまうのですが、ウォーターゲート事件に興味を持たれた方や、ざっとしたあらましを知りたいという方にはウォーターゲート事件を題材にした映画をオススメします。発売までに予習しておくのもいいかもしれません。


 1つ目は「大統領の陰謀」。これはゲームにも登場する新聞記者、カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードが著した手記を映画化したものなのですが、2人の若い新聞記者がウォーターゲート事件の調査に乗り出すというドラマで、裁判に至るまでの流れを抑えることができます。

 ドキュメンタリー映画的な内容なので、延々と地道な調査が続き、エンターティメントとして緩急があるかというと地味な内容ではあるのですが、全編に漲る緊張感は一見の価値ありです。

 こちらはAmzon Primeでレンタルできます。

大統領の陰謀


 2つ目は「ザ・シークレットマン」。こちらもゲームに登場するディープスロートという情報提供者を主役に据えた内容です。ディープスロートはホワイトハウスの情勢に通じる人物で新聞記者に極秘情報を提供していました。

 その正体は長年謎に包まれていたのですが、近年になって当時のFBI副長官マーク・フェルトがディープスロートであったことを公表しました。

 この謎の情報提供者の存在がウォーターゲート事件にロマンの華を添えた一面はあるのでしょう。その正体については喧々諤々と論議が交わされたりもしたのです。日本で言えば「坂本龍馬殺害犯は誰か?」みたいな感じかしら。

 この映画では、マーク・フェルトがなぜディープスロートとして権力と対立する道を取ったのか、その裏事情にスポットを当てています。こちらは2017年公開の映画ということもあり、割と今っぽい家族ドラマなんかも盛り込みながらマーク・フェルトの人物像に迫っていきます。

 こちらはAmazon Primeで無料配信できます。ただ、順番としては「大統領の陰謀」を見てからの方がわかりやすいかなーという気はします。

ザ・シークレットマン(吹替版)
字幕版もあり。


ウォーターゲート(2022/原版は2019)

プレイ人数:2人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:30-60分

ゲームデザイン:Matthias Cramer
アートワーク:Klemens Franz, Alfred Viktor Schulz
出版社:Frosted Games / 数寄ゲームズ

小売希望価格:4290円
数寄ゲームズ専売・専用スリーブ付属品:4510円
posted by 円卓P at 10:41| Comment(2) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月05日

ゲーム紹介「プラハ 王国の首都」



◆ゲームマーケット春にて発売予定

 数寄ゲームズは4月10日、11日に開催されるゲームマーケット2021春にてデリシャスゲームズのエッセン新作「プラハ 王国の首都」を販売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間45-150分で、小売希望価格は税込8800円となります。また、前述のゲムマ春ではイベント価格として特別に8500円にてご提供させていただきます。


 「プラハ 王国の首都」は、「アンダーウォーターシティーズ」「パルサー2849」などのゲーマーズゲームで知られるチェコ在住ゲームデザイナー、ウラジミール・スヒィの手による最新鋭のモダンユーロです。カードプレイとワーカープレイスメントを組み合わせた前作「アンダーウォーターシティーズ」から一転、今回はホイールの位置によってコスト/ボーナスの異なる6つのアクションから1つを選択する王道的なゲームエンジンを採用しています。骨組みこそ質実剛健なモダンユーロの文脈に沿った内容ではありますが、随所に作者らしい捻った工夫もあり、凝ったコンポーネントも相まってプレイアビリティも担保された、非常にハイレベルでバランスの取れたゲーマーズゲームとなっています。




◆実力派デザイナー、ウラジミール・スヒィの本領発揮となる三作目

 さて、ゲーム内容そのものに触れる前にまずお伝えしておかなければならないのは、やはりプラハ在住の作者が、そのプラハの名を冠したゲームを手掛けたという意気込みの現れでしょう。曲がりなりにもゲームデザイナーを名乗る人間は、やっぱり自分の生まれ故郷の名前のゲームを一度は作りたいものだと思うんですよね。

 「プラハ 王国の首都」作者のウラジミール・スヒィは、「コードネーム」「スルージエイジス」などで知られるチェコゲームズエディションで数々のゲームをデザインしてきました。その後、彼はゲームデザイン専業で生活していくために独立してデリシャスゲームズを設立します。その端緒となったのが世界中で人気を博した「アンダーウォーターシティーズ」だったのですが、このデリシャスゲームズでのスタートアップは、安定した離陸を望む思いもあったのでしょうか、「置きに行った」というか、少し市場に擦り寄せた雰囲気もあったと個人的には感じています。らしさを敢えて抑えて流行りに乗ったというか。

 とは言え、「アンダーウォーターシティーズ」の結果を踏まえて出版社としての自信をつけ、適切な温度感も掴んだのでしょう、(ファミリーゲームである「Monster Baby Rescue!」を経て)第3作となる本作ではまさに氏の本領発揮となる王道路線のモダンユーロを繰り出してきました。チェコゲームズエディション時代からの氏を知っている人にとっては氏の諸作の文脈を継承する待望の一作であり、最近になって「アンダーウォーターシティーズ」からその名前を知った人にとっては氏の引き出しの広さ、デザインセンスの普遍性を知る一作になるはずです。


◆手番にはホイール上の6つのアクションから1つを選択



 ゲーム中、プレイヤーは手番に、メインボード上のホイールにはめ込まれた6枚のアクションタイルから1枚を選択します。

 このアクションタイルはドミノ状と言いますか、2つのアクションが1セットになっていて、プレイヤーは2つのアクションのうちどちらか1つだけを実行することができます。

 アクションには「金鉱の運営」「石切場の運営」「アクションの改良」「市壁の建設」「建物の建設」「王の道の建設」の6種類があります。

 メインのリソースである黄金と石材を「金鉱の運営」「石切場の運営」で手に入れ、それらを支払って「市壁の建設」「建物の建設」でタイルを購入、得点やボーナスを獲得するのが主な流れです。

 アクションそのものを強化してアクション効率を上げる「アクションの改良」や進み具合によって様々なボーナスが得られる「王の道の建設」は補助的なアクションになりますが、こちらも疎かにはできません。


 基本的にはリソースを稼いで支払って得点に変換するという、極めてストレートな構造のゲームです。その上でこのゲームが一筋縄で行かないのは、アクションを選択するためのホイールがプレイヤー全員で共有されていて、人気のアクションは追加のコストが発生し、不人気のアクションは追加の勝利点が貰えるという、ダッチオークション的な要素をアクション選択に交えているからでしょう。

 これによって「リソースが揃ったから、さあ、次の手番では建設するぞ」と思っていても、手番の直前で目当てのアクションが取られて追加の費用を迫られたり、欲しくなかったアクションがポロリと転がり込んできて突如おいしいアクションに変貌したりと、事前の計画を狂わせるイベントが次々に発生するのです。これがとてつもなく悩ましい!

 冷徹に計画を遂行するか、それとも望外の幸運に乗っかっていくか…… 手元のマネジメントはもちろん、アドリブ性を問われる局面が非常に多く、柔軟な対応能力が終始求められるゲームなのです。


 また、各アクションタイルは選択すると同時にホイール上に紐付けられたボーナスも獲得できるのですが、「こっちのアクションをやりたいけど、ボーナスはあっちが欲しい!」みたいな場面も多く、これがまた悩ましさを生み出しています。特にホイールボーナスは特殊なリソースの「銀の窓」や「卵」が手に入る貴重な機会でもあるので、時にはアクションを我慢してでもこうしたリソースを手に入れなければならない場面も少なくはありません。ジレンマが! ジレンマが多い!


◆どこから手を付ける? 散りばめられた成長要素の数々

 さて、この手のゲームの多くがそうであるように、「プラハ 王国の首都」もアクションの効率を高めたり、永続的な効果を獲得する、成長要素、拡大再生産要素を備えています。

 で、こうしたゲームは初手で「アクションを強化するアクション」を選択するのが得てして正解なパターンが多いのですが、実はこのゲームはそうした成長要素が非常に数多く用意されている点が魅力的なのです。

 例えば、黄金の生産効率を上げる「金鉱の運営」アクションは、うむ、こうしたゲームなら最初に選んで損のないアクションでしょう。であれば、黄金の代わりに石材の生産効率を上げる「石切場の運営」アクションも、これまた最初に選んで損のないアクションに違いありません。いやいや、しかし「アクションの強化」アクションを打てば「金鉱の運営」や「石切場の運営」アクション自体を強化できるのでこっちを先に打つべきかもしれません。いやいや、それよりも早めにリソースを稼いで永続効果の技術タイルを先取りした方がいいかもしれないし、建物タイルを建てれば報酬で別のアクションが打てたりもするので、これを早取りするべきなのではないか……


 知識を高めることで獲得できる知識タイルは永続効果を持つレベル1,2タイルと、追加アクションをもたらす使い切りのレベル3,4タイルがあって、コンボパーツとして有用。欲しい。

 とまあ、このように、成長要素AやらBやらCやらDやらが、まあ色々と用意されていて、どれを成長させるのが果たして正解なのか……と初手から非常に悩ましいワケです。初手を絞らせないゲーム、という点だけでも個人的には非常に評点が高くなるポイントです。


◆濃密で楽しくも短い16手番

 また、悩ましいのは、そうした成長要素をアレコレ取っている暇が実はないということです。このゲームは手番がたった16回しかないので、少ない手数の中で自分が本当に必要な成長要素だけを取り出し、得点に繋げていかなければなりません。

 この手のゲーマーズゲームが平均20回ほどの手番数で構成されていることを考えると、16回という手番数は相当に絞られていますし、実際遊んでみると「何もしてないのにもう半分終わってしまった!」という気分を味わうことすらあります。

 しかし、ゲームの前半は言わば準備期間。成長要素を揃えた後半は歯車が噛み合うような怒涛の展開が訪れます。多くの得点要素は掛け算で構成されていることもあり、後半になるほど加速度的に勝利点が入る仕組みになっています。このコンボ感の演出や爽快感は「おかしな遺言」や「アンダーウォーターシティーズ」でも見せた作者の18番でしょう。

 そうこうしているうちにゲームは終わってしまうのですが、終わってみるとあっという間にフルマラソンを走りきってしまったかのような不思議な爽やかさを味あわせてくれるゲームでもあります。ルールの分量も含めて相当に複雑なゲームを提供されているのは事実なのですが、工夫を凝らしたコンポーネントも相まって軽快な遊びやすさを実現していて、これはある種の奇術なのではないかと思わせるほどです。


◆モダンユーロの進化とは? 複雑化と遊びやすさの両立

 このような所感から「プラハ 王国の首都」は、言わば現在におけるモダンユーロの最進化形態である、と位置づけることができるでしょう。

 モダンユーロの文脈、その進化は、プレイヤーからの2つの要求・命題に沿って発展してきたと言えます。すなわち「より複雑なゲームを」という要求と「より遊びやすいゲームを」という要求です。


 前者の「より複雑なゲームを」という命題は、特に2010年の「Vinhos」辺りから芽生え、昨今、特に顕著に目にするようになったヘビィなモダンユーロの文脈です。この手のゲームの特徴は「手番数が少なく」「1手番辺りの処理量が多い」というもので、1アクションの実行に対して3つ4つといった手続きを持つことが挙げられます。1つあたりのアクションの処理に要する時間が増えるため、プレイ時間のバランスを取るために手番数自体は抑え気味になり、かつ今度は手番数を抑えるために1手に処理を詰め込む必要がある……という鶏と卵のような関係があります。
 「プラハ 王国の首都」もそうした文脈の延長線上にあるゲームであることは間違いなく、1手の選択肢は極めて重く、プレイに大きな影響をもたらします。ゲーマーズゲームの魅力である密度のある硬質な手応えが十分にあるゲームと言えましょう。


 そしてもう一つの進化はコンポーネントのリッチ化による遊びやすさの追求です。この端緒となったのは2012年の「ツォルキン マヤ神聖暦」でしょう(考えてみれば「ツォルキン」製作時にスヒィさんはCGE所属だったので、影響を受けても不思議ではないのかも)。手作業ではあまりに煩雑になりすぎる手続きの数々をコンポーネントの工夫によって自動化する試みが新しいプレイ感を演出してきた歴史があります。



 「プラハ 王国の首都」ではホイールを使ったアクションタイルのコストの管理や、2層プレイヤーボードによる各種リソースの管理など、これまでの歴史で培われてきたモダンユーロの知恵が存分に活かされています。こうした工夫の数々によって、プレイヤーは雑事に追われることなくプレイだけに没頭することができるのです。


 こうしたモダンユーロの2つの大きな文脈を受け継いだ本作は相当に複雑なことを要求されているにも関わらず、それを複雑と感じさせないスマートさも実現してもいて、じゃじゃ馬だけど乗りやすい高級スポーツカーのようなゲームを実現しています。スペック的には「アンダーウォーターシティーズ」と同じか、やや重いくらいでプレイ時間も実際長いんですけども、そこまでの重さを感じさせないというか…… そうした後味の良さも含めて、これは本当に一度試してほしい、と言いたくなる作品なのです。


◆ベテランデザイナー、ウラジミール・スヒィのこれぞ集大成

 また、このゲームには氏の諸作を知る人ならば、「これはあのゲームのエッセンスだな」と感じられる要素が多々あります。例えばメインのメカニクスとなるアクション選択は「Shipyard(2009)」の発展形で、人気のアクションほど割高になり、不人気のアクションにはオマケがつく、という仕組みを踏襲しつつも、よりプレイヤー同士の絡みを誘発し、手詰まりも回避しやすいモダンな仕組みに改められています。またこのメカニクスの別の形の発露が「Monster Baby Rescue!(2019)」と言うこともできるでしょう。

 タイル同士を繋ぎ合わせてアイコン同士を繋げるとボーナスが得られる絵合わせパズル的な要素は「パルサー2849(2017)」から持ってきたものでしょう。過去作では一直線上の列で扱われていたタイル合わせは今作ではヘクスタイルとなってより組み合わせの複雑さを増しており、タイル配置の向きまで悩ませてくれます。

 また、市場に並べられたタイルの交換は「アンダーウォーターシティーズ(2018)」からの援用でしょう。この手の「市場に並べられた3枚のタイルから1枚を取って即座に補充」というシステムはよく見かける仕組みではあるのですが、リソースを支払うことでちょっとだけガチャにチャレンジできるのは射幸心を刺激する楽しい要素です。ぼくはガチャ弱いんでアレですが……


 一方でゲーム自体は全般的に運要素が散りばめられていて、(おそらくは適度な運要素こそが必要だと考えているのでしょう)氏の作品に通底するゲーム哲学も伺えます。そうした点も踏まえると「プラハ 王国の首都」はやはり氏にとっての総決算となる一作と言いますか、一つの歴史の区切りを感じさせるんですね。

 そういう意味でも過去の氏のゲームに触れたことのある人にとって大きく遊ぶ価値のあるゲームですし、このゲームから氏の過去作に立ち戻ってみるのもまた楽しい路程なのではないかと思います。


◆プラハ在住の作者ならではのアートワークとコンポーネントも見どころ

 「プラハ 王国の首都」には特徴的なコンポーネントがいくつもあります。まず目を引くのは立体的な大聖堂と飢餓の壁。言わば2次元の特殊な得点トラックと言いますか、コマを進めることでゲーム終了時に大量の得点を獲得することができる要素です。




 ちなみにこれら立体物は取り外しても問題なく遊べます。

 このうち大聖堂は「聖ヴィート大聖堂」というプラハでも有名な大聖堂を模したものなのですが、「飢餓の壁」はいわゆる見応えのある観光名所とはちょっと違った地元の人間がよく知る謂れのある名所という感じで、この辺りが地元民ならではのチョイスなのかもしれません。

 また立体物としてはボード中央を流れるヴルタヴァ川にかかるカレル橋があります。これも得点に絡む要素の一つなのですが、このカレル橋は建設にあたってモルタルに卵を混ぜたため現在まで一度も崩落していないという伝説があります。ゲームに登場する特殊なリソース、卵はこれに肖ったものなのでしょう。


 2版となる日本語版では、オリジナルの厚紙卵トークンの他、木製の卵コマが付属します。
 ちなみにゲームにはもう一つ特殊なリソースとして「窓」が登場するのですが、これはおそらく「プラハ窓外放擲事件」にちなんでいるのではないかと思われます(知らない人はググってみてください)。



 立体コンポーネントは組立説明書も付属します。



 ゲームの説明書にはプラハの歴史紹介にもページが割かれています。世界で一番美しい街とも言われるプラハへの作者の愛情が見て取れますね。

 先述した通りメインボード上のホイールや、2層式のプレイヤーボードもこれまた凝った仕掛けが施されていて見逃せないコンポーネントです。ゲーム好きなら絶対ワクワクする内容で、工作好きの人はボードの組み立てだけでテンションが上がるかもしれません(ぼくはガチ上がりしました)。ただ、カレル橋は(史実と違って)決壊しやすいので事前に接着剤など用意しておくとよいかもしれません。


◆コロナ禍の一年を乗り越えて……

 去年はコロナ禍に見舞われた激動の一年でした(その余波は今もなお続いているのですが)。ボードゲームもその影響をモロに浴びたジャンルではあって、最も顕著な例は毎年開催されていたエッセンシュピールの開催延期でしょう。

 去年のエッセンシュピールに合わせる形で開発が進められていたゲームの多くもテストプレイ環境の不足などから遅れが生じ、実際に去年のSpiel.digitalの出展作は例年に比べて相当に縮小してしまいました(今年はさらにその影響が色濃く出るのではないかと危惧しています)。

 また、新興の小規模パブリッシャーにとってエッセンシュピールという場は(比較的)公平・公正な広報・販売活動の機会でもあり、そうした場が失われてしまったことはデリシャスゲームズにとって容易ならざる痛手だったことでしょう(ゲムマが開催中止になって一番キツいのは小規模ブースなのと構図としては一緒です)。

 そんな困難な時期にあって、「プラハ 王国の首都」がSpiel.digitalに出展されたのは、ゲーム好きにとって少なからぬ救いになったのではないかと感じています。やはり例年に比べれば寂しさも覚えるラインナップの中で、骨太のゲーマーズゲームが存在することの頼もしさを個人的には感じました。


 その後もコロナは印刷のスケジュールにも影響を及ぼしましたし、それ以上に打撃を与えたのが実は輸送です。最近のゲームは中国で印刷されるものも増えてきたのですが、このゲームは伝統的なユーロゲームの流れからチェコで生産されています。

 チェコは内陸国で、自前の外洋港を持たないため、輸出の窓口となるのはドイツのハンブルグ港になります。そして、そのハンブルグ港は流通の要所であるがためにコロナの影響を直接受けやすい場所でもあって、輸送は生活物資や日用品が優先され、嗜好品であるボードゲームの輸送はなかなか見通しが立たなかったのです。

 加えて全世界的なコンテナの価格高騰…… これもまたコロナの影響の一側面ではありますが、とかくロジスティクスというものは一筋縄ではいきません。実際の製品からは見えないところなので意識されにくいんですが、輸送費はかなり高騰しております。

 ともあれ、想定よりは大分異なる形になりましたが、こうしてなんとか皆様のお手元にゲームをお届けすることができそうで、ひとまず安堵しています。加えて開催が危ぶまれていたゲームマーケットもなんとか開催に漕ぎ着けられそうで、一つ一つ積み上げてきたものがようやく結実しそうな気配があります。

 あとは実際に皆様に遊んでいただいて、待ちわびた分だけの楽しさを味わって貰えればこれに勝るものはありません。ゲームマーケット当日はブース番号「ア18」数寄ゲームズにて販売予定です。




 また、ゲムマ当日はソロプレイBot「ペーター・ハルラー」の日本語ルールとカードを配布する予定なので、どうぞお立ち寄り頂ければ幸いです。「ペーター・ハルラー」は後日このサイトにてデータを公開予定です。
 ゲーム本体にも元からソロプレイルールが付属していますが、こちらはスコアアタックの趣があるルールです。「ペーター・ハルラー」はソロプレイに慣れた人向けの、より対人プレイに寄せたNPCとの対戦ルールという違いがあります。




 もう一つ、日本語版のちょっぴりアピールポイント。写真ではわかりづらいかもしれませんが、箱の芯材が厚くなり、箱の耐久性が高まりました。持ち上げてみると中身がぎっしり詰まって重量感があります。



プラハ 王国の首都(2021/原版は2020)

プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:45-150分

ゲームデザイン:Vladimír Suchý
アートワーク:Milan Vavroň
出版社:Delicious Games / 数寄ゲームズ

小売希望価格:8800円(イベント特価8500円)
posted by 円卓P at 11:34| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月18日

ゲーム紹介「Minigolf Designer / ミニゴルフデザイナー」



 「Minigolf Designer」は、ミニチュアゴルフ(パターゴルフ)のコースデザイナーとなり、クライアント夫妻の要望を基に最高のゴルフコースをデザインするゲームです。出版社は新興のThematic Games、作者はこれがデビュー作となるAlban Nantyと、良くも悪くも未知数なタイトルながら、ユニークなテーマと遊びやすい内容で要注目な作品となっています。

◆ボードゲーム版「シムゴルフ」を遊びたかった!

 のっけから極めて個人的な話で申し訳ないのですが、ぼくは2001年に発売されたPCゲーム「シムゴルフ」が大好きでして、ゴルフコース作成ゲーム、めちゃくちゃ遊びたかったのです。
 「シムゴルフ」はその名前からも分かる通り、「シムシティ」などで知られるシムシリーズの一作で、これまた想像のつく通りのゴルフリゾート経営シミュレーションとなっています。自由にコースをエディットできるので、プロゴルファー猿もかくやというような攻略不可能じみた難ホールを作ったりできるんですが、そういうホールを作るといつまでもお客さんがホールアウトできず、組が渋滞してコースの評判が下がる! という連鎖が起きるため、ほどよいコースを作ることを求められたりします。

 というかどっちかと言えば、お客さんにはさっさとホールアウトして貰ってコースの回転率を上げるために、600ヤードPAR5のコースで傾斜をめっちゃつけてどこに打ってもボールが延々転がってグリーンにワンオンするような北の将軍様接待ホールみたいなのばっかり作ってました。
 ともあれ、そんな感じでゴルフコースのエディットゲームは熱い! 遊びたい! とは日頃から思っていまして。どうにかボドゲでそれが実現できないものかと一人妄想もしてたので、このゲームを知ったときにはもう「マストバイ!」という気分でした。
 ちなみにトンデモゴルフカードゲーム「グリーン」も、ぼくは大好きです。



◆自分だけのゴルフコースをデザインするタイル配置ゲーム

 話を戻して「Minigolf Designer」は、タイル置き場から手番順に1枚ずつタイルを取り、自分のレイアウトに配置してゴルフコースの完成を目指すタイル配置ゲームです。
 ゲームのセットアップで配られる「土地カード」を元にコースレイアウトを決めるのですが、「限られた区画内で9ホールを作らなければならない」「ホールのグリーンと次のホールのティーはなるべく接続させたい」「土地は全部埋めなければならない」「各ホールの打数は3〜5に収めたい」「コース全体の打数は36打ピッタリにしたい」といったゴルフならではの縛りがよく効いていて、場当たり的にタイルを選択するのではなく、ホールの全体像をざっくり脳内で描いてコースを拡張しつつ時には修正する、という流れがよくできているんですよね。

 また、こうしたタイル配置ゲームでは基本的に1辺が接するようにタイルを配置することが多いのですが、このゲームでは「タイル同士が角で隣接するような配置もOK」という「ブロックス」的な配置もできて、これによって先を見越したタイル選択も重要なのがよくできています。
 とは言え、タイル同士は「カルカソンヌ」のように矛盾のない模様の接続が必要なので、こうした「斜め置き」は将来の待ちを狭めるリスクを持ちます。
 この手のゲームのキモとして終盤ほどタイル配置の選択肢は狭まるので将来のリスクはなるべく抑えたいのですが、なにせこのゲームはゴルフ場を作るゲームです。つまり、十分な数のティーとグリーンが必ず必要になります! 「今はティーいらないんだけど、絶対後で使うから取っとかなきゃ……!」みたいなジレンマにプレイヤーは終始悩まされることになります。
 タイル配置のルールはシンプルでわかりやすく、かつテーマに沿った内容で呑み込みやすいのが◎。ゲームにテーマを乗せる一番の理由かつ効能は、すなわち「ルールを咀嚼しやすくすること」なんですが、このゲームはそこが実に気持ちよく作られています。それでいて、タイルの都合でティーとグリーンだけしかないパー2のホールなんかもできちゃったりして、リアルさとありえなさのバランスもよくできています。

 ゲームは誰かがコースを完成させたところで終了トリガーが引かれ、全員がコースを完成させるか設計中止したところでゲームが終了します。
 最終的な得点計算として、「人気度」「完成速度」「クライアント夫人の要望」「クライアントの要望」「難易度」「土地活用度」「快適度」「可用性」の各項目を採点して、最も満足ポイントを稼いだプレイヤーが勝者となります。
 上級者向けのアドバンスルールでは各項目でマジョリティを競う契約の要素が加わり、より尖ったコースデザインを求められます。

◆「キングドミノ」から、さらに一歩踏み込んだタイルドラフト

 コースデザインに使用するタイルは、それぞれ裏面に数字が書かれていてタイル置き場に昇順に並んでいます。プレイヤーがタイルを選択すると同時にコマを置くことで次のラウンドの手番順も決まり……
 もうここまで言えばこのブログを読んでいる方には説明は不要でしょう。そう、このゲームでは「キングドミノ」のタイルドラフトシステムを採用しています。

 実は「キングドミノ」のあのルール、めちゃくちゃ管理が面倒な変則手番順システムを誰でも遊べるように簡潔明瞭に表現したエポックな仕組みではありまして、個人的に物凄く高く評価しているメカニクスです。「Minigolf Designer」もやっていることは同じなんですが、キックスターターのゲーム特有のリッチなコンポーネント仕様で、「キングドミノ」にはできなかった「あること」を実現しています。
 それがベルトコンベア式タイル補充システム(勝手に命名)です。「Minigolf Designer」にはタイル置き場となるボードが3枚用意されており、これらがベルトコンベア式に入れ替わることによって実にストレスなくタイルを取っていけるんですね。

 「キングドミノ」ってタイルの「選択」と「獲得」にはタイムラグがあって、それが「キングドミノ」特有の滑らかさと言いますか、一手と一手の繋がりを生み出しているんですが、王様コマの下にあるタイルを取るのではなく、これから王様コマを置くタイルを誤って取ってしまうことがあるんですよね。反復横跳びのUIが混乱を招きやすいというか。
 それを完全に解消するためにはタイル置き場を3つ用意して、それらをぐるぐる利用することではないか…… とは、ぼくも考えていたんですけども、コンポーネントが大掛かりになってしまって、現実的ではないなとも思っていたのです。このゲームではそれを実現してタイルの「選択」と「獲得」をタイムラグなく行えるので、個人的には「やるな!」と快哉を叫びたいです。

 また、システムこそ「キングドミノ」に倣ってはいますが、当然ながらタイルの形状はドミノ型ではないのでプレイフィールは異なります。「キングドミノ」は訪れる未来を取捨選択するゲームと言いますか、様々な方向に伸びるはずだった未来から状況に応じて最適な選択肢を選び取って一つの結果に収束させるゲームなんですけども、「Minigolf Designer」は、(おぼろげながら)理想的な未来が最初に提示されていて、タイル運に翻弄されつつもそれに向かってなんとか進んでいく風情があります。

 手番には「タイルを獲得する」以外の選択肢として「パスを行う」という選択肢もあり、これはこの手番でのタイル獲得を完全に諦める代わりに次の手番順を最速にするというオプションで、これによって手番順の変動がよりダイナミックになるとともに「本当にいらないタイルならパスしてもいい」という割り切りができてストレスレスです。単純に「キングドミノ」を引用するのではなく、結構な研究の跡が窺えます。

 結果として、コースが完成した時は、結構思った通りのコースデザインになってます。こういうゲームって「作ってみて実際にそれっぽいコースになるの?」という懸念があるとは思うんですが、いや、これがちゃんとしたコースになるんですよ。ちゃんと作れば。

◆ミニゴルフというテーマ選択の鋭さに着目!

 Thematic Gamesという名前からも分かる通り、ぶっ刺さるテーマ選択(主にぼくに)に全振りしてきたこの出版社ですが、タダのイロモノではなく、実は合理的なコンセプトデザインが垣間見えます。
 まず、テーマが「ゴルフ」ではなく「ミニゴルフ」であること。これは以下のような利点があります。

・9ホール作るだけでいい省力設計
 ゴルフコースは18ホールで構成されているため、もしこれを完全に再現しようとしたら素直に面倒です(手数がめちゃ多くなるし、時間も伸びる……)。ミニゴルフコースは半分の9ホールで構成されているため、コースエディットを楽しむボリュームとしてはいい落とし所です。
 もちろん「ゲームだから」という理由でホール数を減らすことはできるんですけども、なんかそれだとテーマ性としてはどうなのよ、という話にもなるのです。この点をクリアしているのは大きな加点です。

・ゴルフコースのデザインにバラエティがある
 「Minigolf Designer」ではホールを構成するタイルは赤の「通路」と緑の「コース外」に分けられています。この色味の区分けがグッド!
 普通にゴルフコースを作ろうとすると盤面が緑一色に染まってしまい、見た目の面白さに欠ける上にプレイアビリティ的にも不都合があります。
 またミニゴルフならではのマリオゴルフじみた障害物の数々は「そんなんアリ!?」とツッコミ甲斐もあり、完成時には見た目にも面白いコースができあがって満足感があります。

・グリーンの扱いが合理的
 ゴルフコースに必ず必要なのがティーとグリーンです。そしてこの両者は必ず1対1で結びついている必要があります。
 その上で、ゴルフコースって必ずフェアウェイとグリーンが繋がっているワケではないので、この1対1の結びつきを手間なく表現するのって結構難しかったりします。孤島にあるあのグリーンは果たして何番ホールのグリーンなのか…… というような。
 ミニゴルフの場合、ティーとグリーンは通路で必ず繋がっているので、その結びつきが明瞭です。パッと見にも流れを追いやすくジオラマ感が味わえます。

 また、そもそもが「ゴルファーとしてコースを巡るゲーム」ではなく、「ゴルフコースをエディットするゲーム」というコンセプト自体が面白いですよね。「スポーツゲームに当たりなし」とはボードゲームではよく言われる言葉で、これはスポーツの持つ躍動感やスピード感、派手さといったものを静的なボードゲームでは表現しづらく、よって相性が悪いという話ではあるんですが、このゲームはコースデザイン自体をゲームの主眼に据えることで、そうしたスポーツの呪縛からうまく逃れています。

◆テーマも相まって誰でも遊べる楽しいゲーム

 スポーツを題材にしたゲームと言えば、数寄ゲームズで扱っている「タイムオブサッカー」もありますが、あちらはサッカー好きが作ったちょっとネジのハズれたゲーマーズゲーム(だがそれがいい)なのに対して、こちらは家族で遊ぶことを相当に意識したモダンなファミリーゲームに仕上がっています。
 言い換えれば、ゲーマーが喜ぶような斬新なシステムやルールには欠けますし、一手に様々な深慮遠謀を塗り込んで相手の急所を狙い撃つ戦略ゲーならではの重厚さや重苦しさもありません。どっちかと言えば、わんこそばのようなリズムよく手番が進んでいくタイプのゲームです。

 それでいて手応えがスカスカしているかと言えばそんなことはなく、時にリスクを取って将来に必要なタイルを取らなければなりませんし、「このタイル、1手番後なら取れたのに!」と叫ばずに済むようなマネジメント、待ちの広さを意識したプレイングも要求されます。タイル引きの運要素はありながら、結果的にうまく進められた人が勝つ、運と実力のバランスがすごく整ったゲームだと感じています。

 そんなワケで普段からスプロッターとかシュピールヴォルクスのゲームばっかりやってるスレきったゲーマー以外には全力でオススメしたい「Minigolf Designer」。テーマ、コンポーネント、システムがハイレベルで揃ったゲームで(あ、でも、アートは賛否両論あるかもしれないヘタウマ感はあり。ぼくは好きだけど)、買って遊んで損のないゲームだと思います。
 今年もこんな感じで唐突に和訳付き輸入ゲームを紹介していきたいと思っていますが、2021年一発目のサプライズとなる本作をぜひお試し頂ければ幸いです。
ラベル:Minigolf Designer
posted by 円卓P at 22:45| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゲーム紹介「アクアティカ:氷海」



◆まずは「アクアティカ」の紹介を

 2019年のエッセンシュピールで発表された「アクアティカ」は、「手番に1枚のカードをプレイするだけ」というシンプルな手続きと、「マンタトークンやロケーションカードを利用したフリーアクションの組み合わせ」でコンボ性を演出する華やかさがマッチした極めて現代的なゲームとして注目を集めました。

 発売元は「スマートフォン株式会社」で一躍その名を知られることになったロシアのCosmodrome Gamesで、「アクアティカ」自体は現在7カ国で流通している人気作です(ポーランドのPotal GamesとかイタリアのCranio Creationsとかが扱ってる)。
 また、「スマートフォン株式会社」は、全面2層レイヤーボードという大掛かりなコンポーネントが話題となりましたが(折り畳むと超分厚い!)、こちらの「アクアティカ」も3層レイヤーのプレイヤーボードというこれまた新機軸のコンポーネントを引っさげて登場しました。この3層レイヤーボードは、カードを差し込むことでカードの状態変化をストレスレスに追跡できる点がエポックで、新技術の投入が見た目の変化だけに留まらずプレイアビリティの向上に繋がっている点が特筆に値します。

 そんな野心的な試みを持つ「アクアティカ」は、発売当初から「最大4人プレイなのに5人プレイ用のスペースがある」など、拡張展開をプンプンと匂わせていていました。野心的というか冒険的というか……
 幸いなことに「アクアティカ」は各国で人気を博し、この拡張展開もポシャらず実現する運びになりました。そうした事情もあり、この度発売される「アクアティカ:氷海」は、まさにファン待望の一作ということになります。

 「アクアティカ」自体の紹介については過去の紹介記事もご覧頂くことで、より深く知ることができるかと思います。
 こちらのプレイ感想もどうぞ。

◆新要素の一番の目玉! 「部族」モジュールとは?

 さて、ここからは具体的に「アクアティカ:氷海」の新要素について触れていきましょう。新登場の「部族」モジュールは、基本ゲームの「目標」モジュールと差し替えて使用する新システムです。

 元の「アクアティカ」には、全員共通の4つの「目標」があり、誰かがその全てを達成することでゲームが終了に向かう仕組みです。基本的にはより早く「目標」を達成することでより多くの勝利点を得ることができるのですが、仕組み自体にゲーム的な駆け引きは薄く、「とにかく早く達成を目指すのが最善」というシンプルな早取りレースではありました。

 初級ルールの目標は普段からボードゲームを嗜んでいる人だと7手番くらいで全部達成できてしまうため、これだけを見て「あっという間に終わってしまうゲーム」という印象を持ってしまう人もいたかもしれません。上級ルールだと攻略に必要な手数は大分増えるんですが、初回の印象に引きずられることはままあるものですよね。
 個人的にはゲームに慣れている人向けには「インストがてらに初級ルールを1回、その後上級ルールを1回遊ぶところまでをワンセット」として遊ぶのをオススメします。まあ、時間があればですけども。



 そして、今回新たに登場する「部族」モジュールは、目標トークンのようにゲーム終了時の得点をもたらすだけでなく、それぞれの「部族」が異なる常時効果/即時効果も与えるゲーマー好みの仕様となっています。「どの部族の効果を軸に戦略を組み立てるか」をゲーム開始時点から模索する、より計画性を求められる作りになりました。



 とても強力、かつ得点も大きい「部族」の雇用は、勝利を目指す上では避けて通れないのですが、実は「目標」ほど気軽にマンタを放り投げられなくなっています。
 というのは、「目標」の達成は言わばフリーアクションのようなもので、本来のメインアクションとは別に手番を消費することなく行えたのですが、部族の「雇用」は(深海シーフォークを雇用するように)1手番をわざわざ使って雇用しなければなりません。
 また、「部族」の雇用では、コインだけでなく、得点化済みのロケーションカードを廃棄することでその得点を仮想コインとして扱える、これまたゲーマー好みの借金めいた仕様があるのですが、これもよくよく考えないと「10点貰える部族を雇用するのに9点を投げてしまった」という事態になりかねません。そのため、基本に比べてコインの価値が上がっているように感じます。

 条件さえ整えば最速で達成が大正義だった目標モジュールに比べて、部族モジュールの活用はかなりテクニカルです。ゲーム終了までの手数も基本的には増加傾向にあり、山札切れによるゲーム終了のみに終了トリガーが絞られました(ちなみに拡張でカード枚数が全般的に増えるのでここも調整が入っています)。
 「部族」モジュールの導入により、ゲームはよりコンボ感が増し、相当にサギ臭い動きができるようになるので、華々しいゲーム展開をお求めの方には特にオススメのモジュールです。一方で勝利への道筋は複雑になるので、基本ゲームのシンプルさがお好みということであれば、今回追加された目標トークンのご利用をオススメします。

 ちなみに部族カードはAとBの2種が10枚ずつあって、1ゲームではAを4種、Bを4種だけしか使わないので、組み合わせのバラエティはかなり豊富ではないかと。それぞれの部族カードもクセのある能力を持っているので、長く楽しめそうです。

◆拡張と言えばこれ! 新カードが続々登場!

 拡張キットと言えば、ゲームプレイをさらに拡充させる新カードの追加がやはり外せません。「アクアティカ」には大きく分けて「海の王」「深海シーフォーク」「ロケーション」の3種のカードがあるのですが、それぞれに新カードが追加されています。



 「海の王」と「深海シーフォーク」を合わせたシーフォークカードでは、新能力の「時間差効果」を持つものが登場します。「時間差効果」は、カードの左側面にテキストが記されているもので、カードプレイ時に通常の効果を行い、さらに捨札の一番上にある時には追加効果を発生させる、一粒で二度おいしいカードです。



 この「時間差効果」は「〇〇する場合、追加の▲▲を得る」といった内容が多いため、カードをプレイする順番がよりパズルチックになります。また、自分の手札を捨てたり、相手の手札を捨てさせたりと言った効果にも深みが生まれることでしょう。まさにそのシナジーを意図した「部族」なんかもあって、「時間差効果」は要注目のカードです。


 部族カード「銀の槌」で時間差効果カードを捨てればエヘヘ……




 「ロケーション」では、5番目の「凍てついた深海」という地形が登場し、5番目のプレイヤーセットのマンタに対応しています。この「凍てついた深海」のロケーションカードには新しい効果として「他人のマンタを1つ疲労させる」「他のロケーションアイコンの効果をコピーして実行する」といったものがあり、特にコピー効果は強力な深海ロケーションアイコンを制約薄めに利用できるので相当に強力です。しかしながら、完全上昇で獲得できるマンタは能力控えめな設定のため、うまくバランスが調整されています。

◆かゆいところに手が届く5人プレイにも対応



 「アクアティカ:氷海」では、基本から予告されていた5人プレイにいよいよ対応します。追加のプレイヤーボード、マンタやカードなど用具一式が追加されていて、より幅広いシーンで遊べるようになりました。

 「拡張キットで5人まで遊べるようになります!」という謳い文句、一昔前はよく目にしたものの、最近では却って珍しさすらあるようにも思います。全世界的にも「大人数で遊べるゲーム」よりも「少人数で遊べるゲーム」への注力が強いトレンドがあり、5人でも遊べる手応えのあるゲームって割と希少ではないかと思います。
 オープン会だと人数調整の効きやすいゲームは重宝するんですが、このご時世としてはなかなか活かしづらいところはあるかもしれません。ともあれ、そういったゲームをお求めの方にはまさにジャストな一作なのではないかと思います。

 ちなみに新要素の部族モジュールではボードの5人目用の目標スペースを躊躇なく潰しているので、「いやこれ結局後からでも5人対応できたんちゃう?」と思ったりなんだり。

◆基本セットのルール変更にも言及

 今回発売する日本語版の「アクアティカ」「アクアティカ:氷海」は2版となり、去年数寄ゲームズで扱った初版の英語版「Aquatica」から若干ルールが更新されています。「アクアティカ:氷海」では、そうしたルールの変更についても言及されていて、英語版と混ぜて遊ぶことができます。
 基本的にはゲームの高速化を図った内容となっていて、初版英語版と拡張日本語版の組み合わせで特定のコンポーネントが足りないということはありません。むしろ2版になってコンポーネントが減ったくらいなので……
 あと2版の基本セットは目標トークンの内容が若干変わっているんですが、これは部族モジュールを使用するなら特に気にならない内容かと思います。

 あと、2版のルールでは表記が曖昧だった「リソース」と「アクション」の差が明確化されています。これは実際に遊んでいる人でも間違いやすいところなので、念の為にここで触れておきますと、「リソース」は「コインと武力」の2種のアイコンを指します。「アクション」はそれ以外のアイコンです。

 また、「リソース」はメインアクションの最中に使用可能で、逆に言えばそれ以外では利用できません。
 「アクション」はメインアクションの最中には使用できず、メインアクションの前後にフリーアクションとしてのみ使用できます。


 ここだけ抑えておけば「リソース」と「アクション」は問題なく活用できるはずです。メインアクションで購入をする時に、「ロケーションからコインを得て、マンタでそのロケーションを上昇させてもう1回コインを得る」とかはできないから気をつけてね!(※「上昇」は「アクション」なので、メインアクション中には使えないのです)

◆新要素でさらに幅広く遊べるように。日本語版から触れるのもいいタイミング

 というワケで「アクアティカ:氷海」、発表から長らくお待たせしましたが、それだけの価値ある内容をお届けできるかと思います。言うてもリリース速度としては日本語版は世界最速の部類ではありまして、やはり去年はコロナの影響が大きく、Cosmodrome Gamesが予定していた出版物の多くが遅延しているようです。



 また、今回は同時に「アクアティカ」の日本語版もリリースします。なのでこれまで「アクアティカ」を遊んだことがない、という方がこれから触れるにもいいタイミングではないかと思います。

 なにせ「アクアティカ」は、手番にカード1枚をプレイするだけというシンプルさ。そしてリソースとアクションによるコンボの爽快感もあり。つまり、わかりやすくて派手さがある。
 これらは日本市場で特に重宝がられる要素です。1ゲーム30-60分というボリューム感もまたよし。拡張ではさらにリプレイアビリティが拡充され、より長く深く楽しむ余地が広がりました。
 また、全体を貫く幻想的なアートは美麗かつ優雅で、深海の蠱惑的な暗さとその奥深くに眠る光景を色とりどりに表現しています。ロシアのゲームは現代的なボードゲームに求められるアートへの意識が相当に強いように感じます。

 余談になりますが、今回の日本語版では日本語ロゴの作成を「ハリウッドセンセーション」のアートワークで評判の高い坂本奈津希さんに依頼しました。坂本さんは職業柄もあってかボードゲームのアートワークには相当にうるさい人なんですけども、「アクアティカ」のアートワークについては「美麗ですね」と一目を置いていらっしゃいました(ぼくは社交辞令だと思っていたんですけども、後で話を聞いてみたらそれ以上の含意があったようです)。
 正直ぼくはあまりアートワークの選り好みがない人種なので、その「美麗」と「美麗じゃない」一線を画すラインがどこに引かれているのか、まったく見えない方なのですが、それからは、ほう、そういうものなのかー、という角度で見ています。なんとなくわかるようなわからないような。

 話が逸れましたが、そういう意味ではコアからカジュアルまで多くの方に楽しんで貰える、極めてバランスのいいタイトルではないかと思っています。それでいてこのゲームならではのリソースマネジメントのユニークさもあり、このゲームだけの確かな魅力を備えたゲームです。この機会にぜひ触って貰えると嬉しいです。

 以下はゲーム内容とは関係のない蛇足です。「アクアティカ」日本語版を出版する意図などについて。




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2020年11月13日

「ヨーロッパディバイデッド」ってこんなゲーム



◆ウォーとユーロのいいとこ取り! 非対称の2人用デッキ構築ゲーム

 ゲームマーケット秋で先行販売する「ヨーロッパディバイデッド」は2人用のデッキ構築ゲーム。EUとロシア、2つの陣営に分かれて両陣営の間に横たわる中央・東ヨーロッパとコーカサスの支配を巡って争います。

 最も特徴的なポイントは、EU、ロシアの両陣営が全く異なるデッキを持ち、それぞれの立ち回りも異なる点でしょうか。初期デッキからして、EU側は13枚、ロシア側は7枚とカード枚数が違いますし、カードは全てユニークで個別の効果も異なります。

 「経済的に恵まれる国を多く有するものの、デッキが太いため強力なカードの再利用が難しい」EUと、「常に資金不足に悩まされるもののデッキの回転が早く戦力の集中に長ける」ロシアという性格の違いもあります。このような初期条件から戦い方まで異なる非対称の2人用ゲームは、ウォーゲームの得意とする分野と言えましょう。


◆「ヨーロッパディバイデッド」はウォーゲームなの?

 と言っても、多くのボードゲームファンにとってウォーゲームは縁遠いもので、ウォーゲームと聞くだけでどこか身構えてしまうところがあるかもしれません。「ヨーロッパの紛争と言ってもイメージが沸かないし……」という方もいるでしょう。

 しかし、安心してください! このゲームはテーマこそウォーではありますが、ゲームデザインはびっくりするほどユーロ味の濃い内容で、ウォーゲームを知らない人も違和感なく遊べる内容です。ぼく自身も正直なところ、純粋なウォーゲームを遊んだことはないんですが(一番近いところでCOINシリーズの「アンデアンアビス」かな)、相当に遊びやすい内容で面食らいました。


 特筆すべき点はゲーム全体の見通しの良さです。戦闘はダイスを振って勝敗を決めるようなランダム性はなく、互いの軍隊が対消滅するタイプで、戦闘が起きたらどっちが勝つかは明白です。

 運要素は3種のカードのドローに集約されていますが、「あのカードが引けなかったから負けた!」というような理不尽さは極力薄められていて、適度な運要素をもたらすためのカード引きという塩梅です。下手すると2人用アブストラクトになってしまいそうなドライさをやんわりと運要素でウェットに包んでいて、デベロップが行き届いている感じ。この温度感、よいです!


 その上で、ヨーロッパの支配権を巡るハードなテーマを当事者目線で堪能できるのがウォーゲーム由来の魅力でもあって、先日まで戦争してたアルメニアとアゼルバイジャンの仲の悪さがゲーム上で反映されているのを見てニヤニヤしたりできるんですね。

 システムはユーロ、テーマはウォーという異種混交、「最近のユーロはどれも同じに見えるなー」という人には、異文化の香り漂うこの接近は極めて刺激的に感じられると思いますよ!


◆2ラウンドごとの決算。ヘッドラインカードのシステムにシビれる!

 このゲームにはあまりユーロでは見たことのないメカニクスが盛り込まれているのですが、特にぼくが一番感銘を覚えたのが「ヘッドラインカード」を巡る駆け引きです。



 ヘッドラインカードは得点とその獲得条件が記されたカード群で、例えば「決算時、バルト三国でNATOの影響力がロシアよりも強く、NATO軍が駐留していればEUプレイヤーは2点を得る」的なことが書かれています。

 ヘッドラインカードにはEUの得点源とロシアの得点源の2種があるので、自陣営の得点条件を満たしつつ敵陣営の妨害をするのが基本の動き…… 2ラウンドごとに決算が行われるのでプレイヤーにとっての短期目標となるワケです。

 1回の決算では2枚のヘッドラインカードが決算されるので、どちらの目標を達成するか、あるいは妨害するかで頭を悩ませることになります。自分の目標を達成しつつ、相手の目標を妨害できればもちろん最高です、が、これはなかなか難しい!


 で、ここからが本題なんですが、このヘッドラインカード、完全にランダムで選ばれるのではなく、プレイヤーが3枚の手札から1枚を選んでプレイします(このカードは4ラウンド後に決算)。なのでゲーム展開のコントロールがかなり効くんです。

 しかも! EUとロシアはそれぞれが個別の山札を持つワケではなく、両者の得点カードを混ぜて一つの山札にして、そこから両者がドローするワケです。

 するとどうなるか…… EU陣営なのに手札が真っ赤に染まってしまうこともあったりして、プレイしたくないロシア得点カードを泣く泣くプレイするハメになったりなるのです。

 で、対するロシアはこれで有利になるかと言えば、むしろ想定していなかった新しい目標に頭を抱えることになったりもして。相手が達成しにくいヘッドラインカードを嫌がらせ気味にプレイするのが基本なので、予定外のヘッドラインカードをプレイされると心底困るんですよね。


 このようにヘッドラインカードに纏わるルールは運用はシンプルながらそこから生まれる展開の幅広さと言ったら驚くほどで、いやあ、スジのいいルールだなあと感心します。

 これ、ユーロに取り入れても面白いルールだと思うんですよね。3人以上だとコントロールが効かなすぎるので、2人プレイだからこそ生きる仕組みかもしれせんが。ちょっと「スルージエイジス」のイベントカードの扱いにも似てるかもしれません。


◆アクションはたったの2回。気合の入るイニシアチブ勝負



 各ラウンドでは4枚の手札からこのラウンドで使用する2枚のカードを秘密裏に選び、同時公開します。この時、2枚のカードに記されたイニシアチブ値を足し、合計が大きい陣営が先にアクションを行います。

 基本的には相手の動きを見てから動きたいので後手が有利なのですが、イニシアチブ値の低いカード=弱いカードなので、行動順とカード効果でどう折り合いをつけるかは思案のしどころです。


 アクションは

・影響力の配置
・影響力の増加
・資金の獲得
・軍隊の設立
・軍隊の移動
・特殊アクション

 の6種類があり、カードによって行えるアクションが指定されています。アクションそのものは極めてシンプル……というか細切れすぎてびっくりするほど。

 1ラウンドでは2回のアクションを行うのですが、フリーアクション盛りだくさんのモダンユーロに慣れてる身だとメチャクチャ簡素に感じられます。1手使って軍隊1個作って、1手使って軍隊1個動かしたらもうラウンド終わっちゃう…… 「纏めて軍隊配置」とか「纏めて軍隊移動」とかねえから!

 なんかもう慢性的に手数が足りない作りになっています。ちなみにロシアはお金も足りない。

 その上で2ラウンドごとにヘッドラインカードを達成しなければならないのですから、選択と集中が重要です。やるべきことは明確なのに悩ましい……!


◆デッキ構築の華、新カードの獲得が……?

 おまけに紛争地域に影響力を及ぼすと得られる新しいカードは基本的に……弱い。カードはそれぞれが国や地域を示しているのですが、初期デッキのドイツとかフランスは超リッチで使い手も広いのに比べて、紛争地域は小国ばっかりなので経済力もなければ軍隊も作れないという…… 世知辛い……!

 さらにおまけに紛争地域カードの中にはプレイすると敵陣営に利益をもたらすReaction/対応カードなんてものまであって、紛争地域に迂闊に介入すると身動きが取れなくなります。この辺もまたリアル。

 ちなみにこのゲーム、基本的にデッキ圧縮の手段はありません! なのでどの紛争地域に肩入れするかは計画的に……


 ゲームを通してデッキをカスタマイズする手段は正直少ないので、一般的な「デッキ構築ゲーム」のイメージとはちょっと違った感覚です。デッキカスタマイズの自由度に楽しさがあるというよりは、ランダマイザとしてデッキを使っている、くらいの感覚で、デッキ構築自体は付随するサブ要素といった趣です。


◆ユーロ好きにこそ遊んで欲しい、システム重視の重厚ゲーム



 ということで、ここまで色々と特徴を述べてきたんですが、正直なところ見どころがかなり多いゲームです。触ってみて想像以上の面白さでした。

 見通しがよく、適度な運要素があり、地味かと思いきやスパイスも効いていて(説明を省いたんですが「優位カード」というのが超スパイス効いてるんです)、2人用ゲームとしての完成度がまず高い。それでいて本格的な2人用ウォーと比べると手頃なルール量と時間で遊ぶことができるのもいいところ。

 ハードなテーマで敬遠する人も少なくないとは思うんですが、ゲーム自体が面白く、しかもテーマの知識は必要ない(知ってたらより楽しめるけど知らなくてもゲームとして楽しい)ので、軽々な気持ちで遊んでみればいいと思います。

 その上で、ユーロとは異なる文脈から成り立つこのシステムはユーロ好きからすると異国感、新鮮味があり、一種オリエンタリズムな味わいとでも言いましょうか、和洋折衷的な接合の風合いが刺激的です。

 ゲームマーケットで販売するからというワケではないんですが、ゲームデザインのヒントを求めている人、ユーロに浸かりすぎて新しい境地を探している人にとって、ウォーとユーロの川で作られた三角州は宝の宝庫かもしれませんよ。


 また、今回販売する和訳付き英語版では、数々のゲーム翻訳を手掛ける永峯さんに翻訳をお願いしました。テーマを深堀りしたい人のためにフレーバーの翻訳も完備したので、ぜひ読んで貰えればと思います(なお、このフレーバー、ゲーム中に読まれることはありませんでした)。



 「ヨーロッパディバイデッド」はゲームマーケット秋にてイベント価格6500円で先行販売します。その後、数寄ゲームズ通販サイトでも販売しますがこちらは価格を調整中です。よろしくお願いします。


※ ちなみに1点エラッタがあります。これは元のルールブックからのエラッタなんですが、P20のインデックス、「ブドウ革命」は緑の背景が正しいです。カードとインデックスで相違がありますが、カードの表記が正しいです。
ラベル:Europe Divided
posted by 円卓P at 09:50| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする