数寄ゲームズは、「失われた種の探索」日本語版を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢13歳以上、プレイ時間60-75分で、小売希望価格は税込6600円となります。
12月16日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行予約を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しておりますが、こちらは年明けとなる見込みです。
「失われた種の探索」は、絶滅の危機に瀕している動植物を救うため、それら「失われた種」の調査を行うゲームです。インドネシアやパプアニューギニアをイメージした島々をボートや徒歩で移動したり、現地住民に協力を仰ぎながら、失われた種をより早く発見したプレイヤーが勝利に近づきます。ただ、失われた種の発見はあくまで得点源の一つであり、最終的には発表した論文や町カードから得られる得点の合計点で勝敗を競います。
「失われた種」の一つ、アルオオコウモリ。ゲームには6種の失われた種が登場します。
手番ではアプリに質問を行い、その回答を専用シートに書きこんでいくことで情報を整理しています。現在の情報から適切な質問を考えることが勝利へ近づく要諦となるでしょう。
このゲームは太陽系10番目の惑星を探す「惑星Xの探索」の続編です。コンセプトも「惑星Xの探索」と同様に、専用アプリとの対話を通して情報を整理していく論理推理ゲームなので、ゲームの概要については「惑星Xの探索」の紹介も参考になるかと思います。どうぞこちらもご一読を。
ゲーム紹介「惑星Xの探索」
その上で、「失われた種の探索」は「惑星Xの探索」とどのように違うのか? その辺りの差異を中心に「失われた種の探索」の魅力について今回はご紹介していきたいと思います。
◆舞台は東南アジアの島々。島中を歩き回って動物の痕跡を追う!
さて、「失われた種の探索」の最も大きな変更点と言えば、ルックスからもわかる通りのテーマの変更となります。「惑星Xの探索」においてプレイヤーは、白衣に身を包み、望遠鏡をのぞき込み、遥か彼方、遠大に広がる大宇宙をコーヒー片手に仰ぎ見ていましたが、今作では草木生い茂る東南アジアの島々に単身赴き、危険生物の牙や棘を通さない厚手のサファリジャケットで身を守り、時に徒歩で、時にボートで実地調査に臨む探検隊の様相を呈しています。
これは単純なテーマの違いに留まらず、ゲームシステムの変化にも繋がっています。「惑星Xの探索」では夜間にしか見えない星の特性に沿って、調査範囲は常にボードの夜部分、半円に限られていました。
対して「失われた種の探索」ではボードの中心に舞台となる島が存在し、プレイヤー扮する科学者駒が(小さいながらも人間にとっては巨大な)島を巡り巡って調査を行います。つまり、移動力、移動範囲の概念が調査範囲を制限する要素となります。
地球の自転はさすがに人間にコントロールできる代物ではないのですが、島内をどう移動するか、どこに着地するかはコントロールできる、というのが両者の調査アプローチの大きな違いでしょうか。ざっくりと言えば「失われた種の探索」の方が、よりプレイヤーの意思を反映した、自由度の高い調査が可能になっていると言えます。様々なパターンを検討した結果、一手で多くの情報を引き出せるような調査が決まった瞬間は天才になったような気分が味わえて気持ちいいですよ。
ただ、工夫の余地があるがゆえに、よりプレイヤーのテクニックが反映されやすいというか…… 思考空間が広がって自由度が高まったために前作よりもダウンタイムは伸びがちかもしれません。また、プレイヤーの巧拙の差も出やすい作りではあるとは言えます。
そのため、「失われた種の探索」は「惑星Xの探索」から少し踏み込んだゲームではあります。とは言え、その差は0.5歩くらいなので「失われた種の探索」から遊んでも全く問題はないですけどね。
また、プレイヤーの力量差については「惑星Xの探索」と同様に、初期情報の量でハンデをつけることができる作りでもあります。なので、プレイ経験がバラバラのプレイグループであれば、初期情報をうまく調整して挑むとよいのかなと思います。公式にハンデをつけることも可能なゲームって結構珍しいですよね。
小粒ながらも大きな変更点としては「町カード」の存在があります。これは調査隊を助けてくれる現地住民などをイメージしたものなのですが、調査を補助するちょっとした特殊効果をもたらしてくれたり、ゲーム終了時にボーナス得点を貰えたりします。
町カード「道案内人」は時間コスト3の徒歩アクションをコスト2に低減する能力を与えてくれる。
「惑星Xの探索」は、ランダム要素が事実上ないアブストラクト味の強いゲームではあったのですが、「失われた種の探索」は、町カードのランダム性やちょっとした博打性が加わって前作に比べて雰囲気が柔らかくなっています。ゲーム終了時の加点要素が増えたことで、逆転の余地が増えたのは個人的にはよい味付けだと思っていますし、調査の方針決定の補助線としても役立つところもいいですね。
逆転性の強化と言えば、論文の提出のルールが微妙に変わっていて、「惑星Xの探索」では発表フェイズで0-1個の論文を発表していたのが、「失われた種の探索」では0-2個の論文を発表できるようになっています。
「惑星Xの探索」では論文発表が遅れるとその差がなかなか縮めにくい側面があったのですが、「失われた種の探索」では、論文を2個発表し続けるのは難しいため、キャッチアップがしやすい作りにはなっています。ここは後発ならではの冗長性の強化と言えましょう。
とまあ、そんな感じで全体的に「失われた種の探索」は、雰囲気が柔らかい! やっていることの本質は「惑星Xの探索」とあまり変わらないのですが、プレイ中の空気感が結構明るくなっているように感じられます。
ただ、論理推理部分は先ほど触れたように多少難しくなっているようにも思います。今回は前作の「惑星X」に相当する「失われた種」が6種類登場し、それぞれが固有の生息ルールを持っています。失われた種はそれぞれが島に登場する他の動物、ヒインコ、クスクス、ヒキガエル、ニシキヘビとの独自の関係性を持っているため、これらの動物もしっかりと生息地を調査しないと本丸に辿り着かない作りになっている気がします(と思ってたんですが、NPCのティニは一足飛びで失われた種に到達したのでそうでもないっぽい……?)。
プレイのヒントを一つ挙げるとするならば、まずは発見難易度の低いヒインコの生息地を発見し、そこを足掛かりとして他の動物の所在を探っていくのがよいのかなと思います。まあ、これはゲーム中に登場する学説(今回のゲーム特有のルール)との兼ね合いもあるのですが。
登場する学説はゲームごとに異なります。
◆専用アプリも使いやすく、ソロプレイもオススメ
専用アプリは開発元が変わっているため、UIから結構な変化があります。宇宙テーマらしくフラットデザインだった前作も遊びやすい作りではあったのですが、今作のアプリも(ボタンがちょっとわかりにくい作りではありますが)細かいフォローが行き届いていて快適なプレイが可能です。
例えば、セットアップでは様々な初期情報を教えてくれますが、「要は画像の通りにチェックしてったらええんや!」と明快。
とりあえず見たままに✗印をメモシートに書く! それだけ!
質問に対する回答では「メモにはこう書き込んだらいいよ」まで教えてくれるので初見でも遊びやすいです。
今回登場する失われた種がアッテンボローミユビハリネズミであればメモシートには「?はヒキに隣接しない」と書き込めばOK。
NPCプレイヤー「ティニ」との対戦ソロプレイもアプリの補助があって快適です。「ティニ」はソロプレイに限った対戦相手ではありますが、2人プレイに追加のプレイヤーとして加えてもいいかも(ただ、疑似3人プレイだとプレイヤー側の情報が増えるのでティニが相対的に弱体化しそうではあります)
ティニの強さは「簡単」「困難」の2段階から選べますが、困難レベルだとよくわからない調査から唐突に失われた種を発見してきたりもするので油断がならないですよ。他人を気にすることなくじっくりと心ゆくまで時間が使えて、なおかつNPCの操作はアプリが補助してくれるので、とかくソロプレイが楽しいゲームです。ぼくは普段あまりソロプレイをしないほうなんですがこのゲームは「1時間空きがあるなー」みたいな時に取り出して、すでに5回くらい遊んでますね。
◆大変お待たせしましたが、それだけに自信を持ってお届けできるタイトルです!
元々が完成度の高い「惑星Xの探索」をブラッシュアップしたタイトルなだけに「失われた種の探索」は、論理推理ゲーム好きの方には抜群にオススメのタイトルです。最大の特徴であるアプリの積極的活用は今回も健在で、それは裏を返せばアプリを使う環境を整えないと遊びにくい弱点もそのままではあるんですけども、まあ、良くも悪くもそうしたエッジの鋭さがこのゲームの魅力かなと思っています。
また、余談ではありますが、「失われた種の探索」では絶滅危惧種への興味を持ってもらおうという意図から、ルールブックには登場する動物に関するちょっとした解説記事もあります。
ローカライズ作業の難しいポイントとしまして、このゲームにはLoryとCane toadという動物が登場します。これは日本語名ではそれぞれ「ヒインコ」と「ヒキガエル」になります。
で、このゲーム、それぞれの動物の頭文字をメモする作りになっていまして、英語版ではそれぞれ頭文字が異なる「L」と「C」なのが、日本語ではどちらも「ヒ」になってしまうという問題が出てきました。
これをどう解決するかは非常に悩みました。「インコ」と「カエル」の「イ」と「カ」にするか、一方は「ヒ」で、一方を変えるか等々…… 結局、頭文字2文字を取って「ヒイ」「ヒキ」で分別するという形にしましたが、果たしてこれでよかったのかは、今でも悩むところです。
なので、もし、遊んでみて、遊びにくさを感じるようでしたら、そこは柔軟にやって貰えればと思います。自分が情報を整理する上で一番しっくりくる形でやって貰えればいいのかなと。
「惑星Xの探索」の制作の際には頭文字をアルファベットにするか、ひらがなにするか、漢字にするかで頭を悩ませたものですが、なかなかこうした問題は尽きないものです。
また、これまた余談ではありますが、最近ではドイツ製品を始めとしてシュリンク包装を排したゲームが増えてきています。本作もゲーム自体のテーマから環境保護指向の強いタイトルではあり、内容物もプラスチック製品を避けて紙包装への置き換えが進められています。箱の外装も英語版ではシュリンク包装ではなく、四辺へのシール貼りとなっています。
では、日本語版も英語版と同様にシール貼りなのか、と問われると、実は日本語版では箱にシュリンク包装を行っています。
というのは、日本市場においてシュリンク包装を好む人が(現状では)多数派だとぼくは考えているからです。日本語版の出版に際して色々と検討を行ったのですが、最終的に今回はシュリンク包装を行うこととしました。
シュリンク包装の是非については様々なご意見があるかとは思いますが、数寄ゲームズとして何を大事に考えるか、コンフリクトする諸々の事情にどのように優先順位を与えるか、という点を考えた時、「ファンの方に満足して貰うプロダクトをお届けしよう」「何よりもユーザーファーストの立場に立とう」という考えから今回の判断を行っています。
誤解を招かぬようにお伝えしておきますと、個人として、団体として、シュリンク包装の廃絶に絶対的に反対です、という立場ではありません。今回の「失われた種の探索」に限ってはこのように判断したという次第です。自然環境に対する皆様の関心は歳月と共に徐々に変化していくかとは思いますので、数寄ゲームズはアンテナを高くして都度柔軟に対応していきたいと考えていますし、今回の判断についても皆様のご意見を広く聞いてみたいところです(なので今回の判断の是非についてもツイッターとかでもいいので呟いて貰えればと)。
とまあ、そんな感じで色々と制作の際に判断に悩む箇所が多かった作品でもあり、「失われた種の探索」はそれだけに思い入れがあります。発売まで相当な時間がかかってしまいましたが、なんとか発売まで辿り着けて安堵しています。どうぞ皆様に楽しんで貰えれば幸いです。
失われた種の探索
プレイ人数:1-4人
対象年齢:13歳以上
プレイ時間:60-75分
ゲームデザイン:Matthew O'Malley, Ben Rosset
アートワーク:Anh Le Art, Anita Osburn
小売希望価格:6600円(税込)
ラベル:失われた種の探索