2023年01月13日

ゲーム紹介「シュティッヒルン」



 数寄ゲームズはKlaus Paleschデザインのメイフォローのトリックテイキングゲーム「シュティッヒルン」を発売します。プレイ人数3-6人、対象年齢10歳以上、プレイ時間30分で、小売希望価格は税込1980円となります。

 1月14日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行予約を行い、その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。


 さて、数寄ゲームズでは世界の名作トリックテイキングゲームを集中的に取り扱っていまして、この「シュティッヒルン」はその第7弾という位置づけになります。数寄ゲームズ名作トリテシリーズをおさらいしますと、

000:ボトルインプ
001:知略悪略
002:トランプ、トリックス、ゲーム!
003:地下迷宮と5つの部族
004:ブードゥープリンス
005:乗り間違い
006:パーラ
007:シュティッヒルン

 ……という並びになります。面白いゲームしかないですね! 今回「ボトルインプ」は小箱版として再販が決まり、晴れてナンバリングを付加することができました。

 さて、このシリーズで言えば、「シュティッヒルン」は「知略悪略」の作者Klaus Paleschの作品でもあり、両作は似通う部分も多々あります。しかしながら「知略悪略」が「言わば知る人ぞ知る名作ゲーム」だったのに対して「シュティッヒルン」は「発売から30年間遊ばれているベストセラーゲーム」という位置づけであり、両作の立場・認知度は大きく異なっていると言えましょう。

 名作トリテシリーズは世界的な絶版タイトルを扱うことが割と多いのですが、この「シュティッヒルン」に関しては英語版やドイツ語版は現在も流通していて、これらのタイトルの中では圧倒的に入手が容易なタイトルではあります(「ブードゥープリンス」も今やドイツでは絶版だったりします)。

 しかしながら、そんなクラシックタイトルであっても、これまで日本語版が出版されたことがなく、手軽に買い求められない現状はよろしくないなーとは常々思っていました。そこで「知略悪略」を出版した縁から作者Klaus Paleschに「シュティッヒルン」の日本語版出版を打診し、色々あって今に至るという形になります。

 実は着手したのは「乗り間違い」や「パーラ」よりも先だったんですけども、これも長々と時間がかかりましてようやく形にすることができました。そういったタイトルが重なったこともありまして、「乗り間違い」「パーラ」「シュティッヒルン」と出版が相次ぐ事態になっております。


◆愉快で美しい完璧なメイフォローのゲーム

 さて、この「シュティッヒルン」の最たる特徴。それはもう完璧なメイフォローのトリテであるという点に尽きるかと思います。

 トリテ界隈にはマストフォロー、メイフォローといった用語があります。これはカードプレイの縛りを意味する言葉で、マストフォローは「最初にプレイされたカードと同スートのカードをなるべく出さないといけないよ」という意味の言葉ですが、翻ってメイフォローとは「同スートのカードを出す場合もあるよ」くらいの意味の言葉です。

 作者のKlaus Paleschは「シュティッヒルン」の他にも「知略悪略」や「ハットトリック」と言ったメイフォローのゲームを作っているのですが、カードプレイに独自の縛りがあったりします。「知略悪略」では4色目のカードはプレイしてはいけない、といった感じですね。

 で、「シュティッヒルン」はこうした付帯条件みたいなものがまっっったくない完全なメイフォローのゲームなのです。ここにどんな価値があるかと言えば、まずルール説明がラクです! マストフォローのゲームに比べて圧倒的にラク!


 手番順にカード1枚を表向きにプレイします。全員がカードをプレイしたら勝敗を判定して、勝った人がカードを総取りします。それだけ! 終わり!


 フォローできる場合とできない場合でどーのこーのとか、切り札がある場合とない場合でどーのこーのとかが取ったカードの配分がどーのこーのとかまったくない。ルールブックもめちゃ簡単でシンプルです。

 日頃めんどくさいトリテばっかり出版してる身でこんなことを言ってしまうのは身も蓋もないんですけども、ルールは簡単なほうが絶対にいいんですよ! 遊ぶ側も説明する側にもメリットしかない!


 もちろん、ゲームを成立させるために必要最低限のルール量というものはあり、独自の面白さを創出するためにルールを書き足していく必要性はあります。それは確かです。トリテで言えば「パーラ」なんかは、まさにそういうゲームですし、基本的にぼくはインストに30分以上かかるような重量級ゲーム大好き人間なのです。

 が、この「シュティッヒルン」は削りに削ったゲームであって、必要最低限のルール量で最高効率の面白さを発揮しているゲームなのです。そりゃ30年間遊ばれるゲームだわなという貫禄を備えています。


 遊ぶ上で必要なルールとしてはあとは3つくらいですかね。

・ディールの初めに全員同時にカード1枚を選んで失点色を決める。その色のカードを獲得したらランクに等しい失点、それ以外の色のカードを獲得したら1枚1点。
・各トリックでは、最初にプレイされたカード色が最弱となり、それ以外のカード色があれば、その中でランクの一番高いカードが最強(同値は先出し勝ち)。トリックに勝った人が次のリードプレイヤーになる。
・0のカードだけは特殊なカードで、これは必ず負け。全員が0を出したらそのトリックはお流れ。


 ……こんなもんじゃないかなマジで。で、これでゲームが成り立っているのかと言えば、驚くことに成り立ってるんですよこれが。

 このゲーム、得点は獲得したカード1枚1点なのでチマチマとしか入らないんですけども、失点はランクに等しい分だけドカッと食らうんで、いかに大きな失点を避けつつこまかく得点していくか、実にテクニカルなゲームなんですよね。相手のアッパーを避けつつボディボディボディ! みたいな。

 で、それだと地味渋いゲームなのかなと思うんですけども、手札の綾で避けられなかったアッパーで一発KOみたいな見せ場もあって、チマチマチマチマ……ドッカーン! みたいな静と動のメリハリがすごく強いゲームなんですよね。

 全員が不慣れだとドッカーンドッカーンドッカーンみたいな展開もあるにはあります。ゲームに慣れるにつれて致命傷を避けるためのテクニックを覚えていくので地味寄りに推移していきますが、攻撃をただ避け続けるだけでは得点を得られないのでどこで勇気を出して得点にチャレンジしていくかが試されるゲームになっていきます。逃げれば1つ、進めば2つ。


 ぼくはこのゲームを「勇気が必要なゲーム」と呼んでいます。砲撃の雨の中、塹壕に引きこもりつつ、勝つために撃って出る。そのタイミングを見極めるゲームとも言えます。このリターンを得るためにリスクを取るという構造こそがまさにゲームだなと思わされるんですよね。

 もちろん、運悪くボッコボコにされることもあるゲームなので、人によっては心に大きなキズを負う可能性もあるゲームとは言えます。ですが、このゲームは「痛くなければ覚えませぬ」というゲームでもありまして、その痛みは必ず次のゲームで役立つのです。

 なので、このゲームはできれば最低2ディール、可能なら3ディールでも4ディールでもいいので、複数ディール繰り返して遊んでほしいんです。最初は脇が甘くてうっかりで地雷を踏み抜いていた新米兵士がいつの間にか酸いも甘いも噛み分けたシュティッヒルンソルジャーに成長していくのは傍で見ててもめちゃ面白いんですよ。


 蛇足ながら、ぼくは長野にいた頃に「シュティッヒルン」だけを何時間も延々と遊び続けたことがありまして、それが今回の日本語版出版の動機の一つになってもいるんですけども、いつまでもダラダラと遊べてしまうポテンシャルを持ったゲームと言えます。それも全てはプレイヤーへのルール量の負荷の小ささと、メイフォローならではの選択肢の広さ、局面の豊富さ、小技を差し込む余地のある懐の深さがなせる業なのかなと思っています。


 一方で30年前のゲーム(言わば「カタン」以前のゲームです)ともなると今のゲームのような気遣いや心配りはないというか、手札運の強弱が素直に勝敗に直結するゲームではあります。手札で勝負の良し悪しが見えるというか運7割、技術3割なゲームです。

 なので、「初めて遊んだら悪い手札で何もできずボロ負け」というトラウマ製造機的な側面もあったりするんですけども、そこは「君が悪いんじゃなくて手札が悪いだけだから!」とちょこっとフォローしてあげてほしいなと思っています。それだけ尖っているというか、ソリッドなゲームではあります。

 ただ、何ディールも繰り返し遊んでみると上手い人はやっぱり上手いことがわかったりもして、技術の介入する余地のあるゲームなのは確かなんですね。このゲーム、基本的にプラス点になることはないゲームだと思っている方もいるかもしれませんが、慣れてくるとコンスタントにプラス点が出せたりします。

 ゲームのちょっとしたコツを言えば、2番手のプレイヤーは物凄く危険です。では、2番手になるのを避けるにはどうしたらいいかというと、自分の右隣のプレイヤーにとっての失点色をプレイすれば2番手になる可能性を抑えられるワケです。なんでもカードを出せるメイフォローならではの考え方ですね。

 基本的に最後手番だったり最後から2番目のプレイヤーが得点チャンスを持っているプレイヤーです。自分をその場所に持ってこれるように立ち回れると得点チャンスが俄然増えることでしょう。

 とまあ、そんな感じの細かいテクニックが色々とあるゲームです。手札運は確実にありますけども、手札運だけでは片付かないゲームなので色々と研究してみてほしいですね。


◆非トリテとトリテの世界を繋げるゲーム

 いつにもなくベタ褒めなんですけども、正直な話、「シュティッヒルン」は完璧なゲームだからです。完璧なので仕方ない。

 何が完璧かと言えば、トリテのトの字を知らなくても普通のカードゲームとして遊べてしまうゲームだからです。事実、ぼくは「シュティッヒルン」をBSW(うーん、懐かしい響き)で初めて遊んだですけども、その時のトリテの知識は0%でした。それでも問題なく遊べますし、地雷だけ避けてなんとかうまいこと得点だけしようという楽しさもわかるワケです。

 なので、「このゲームを数寄ゲームズのトリテシリーズに含めていいのか!?」という葛藤すら実はあるんですよね。別にトリテの枠に押し込む必要はないじゃん、もっと単純に「面白いカードゲームですよ」っていうだけで十分じゃんという。

 もちろん、このゲーム、ルールブックを読むとトリテの文脈から作られたゲームであることがわかりますし、トリテ知識があれば「逆切り札」みたいな表現をすることでゲームの構造が理解しやすくなるので、やはりトリテの文法を踏まえたゲームではあるんです。

 なので、個人的には「シュティッヒルン」はトリテと非トリテの世界を繋げてくれるタイトルなのではないかなと思っています。そして、今まさに必要なのはそうしたタイトルなのです。


 というのは、自分の接客経験からすると「何か面白いカードゲームが欲しいんだけど……」というお客さんにトリテを薦めるのは結構躊躇われるんですよね。でも「シュティッヒルン」であれば、全く臆することなく推していけます。必要な前提知識が全くないのはそれだけ強いです。で、そこから「シュティッヒルンが面白かったので似たようなゲームを探しています」という人が出てくれば、そこからトリテの世界に繋げていくこともできるワケです。

 そういう価値を有したゲームなので、このゲームの出版はとても重要なポイントだと考えています。トリテの世界を知った人が探す定番トリテはいくつかありますが、さらにその前段階、トリテに繋がる定番カードゲームって中々なかったんじゃないかなと思うんです。

 なので、これから「シュティッヒルン」を発売できることにすごくワクワクしています。まだ触ったことがない方はぜひ遊んでみて頂きたいです。


 10年くらいボドゲを遊んでいる人であれば、「シュティッヒルン」はどこかで一度は触ったことがあるくらいの定番タイトルではあるんですけども、最近ボドゲを遊び始めた人にとっては意外と縁遠いタイトルでもあるとは思います。まあ、出版されるタイトル数がめちゃ増えてる昨今、海外のみで流通しているタイトルを積極的に探しに行かなくてもよくなりましたしね。

 でも、遊んだ経験のある人でも、改めて遊んでみると「あれ、これどうするんだっけ?」ってなるタイトルでもあります。やはり普通のトリテとは構造がまったく異なるゲームなので考えどころが全然違うんですよね。

 昔遊んだトリテを久しぶりに遊んでみると「あれ、これってこんなに面白かったっけ?」って言う人、周りで結構多いんですよね。どうも、トリテを遊んでいるとトリテ力って自然と上がっていくみたいなんです。「シュティッヒルン」はクラシカルなタイトルではありますが、改めて遊んでみることで新しい楽しさに気づくことがあるかもしれません。長らく遊んでいないなーという方も久しぶりに手にとってもらえると嬉しいです。


◆日本語版独自のバリアントルール&数寄ゲームズ通販特典

 さて、今回の「シュティッヒルン」日本語版はNSVから発売されているドイツ語版をベースにしています。「シュティッヒルン」はいくつかのバージョンがあるんですけども、箱と説明書を日本語化した点を除いてNSV版と同一と考えていただければと思います(印刷工場も同じ)。なので、すでにNSV版をお持ちの方が買い替えるほどのことはないかなーと思っています。

 ただ、日本語版では作者から提案されたバリアントルール1つを独自に加えています。アミーゴ版「シュティッヒルン」では5つのバリアントルールが掲載されていましたが、今回の日本語版バリアントルールはそれらとは異なるものです。非常に手応えのあるルールなので、ぜひ試してみてください。

 また、数寄ゲームズ通販サイトでの直販分に限り、アミーゴ版で掲載されたバリアントルール5種を含む6種のバリアントルールが掲載されたバリアントルールカードをお付けいたします。色々な楽しみ方ができてプレイバリューがグッと高まりますので、ぜひ数寄ゲームズ通販サイトもご利用いただければと思います。


 あと、話は逸れますが「シュティッヒルン」と言えば「ハットトリック」。アミーゴ版では「シュティッヒルン」を使って同作者の「ハットトリック」も遊ぶことができるよという作りだったので、「アミーゴ版ベースの2in1スタイルで制作できないか?」と作者には問い合わせたのですが、現在の「シュティッヒルン」の版権はNSVが持っているため断念せざるを得ず、NSVベースの仕様で制作しています。はい、昔からの人が言い出しそうなことは当然問い合わせてるんですよ!

 そうした事情もあり、箱のサイズも数寄ゲームズのトリテシリーズとはやや異なるNSVサイズとなります。ここは個人的には口惜しい気持ちもあるにはあるんですけども、前述の通りに日本で出版することに大きな価値のあるタイトルなので、ここは実利を優先しました。


 NSVサイズはちょっと縦長。

 ……数年後にNSVが「シュティッヒルン」の版権を手放したらワンチャンあるかもしれないですけども、まあ、NSV的には定番タイトルなのでそうしたタイミングはなさそうかなー。逆に「ザ・ゲーム」くらい売れてくれれば日本独自のバージョンみたいなのも作れる可能性も出てくるかもしれません。……が、まあ、それだったらNSVが版権を手放す可能性のほうが期待できますね!

 いずれにしても、多くの方に手にとって貰えると、それだけ色々な可能性が生まれてきますので、どうぞご購入をご検討いただければと思います。よろしくお願いいします!


シュティッヒルン

プレイ人数:3-6人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:30分

ゲームデザイン:Klaus Palesch
アートワーク:Oliver Freudenreich
小売希望価格:1980円(税込)
posted by 円卓P at 11:46| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月13日

ゲーム紹介「惑星Xの探索」



 数寄ゲームズは太陽系9番目の惑星を探索する論理推理ゲーム「惑星Xの探索」を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢13歳以上、プレイ時間60分で、小売希望価格は税込6380円となります。


 数寄ゲームズ通販サイトでは12月5日より販売開始、12月21日より全国のボードゲームショップさんでの販売を予定しております。

数寄ゲームズ通販サイト「惑星Xの探索」


 「惑星Xの探索」は、「ふたつの街の物語」の作者としても知られるMatthew O'MalleyとBen Rossetが共作したタイトルで、論理推理ゲームの最先端に位置する作品です。その一番の特徴は積極的な専用アプリの活用で、準備や片付けを含めて遊びやすさを極めたところが特徴的な作品と言えます。




◆惑星Xを当てるだけじゃダメ? 宇宙の全てを解き明かせ!

 このゲームはタイトル通り、太陽系9番目の惑星「X」を発見することを目指すゲームです。皆様が理科の時間で習ったように、太陽系には水金地火木土天海冥……このうち冥王星は今では惑星とはみなされなくなってしまったのでこれを省いて8つの惑星があるワケですけども、それぞれの天体の軌道を計測すると「計算上では太陽系にはさらにもう1個惑星があるはずなんだ!」という仮説が成り立つそうです。これを「プラネットナイン仮説」と呼びます。

 このゲームではプラネットナイン仮説によって存在するはずの惑星、Xを発見することが目的となります。ちなみにXは変数のXの意味ではなくローマ数字のX、つまり10番目を意味する単語なんですけど、「プラネットナイン仮説なのに10番目?」という話はちょっと説明が面倒臭くなるので詳しくはウィキペディアをご参照ください。

プラネットナイン仮説

 さて、惑星Xが存在する宇宙空間はボード上に12の区画として表現されています(初級モードの場合)。そして、プレイヤーは惑星Xの位置を当てるだけでなく、その両隣の区画にある天体も正しく推測しなければなりません。
 天体は惑星Xの他に、小惑星、彗星、準惑星、ガス雲の4種があり、それぞれが独自のルールに基づいて各区画に配置されています。プレイヤーはこれらの天体を様々なアクションを利用して探していくのです。




 プレイヤーが手番で選べるアクションは4つ。そのうち1つは惑星Xの位置を特定した上で宣言するフィニッシュアクションなので、ゲーム中でもっぱら利用するアクションは「天体の調査」「1区画の精密探査」「課題の研究」の3つとなります。これらのアクションはどれも質問事項をアプリに入力するとアプリが答えを返してくれるもので、ゲーム中の光景は「アプリさまアプリさま、どうぞ答えを教えてください」という感じになります。神託を求める巫女かしら?




 プレイヤーはこうして得られた情報を専用シートに逐次書き込むことで情報の整理を行い、様々な惑星の位置を特定していくことになります。各天体は「小」「彗」「準」「ガ」など省略して書き込む形になるんですけども、面倒でも丁寧に漢字で書いたほうが後で見返す時にラクです(体験談)。自分の汚い字を呪いたくなりますね……




 また、ゲーム中、特定のタイミングで訪れる「学説フェイズ」では、これまで得た情報を元にプレイヤーはそれぞれ「この区画にはこの惑星があるんですよ」という学説を発表します。学説を提出するか否かはプレイヤーの気持ち次第、任意ではありますが、正しい学説を発表できると得点になります。……ん、得点!?

 そう、このゲームは惑星Xを一番最初に当てた人が勝ち……という構造のゲームではなく、惑星Xの発見も含めて一番多い得点を獲得したプレイヤーが勝利するゲームなのです。学説で得られる得点が6-7割、惑星X発見の得点が3-4割くらいかな。

 そのため、プレイヤーはこまめに学説を発表していく必要があるのですが、この……発表までの締め切りが結構タイトでして…… ゲーム中課題提出の締め切りに追われ続ける学生のような気持ちでプレイする気分になったりならなかったりもします。ああっ、学説発表したばかりなのにもう次の〆切がっ!


◆学説発表。スムーズな情報公開と悩ましいインタラクション

 さて、このゲームのキモがこの学説発表です。このゲームはソロプレイに対応していることからもお分かり頂けるように、本質的にはインタラクションを必要としない構造のゲームではあるんですけども、この学説発表を巡る選択が他の論理パズルゲームとは一味違うこのゲームならではの駆け引きを生み出しています。

 というのは、学説は「区画10には小惑星があります」といった内容を発表するもので、正解によって得点を得られるものの、プレイヤー全員に貴重な情報が周知されてしまう側面もあるのです。誰も知らない、自分だけが知っている惑星の情報は伏せておくことで独自の立ち回りができますが、一方でゲームの目的としては得点を稼ぐことにあるのですから、情報を寝かせておくだけでは勝利に繋がりません。このジレンマ!


 どのタイミングでどの学説を発表するかは悩ましいところではありますが、基本的には学説による得点の比重が大きめなゲームなので、積極的な情報提供を推奨しているゲームデザインとも言えます。

 しかし、同時にゲーム最終盤の誰が一歩先に惑星Xを特定するかという首の上げ下げ勝負みたいなところでは、持っている情報のほんのわずかな差が明暗を分けるので、公開すべき情報と伏せるべき情報は深く吟味する必要があります。うーん、悩ましい。

 論理推理ゲームでありながらプレイヤー同士が積極的に情報の公開を行っていくスタイルは珍しい手法ではありまして、それも「惑星Xを見つけたら勝ち」というゲームデザインではなく、情報公開も得点として評価する仕組みから来ています。研究者同士が互いの研究成果を引用しあってより真実に迫っていく光景が自然と醸し出されるのは宇宙探査テーマとうまくマッチしています。


 また、ゲームを遊んでて驚くのが、この手のゲームにありがちな情報の停滞、デッドロックがほとんどないことなんですよね。新しい情報が欲しい、ここを埋める何かがないと一歩も進めない、というポイントで天啓のようにポンと新情報が提供されるんです。

 このゲームの情報公開の巧みさは素晴らしくて、デベロップがしっかりと行き届いた新世代の論理推理ゲームだなと驚嘆させられます。遊んでて実に気持ちいいというか、ストレスをギリギリ限界までかけたところでスッと開放してくれるので「そういうことか!」「わかったぞ!」って快感がハンパないんですよね。めちゃくちゃデザイナーの手のひらの上で弄ばれている感もなくはないんですけども、いやいや、これだけうまく踊らせてくれるのであれば文句はございませんよ。


◆専用アプリの積極的活用。これが新世代の論理推理ゲームや!

 また、このゲームでは専用アプリの導入により論理推理ゲームの弱点の多くを克服しています。




 自社製品なので俎上に上げやすいという意味で「厄介なゲストたち」との比較をしますと、まずセットアップが圧倒的にラクです。「厄介なゲストたち」を遊んだ人の多くが「あー、自動的にカードを抜き出してくれる機械とかないもんかなー」とか妄想すると思うんですけども、はい、このゲームのアプリはボタンポチッでセットアップが完了するゲームです。めっちゃ早い。

 当然お片付けも簡単なので、ゲームそのものに取り組める時間の割合が非常に大きいワケです。シャインマスカット並に可食部が多い!


 また、こうした論理推理ゲームの多くはプレイヤー相互の情報のやり取りを通して情報を整理していく構造となっています。ここには一つ問題がありまして、「誤った情報を誰かが発信してしまった場合ゲームが崩壊してしまう」という危うさを抱えてもいます。

 これは意図的であるか否かに関わらず、例えその人の思い込みや小さな勘違いであったとしても、大局的にはパズルが崩れてしまう可能性があるリスクを抱えているわけです。これはもう構造上の問題なので解決策としては「間違えないように注意する」しかないんですけども。


 で、「惑星Xの探索」は、論理推理ゲームの伝統的な構造をアプリの介入によって改善しています。「プレイヤーA ←→ プレイヤーB」が旧来の論理推理ゲームの構造であるとしたらこのゲームの構造は「プレイヤーA ←→ アプリ ←→ プレイヤーB」です。プレイヤー間にアプリを噛ませることでプレイヤー同士の直接的な情報交換を封じているのです。

 こうすることでたとえプレイヤーAがアプリから得た情報を誤解して受け取ったとしても、その誤情報がプレイヤーBまで届くことはありません。プレイヤーBがその情報を必要とするとき、尋ねる相手はプレイヤーAではなくアプリだからです。誤情報の延焼がない、極めて堅牢な構造の論理推理ゲームと言えます。


 こうしたアプリの活用によって「惑星Xの探索」は、遊びやすさとゲーム上の堅牢さの2つの長所を獲得しています。言わばゲームマスター、審判役をアプリに委ねたゲームとも言えます。

 こうしたアプリの本格的活用はTRPG的なゲームや、脱出ゲーム的なゲームではいくつか見られるものの、論理推理ゲームに取り入れた例としては珍しいのではないでしょうか。

 ただ、逆に言えば、アプリをゲームシステムに深く組み込んでいる都合上、アプリなしで遊ぶことができないゲームであるという弱点もあるにはあります。アプリをインストールした端末が1台あれば全員がその端末を交互に使ってプレイすることもできますが、理想を言えばプレイヤー全員が個別に端末を持ってアプリを使うのが一番遊びやすいです(ちなみに英語ベータ版であれば、PC上で操作することもできるにはできます https://beta.planetxapp.com/ )。

 とは言え、諸々の事情でそうした環境を作るのが難しい場合もあるかもしれません。そういう意味では他のゲームと比べて遊ぶためのハードルが一つ多いゲームなのは確かです。


◆悩ましくて快適全振り。論理推理ゲーム入門としても。

 「惑星Xの探索」は、論理推理ゲームというジャンルにおいて、アプリの積極的活用を通して独自の立ち位置を生み出している稀有なゲームと言えます。徹底的なプレイアビリティの追及がストレスのない快適なゲーム体験に繋がっているので、この手のゲームが苦手な人にも一度遊んでほしいタイトルと言えます。「そういうことか!」と目の前が開けるような快感は病みつきになりますよ。


 ただ、ゲーム自体は非常によく練られた作りである一方、ダウンタイムが長くなりがちなゲームという側面はあります。あとちょっと! あとちょっと考えたらいいアプローチが浮かびそうな気がする!

 そう思わせてくれるところが優れたゲームの証明ではあるんですけども、ヒントの出し方、脳のくすぐり方が絶妙すぎて、人によっては考え込んでしまうゲームではあるかもしれません。また前述の学説発表までの〆切がタイトなこともあって最適な一手は何かを考えこんでしまうゲームではあります。

 とは言え、基本的には全員が考え込むゲームなので、自分の手番外もあーだこーだ考え続けていて手隙な感覚はあまりないです。手番になって「あれ、何するつもりだったっけ?」とはなりがちなので、そこは事前にアクションの予定をメモしておくといいかもしれません。


 大変な人気で現在在庫切れとなっています「厄介なゲストたち」との比較で言えば、カード引きの運要素高めな「厄介なゲストたち」と比べて、こちらは運要素が極めて少ない競技的なゲームとも言えます。セットアップ後の運要素はおしなべて控えめで、「研究」や「惑星X学会」でどんなヒントが出てくるかで運試しの側面があるものの、多くの調査に関してはプレイヤーのアプローチや閃きが重要なファクターとなります。

 プレイ感としては相当異なる両タイトルになりますので、片方が片方の上位互換、ということにはならないかと思います。テーマも含めていい意味で差別化ができているんではないかなと。皆様にはぜひ両者を遊び比べて貰って、どちらがより好みか評価してもらいたいです。


 とまあ、全編に渡る悩ましさも含めてゲームで脳のエンジンを回し続けることが好きな人にお勧めのゲームです。ソロプレイや2人プレイでも多人数プレイと遜色なく楽しめるタイトルなので、多くの方に気に入って貰えるタイトルだと確信しておりますよ。

惑星Xの探索(数寄ゲームズ通販サイト「惑星Xの探索」)

プレイ人数:1-4人
対象年齢:13歳以上
プレイ時間:60分

ゲームデザイン:Matthew O'Malley,Ben Rosset
アートワーク:James Masino, Michael Pedro
小売希望価格:6380円(税込)
ラベル:惑星Xの探索
posted by 円卓P at 11:30| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月27日

ゲーム紹介「リフトフォース」



 数寄ゲームズは10種のギルドから4種を選んで対戦する2人用ゲーム「リフトフォース」を販売します。プレイ人数2人、対象年齢10歳以上、プレイ時間30分で、小売希望価格は税込3300円となります。


 10月29日、30日のゲームマーケット2022秋にて先行販売を行います。こちらはイベント価格3000円でご提供させていただきます。
 その後、数寄ゲームズ通販サイトでの販売、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。



 「リフトフォース」はオーストリアの1 More Time Gamesという新興出版社が出版したゲームで、ひねりのある神経衰弱ゲームとして人気を博した「メモアァール!」(ゲムマで3団体が英語版・日本語版を販売するカオスを生み出したことで一部で有名)の作者でもあるイタリア人デザイナーCarlo Bortoliniの2作目となります。新興出版社かつキャリアの浅いデザイナーの作品ということで、発売前はさほど注目を集めてはいなかったのですが、じわじわと評価を高めた結果、なんと2021年のドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門推薦リスト入りを果たしています。

 ちなみにこの時の推薦リスト入りタイトルは他に「バラージ」「グルームヘイヴン:獅子のあぎと」「イーオンズエンド」と高評価のゲーマーズゲームが勢揃い。これらの中で「リフトフォース」は2人用かつ軽量級ということで浮いた存在にも見えるんですけども、それだけこのゲームには確かな地力があるのだとも言えます。

 ゲームの見た目としてはTCGでよくある2人用の殴り合いゲームなんですけども、アメリカンな特殊効果でハデハデな攻防を楽しむゲームではなく、計画的な選択と適度な運要素を織り込んだ典型的なユーロスタイルのゲームです。ボクシングというよりは柔術というか。野球というよりはサッカーというか。出会い頭の一発ではなく試合運びの巧みさが勝敗を分けるテクニカルなゲームです。


◆10種のギルドから4種を選択。最強のチームを作り上げる!

 ゲームの初めにプレイヤーがまず行うのは、今回使用するギルドの選択です。このゲームには火、水、風、土など10種のエレメンタルを使役するサマナーのギルドがありまして、プレイヤーはそれらから4種のギルドをドラフトして選択し、それぞれのチーム同士で対決するのです。



 各エレメンタルはそれぞれ異なる能力を持っています。
 例えば火のエレメンタルは相手に与えるダメージが大きいですが、バックファイアとして味方を傷つけてしまうおそれがあります。風のエレメンタルであれば、戦場を自由に移動してダメージをばら撒くことができます。

 


 こうしたエレメンタルの特徴や能力をうまく組み合わせて自分なりの戦略を模索できるところがこのゲームの醍醐味です。各能力はシンプルなテキストでまとめられているもののよく考えられていて、組み合わせによって思いもよらない強力なエンジンとなることもあります。

 それぞれ自分のチームを組み上げたら対戦です。先に12リフトフォース(得点)を獲得したプレイヤーがゲームに勝利します。

 得点を得る手段は2つ。相手のエレメンタルにダメージを与えて倒すか、自分のエレメンタルだけがいる土地で決算を行うかです。



 手番では3つのアクション「手札のプレイ」「場札の起動」「手札の補充と土地の決算」のいずれかを行います。アクション1つを行ったら手番を相手に渡し、それを交互に繰り返していきます。

 「手札のプレイ」では最大3枚までの手札をプレイして場札にできますが、プレイするすべてのカードの色か数字が同じでなければなりません。できるならば1手番で多くのカードをプレイしたいところです。

 「場札の起動」ではコストとして手札を1枚捨てて、相手のエレメンタルに攻撃をしかけます。プレイヤーは最大3枚までの場札を起動することができるのですが、コストとして支払ったカードと同じ色か数字の場札しか起動できません。

 「手札の補充と土地の決算」では手札を7枚まで補充し、自分のエレメンタルだけがいる土地から得点を得ます。

 基本的な流れは「手札をプレイして場札を増やす」→「場札を使って相手を攻撃」→「手札が減ったら補充しつつ決算」とシンプルながら、それぞれのアクションは「まとめて実行できる」というところがポイントです。手札はまとめてプレイしたいし、場札はまとめて起動したいし、手札補充は一気に7枚ドローしたい…… それができればベストなんですけども、刻々と移り変わる戦況の中では理想的な動き方は難しく、プレイヤーは手札をどのように使うか、起動コストをどのように支払うかで終始頭を悩ませることになります。



 基本的にはこのように箱裏に書いてあるのがルールのほぼすべてとも言っていいほどのシンプルさで、用意された多種のギルドによって肉付けがなされている感じです。ルールは簡潔ながら発見や研究余地の多い、遊びごたえのあるゲームと言えるでしょう。


◆あらゆる場所から滲み出る小粋なデザインセンス

 このゲームは小品ではあるのですが、遊んでて思わずニヤリとしてしまうデザインの巧みさが垣間見えるのが魅力でもあります。

 例えば、エレメンタルのカード構成もその一つです。
 各ギルドは実際に戦闘を行う9枚のエレメンタルと、それぞれのエレメンタルの能力が記されたサマナー1枚からなります。エレメンタルはその両肩に数字が記されていて、これがエレメンタルの持つ体力(タフネス)となります。

 エレメンタルの体力は5,6,7と3種類あるのですが、カード構成は5が4枚、6が3枚、7が2枚と統一されています。これがどういうことかと言えば、5のエレメンタルはデッキ内に多くあるので攻撃に使いやすく、反面、体力は少ないので防御力はひ弱なのです。7のエレメンタルはその逆になります。
 シンプルなカード構成をエレメンタルの性格付けに結びつけているところなど気が利いていて、いやあ、職人技だなと感じ入ってしまいます。



 他にも、「手札の補充と土地の決算」のアクションは手札が7枚の時には行えない、というのもよく練られたルールだったりします。最初にルールブックを読んだ時には単純に「手札7枚の時に補充するのは損だからやめようねー」というだけの話かと思っていたのですが、実際に遊んでみると手札の補充はどうでもよくて土地の決算だけを続けてやりたい局面が出てくるんですね。

 しかしながらルール的には「手札のプレイ」なり「場札の起動」なりで手札を減らさないと再び「手札の補充と土地の決算」のアクションを行うことはできず、その一手番の間に相手が体勢を整えてしまうかもしれない……といった運びがあり、一度作った有利な状況でそのまま押し切ることが難しい作りになっているんですね。言い方を変えれば逆転の余地を持たせた作りと言いますか、攻守の状況が頻繁に入れ替わるテンポ感が心地よいゲームでもあります。


 ボードゲームの魅力の一つに「ルールの行間に隠された意図の発見」があると思います。ルールを読んだだけでは全くなんのこっちゃとなるゲームを実際に遊んでみて「ああ、そういうことだったのか!」と気付かされる経験こそが、ボードゲームを鑑賞する最大のご褒美であるとさえ思っています。

 古典的なドイツゲームはそうした行間に潜む相互干渉を活かしたゲームが多かったのですが、インタラクションが薄いゲームが主流となってきた昨今ではそうしたルール読みの楽しさを味わえるゲームが減ってきたように思います。「うん、ルールに書いてある通りの楽しさだね」というような。

 その中で「リフトフォース」は久々に「そういうことか!」と膝を叩いた小気味よいゲームだったんですよね。これは、2人用ゲームがマルチプレイゲームと違ってインタラクションを薄める必要が少ないことが理由の一つとしてはあるとは思うのですが、デザイナーの工夫と手腕を読み解くことに楽しさを覚える人、ゲームデザインの奥深さを探究したい人にとっては、望外のプレゼントになるタイトルだと思っています。


◆新定番となりうる優れた2人用ゲーム

 まあ、そういう研究者的な目線でなくても、このゲームには多くの魅力があります。ルールはシンプル、随所に気の利いた工夫があり、組み合わせにもバラエティがある、と長所に富んだこのゲーム、出版に至ったのは「今の時代に必要とされているゲーム」と感じたのが理由の一つとしてあります。

 実は今年の1月に、東京は上野のコロコロ堂さんでゲームカフェのスタッフとして働かせて貰ったことがありまして(コロナの影響などもあって短期間ではありますが)、そこでの経験がこのゲームの出版に密かに結びついていたりもします。


 ゲームカフェで実際にお客様と触れ合ってみて思ったことの一つは「良質な2人用ゲームっていくらでも欲しいな」ということです。コロコロ堂さんの「パッチワーク」なんかはめちゃくちゃ遊びこまれてタイルの印刷が剥げかけているのにビックリしたんですけども、実際にゲームを案内する立場になると「パッチワーク」のようなゲームってすごく紹介しやすいんですね。

 良質、という言葉をもう少し噛み砕くと、ルールはシンプル、テーマに普遍性があって、プレイ時間はほどほど、なおかつ研究余地があって繰り返し遊びたくなるゲーム、と言い換えることができるかもしれません。特にインストの負担とそれに伴うプレイ時間の比率のコストパフォーマンスがゲームカフェではとても重要だなと感じたんです。


 例えば、数寄ゲームズでは2人用ゲームとして「ウォーターゲート」を販売していますけども、これがゲームカフェ向きかと言えばちょっと難しいところがあるようにも思うんですよね。まず、絵面がいかめしい……(笑)

 ゲームとしては抜群に面白いですし、遊びこむ余地も膨大なんですけども、インスト負荷もまあまああって、ファーストチョイスとしては中々選びにくいタイトルなのではないかと客観的に見ています。


 それに比べると「リフトフォース」は、まさに理想的なゲームカフェ向きの2人用ゲームだと思うんですよね。それはもっと広く言えば、ご家庭内でゲームを遊ぶ人に楽しんで貰える2人用ゲームという意味でもあります。

 もちろん「リフトフォース」の一番の魅力は面白いゲームであることそのものなんですけども、面白いゲームには事欠かない昨今、その中で生き残るにはより現環境に適した長所が必要なのではないかと思っています。ゲームの戦国時代ですな。

 そんなワケで数寄ゲームズから提案する「ゲームカフェに一番ピッタリな2人用ゲームはこれだ!」というのが、「リフトフォース」でございます。海外ではすでに拡張が発売されていて、人気もますます加熱しております。

 ぼく個人としても拡張の新しいギルドやルールを遊んでみたいなーという気持ちが強いので、拡張の発売に繋がるような皆様のご支援、ご声援を頂ければありがたいです。そのためには広く遊んで貰うことが第一だと思いますので、ゲームカフェでもどちらでも、どうぞ一度試してみて頂きたいと思っています。


◆数寄ゲームズは2人用ゲームに注力します!

 数寄ゲームズと言えば、先日紹介記事を書きました「パーラ」のようなトリックテイキングゲームに力を入れている出版社というイメージをお持ちの方もいるかと思います。そういうイメージを持って頂けていたらありがたいなあとも思うのですが、今後は同様に2人用ゲームの発掘にも力を入れていきたいと思っています。「リフトフォース」はその1つ目のチャレンジという形にもなります。

 これは以前発売した「ウォーターゲート」が思った以上の好評を得たことも影響してまして、ぼくが思っている以上に2人用ゲームへの要望って大きいんだなと気付かされたことが一因としてあります。ボードゲームを遊ぶ人の母数が以前と比べて増えていることで、2人用ゲームをメインに遊ぶ層も形成されてきているのかしら……と。

 もちろん、2人用ゲームであればなんでもいいというワケではなく、確かな魅力を備えていて、しかしなかなか知られていない、そんなダイヤの原石のようなゲームを発掘して届けられればベストです。先程も少し触れましたが、様々なゲームが溢れる昨今、出版社により求められているのはゲームの面白さを見抜く力、相馬眼ならぬ相ゲーム眼なんじゃないかなと考えています。

 自分自身の相ゲーム眼をより磨いていくためにも、新しいチャレンジは必要でして、2人用ゲームの世界という新しいグラウンドは自分にとっても魅力的な分野です。マルチプレイでは実装が難しい2人用ゲームならではのエレガントなシステムやルールって本当に多いんですよね。「ヨーロッパディバイデッド」の得点システムとかよかったなあ。パオロ・モリの「ブリッツクリーグ!」や「カエサル!」もえがった……

 そういったアイディアの数々に触れられるのは、単純に1ゲーム好きとして楽しいし、嬉しいので、優れたメカニクスに触れる感動みたいなものを多くの人と共有していければいいなあと思っています。お前もシステム派にならないか?



リフトフォース

プレイ人数:2人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:30分

ゲームデザイン:Carlo Bortolini
アートワーク:Miguel Coimbra
小売希望価格:3300円(税込)
posted by 円卓P at 12:36| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月25日

ゲーム紹介「パーラ」



 数寄ゲームズはスート色を混ぜるトリックテイキングゲーム「パーラ」を販売します。プレイ人数3-5人、対象年齢11歳以上、プレイ時間30分で、小売希望価格は税込2200円となります。


 10月29日、30日のゲームマーケット2022秋にて先行販売を行います。こちらはイベント価格2000円でご提供させていただきます。
 その後、数寄ゲームズ通販サイトでの販売、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。



 「パーラ」は、「もっとホイップを」「汽車は進むよ」などで知られるジェフリー・D・アラーズが2012年に発表したトリックテイキングゲームです。アラーズ作品はその多くがユニークな個性を発揮しているのですが、このゲームもその例に漏れず、トリテの基本的な要素であるスート色の概念を拡張した実に独創的な作品となっています。色をテーマにとったゲームですが、この1作自体がすでに1つの芸術品として、多くの鑑賞に耐えうる強いメッセージを持っています。


◆色を混ぜるトリテとは?

 「パーラ」の、その最大の特徴は「スート色を混ぜるトリテ」という一言で表現できるでしょう。トリテを知っている人であれば、これは「ぐにゃぐにゃ曲がる電柱」のような、なんとも不思議な響きに聞こえるかと思います。そう、このゲームはめちゃくちゃ奇妙なゲームなんです。


 リードプレイヤーが赤のカードをプレイしたとします。そうするとリード色は赤になります。他のプレイヤーは以後、赤のカードをプレイしなければなりません。いわゆるマストフォローのルールです。

 しかし! 「パーラ」において、続くプレイヤーはリード色の赤とは異なる青のカードをプレイし(!?)、それを赤のカードに重ねて置いて(!!?)、「これからスート色は紫になります」と宣言し(!!!?)、さらに紫のカードをプレイする(!!!!!???)といった、とんでもねえプレイが発生するのです。どーなってるのー!?

 まあ、全部が全部こんな塩梅だとさすがに空中戦過ぎてゲームとして成り立ちませんので、このスート色の混ぜ合わせには様々なルール、縛りがございます。縛りのないグチャグチャなトリテも世の中にはあるかもしれませんが、このゲームを作ったアラーズという人はコッテコテのユーロ畑のデザイナーでございまして、そうしたカオスなゲームを作る人ではないのです。

 まず、マストフォローのルールはこのゲームでも依然として有効です。なので、赤のカードを持っているのにリード色の赤を無視して青のカードをプレイするといった暴挙はできません(が、色を混ぜるのが楽しくなっちゃうゲームなので、このリボークはやりがちです。色を混ぜる前にマストフォロー、マストフォロー、マストフォローと3回唱えましょう)。

 そして色を混ぜるのはいわゆる「色の三原色」に則る必要があります。赤+青=紫、赤+黄色=橙、青+黄色=緑の式が常に適用されるので、紫と橙を混ぜたり、紫と黄色を混ぜることはできません。カード色は原色となる赤青黄の3色と、二次色となる紫橙緑の全6色です。



 なので、そもそも二次色である緑がリードされれば、そのトリックでは色の混交は起きないんですね。ただ、二次色がリード色の場合、「黄4と青4を混ぜて緑8としてプレイします」と2枚プレイする選択肢が増えたりもして、まったく一筋縄ではいかないゲームとなっています。

 これらのルールのおかげで「初手で赤5を出したのにリード色が橙に変えられて負けた」とか「緑9を出したのに青5+黄5の緑10に負けた」とか「負けるつもりで出した赤2に青5を足された紫7で勝ってしまった」とかポルナレフ状態に陥る場面が頻発するのです。おそろしいゲームやで……

 また、普通のトリテならディスカードしたカードはもはや用無しなのですが、このゲームでは「死亡確認!」に過ぎないので、後から再利用されて復活する可能性さえあります。ネクロマンシーみたいですね。

 とは言え、この色を混ぜるチャンス、実際のところ、そう多くはありません。当たれば一撃必殺なんだけどコマンド入力が難しいし、ゲージを溜める必要もある超必殺技のような位置づけです。ただ、この色の混ぜ混ぜをうまーく利用してトリックに勝ったり押し付けたりできると超気持ちいいので、ぜひ皆様にはこの不思議な体験を味わって頂きたいですね。


 また、色を混ぜるという大技を御するアラーズの工夫は得点体系にも及んでいます。

 このゲームはビッド式のトリテでして、ディールを始める前にビッドを行います。これも色というテーマを生かしたちょっと変則的なビッドで「こういうやり方もあるのか」と刺激を受ける内容です。

 ビッドというのは基本的にはスタビライザーと言いますか、不均衡なゲームを御するために持ち込まれるものなので、それだけでもこのゲームの暴れ馬っぷりが窺えます。とかく頭から尻尾までアラーズの工夫の数々を味わえるゲームとなっています。

 「スート色を混ぜる」という、口にするだけなら物凄く簡単なワンフレーズに対して、ゲームとして成立させるための様々な技術が凝らされた一作なんですね。それだけトリテの様式というのは強固と言いますか、その一要素を付け替えるためには様々な要素の付け替えを同時に行わなければならないということがわかる労作でもあります。相当な大仕事ですよこれは。


◆……ってことは難しいんでしょ? それがですね、奥さん!

 さて、このように「パーラ」はトリテの中でも屈指の変化球、大変化球と言っていいタイトルです。で、よく落ちるフォークボールがキャッチャーにとって捕球しづらいように、様式から大きく逸れたゲームが遊びづらいのは事実です。

 例えば普通のトリテなら、プレイヤーが手番で守るルールはマストフォローに従えるか否かの二択だけです。しかしながら「パーラ」では、マストフォローの可否に加えて原色と二次色という要素があるため、手番では「1枚プレイ」「2枚プレイ」「破棄」「色の変更」という4つもの選択肢があり、しかもそれらは状況によって選べる・選べないが決まっているため、非常に難解になっています。

 さらにさらに! このゲームにはなるべくトリックを取ることを目指す「点描画法」ルールと、なるべくトリックを取らないようにする「印象派」ルールの2つのルールが用意されています。これらのルールにも運用に微妙な差異があるため、原版のルールの完全読解は結構な難度だったんですね。


 で、ここからがアピールポイントなんですが、日本語版ではこうしたゲーム自体の持つ複雑性を紐解いて整理し、手軽に遊べるように努めています。

 例えば、根本となる手札のプレイングについてはそれぞれの状況でどのような選択肢を取ることができるのか、サマリーカードを用意して手元で確認できるようにしています。このサマリーカードで、プレイングの場合分けは完璧に整理されたんじゃないかなと自画自賛しております。



 また、ルールブックについても、そもそもの原理原則をまとめた「基本概要」、トリックを集めることを目指す「点描画法」、トリックを集めないようにする「印象派」の3冊に分冊して、まずは「基本概要」を読んでね、と。その上で「点描画法」ルールも読んでねと。そうしたら「点描画法」ルールが遊べるよと。さらに慣れたら「印象派」ルールも読んでみてね、と情報の出し方も整理しました。

 おかげで内容物の点数も増えて、コストに跳ね返ってくるわけですが、大きな目で見れば遊びやすさの確保のためにコストをかけるのは正しい投資であると考えています。この投資が正しい投資であったという証明にしたいので、皆様ぜひともお買い求め頂けますと幸いです。


◆普通のトリテに物足りなくなったあなたにぜひ!

 ということで、クセの極まった変化球トリテ「パーラ」、ここまでの紹介を読んで「俄然興味が湧いてきたぜ!」というチャレンジングスピリッツ甚大な方には滅法オススメします。が、逆に言えば、「一体なにを言ってるかわからない……」という方には、まだその機が訪れていない作品と言えるかもしれません。

 少なくとも「トリテに興味があるんですが、最初の一作としてこれはどうでしょうか?」という問いかけには全力でNO!!!!!と答えます。

 これじゃないよ。「パーラ」を遊ぶ前に触れておくべきゲームは色々あるよ。えっと、そうだね、「ブードゥープリンス」とかどうでしょうね?


 実際、ぼくが印象派ルールを遊んでみての感想は「地獄トリテやんけこれ!(歓喜)」でしたから。なんというか、激辛メニューみたいな感じで、刺激が凄まじくて病みつきになるのはわかるんだけど、辛さに慣れてからじゃないとしんどさが先立つんじゃないかなあという感じもあり。逆に言えば、トリテに慣れてる人にとってこのゲームの素っ頓狂ぶりはメチャクチャ刺激的だと思います。

 最近出版した「乗り間違い」なんかはちょっと変な風体を装っているんだけど、実際に喋ってみると「あ、この人マトモな人なんだなー」ってなるんですけども、「パーラ」は徹頭徹尾ヤバい人です。ヤバい(語彙)。

 まあ、辛さの耐性が人それぞれなように、トリテの親和性も人それぞれなので、最初にぶつかってみて「イケるわこれ」となる可能性もあるにはあります。必要なのはチャレンジ精神。それだけだと思います。


 さて、日本語版では6スートのイラストそれぞれを別々のイラストレーターさんに描いて頂いております。バラエティがあって目に楽しく、同時に統一感のある出来栄えで素晴らしいですね。アートをテーマに取ったトリテのアートが素晴らしいというのはもう素晴らしいの一言。素晴らしいbotです。

 以前にも数寄ゲームズでお世話になったことのある方々に今回ご依頼させて頂いたこともあり(たかみまことさんのみ今回が初依頼)、ある種の大乱闘数寄ゲームズブラザーズ的な趣もあるアートワークです。このタイトルは数寄ゲームズの名作トリテシリーズの第6弾となるワケですけども、これまでの集大成の一作とも言える作品なんじゃないかなと思っています。

 完成まで大変長い長い長いお時間を頂いてしまったこともあり、監督としての申し訳なさはあるんですけども、なんとか完成に漕ぎ着けることができて安堵しております。


 ということで、ルールは実に激辛な濃厚玄人仕様。アートは実力派勢ぞろいということで、トリテ好きの期待に応える一作になったのではないかと思っています。首を長くして待ち続けた方にも待った甲斐があったと思って貰えれば幸いです。




◆実は出版したくなかった「パーラ」の話

 さて、以降はゲームそのものとはあまり関係の内容です。ゲームの出版の周辺の事情に興味があるという方だけお読み頂ければと思います。

 ……2019年12月18日、ある男のツイートがトリテ界隈を騒然とさせました。後にぼくの中で12・18事件と呼ばれることになる事件の勃発です。


 私のトリックテイキングゲーム、Palaの新バージョンに日本のパブリッシャーが興味を持っているようです。日本以外の国で興味のある方はいらっしゃいますか?彼らはパートナーになることに前向きです!(Deepl翻訳)

 「パーラ」の作者、ジェフリー・D・アラーズのこの言葉に、トリテ界隈(狭い)は「すわパーラ日本語版発売か!」と色めき立ちました。

 これに対して、リアクションを見せる2人の男。





 やめましょうよ、そうやって犯人を絞っていくのは! 消去法でなんか色々出てきちゃうでしょ!!!

 ちなみにこの日、偶然にもぼくは東京に上京していまして、このツイートのことを全然知らなかったのです。なので、反応が遅れまして、傍から見ると黙秘権を行使する容疑者みたいなクソ怪しい立場に陥ってしまっていたのです。あと、杉木さんはちゃんと買ってくれるんですかね?

 では、ぼくが全くの無実の身であったかというと、えーと、それは、そのお……

 まあ、事実として! 事実としては、アラーズにメールしました! それは事実! 事実です!

 しかしながら、これはアラーズのツイートを見て貰えれば分かる通りに、「どこか別の会社が出版する予定ない? あるんだったら相乗りさせて欲しいなあ」程度のことを伝えただけで、「数寄ゲームズでの出版に興味があります」みたいなことは全然言ってないんです。少なくともこの当時は!

 それなのに「数寄ゲームズがパーラの日本語版出すんだって!」みたいな希望的観測がなんか勝手に形成されていきまして、ううっ! やめろお! そんな予定は全然ないんだよお! と一人悶えておりました。辛い。

 自分のとこでゲーム出すのと、人のとこでゲーム出すのに相乗りさせて貰うのって、全っ然違うからね!? っていうかそもそも相乗りさせて貰う土台すらもないんだからね!!!!

 挙げ句の果てに「乗り間違い」の出版に際して新作予想クイズを行ったところに寄せられた圧倒的な「パーラ」の回答数…… まあ、この時には「ガハハハ、『パーラ』じゃないんだワ、ガハハハ!」と開き直ってましたけども。


 で、結局のところ、「パーラ」を出版したいという奇特……もとい気骨のある出版社というのは出てこなかったんですよねー。その中で数寄ゲームズへの期待感だけが膨らみ続けるという状態が続いておりました。うへー。

 まあ、期待を寄せられるのは悪いことではありません。それから1年後、そう言えばあの話って進展があったのかなあ、と改めてアラーズにメールをしました。

 でまあ、前述の通りに進展がないとのことだったので、仕方ない…… 日本語版…… やりますか…… ということでアラーズとの契約を結んだのです。

 でも、この時にアラーズには「日本語版の契約結んだとか絶対に言うなよ! 絶対に言うなよ!」と言い含めました。なんせこの時にはいつ完成するかとか全く見えてませんでしたし、アートワークについても原版のものを利用できるかどうか確認中だったのです。

 とりあえずアラーズがダチョウ倶楽部を知らなかったようなのは幸いでした(いや、言って欲しかったワケではないです)。


 ともあれ、そんなこんなで制作が始まりました。制作はなんというか順調でしたね。

 今回アートディレクターをお願いした別府さんがうまく回してくださったのでオモシロエピソードとかもなく、すんなりと進みました。ただ、関係者が増えるとスケジュールの調整が大変になるなーということは覚えたので、今後に活かしたいと思います。


 とまあ、そんな感じで、実は「パーラ」は自分から「やるぞ!」と積極的に挑んだ企画ではなく、周囲からの圧力に負けて渋々始めた企画だったりもします。

 もちろん、やると決めたからには全力で取り組みますし、その結果が原版からの大幅な改修と言いますか、遊びやすさへのテコ入れです。数寄ゲームズのトリテシリーズとして出版するからには手抜きはできないワケで、毎回毎回が全力投球なのは今回も変わりません。


 では、なぜ「パーラ」の出版にイマイチ乗り気じゃなかったのか、と言えば、それは単純にゲーム性の問題でして、このゲーム、数寄ゲームズのトリテシリーズとしては変化球過ぎてクセがあまりにも強すぎると感じていたのです。

 数寄ゲームズのトリテシリーズって基本的には王道的な速球派投手を揃えています。これは偶然そうなっているのではなく、意図してそのように選んでいます。

 なぜ、そうしているかと言えば、日本ではトリテがそもそも知られていない現状があり、その状況を少しでも改善するために、初めてトリテを触る人にトリテの楽しさが伝わるゲームを揃えてきた背景があるワケです。

 誤解されやすいのですが、数寄ゲームズのトリテシリーズの目的は「レアな絶版トリテの復刻」ではありません。それだったら「ブードゥープリンス」を選ばないですよね?

 ビッドもまたそうした要素の一つで、これまでのトリテシリーズにはビッド要素のあるトリテはありません。ビッドってめちゃくちゃ強力なメカニクスで(トリテに革命を起こしたメカニクスなのでそりゃそうなんですが)、ビッドありのトリテから入るとビッドの楽しさが伝わるものの、トリテの楽しさが伝わらないということがままあります。なので、ビッドも意識的に避けてきたんです。

 巷の創作トリテを見てると、型なしのトリテが多いなーと感じます(これは日本に限った話ではなく、世界全体の話です)。これは型となるクラシックに触れられる機会が余りにも少ないせいだと考えています。

 「パーラ」は型破りのトリテです。型を知った人が敢えて様式を崩しに行ったトリテです。型を崩すというのは容易なことではないですから、単純にフォローの規則を変えました、というだけではなく、全面工事と言っていいほどの大規模な改修が必要とされます。それをやり遂げているトリテです。

 でも、知らない人から見たら型なしと型破りの違いってわかんないですよね。だから「パーラ」を出版することで「あれがOKならこれもOK」という誤解を招くんじゃないかという危惧を抱いていたんです。
 奇抜なだけのトリテがよいものとされる世界はぼくの好みの世界ではないので、ぼく好みの世界に世の中を近づけるためにはどうしたらいいか、それなりに考えていたワケです。


 そんなワケで、「パーラ」を出版する価値のあるユニークなゲームであることは認めつつも、その出版時期を考えると、数寄ゲームズのトリテシリーズが運良く10作くらい続いて、そろそろネタ切れだな〜、ってなってから考えても遅くはないだろうな〜とか考えていました。

 とは言え、物事には時期というものがありますので、念の為に出版の予定はないかアラーズに問い合わせたところ、12・18事件が勃発してしまったのです。藪をつついて蛇を出すとはまさにこのことですね。


 さて、そうこうしていたところ、ぼくの努力とは別に、世の中がぼくの好む方向に進んでくれた出来事がありました。それが「ザ・クルー」のヒットです。

 正直なところ、「ザ・クルー」以後、トリテ用語が通じるか否かのラインは大幅に引き下げられたと考えています。ヒット作の影響とはそういうものです。

 で、ありがたいことに「ザ・クルー」は極めて真っ当なトリテでございました。トリテを初めて遊ぶ人に妙な誤解なくトリテを知ってもらえる点で本当にオススメできるゲームだと考えています。その上で他のトリテとは一線を画す協力ゲームなので、「ザ・クルー」が好きだから他のトリテはいらない、とはならないのはありがたいですね。


 そんなワケで、ぼくが考えていたのとは別の形で、世の中がぼく好みの世界に近づいてきました。で、これだったら「パーラ」いけるんじゃない? という雰囲気が生まれてきたんです。

 「パーラ」は決して王道のトリテではありません。ヘンテコなトリテです。でも、ヘンテコさって基準線と比べて初めて価値がわかるものなので、受け手に相応のリテラシーを要求するきらいがあるワケです。

 「パーラ」が初めて世に出た10年前と何が違うかと言えば、まさにそのトリテへのリテラシーであると考えています。この数年でゲーマーのトリテのリテラシーは相当に高まっていると思います。とは言え、もっと広い層への浸透は全然叶ってないとも思うんですけども。


 そんなワケで今回の「パーラ」は、ヘンテコトリテをアグレッシブに世に問う作品という位置づけなのです。タナカマさんも言ってる通り「それほど売れなかったタイトル」が、果たして10年の時を経て世に受容されるようになったのか、それともやっぱり早すぎたゲームだったのかが、これから審判されるワケです。

 願わくは、このヘンテコなゲームが、ヘンテコであることに価値を見出して貰い、ヘンテコなゲームだね、と笑って貰えることを期待しています。正しく評価されることで次のヘンテコトリテの舞台が整うかもしれないのです。



 「脚色なしに異色で出色」、30分で考えたにしては、なかなかよいコピーになったのではないかと思っています。


パーラ

プレイ人数:3−5人
対象年齢:11歳以上
プレイ時間:30分

ゲームデザイン:Jeffrey D. Allers
アートワーク:坂本奈津希、SEIMI、たかみまこと、別府さい、Makiko Kodama、ママダユースケ
小売希望価格:2200円(税込)
ラベル:パーラ
posted by 円卓P at 14:18| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月02日

ゲーム紹介「厄介なゲストたち」



 数寄ゲームズは1000回遊べる推理ゲームの最新機軸「厄介なゲストたち」を販売します。プレイ人数1-8人、対象年齢12歳以上、プレイ時間45-75分で、小売希望価格は税込5940円となります。


 数寄ゲームズ通販サイトにて9月6日より予約開始、9月14日より先行発売を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。




 「厄介なゲストたち」は、1946年に発売された古典推理ゲーム「Cluedo」の系譜を組む推理ゲームです。「Cluedo」は容疑者、凶器、犯行現場のカードの束からそれぞれ1枚を秘密裏に引いて伏せることで「事件」を作り、その事件の真相を明らかにすることをプレイヤーが目指すという骨組みのゲームです。

 「厄介なゲストたち」ではこの骨組みがさらに拡張され、プレイヤーは事件の犯人、凶器、動機、そして共犯者の有無とその動機までもを突き止めなければなりません。


 しかも事件は単純なカードの順列組み合わせから形作られるのではなく、243枚のカードから特定の組み合わせで選ばれた70枚のカードの組み合わせによって作られるのです。「ブリリアントデッキシステム」と名付けられたこの独特なシステムは、素直に「どうやって作ってるんや!?」と驚かされる仕組みになっています。







 ゲームの流れについては文章を書くことのプロであるところの我孫子武丸先生が紹介記事をしたためてくださったので、そちらをご覧頂ければと思います。ぼくがダラダラと書き連ねるよりも断然読みやすい!


 Awkward Guests(厄介なゲストたち)
 https://note.com/abikotakemaru/n/n583030a3fcfe


 こちらは以前に販売した和訳付き英語版の紹介なので、用語等は日本語版とは異なる箇所がありますが、ゲームの流れに違いはありません。


 ちなみに我孫子先生には「厄介なゲストたち」の制作にひとかたならぬご協力を頂いておりまして、以前入荷した和訳付き英語版では用語の選定を監修をお願いし、今回の日本語版ではキャラクター造形、背景設定についてもお力添えを頂いております。

 「厄介なゲストたち」のキャラクターは見た目通りのコッテコテなバタ臭さなので、人物設定も原文では日本人にとってちょっと馴染みのない要素が散見されたのですが、そこを古典推理小説に見合った重みと胡散臭さを保たせつつ、日本人にもわかりやすいように整えて頂いた形になります。この辺りはさすが本職のバランス感覚で、硬軟の取り方がなかなか難しいところをうまくやって頂きました。


◆コンボ。ガチャ運。カードゲームの快感を備えた推理ゲーム

 さて、このゲームならではの魅力として「実際に推理してる感が強い」という点が挙げられます。やっていることは古典的な推理ゲームと同じ消去法ではあるのですが、それらと比較して真相に至るための道筋がいくつもあるというか、同じ事件に取り組んだプレイヤー同士でも、それぞれが違うアプローチで真相解明に近づいていくという辺りがこのゲームのユニークなポイントであると言えます。



 これを違うゲームで例えると、「TCGで即死コンボデッキを完成させるゲーム」という例え方ができるんではないか、とこっそり思っています。そのコンボを組み上げた瞬間に勝ちが確定するような強力なコンボ。しかしそのコンボを完成させるためには様々なカードを組み合わせなければならない。そんなイメージです。

 で、最終的な即死コンボは決まっているものの、コンボパーツの組み合わせパターンがデッキの中に無数にあり、プレイヤーによって「今回行けそうなコンボはこの流れだ!」というのが異なる、というような感じ。

 すげえ昔のM:tG話で申し訳ないのですが、停滞/Stasisを維持するために吠えたける鉱山/Howling Mineを使うのか、資源の浪費/Squandered Resourcesを使うのか、時エイトグ/Chronatogを使うのか、まあ、カウンターとかライブラリー制御とか色々なパーツが全部デッキに入ってるから、どれが早く完成しそうかは流れを見て判断してね、みたいな。


 また、「カード70枚で構成されている事件のデッキ」というのが実にうまい作りなのです。このカード枚数は、この手の推理ゲームとしては、べらぼうに多い枚数です。


 例えば「Cluedo」なんかは6人の容疑者、6つの凶器、9つの部屋を示す21枚のカードから、最初に除かれた3枚のカードを推理するゲームです。真相を解明するには残り18枚のカードを見る必要があります。

 「厄介なゲストたち」は1回のゲームで「Cluedo」の3倍以上のカードを使うゲームなのですが、全部のカードを見る必要はありません。難易度にもよりますが、70枚のうち半分くらいを見れば真相に辿り着くようにできています。事件の真相に辿り着くカードの組み合わせがデッキの中に何パターンも用意されているという感じです。

 つまり、カード1枚辺りの情報の重みが他のゲームに比べて軽いため、カードドローの回数を増やせるというゲーム体験上の利点があります。

 「カードを引く」「ダイスを振る」と言った運試し、ギャンブル、ガチャはもうそれだけで単純に強烈な快感なのです。「厄介なゲストたち」は他のゲームに比して多量のカードを投入することで情報を断片化し、ガチャの回数を増やし、快感を得られる回数を増やすとともに、プレイヤーごとのアタリ・ハズレにも豊富なバリエーションを持たせています。

 「厄介なゲストたち」は、まさに見出しの通りに「カードゲームの快感を備えた推理ゲーム」なのです。楽しさのタネはなんぞや、という観点から見た場合、カードドローの回数が圧倒的に多い点が従来の推理ゲームと大きく異なる点と言えましょう。



 さて、このように「厄介なゲストたち」は、構造自体は実にユニークで、素晴らしいゲーム理論を実現しているものの、肝心のカード引き、カード分配の部分には「Cluedo」からの進化があまりなく、ここが体験として若干惜しい部分とも言えます。対戦相手に情報を与えない立ち回りは「Cluedo」くらいシンプルなゲームであればゲームテクニックとして成り立つのですが、いかんせんこのゲームくらい情報が複雑化するとストレスが先立ちやすい面があります。もっと素直に快感に寄せてよいのではないかなと個人的には思います。


 優れた仕組みの多いゲームなだけにこの点だけは惜しいなー、と思うので、このモヤモヤを解決すべく、今回はバリアントルールコンテストを開催しようと思っています。よりゲームをクイックにカジュアルに遊べるバリアントルールを公募して、数寄ゲームズ公認バリアントとして公開するという考えです。

 コンテストの要綱は後日告知させて頂きたいと思います。英語版を持ってるんだけど日本語版を買い直すにはちょっと……という方向けに日本語版製品を賞品でご用意させていただく他、入賞者にはちょっと面白い賞品を贈呈させていただく予定です。


◆これぞ古典の超進化。1000回遊べる推理ゲーム

 さて、「厄介なゲストたち」のルールブックには30件以上の事件が掲載されていて、これを遊びきるだけでも一苦労なのですが、対応の専用アプリ(日本語化されてます!)を利用することで何千何万という事件をランダム生成して、遊ぶこともできます。最近はマーダーミステリーや脱出ゲームのように練り上げられた謎やシナリオを遊ぶ1回限りのゲームも人気ですが、それらとは異なり、このゲームではランダム生成された様々な事件シナリオを心ゆくまで遊べる点が大きく異なります。言わばシナリオやギミックを練り込んだ本格RPGとランダム生成されたダンジョンを練り歩くローグライクRPGの違いとでも言いましょうか。



 そう言えば、「厄介なゲストたち」の「1000回遊べる推理ゲーム」というキャッチフレーズは、まさにローグライクRPGの「トルネコの大冒険」でダンジョンがランダム生成されるように、事件が無数にランダム生成されるところをイメージしています。それで今気づいたんですが、「トルネコの大冒険」は我孫子先生がシナリオを担当した「かまいたちの夜」と同じチュンソフトなので、これはチュンソフト繋がりで脳内から這い出てきたフレーズなのかもしれません……


 少し長くボードゲームを遊んでいる人には驚かれるかもしれないのですが、店頭でお客さんから「四人の容疑者」について「これって1回だけしか遊べないゲームですか?」と聞かれることって少なくないんですよね。これはそうしたシナリオタイプのゲームが最近大いに盛り上がっていることから来るものでしょう。

 「Cluedo」系譜の推理ゲーム、「四人の容疑者」もそうですし、「スルース」「ブラックウィーン」「カテリーナの陰謀」、新しいところでは「クリプティッド」「惑星Xの探索」もこのグループと言っていいでしょうか、そうしたゲームを知っている人であれば、「1000回遊べる推理ゲーム」という惹句は「今更何を言ってるのか」と思われるかもしれないのですが、シナリオタイプの推理ゲームとは違う文脈、系譜のゲームなんだよ、ということをここで今改めて強く宣言しておきたいなということで、このように表現しております。ちょうどのこの辺りも「トルネコの大冒険」で、ローグライクという概念がまったく浸透していなかった日本で、どのようにローグライクを紹介するかで腐心したという当時の話に通じるものがあるようなないような……


◆ソロプレイもオススメ。秋の夜長に推理ゲーム

 また、このゲームの推しポイントとして、専用アプリを使ったソロプレイも実はかなりのオススメです。こうした推理ゲームって原理的に人数が必要なのですが、そうしたボトルネックさえもアプリの導入によって解決されているのは一つの革命なんではないかと思います。かがくのちからってすげー!

 安楽椅子探偵のように、ゆったりと心ゆくまで自分の推理に没頭できるのはソロプレイならではの特権と言いますか、比較的長考気味な自分にとってはマイペースに遊べるのはマルチプレイゲームとはまた違った楽しさがあります。


 ソロプレイについての詳しい遊び方は、こちらの記事で紹介しております。

 「Awkward Guests / 厄介なゲストたち」ソロプレイの遊び方
 http://sukigames.seesaa.net/article/477481314.html

 こちらは和訳付き英語版を販売した際に書いたものなので、アプリ画面も英語ですが、現在はアプリも日本語化されていますので相当遊びやすくなっています。UIもアップデートで若干変わっています。


 カードの準備と片づけがやや面倒くさいのが難点ではありますが、自分の持っていない情報をいかにアプリから引き出すか、質問の仕方にテクニックがありますので、色々と試して頂ければと思います。


◆唯一無二の推理ゲームをぜひ

 ということで、「厄介なゲストたち」は様々なユニークな長所を備えた推理ゲームです。このゲームが発売された2016年であれば、文句なしに推理ゲームの最新鋭と言えたのですが、それから6年が経ち、後継作としてより洗練された同作者の「ScandalOh!」が発売されたり、細々としたセットアップを完全にアプリに任せてプレイアビリティを向上させた「惑星Xの探索」といったゲームも生まれ、このゲームの先進性は若干過去のものとなりつつはあります。

 しかしながら、洋館での殺人事件というベタベタな推理小説テーマのゲームとしては今なお「厄介なゲストたち」は唯一無二の存在ではあります。マーダーミステリーなどが流行るところからも分かる通りに、日本人は推理テーマが殊の外好みです。

 名探偵コナンなんかは今や国民的マンガ、アニメですしね。まあ、わしらが子供の頃はコナンと言ったら未来少年か蛮人だったのじゃが…… と言うか、今回の記事は昔話が多すぎますね!

 駄話は置いといて、そういう意味でもこのゲームは広く愛されるゲームなのではないかと思います。英語版でも何度か遊んだのですが、今回の日本語版を改めて遊んでみるとやっぱり面白いゲームだなあ(あと日本語版は遊びやすいなあ)と思わされたので、ぜひ多くの方に触れて頂きたいと思います。


 あと、数寄ゲームズ通販サイトにて販売する「厄介なゲストたち」日本語版にはゲームの手助けとなる「推理の手引きシート8枚」を同梱いたします。ルールブックからは読み解きにくい細かいゲームの仕様についての補足を記したシートで、初めてこのゲームを遊ぶ際に落としやすい情報を記しています。

 ルール自体はさほど難しいことは書いてないんですけどね。ゲームの細かい仕様が読み取りづらいと言いますか。



 シート自体は印刷可能なPDFファイルを後日公開しますので、数寄ゲームズ通販サイト以外で購入される方でも入手できます。手作りなのでデザイン的な部分は目を瞑って貰えれば幸いです!


厄介なゲストたち(2022/原版は2016)

プレイ人数:1-8人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:45-75分

ゲームデザイン:Ron Gonzalo García
アートワーク:Samuel Gonzalo García, Laura Medina Solera
出版社:Megacorpin Games / 数寄ゲームズ

小売希望価格:5940円(税込)
posted by 円卓P at 12:20| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする