2024年07月01日

ゲーム紹介「スマートフォン株式会社 拡張:Update1.1」



数寄ゲームズは、「スマートフォン株式会社 拡張:Update1.1」を発売します。プレイ人数1-5人、対象年齢14歳以上、プレイ時間90分で、小売希望価格は税込4400円となります。

7月1日から数寄ゲームズ通販サイトにて先行販売の予約受付を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。

「スマートフォン株式会社 拡張:Update1.1」は、スマートフォンの製造販売というホットなテーマと、パットを組み合わせてアクションポイントを割り振りする洗練されたアクション選択システムで人気を博した経済ゲーム「スマートフォン株式会社」の待望の拡張セットとなります。

「スマートフォン株式会社」の初版は2018年に発売と、すでに6年もの月日が過ぎているのに個人的には驚きを隠せないのですが、考えてみれば4G通信が最新技術としてフィーチャーされている時代のゲームではありましたねえ、と思い直しました。今の時代だと、1からスマホ会社を立ち上げて先行者からシェアを奪うのは難しいかもしれませんねえ…… バルミューダフォン的な……

そうした時代設定も含めて一世代前のゲームとも言えるのですが、奥深さと遊びやすさを両立させたゲームデザインは今もなお先進的な存在と言えますし、アートワークもバッチリキマっていて、今回の拡張セットのパッケージアートも素晴らしい出来栄えです。今でも衰えない人気があり、時代を越えても古びない、稀有なゲームと言っていいんじゃないかなと思います。



さて、そんな「スマートフォン株式会社」の拡張キット「Update1.1」では、「2−3人プレイ用ボード」「新技術タイル」「指令タイル」「ハードコアモード」の大きく分けて4つの要素が登場します。各要素はモジュール式になっているため、それぞれを加えるかどうかを細かく調整することも可能です。

それでは、各要素について詳しく説明していきましょう。



◆少人数でも申し分なし! 贅沢な専用マップ

「スマートフォン株式会社」は世界中のスマートフォンの需要を奪い合う対戦ゲームです。各プレイヤーはスマートフォン製造会社のCEOとなり、世界各地で市場争いに血道を上げるのですが、やはり舞台が広大な「世界!」ということもあり、熱いバトルを繰り広げるにはそれなりのプレイヤー人数が必要という前提がありました。

そのため、このゲームのポテンシャルを引き出せるのは最大人数の5人というのもよく聞こえてくる言説です。ソロプレイにも対応し、AIプレイヤーのスティーブをプレイヤーとして追加するオプションもあるとは言え、プレイ人数の制約が強めのゲームなのは否めません(また、後発の「モバイルマーケット」はそうした少人数プレイのニーズに応える形で開発された側面もあるでしょう)。



今回追加される2-3人プレイ用ボードは、その名の通り2-3人プレイ専用の新しいマップとなります。「スマートフォン株式会社」は、全体ボードがダブルレイヤー仕様という大掛かりな設計のゲームなだけに、新マップの追加は結構な難しさを感じさせるのですが、ルールの変更で対応するのではなく「新マップを作ります!」という大胆さには大きな意気込みを感じます。

そのため、少人数で遊ぶ機会が多い方にはまさに念願の拡張セットと言えるのではないでしょうか。体積が箱の半分を占めるこの新マップを存分に楽しんでいただければと思います。



また、新マップは単純に少人数向けにアジャストしただけでなく、予算か技術かのどちらかの条件を満たすことでスマホを購入してくれる新タイプのバイヤーも登場します。個人的には少人数で遊ぶ機会が少ない側のプレイヤーなので、なかなかこのマップを楽しむチャンスを得られなさそうなのが歯がゆいところですが、どこかで折を見て試してみたいなと思っています。

ちなみに新マップでは改善ブロックの数が絞られ、各ラウンドで3枚だけしか改善タイルが公開されないのですが、このルールは基本ゲームのマップに流用することもできます。

また、基本ゲームの日本語版とは異なり、マップに貼り付ける地名用の和訳シールはありませんので、ご注意ください。


◆よりシャープな体験をもたらす新技術タイル

それじゃ普段から4-5人で「スマートフォン株式会社」を遊んでいる人にとって「Update1.1」はバリューの薄い拡張セットなのか、と言われれば、いいえ、そんなことはありません。熟練プレイヤーにとっては待望の新しい技術タイルが登場します。


「スマートフォン株式会社」ではゲームごとに5枚の技術タイルが登場します。これらの技術の組み合わせによってゲームの展開は大きく変化します。

ただ、基本ゲームの10種類の技術は組み合わせのパターンが限られているため、繰り返し遊ぶ上ではもう少し新味が欲しいというニーズがありました。



今回の拡張セットでは新しく10種類の技術が加わるため、組み合わせパターンも大きく増加します。基本ゲーム以上にリスクとリターンが顕著な「尖った」技術が数多く登場するため、プレイングにはより高度な判断力が求められるようになります。



中でも白眉なのはゲームに同梱されたCEO駒を盤上で動かし、CEO駒がいる地域に大きな影響力をもたらすCEOテクノロジーでしょう。この技術は他社を圧倒する強烈な効果をもたらす一方、CEOの移動のためにコストを支払う必要があり、効率的にCEOを働かせるという新しいレイヤーの思考が必要になります。


◆指令モジュールで早取り達成要素がプラス



指令モジュールでは、プレイヤー全員の共通目標となる指令タイルがゲームに加わります。他プレイヤーに先んじて目標を達成することで大きなVPを得ることができるので、各プレイヤーの動きにはより細かく目配せする必要があるでしょう。

指令タイルはゲーム開始時に規定枚数が用意されるだけで、ゲーム中に補充されることはありません。獲得の機会は限られるため、指令タイルを目指してプレイするか、それとも自分の戦略を貫き通すかでジレンマが発生することもあるでしょう(もちろん自分の戦略を構築しつつ指令タイルを確保できればベストなのですが)。


指令タイルは多くのゲームでよく目にする早取りの目標達成要素なので、要素自体にはさほど新味はないのですが、手番順がキモな「スマートフォン株式会社」での「早取り」は少し味わいが異なるところがあります。

例えば、指令タイルの目標を複数のプレイヤーが同時に達成した場合です。その場合、タイブレーカーとしてはアクティブな手番プレイヤーが優先され、誰もアクティブではない場合はスマホの設定価格が低いプレイヤーがより優先的に指令タイルを獲得することになります。

そのため、(手番順にしても設定価格にしても)基本ゲームに比べて値下げによりベネフィットを与えた作りと言え、要所での価格競争がより激化するモジュールという性格も持っています。


◆これぞ熟練者向け。コストに頭を悩ませるハードコアモード

「スマートフォン株式会社」の優れた部分は、現実の経済活動を簡略化、抽象化し、複雑なうねりを持つ社会活動を遊びやすくゲーム的に表現しているところにあります。それは大きな美点の一つですが、一方でそうした抽象化によってシミュレーション的な精緻さを失っている側面もあります。



ハードコアモードは「スマートフォン株式会社」の力学を少しシミュレーションに寄せたルールと言えます。具体的には各アクションにそれぞれ費用が発生します。ノーマルモードでは無料で作れるだけ作ったスマホを売れるだけ売り捌き、売れ残りはそのままポイしてきたのが、これからは無駄なく作り、無駄なく売り切ることを目指すようになります。潤沢に予算をかけることができた研究開発や支店開設もこれからは社内の金食い虫と揶揄されることになるかもしれません。

「スマートフォン株式会社」では売り上げはすべてVPとして処理されてきたので、コストの支払いとはすなわちVPの喪失となります。ゲーム開始時の売り上げが立ち行かない時期にはVPがマイナスの領域に飛び込んでしまうこともあるでしょう。

そうした場合には「利子」が発生し、追加でVPを支払わなければなりません! 逆に潤沢にVPを獲得している企業はボーナスとしての「利息」を得ることができます(ただ、支払う利子に対して、得られる利息は小さく、銀行業への暗い感情を抱きそうになります)。ならば先に売り上げを立ててから技術なり販売網なりを拡充するほうがいいのか……? と戦略の立て方が大きく変わってきます。


こうしたコストの概念の登場によって、「スマートフォン株式会社」は大きく様変わりします。技術が全てをいい方向に動かしていくという技術至上主義のゲームが、現実との折り合いをつけるゲームに変貌するのです。コスト周りの計算によって手間は増えますが、よりリアルな経営ゲームを遊びたいという方にお勧めのルールと言えます。スピンオフタイトルの「モバイルマーケット」でもコストの概念が取り入れられていましたが、やはりこの辺りを意識したものなのでしょう。


ハードコアモードがお届けするのはスマートフォン株式会社の持ち味である「心地よいゲーム体験」とは一風異なるものとなります。より世知辛い、苦みの籠ったゲーム体験を味わえると思いますので、こちらもぜひ遊んでみて頂ければと思います。


なお、ハードコアモードでは指令タイルの達成によって即金が手に入るので、基本ルールと比べて指令タイルの重要度がかなり高くなるかもしれません。


◆様々な遊び方が広がる拡張セット

この拡張セットは大幅なルールの刷新といった要素はなく、基本ゲームにある要素を活かしてゲーム展開のバリエーションを増やした内容と言えます。まさに「Update1.1」の名の示す通りの内容と言えます(とは言え、ハードコアモードはゲーム哲学的には結構大胆な変更だとも思います)。

「スマートフォン株式会社」を楽しんでいる方にとっては選んで間違いのない拡張ですので、ぜひとも一緒に楽しんで貰えればと思います。

また、発売までファンの皆様には大変長い時間お待たせしましたが、やはり、ここが拡張セットの難しいところでして、こちらが出したいと思っていても版元の都合によって実現が難しいということは本当に本当によくあることなのです。

そういう細い糸を掴んでなんとか出版に漕ぎ付けたタイトルになりますので、今後も拡張セットの販売を続けられるように皆様のご助力を頂ければと思っています。どうぞよろしくお願いします!
posted by 円卓P at 11:59| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月24日

ゲーム紹介 エヴァキュエーション



 数寄ゲームズは、滅亡する地球から避難して新天地に移住する戦略ゲーム「エヴァキュエーション」を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間60−150分で、小売希望価格は税込9900円となります。

 4月27日のゲームマーケット2024春にて先行発売を行い、その後、数寄ゲームズ通販サイトでの販売や全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。



 「エヴァキュエーション」は「アンダーウォーターシティーズ」「プラハ 王国の首都」などで知られるウラジミール・スヒィの最新作となります。スヒィさんは「メッシーナ1347」「ウッドクラフト」と新人デザイナーとの共作が続いていましたが、今回は久々の単独デザイン作品となります。「メッシーナ1347」「ウッドクラフト」は優れたシステムだけに留まらずテーマとの親和性も高く評価された2作ですが、「エヴァキュエーション」もその流れを受け継いで、インパクトのある舞台設定によってプレイヤーがやるべきことを明瞭に提示した作りとなっています。

 とは言え、「エヴァキュエーション」はこれまでのスヒィ作品とは相当にゲーム力学が異なる仕上がりとなっています。様々な作品を世に問うてきたスヒィさんですが、過去のどのタイトルとも似つかない独自の魅力を備えた作品となっていますので、その特徴を今回の記事ではご紹介したいと思っています。


◆旧世界と新世界、人類の命運を賭けた地球規模のお引越し



 このゲームの背景設定は、太陽の膨張により、地球の表面が焼け焦げるという強烈な……昨今の激烈な気候変動を彷彿とさせる物語から始まります。地球滅亡までの猶予はわずか4年! もちろんこれはゲーム上で設定された便宜的な"年(ラウンド)"なのですが、残り僅かな時間の中で、プレイヤーは滅亡を間近に控えた地球から新天地へと人々や文明を避難させなければならないのです。


 そうした舞台設定をゲーム上では旧世界、新世界という2つの"場"として構築し、この2つの世界を断絶させることで、新世界への移住という難題を表現しています。

 ゲーム開始時、旧世界にはこれまでの人類の成果でもある多くの工場が林立しているため、様々な資源が自動的に生産される環境が整っています。そして、プレイヤーはこの資源を使って技術を開発し、宇宙船を建造し、工場プラントや人々や資源を新世界に輸送しなければなりません。

 一方、新世界には資源を生み出す工場や施設はまったくなく、すべて1から作り上げなげればなりません。旧世界から運び込まれた工場プラントや人々を入植させることで、新世界は徐々に生産力を高め、やがて旧世界から独り立ちしていきます。


 つまり、このゲームは旧世界での縮小再生産と、新世界での拡大再生産が同時並行で進むゲームと表現できます。拡大再生産は多くのゲームで見ることができる人気のメカニクスではありますが、一方で縮小再生産は快感に乏しい原理からなかなかうまく行った成功例が見当たりません。

 興味深くはあるが快感原則に反する縮小再生産をどう取り扱うのが正解なのか、という問いに対して、拡大再生産を同時に行えばええんや! という回答は、理に適った新しい提案と言えましょう(天才型主人公とその兄貴分(ただし途中で死ぬ)のダブル主人公型アニメみたいな)。


 その試みによって「エヴァキュエーション」は非常に独特なリソース管理ゲームとして完成しています。このゲームの原理として、資源を支払って何かを得る場合、「資源の支払い元と獲得するものは常に同じ世界でなければならない」という原則があります。



 基本ゲームの勝利条件の1つとして「新世界にスタジアムを3件建てる」という目標があるのですが、この目標を達成するためには「新世界で資源を支払って新世界にスタジアムを建設する」か「旧世界で資源を支払って旧世界にスタジアムを建設し、のちにスタジアムを新世界に輸送する」の2つの方法があるわけです。



 ゲームの序盤であれば、資源の豊富な旧世界でスタジアムを建て、それを輸送するほうが確実でしょう。しかし、新世界が発展してからは、輸送の手間を削減できる新世界でスタジアムを直接建設した方が手っ取り早いかもしれません。

 同じ1資源であっても新世界と旧世界のどちらにあるかで全く価値が異なる独特のエコシステムはいつもと違う脳の部位を刺激してくれます。

 ゲームに慣れないうちはこの資源のやりくりに戸惑う部分も少なくないかとは思いますが「旧世界で資源を払ったら旧世界で得る。新世界で資源を支払ったら新世界で得る」という根本原理さえ抑えれば、そうそう混乱はないでしょう(とは言え、旧世界に資源があるのに新世界に資源がない、という状況が頻発するゲームなので、ついつい旧世界の資源を支払って新世界での買い物ができないものかと考えてしまうんですね)。


 リソースの種類も使い道も簡潔で絞られてはいるので1つの世界をミスなく回すのは全く難しい話ではありません。しかし、これが同時に2つ並行処理を求められると途端に難度が跳ね上がるのがゲームデザインの面白いところです。これって宮本茂のいうゲームの面白さの作り方そのものなんですよね。

https://www.nintendo.co.jp/wii/interview/smnj/vol1/index.html



 やるべきことはわかりやすい。でも、実際にやり遂げるのは難しい。「エヴァキュエーション」の2つの世界という組み立ては、ゲームバランスの目指すべき理想を的確に実現しているスジのいいゲームデザインと言えます。


◆早取りのストレス皆無? 独立性の高いアクション選択システム

 「エヴァキュエーション」にはいくつかのゲームオプションが用意されているのですが、初回プレイでは「レースモード」が推奨されています。これはいずれかのプレイヤーが「新世界に3件のスタジアムを建設し、3種の資源の生産量を8以上にする」条件を満たしたら終了トリガーが引かれるサドンデス形式のゲームモードで、ゲーム全体の流れ、大枠を掴むのに適しています。

 ゴールが明確に設定されているため、後はどのようなルートを通ってゴールに到達すればいいかを考えればいいわけです。



 手番では個人ボードの下部に列挙されているアクションスロットから一つを選び、アクションカードを差し込んでアクションを実行します。アクションの実行にはエネルギーを支払う必要があり、エネルギーを支払える限り、ラウンド中に何回でもアクションを実行することができます(といっても1ラウンドで実行できるアクション数は4-5回程度でしょうか)。



 この手のゲームとしてちょっと変わっているのは同じアクションを複数回重ねて実行することもできる点です。ただし、同じスロットのアクションを4回以上選ぶとエネルギーを追加で1つ支払わないといけません。

 また、アクションはワーカープレイスメントなどの早取りではないので、やりたいアクションを他プレイヤーに先に取られて歯噛みするといったストレスがありません。アクション選択の縛りが相当にゆるい作りで、基本的に他者の干渉によって計画が狂う場面が少ないストレスレスで独立性の高いエンジンと言えます。


 これまでスヒィさんのゲームでは「アンダーウォーターシティーズ」「メッシーナ1347」で見られるワーカープレイスメントや、「プラハ 王国の首都」「ウッドクラフト」で見られるダッチオークションのどちらかに属するアクション選択システムを採用していたのですが、「エヴァキュエーション」はその両者にも属さない、独自性の高いアクション選択システムを採用しています。

 その分、手元の経済パズルに集中できる作りになっていて、スヒィ諸作の中でもかなりハッキリとした「内向きのゲーム」となっています。これまでのスヒィ作品の中では「アンダーウォーターシティーズ」が内向き度が高いゲームではありましたが、「エヴァキュエーション」はそれ以上に内向き度が強いタイトルと言えるのではないかなと思います。


 ただ、アクション選択におけるプレイヤー間の相互干渉は薄いものの、多人数ソロパズルに堕してはいません。例えば、新世界の入植は割のいい土地から埋まっていく早取り要素があるので、手番順はかなり重要です。陣取り要素とまではいかないのですが、お目当ての土地を抑えるためには人の動きを常に気にかける必要があります。


 人類の入植地となる新世界にはツンドラ、砂漠、森、海の4つの環境があり、ゲーム開始当初は極寒のツンドラにしか入植できない人類も、スイングバイのような見た目の「進展トラック」を進めることによって新たな環境に入植できる力を身に着けていきます。



 基本的にはこの進展トラックを進めば進むほど新しい環境、より効率的な入植が可能になるのですが、この進展トラックを進めるために必要なのが「パワーレベル」です。



 パワーレベルは各アクションスロットに設定されており、アクション自体の強さとパワーレベルは逆相関関係にあります。強いアクションはパワーレベルが低く、弱いアクションはパワーレベルが強く設定されているのです。そのため、進展トラックを進めるためには敢えて弱いアクションを選択しなければならないジレンマがあります。

 また、進展トラックには様々なボーナスが用意されていて、このボーナスは手番順の早取りになっています。このボーナスによって次ラウンドの入植可能な土地が決まるので、手番順は非常に重要です。


 基本的には多数派の逆張りをすると立ち回りがラクになるので、多数派が進展トラックを積極的に進めるのであれば抑え気味に動き、逆に多数派が強アクションを連打して進展トラックを軽視するようであれば一人で飛び出す動きが強いのではないかと思います。


 また、アクションのパワーレベルがボーナス値と一致するとボーナスフェイズで利益を得ることができます(条件を緩和する選択ルールもあり)。ここで得られるボーナスはかなり魅力的なので、ボーナスを狙うかどうかも重要なポイントです。



 結果として、実行するアクションの内容だけにとどまらず「進展トラックをどの程度進めるか」「ボーナスを狙うか否か」まで含めて選択するアクションを考慮する必要があり、やりたいアクションを単純に選ぶだけではうまくいかないようになっています。これもまた「ひとつひとつはカンタンにできることを2つ同時にやろうとすると難しい」という好例ですね。ディレクションの根底に流れる理屈には常に妥当性があり、ゲームデザインの説得力に繋がっています。


◆「その技術強すぎない!?」 各人異なる技術タイルを使いこなせ!

 スヒィ作品は常々プレイヤーに新しい能力を付与する強化&成長要素があり、どのように戦略を選択するかで毎回悩ませてくれるのですが、「エヴァキュエーション」ではそれは「技術タイル」という形で実装されています。

 この技術タイル、各プレイヤーごとにそれぞれ内容が異なる9枚の1セットが配られます。技術タイルの中には各セット共通の技術もあるものの、ほとんどがユニークで非対称性が強い作りと言えます。



 技術タイルにはLv1、Lv2、Lv3の3種があり、最下段にあるLv1の技術タイルを完成させると、その直上にあるLv2技術タイルの研究に着手できるようになります。同じようにLv2技術タイルを完成させるとその直上のLv3タイルの研究を始められるので…… つまり、技術タイルの並び順は言わば簡易テックツリーとなっています。

 この並び順はセットアップの際にランダムに決まるので、特定の技術を選択したいけれど、前提技術はイマイチだな…… みたいな場面が往々にしてあります。技術の並び順を見て今回はこれでこれでこうかな?と戦略を練るのは楽しい時間になるでしょう。

 また、基本的には技術には目を疑うような強烈な効果が記載されています。他プレイヤーの完成させた技術の効果に「ウソでしょ!?」と言ってしまうこともしばしば。実際、技術の効能は強力で全部の技術を完成させたくもなるのですが、ここがスヒィ作品あるあるで技術の研究に手を割きすぎて勝利が遠のくことも多いので、どの技術経路を拾ってどの技術経路を断念するかの取捨選択が重要になります。


◆得点モード、上級カードアクションルール、各種モジュール

 さて、ここまで「エヴァキュエーション」の特徴として「他者からの干渉が薄く、ゲーム終了までの道筋が明確である」ことを美点として語ってきましたが、実はこの美点はひっくり返すと欠点にもなります。

 「ゲーム終了までの道筋が明確である」ということは言い換えると「選択すべきアクションの組み合わせはほぼ決まっている」ということでもあり、「他者からの干渉が薄い」ということは「計画を崩されるアクシデントも少ない」ということでもあります。

 そのため、ある程度ゲームに慣れた人が1度遊べば、この順序でアクションを選択すれば形になるんじゃないか、という見通しが大方つくと思います。「スタジアムはゲーム開始時に1件持っているので、残り2件を建設するために2手番は割かなければならない。4回しかない輸送の機会を活かすために宇宙船は2隻は必要なのでこの建設にも2手番が必要。では、残りの約16手番をどのように割り振るかというと……」というように演繹的に必要なアクションを割り出すのはそれほど難しいことではありません。一見強力な効果ばかりに見える研究アクションも手数を考えると選択できる回数は実はそれほど多くないこともわかります(それよりは得点行動を優先したほうがいい)。


 「底が見える」という表現をぼくはよく使うのですが、1回のプレイでゲーム力学の奥底が見通せるデザインのゲームは少なくありません。で、一度遊ぶと「エヴァキュエーション」もそうした「底が見えるゲーム」っぽいところがあるのです。


 実際、ぼくも最初はそう思っていました…… が、実は経験者用の「上級カードアクションルール」と「得点モード」を選択すると、この辺の様相はガラリと変わります。



 基本ルールの「レースモード」は、要は勝利条件達成に向けて約20手番をどう振り分けるかのゲームだったのですが、「上級カードアクションルール」では、プレイヤーは4枚のアクションカードを持ち、通常アクションの代わりにカードのアクションを実行することもできます。アクションカードは通常アクションの1手番1アクションの原則をぶち壊して1手番で2アクションを実行できるようなパワーレベルカードが多く含まれているため、条件達成までの経路が爆発的に増大します。自分で引いて「こんなのあるの!?」と叫んだり、他人がプレイして「それ強すぎない!?」と叫んだり、とにかくヤンチャな内容のカードばかりです。


 ただ、アクションが強いということは進展トラックを進めるためのパワーレベルは低いということでもあり、強いアクションに頼ってばかりいるといつまでも入植効率は悪いままという仕組みがよくできているところです。強力なアクションカードをついつい使いたくなってしまうのが人情ですが、勝つためには全体のバランスを考慮しなくてはなりません。


 また、カードを引いてアクションを行うゲームと言えば「アンダーウォーターシティーズ」を連想しますが、「アンダーウォーターシティーズ」は「欲しい色のカードを引いて嬉しい!」「欲しい色のカードが引けなくて苦しい!」といった射幸心に訴えかけるデザインなのに対して、「エヴァキュエーション」のカードは「なんだこれ強いぞ!?」というシンプルな驚きが強く、印象としては全く異なります。「エヴァキュエーション」では通常アクションでゲームの進行に必要なアクションがすでに網羅されているため、カードの引きで手詰まりになることはありませんし、カードプールもごちゃ混ぜでそもそも何を期待していいかわからないので素直にカードドローの結果を楽しめるということもあるのでしょう。

 そんなワケで一口に同じアクションカードという括りでも、それがもたらすゲーム体験は全く違うところが面白いところです。繰り返しになるんですが、「エヴァキュエーション」はスヒィさんの過去作に似てるようで全然似てないゲームです。


 また、「得点モード」では4ラウンド終了フルプレイの後に、それぞれドラフトで獲得した目的カードに応じた得点を得るゲームに変貌します。こうなると終了条件に縛られることなく、特定の得点源を最大化するための尖ったプレイが許されるようになるのです。



 とは言え、それぞれの目的カードがどれくらいの点数を稼ぎ出すかを推測できないと目的カードのドラフトが覚束ないので、やはり初回は「レースモード」から入ったほうがいいかもしれません(または初回プレイ用得点モード用の目的カードセットとかを考案してもいいのかも)。

 初回プレイ推奨のレースモードはサドンデス形式のため、拡大再生産が最高に盛り上がる最終ラウンドの潤沢な資源を使い切れないままゲームが終了するパターンもままあります。より多くの資源を稼ぐのではなく、より早くゴールテープを切るプレイングこそが「うまいゲームプレイ」ではあるのですが、最後までやりきることが好きな人もいるかと思いますので、ここは好みで選んでもいいのかなと思います。


 長々と色々言ってきましたが、つまりぼくが強く言いたいのは「エヴァキュエーション」は初回プレイで底の見えるゲームではないということです。ぜひ「得点モード」と「上級カードアクションルール」まで試してみて欲しいと言いたいのです。

 タイパが重要視される昨今において、1回のプレイのみならず2回、3回と遊んでようやく真価が見えるゲームですよ、とお伝えするのは却って欠点と捉えられてしまう恐れも孕んではいるのですが、それでもこのゲームは1回遊ぶことで見えてくる底は偽りの底であり、二番底、三番底がその奥深くに存在するということを前もって伝えておかないと誤解を招きやすいゲーム構造にはなっていると思うのです。


 前作の「ウッドクラフト」は追加ルールが一切ない、基本ルール一本槍という潔い構成で、こうした構成であれば底の有無で誤解が生じることはありません。ただ、「ウッドクラフト」はそれなりの手練れでも「何をしたら勝てるかわからん!」となることも稀ではない高難度のゲームではありまして(頭をぶん殴られる衝撃でアレはアレでよかったんですが)、それが長所でもあり、短所でもありました。


 「エヴァキュエーション」では打って変わって、様々な選択ルールとモジュールが実装されています。これは段階を追ってゲームに習熟する導線にはなっているものの、ゲームの奥底が誤解されやすいという弱点も抱えています。「拡張ルールを使っても、大体同じでしょ?」という思い込みというか。


 なので今、ぼくはハッキリと「このゲームは2回目以降が本番ですよ!」とお伝えしておきます。1回遊んだだけで理解した気になるにはあまりにもったいないゲームだとぼく自身が感じたからです。

 とは言え、初回プレイが全く実りのないゲームかと言えばそうではなく、しっかりとしたわかりやすい目標設定の元で独特なリソース管理に頭を悩ませるだけでも十分な面白いんです。まあ、だからこそ、却って初回プレイで納得してしまうという側面もあるんですが…… 基本ルールだけで満足感のあるゲームにはなってるんですよね。


 じゃあ、初回から「上級カードアクションルール」から遊べばいいのかというと、それはまたちょっと違ってて、基本ルールで遊んだ初回プレイの経験を元に上級カードアクションルールを遊ぶとその温度差で風邪を引くんじゃないかと思うほどに笑えるので、順序を追って遊ぶのが一番価値の高いプレイ体験になるのではないかと思います。


 また、他にも得点条件を追加するモジュールも複数用意されているので、色々な組み合わせで楽しんでほしいなと思っています。こちらはさすがにゲーム体験が大きく変わるほどではなく、味変くらいの位置づけではありますが。


◆新しい挑戦が、やがて至高の体験へ開花する

 実際のところ、「エヴァキュエーション」は他のゲームには見られない変わった要素が多く盛り込まれているため、初回のプレイフィールは「気持ちよさ」よりも「気持ち悪さ」が勝るところがあるかもしれません。遊びやすいゲームが世に溢れている昨今において、直観的ではない処理が含まれるのは明確に弱点ではあります。

 しかしながら、ゲームデザインの奥深さは現実原則を飛び越えた空間にこそ存在します。最近、本当に多い「すんなりプレイできるけど遊んだ後に何も残らない」タイプのゲームに対して「エヴァキュエーション」はそれとは全く真逆の「プレイヤーの直感に反してでも心にインパクトをねじ込む」タイプのゲームです。一貫してそうしたゲームを作り続けているのがウラジミール・スヒィというデザイナーへの信頼でもあります。

 2回、3回とゲームを繰り返していくことで「エヴァキュエーション」の世界に徐々に「馴染んでいく」ようになっています。そうなれば待ち構えているのはアクションの組み合わせによるめくるめく快感の世界です。これから遊ばれる皆様には上級アクションカードのぶっ飛び具合と初期方針を貫徹せねばという自制心との葛藤をぜひ味わってほしいです。

 用意されている様々な追加ルールの存在もそうですが、技術タイルの非対称性の強さも、繰り返し遊んで欲しいというメッセージを感じます。次は違う技術セットを使ってみたいなと思わせる力があります。


 スヒィさんの作品の中で最も遊びにくい作品なのかと問われると、「ウッドクラフト」や「プラハ 王国の首都」の例があるので、それほどでもないかな、となるのは、まあ、なんというか業の深い作者だなとは思うのですが、プレイフィール自体も重すぎるということはなく、重ゲーに求めるちょうどいい負荷量を与えてくれるゲームだと思いますので、期待を裏切ることはないかと思います。


 なので、繰り返しになりますが、初回プレイだけで見極めたつもりになるのは本当に損なタイトルなので、ぜひ用意されている要素すべてをしゃぶり尽くして頂きたいなと思っています。ウラジミール・スヒィという人は骨太さと華やかさとランダム性と競技性をハイレベルに整えることができる稀有なゲームデザイナーであり、この「エヴァキュエーション」も新時代のニーズに合わせた新たな一歩だと思っています。




エヴァキュエーション

プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-150分

ゲームデザイン:Vladimir Suchy
アートワーク:Michal Peichl
小売希望価格:9900円(税込)
posted by 円卓P at 11:44| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月09日

ゲーム紹介「ウッドクラフト」



 数寄ゲームズは木材に見立てたダイスを加工して木工品を作る戦略ゲーム「ウッドクラフト」を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間60−120分で、小売希望価格は税込8800円となります。

 6月12日から数寄ゲームズ通販サイトにて先行予約及び販売を行い、その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。



 「ウッドクラフト」は、「アンダーウォーターシティーズ」「プラハ 王国の首都」「メッシーナ1347」と立て続けに快作をリリースし続けるVladimir Suchyが、新人Ross Arnoldとタッグを組んで世に送り出すユニークなリソースマネジメントゲームです。プレイヤーは様々な木工細工を作る職人となり、材料や消耗品を調達したり、助手を雇ったり、工房の設備を強化したり、新たな注文を受注したりして、より多くの注文の達成を目指します。


 中でも特徴的なのはダイスを木材に見立てた独自のリソースマネジメント部分で、ダイスの出目を木材の大きさに見立てることで、ダイスをカットして2つに分割したり、端材を接着してダイスを増やしたり、異なる2つのダイスを接合したりと、ダイス目をいじる形で木工品をちまちま作る感覚を表現しています。これがテーマと実にマッチしているんですね。


 メインエンジンは「プラハ 王国の首都」を彷彿とさせるダッチオークション的なアクション選択。「Shipyard」から連綿と続くスヒィさんお気に入りのメカニクスが更に洗練され、一手一手が悩ましくもオトク感のある作りになっています。次の項目ではその辺りをより詳細にお伝えしましょう。


◆独特のダイス操作と、さらに洗練されたアクション選択システム

 このゲームの中心的目標となるのが、注文カードの達成です。多くの勝利点やお金は注文カードを通して得られる作りなので、注文カードをどのように達成するかを考えれば、おおよそうまく回る仕組みになっています。



 注文カードにはそれぞれ様々な木工品のイラストが描かれ、カードの下部にはこの木工品を完成させるのに必要なダイスやトークン、左には注文を達成することで得られる報酬が示されています。


 こうした依頼達成を中心に据えたゲームはさほど珍しくはないのですが、「ウッドクラフト」で特徴的なのは、注文に対して要求されているダイスと「まったく同じ出目&色のダイスを支払う必要がある」点です。出目が1多くても1少なくてもダメ。ぴったりジャストのダイスを支払う必要があるため、プレイヤーは様々な手段を用いて出目の調整に頭を悩ませることになるのです。


 ダイスの調整に活用できるのが工房の様々な設備です。「切断タイル」は1つのダイスを2つのダイスに分割することができますし、「継ぎタイル」はダイスに廃材を継ぎ足すことで出目を増やすことができます。「接着タイル」なら異なる2つのダイスを1つのダイスに合体させることさえできます。



 こうした手元の(言い換えると他人との関わりがない)パズルチックな試行錯誤は、原始的な全数探索とならざるを得ないため「作業感が強い」と表現されることもままありますが、「ウッドクラフト」ではそこに木工業という手作業のカバーを被せて、これは木工業の面倒臭さ&楽しさなんですよ、と魅力に転化させているのが面白い提案と言えます。このダイス目いじり、手元リソースをこねくり回す手作業感がこのゲームの持つ大きな特徴と言えましょう。


 また、材料となるダイスの調達も重要です。このゲーム、ごろごろと多量のダイスが含まれていますが、それらを振る機会は殆どありません。ダイスが振られるのは補充の時だけで、そうしたダイスを市場から直接購入したり、植木鉢に植えて育てたりします。基本的には出目の大きなダイスほど高価で入手しにくいため、それらを入手するには多くのお金や時間が必要になります。


 さまざまな能力でプレイヤーを手助けしてくれる助手も重要な存在です。助手はカード左下に描かれている様々な能力でプレイヤーを助けてくれることもあれば、カード右上の生産能力でリソースをもたらしてくれることもあります。



 基本的に能力の強い助手は生産が弱く、能力の弱い助手は生産が強い作りになっているので、どちらを重視するか、自分の工房の方針に沿った助手の雇用が重要です。


 とまあ、注文の達成にやるべきことは数多くあり、ダイスの調達、消耗品の購入、工房の強化、助手の雇用…… どれもがお金や時間を要求する作りになっています。
 しかもこのゲーム、手番はわずか13手番(2,3人プレイなら14手番)しかありません。しかも3,4ラウンドに1回決算が入り、それまでに履行できなかった注文は報酬が減額されてしまうのです。
 限られた時間と予算をどうやりくりするか、工房の運営は実にシビアな経営感覚を求められます。


 さて、こうしたプレイヤーの様々な判断はアクションタイルの選択を通して行われます。
 プレイヤーは手番でアクションタイルを1枚選択して実行するとともに、様々なフリーアクションを行うこともできます。メインとなるアクションは「ダイスの購入」「ダイスの売買」「資材の購入」「注文の選択」「助手の選択」「生産/植樹」「工房の改善」の7種類があり、これらはアクションホイールにタイルとして配置されています。



 誰もが選択しない不人気のアクションにはオマケがついてくるため、今実行したいアクションと今欲しいオマケとでプレイヤーは終始ジレンマに悩まされることになります。


 また、メインのアクションに加えて、工房の設備の稼働や注文の履行などのフリーアクションを行うこともできます。メインアクションの最中にフリーアクションを割り込ませることさえできるやりたい放題仕様なので(この手のゲームにしては珍しい!)、場合によっては強烈なコンボムーブが発生することもあります。



 よく言えば手番の自由度が高いのですが、ダウンタイムが長いと感じる人もいるでしょう。このあたりは手番数が少なく一手が重いメガユーロの特徴そのままと言えます。


 限られた手数の中でやるべきことは多いですが、満遍なく手を出すよりも一極集中したほうがうまくいくタイプのゲームです。しかしながら、アクション選択システムは同アクション連打、特化戦略に対して厳しい作りなので、プレイヤーに求めるものと提供されるものはまったく真逆と言っていいでしょう。

 このジレンマの海でうまく舵を切るには、他プレイヤーの裏をつく…… 同じ戦略であっても、手段やタイミングを少しずつズラして実利を掠め取る器用さが重要です。他人とのインタラクションこそ希薄なゲームではありますが、他人を今何をやりたいと思っているのか目配せする必要が常にあります。



 そんなワケで、エコでロハスでスロウな暮らしっぽい見た目のゲームですが、実際のところはかなり手強い内容と言えます。まあ、そもそもスローライフを唄うゲームが本当にスローライフを満喫できた試しはないですからね!


◆安打製造機スヒィさんに死角なし! ……と思いきや、一抹の不安も?

 ゲームの概要をあらかたご説明したところで、「ウッドクラフト」発表時のぼくの第一印象がどんなものだったのかをお話しようと思います。


 プロトタイプの紹介ビデオ。ブルーベリーのチップが手作りで、ダイスもありあわせのものを使っています。


 「メッシーナ1347」で見事なタッグワークを見せたスヒィさんの今回のタイトルはまたもや新人デザイナーとのコンビネーション。前回の例を見るにデリシャスゲームズのデベロップ力は申し分ないし、今回も期待できるのでは!? ……と、ファンが色めきだつ一方で、存外にぼくの第一印象は冴えないものではありました。


 うーん、このゲーム、ちょっと危ないかもしれないぞ……


 仕事柄、発売前の新作タイトルについて、ルールだけを読んでその良し悪しを判断するのは珍しくはないことなのですが、「ウッドクラフト」の初見の印象は正直そこまで芳しくはありませんでした。

 この辺、割と自分の判断力というか、相馬眼にはちょっとした自信があります。まあ、だからこそ、こうした仕事を続けていられるところもあるんですけども。


 今この記事を読んでいる方は「ルールを読んだだけでゲームが面白いかどうかなんてわかるもんなの?」と思われるかもしれませんが、昔のインタラクションの強いゲームならいざ知らず、最近のゲームはルールを読めば良し悪しが掴めるものが多いです。ルールを読んで思い描いてみた雰囲気をテストプレイで確認してみたら、やっぱりその通りだったなー、という例が大半でして、ルールだけでこれは面白そうだぞと思えるゲームはやっぱり遊んでみて面白いものなのです。


 それが、「ウッドクラフト」に関しては、ちょっと響くところが薄かったんですよね。ルールブックを読む上でゲームの良し悪しを決めるポイント(これは商売上の秘密)はいくつかあるんですけども、そのことごとくがうまくハマらなかったんです。


 特に一番悩ましく感じたのが、「プラハ 王国の首都」の流れを濃く感じた点でした。特徴的なアクションホイールを思い出させるメインエンジンといい、わずか13手番(2,3人では14手番)の手番数といい、「ウッドクラフト」が「プラハ」と同じメガユーロ文脈にあるゲームなのは間違いありません。「プラハ」自体はまさにスヒィさんの集大成、一つの到達点と言ったゲームではあるんですけども、詰め込んだ想いがゆえに若干トゥーマッチな作品でもあることも否めなく、日本市場でメガユーロのゲームが果たして受け入れられるんだろうかという点については疑問がありました。この辺、そのソリッド感から日本市場にマッチするぞと第一印象で感じた「メッシーナ1347」とはまるで正反対だったんです。


 もちろん、「プラハ」と比べてシェイプされている点はあります。用意されている要素のどれを伸ばしてもOK、様々な方法で名声を得ることができる……言い換えるとメイン戦略が絞りにくかった「プラハ」と比べて、「ウッドクラフト」は木工品を作るという確固とした軸があり、他の諸要素はそれに従うものとメイン・サブの切り分けが明確で、コンセプトの明瞭さから後発ならではのアドバンテージを感じます。


 とは言え、「メッシーナ1347」で見せたピリッと締まった王道的モダンユーロ路線ではなく、「プラハ」のプレイヤーを圧倒する覇道的メガユーロ路線に舞い戻った点がぼくとしては不安材料ではありました。とは言え、やはりスヒィさんの本性は既存のメカニクスに安住しないシステムモンスターではあって、やはり安定よりも冒険を求める人なのだなあと改めて実感したところはあります。


 あともう一つ不安材料を挙げるとすれば、パッケ絵の妖精の目が怖い……


 目が怖い妖精さん

 いや、パッケ絵って本当に大事なんです! 誰もが一番最初に目にするもので、パッケ絵一つでワクワク感って大きく変わってきちゃうものなんですよ。

 デリシャスゲームズは毎度毎度面白いゲームを作り出してくるのでそこのところは本当に尊敬できるんですけども、パッケ絵のセンスは正直物足りなさがあり…… この辺、例えばパッケ絵からビビッと遊んでみたい欲を喚起してくるコスモドロームゲームズなんかとは正反対なんですよね。「モバイルマーケット」のパッケ絵とか超いいじゃないですか。


 そこのところ、ちょっと垢抜けない感じが、翻って朴訥な好ましさ、微笑ましさでもあるんですけども、うーん、こればかりはセンスなんですかねえ。今年のエッセン新作として予定されている「Evacuation」も「うん、悪くはない! 悪くは!」って感じです。初期稿はもうちょっとダサかったのでちょっとは安心しました。


 Evacuationの最初の案はこんなの。


 そんなこともあって「ウッドクラフト」日本語版では妖精さんの目についてプチ整形を行ったりもしています。一時はもっと大胆なパッケ絵の変更も検討していたんですけども、最終的には現行の形で行こうということになりました。


右がアイプチ後の妖精さん

 ……話がだいぶ逸れましたが、まあ、色々な要素を検討したところ、「ウッドクラフト」の第一印象はそれほどよくはなかったのです。うーん、困った。


◆遊んでみて初めてわかる、底の見えない懐の深さ

 そんな感じで、不安を感じたポイントはいくつかあったのですが、そうこうしているうちにサンプルが届きまして、まあ、実際に試してみようということになりました。


 で、遊んでみての感想は「スヒィさん、スマンな!」。いやはや、コイツはどエラいゲームを作りよったもんだわ……


 先述の通り、まあ、色々なゲームのルールを読んだり、遊んだりしている身ですから、普通のゲームは1回遊べばある程度の底が測れるといいますか、最大のポテンシャルを発揮した場合の面白さはこの辺ね、みたいなところが見えてくるもんなんです。ましてやスヒィさんのゲームとは長い付き合いですから、伸びしろの推測もついて当然みたいなところはあるワケです。

 ……しかし、この「ウッドクラフト」、1回のプレイでは奥底が全然見えなかったんです。これは相当にレアな体験でした。


 「ウッドクラフト」を遊ぶ前には、いくつか新人デザイナーの中重量級のタイトルを遊んでまして、その中には結構気に入ってたタイトルもあったんですよね。いやー、最近の人はゲーム作りうまいねー、みたいな。これとか日本語版作っちゃおうかなー、みたいな。

 ……しかし、「ウッドクラフト」を遊んだ後にそんな余裕は吹っ飛びました。なんか全然違うんですよね。奥行きが。


 ただ、これはゲームが面白すぎて次元が違う、という意味ではなく、むしろ逆に下手すぎてまったく真髄に触れることができなかった、ひたすら打ちのめされて茫然自失としたというべきでして。要はあまりにも惨たらしいロースコアだったんですよね。


 まあ、この手のゲームに馴染みがあれば、なんとなく普通にやっても10枚くらいは注文を達成できるイメージがあるじゃないですか。ある程度まとまった数を最後に数えて、いやー、今日も仕事したなー、みたいな感慨にも浸れるワケです。


 ところがですね、初プレイの結果は6枚でした。しかも、このゲーム、最初に注文カードが4枚配られるところからスタートするので、自分の意志で獲得した注文は2枚だけ。「注文の選択」アクションなんかゲームを通してほとんど使われることもなく…… これがこのゲームの本当の姿かと言ったらもう絶対に違うだろ! と言わざるをえないんですよ。

 もうホントに「オレらボドゲにはそこそこ一家言あるよ?」みたいなプライドをぶち壊しにするかのようなロースコアっぷりで、いや、マジで舐めてかかってスミマセンでしたとしか言いようがなかったんです。


 単純にルールが難解なゲーム、ということではないんですよね。デリシャスゲームズの中ではわかりやすい方だとは思いますし、ゲーム中の様々な挙動が現実的な法則から外れているということもありません。そこはちゃんとテーマとの一体感があります。プレイヤーが妖精さんであることにも意味がある!(1箇所だけ)

 また、メガユーロ文脈のゲームではありますが、要素の多さに圧倒されるという感覚はなく、要素の全てが視界に入ってる気はするんです。

 ですが、全体像が掴めない。盲人象を撫でるという言葉がありますが、まさにそんな感じなんです。


 ともかくルール読みから受けた第一印象とは全く異なるプレイ感だったワケです。ただまあ、それで一つ得心したこともありました。


 というのは、デリシャスゲームズ作品によくある上級ルールがこのゲームには一切なくて、ルールブックを読んだ時にそれが気になってはいたんです。でまあ、終わってからわかったのは「これ、最初っから上級ルール相当なんだわ!」ってことです。

 この手のゲームが、なぜ初級ルールと上級ルールの2つを用意するのかと言えば、ゲームの勘所を掴む上で不要な要素は省きますよー、という親切心……もあるにはあるとは思いますが、それは割と副次的な理由で、主要な理由としてはリプレイアビリティを担保するという割と商売的な事情が大きいのではないかと思っています。

 モダンなゲームでは特にゲーム内のあらゆる内容物がリプレイアビリティに密接に関係しています。一見して「ウッドクラフト」の内容物構成はリプレイアビリティに乏しいように見えるんですけども、実のところは、内容物に依らず、ゲーム自体の骨格によって豊かなリプレイアビリティを生み出しているんです。

 こんな作りは今の時代にそぐわない熱血硬派っぷりではあって、いや、でも、しかし、ゲームってかくあるべきだよな、と襟を正す気持ちにさせられたりもするのです。


 なので、このゲーム、初回プレイで全然うまく行かなくて「なんだこのクソゲー!!!」ってなる人、絶対いると思うんですよ。これ、断言します。

 ただ、4人で遊べば1人くらいは偶然うまく転がる人もいて、そうなれば「いや、実はうまく回せる方法もあるのか?」と気づきをチラつかせもする、そういう人間の学習能力や向上心を信じているゲームなのではないかと思います。

 実際、1回遊んだ後はどうしたら得点を伸ばせるのか、もうそればかりをメチャクチャ考えていました。そういう乗り越えたいハードルとしての欲求を強烈に喚起させてくれるゲームなんです。


 でもって、復讐に燃え滾った心で2戦目に挑んでみると、初戦では見えなかった様々なルートが明瞭に見えてくるんですよね。最終的には10枚の木工品を完成させることができたりもして、こうなるともう脳汁ドバドバなワケですよ。スヒィさんのゲーム特有の浮遊感すらあるコンボ性を体験できたりもして、システムを攻略しているわーという実感が味わえるんですよね。

 ですからこの「ウッドクラフト」、現在主流の快楽装置をドカンと置いて、おもてなししまくり接待しまくりで誰でも彼でも気持ちよくさせるゲームとは一線を画した、めちゃくちゃドSで硬派なゲームなんです。親切だとは到底言い難い、ゲーム好きへの挑戦状としか言いようがない、極めて人を選ぶゲームです。


 今の世の中を見れば、商売的に難しいゲームではあると思います。でも、やっぱり、こういうゲームが最高だと思って作ってるんだろうなと感じてしまって。そりゃあもうこっちとしてもやるしかないよなあとなった次第です。


 そんなワケでぜひ皆様も「オレってこんなにゲーム下手だったのか……?」と打ちのめされて、そこから這い上がる体験をぜひ味わって貰いたいと思います。なんだろうな、コンシューマゲームでいうところのフロムソフト的な立ち位置なのかもしれませんね。


◆数寄ゲームズ通販特典として特製サマリーをプレゼント

 さて、そんな感じで色々と紹介してきた「ウッドクラフト」。色々と脅かすようなことも言いましたが、本場の讃岐うどんのようにコシがすこぶる強靭なゲームなので、よーく噛んで何度も味わって貰えれば嬉しいです。


 単純に手元のリソースをアレコレやりくりする感覚は楽しいもので、数少ない手数からベストの解法を導き出すパズル的快感は誰でも存分に味わえるはずです。また、アクションの選択も悩ましさと嬉しさの両方がある作りなので、自分のやりたいアクションにちょうどいい感じのオマケがついて来たりすると、もうそれだけで快感があるんですよね。


 その上で、何度も遊び込んで高みを目指すことのできる懐の深さも備えているので、1つのゲームを長く深く楽しみたい方にとって、最適なゲームと言えるんじゃないかと思ってもいます。ゲームデザイン的には2人プレイでも問題なく機能しますし。


 また、取りうる戦略の多彩さと、そのバランス感覚が優れている点は個人的に大きく評価したい点です。

 この手のモノづくりゲームで、テーマに沿ったメイン戦略を取るよりも別の行動を取るサブ戦略の方が強いゲームってあったりしますよね。サブ戦略がメイン戦略を完全に食ってしまうと興覚めになってしまうものですが、かと言って一本道だとそれはそれで味気ない…… なかなか人間、欲張りにできているものです。

 「ウッドクラフト」は、このメイン戦略とサブ戦略のバランス比が実にうまーくできていて、メインとなる木工品作りをやっていれば大筋は間違いないんですけども、様々な要素をうまく使いこなすとチートっぽいズルい動きもできたりする…… このサジ加減が絶妙なんですよね。

 かといって、カードの出方次第で勝敗が決まってしまうような極端なバランスではなく、サブ戦略でメイン戦略を打ちのめすのはどちらかと言えばロマン寄りです。ロマン寄りですが、やれなくもない…… 「理屈としては可能」なのがゲーム好きの心をくすぐるんですよね。詳しく説明してしまうとネタバレになってしまうので具体例は伏せますが、皆様、ぜひ色々な戦略を見つけてみてください。


 ソロプレイルールはデリシャスゲームズ恒例のAIの妨害を切り抜けつつハイスコアを狙うスコアアタックルールなんですけども、記載されている得点例が、うーん、結構難しいような…… これまた歯応えがメチャクチャありそうですね。


 また、数寄ゲームズ通販サイトでお買い求め頂いた方には、デリシャスゲームズ恒例とも言える、特製のサマリーを添付いたします。例によってアイコン量も多く(デリシャスゲームズ製品としてはスッキリしてるほうですが)、要素の多いゲームであることは間違いないので、初回プレイやインスト抜けなどに役立つのではないかと思います。



 特に切断タイルと替刃トークンの関係はちょっと複雑で、インストでも浸透しにくい部分だったので、切断の一例を載せているところは注目ポイントかなと思っています。植樹の際に魔法の力で1回だけカットできるのも入れとけばよかったな……


ウッドクラフト

プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-120分

ゲームデザイン:Vladimir Suchy
アートワーク:Michal Peichl
小売希望価格:8800円(税込)

posted by 円卓P at 11:03| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月12日

ゲーム紹介「モバイルマーケット」


 数寄ゲームズはスマートフォン開発会社のCEOとなってスマホ市場の覇権を争う戦略ゲーム「モバイルマーケット」を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間60分で、小売希望価格は税込5500円となります。

 一般販売に先駆けて、ゲームマーケット2023春の「コ35」数寄ゲームズブースにて先行発売を行います。イベント特別価格5000円での提供となります。

 ゲームマーケット後は数寄ゲームズ通販サイトにて販売を行い、後に全国のボードゲームショップさんでもお買い求め頂けるようにする予定です。



 「モバイルマーケット」は2018年にCosmodrome Gamesから発売されてスマッシュヒットとなった「スマートフォン株式会社」の流れを組むタイトルで、「ファーナス」でもその技巧を見せつけたロシア人デザイナーIwan Lashinの作品です。「スマートフォン株式会社」の拡張ではなく、単体で遊ぶことができるタイトルとなります。


 「スマートフォン株式会社」は、そのユニークなアクション決定システムとスピーディで流麗なゲームデザインが高く評価された作品でして、「モバイルマーケット」はその特徴を受け継ぎつつも、より今風のエッセンスを採り入れた手強くも華のあるタイトルに仕上がっています。

 両者の一番の相違はボードメインだった「スマートフォン株式会社」に対して、「モバイルマーケット」はカードメインのゲームに変貌したということでしょう。一見、これは巷によくある〇〇○カードゲームのような元ゲームの精髄を抜き出して小型化したゲームのように思えますが、「モバイルマーケット」について言えば、むしろより情報を詰め込んでマッシブさを増した「フルアーマー版スマートフォン株式会社」と言う趣があります。既存のゲームで言えば「テラミスティカ」と「ガイアプロジェクト」の関係に近いかもしれません。



 カードメインということもあって「スマートフォン株式会社」よりもお手頃な価格でご提供できるのですが(というか全体ボードを2層構造化した「スマートフォン株式会社」はそりゃ高くなって当然という仕様なのですが……)、中身までお手頃かと言えば全然そんなことはなく、むしろそういう気分で取り組むと逆に頭をぶん殴られるまである、非常に挑戦的かつ歯ごたえのある経済ゲームです。「スマートフォン株式会社」をすでにプレイしたことのあるプレイヤーにとっても新鮮味の多い、探究余地の広大なゲームと言えましょう。


 では、その魅力はどういったものなのか。それをこれからご紹介していきましょう。


◆ゲームの概要や流れを簡単にご紹介

 テーマやゲームの流れは概ね「スマートフォン株式会社」と同じではありますが、「モバイルマーケット」独自の部分も多くあります。


 「モバイルマーケット」において、プレイヤーはスマホ開発会社のCEOとなって、(1ラウンド1年に換算される)5ラウンドを通してより多くの利益=VPを稼ぐことを目指します。



 各ラウンドはスマホ販売にまつわる様々な業務を表すいくつかのフェイズから構成され、プレイヤーは技術開発や広報活動、スマホの設計、製造、販売活動を通してより多くの利益を上げられるように努めます。


 プレイヤーが各ラウンドで最初に決定を求められるのが2枚のパッドの組み合わせです。簡潔かつ悩ましいこのアクション決定メカニクスは「モバイルマーケット」の心臓部分と言っていいでしょう。先述の様々な企業活動の方向性はこのパッドの組み合わせによって決定されます。



 さらにパッドの組み合わせによって、スマホの販売価格も同時に決定されます。この販売価格は単純に将来の売上の見込みが決まるというだけではなく、以降のフェイズの行動順を決定する重要な要素です。

 基本的にこのゲームは、早取りのゲームです。技術の獲得、販売施策の獲得、顧客への販売、全てが早取りで構成されていて、先手を取ることに大きな強みのあるゲームと言えます。

 そして、スマホの販売価格をより安く抑えたプレイヤーは、他プレイヤーよりも先に行動することができます。……基本的には。

 そのため、時には得られるであろう利益を投げ売ってでも先手を取らなければならないタイミングがあるのです。この互いの読み合い、駆け引きが「モバイルマーケット」の醍醐味と言えます。


 さて、それぞれがアクションを決定し、行動順が決まったところで迎えるのが技術フェイズです。



 このフェイズでは、スマホを製造する工場をアップグレードする技術カードやスマホに様々な機能を搭載する機能カードが購入できます。

 さきほどのパッドの組み合わせによってプレイヤーはいくつかの技術ポイントが貰えます。この技術ポイントを支払うことでプレイヤーは技術カードや機能カードをお買い物できるのですが、先述の通り、スマホの販売価格によって決まる手番順で購入していくので、後手番のプレイヤーは残り物を買うかどうかという辛い選択を迫られます。

 余った技術ポイントは次ラウンドでも使えるので無駄にはならないのですが、このゲームは拡大再生産のゲームなので基本的には使い切るのがベストです。よーく考えて自社に必要な技術や機能を開発しましょう。


 続くフェイズは販売促進フェイズです。このフェイズでプレイヤーはスマホ販売活動にまつわる様々な販売施策カードを購入します。



 「スマートフォン株式会社」既プレイヤーにとって注意して頂きたいのはこのフェイズのみ手番順とは逆順に処理を行うということです。つまり、スマホをより高値で販売するプレイヤーが先に行動することができます(このフェイズは「スマートフォン株式会社」既プレイヤーほど処理を間違えやすいので注意が必要です)。

 技術フェイズと同様にパッドから得られたポイントを支払ってカードを購入するのですが、余ったポイントは持ち越しできず、後に商品を販売する顧客カードの獲得に使用されます。


 続く生産フェイズではスマホの生産数が決まります。とは言え、ここは手順に沿って生産数が決まるのでプレイヤーの判断が絡む部分はありません。

 重要なのは次の販売フェイズです。プレイヤーは先程生産したスマホを全て売り切ることを目指します。顧客にはガジェット好き、一般顧客、コアユーザーの3種があります。



 顧客は販売する製品の機能と価格にのみ興味があります。そこで、プレイヤーは購入した機能カードのうち、必要と思われる機能をスマホに搭載し、機種の設計を行います。



 プレイヤーは様々な機能を搭載したハイエンド機種を販売するのか、それとも手頃な機能で価格を抑えた割安スマホを販売するのか、どの顧客にどういった商品をアピールするかを考えなければなりません。

 注意するべきは製造コストの概念でしょうか。ありとあらゆるコストの高騰が頭痛の種となる昨今ではありますが、その世相を反映したのか、スマホがタダで生産できた「スマートフォン株式会社」とは異なり、「モバイルマーケット」では様々な機能を搭載すると製造コストも上がってしまうというデメリットがあります。


 製品を販売できる顧客には大きく分けて2種類あります。各社競合で奪い合う「市場の顧客」と、自社の製品のみを買ってくれる「お得意様」です。

 「市場の顧客」は、それぞれの顧客の手持ち予算に合わせて並べられた顧客カードの一群です。プレイヤーは手番順にそれぞれの顧客カードをチェックし、条件が満たされた顧客カードがあれば、商品を販売できたものとして獲得します。これは先述の通り、手番順に実行するので、後手プレイヤーには製品を販売できる顧客カードが残っていない場合もあります。



 一方で「お得意様」はそれぞれの企業が独自に囲い込んだ顧客で、他プレイヤーに奪われることがない自社だけのファンです。しかしながら「お得意様」には優先的に商品を提供する必要があり、「市場の顧客」に商品を販売する前に「お得意様」の都合を優先しなければなりません。「お得意様」ばかりにかまけているとせっかくの「市場の顧客」を逃してしまうこともあるのです。


 こうして商品の販売を行った後、利益の精算を行います。まず最も多くの商品を販売したプレイヤー(これはこのラウンドで獲得した顧客カードの枚数で表現されます)は、市場シェアのボーナスを得ます。

 続いて最初に決めた販売価格からスマホの製造原価を引いた「粗利」と「販売したスマホ数」を乗算した額を乗算した「利益」を受け取ります。より利益幅の大きいスマホをより多く売るのがベストですが、遊んでみるとそれがなかなか難しいことがわかるでしょう。


 以上がラウンドのざっくりとした流れで、これを5回繰り返したところで最も多くの利益を上げたプレイヤーが最終的な勝者となります。


◆タブロービルドに舵を切って、よりゲーマーズゲームに

 さて、「スマートフォン株式会社」と「モバイルマーケット」、両者の細かい違いを上げればキリがないのですが、その一番の大きな違いはやはり内容物の変化と密接に関わっています。つまりカードをメインに用いることで最近の流行の一つであるタブロービルド性の強いゲームに変貌しているということです。


 タブロービルドとはなんぞや? 「タブロー」は日本語で言えば「場」のことで、ザックリと言えばタブロービルドとは場にズラズラとカードを並べて、それぞれの各カードが自分の様々な要素をパワーアップさせるゲームのことです。こういったゲーム、お好きな方は多いのではないでしょうか。

 「スマートフォン株式会社」でもそういった自社の強化要素は用意されていたのですが、さほど組み合わせに広がりはなく6枚のタイルの裏表によって利用できる組み合わせが決まっていました。

 一方で「モバイルマーケット」では30枚の技術カード、30枚の販売施策カードの計60枚によってこれらが表現されるため、バリエーションは爆発的に増加しています。さらにこれらのカードは、カードという形質から他者との共有ができない…… 言い換えれば自社独占のアドバンテージになるため、それぞれの企業がそれぞれの独自戦略を行使できるゲームに変貌しました。



 そのため、どの技術カード、どの販売施策カードを狙うかの駆け引きは実に濃厚で、最初の価格設定から早くも激しい読み合いが始まります。「スマートフォン株式会社」の第1ラウンドなんかはまあのんびりしたもので、お互いの本拠地は離れているし、技術の獲得に出遅れても別に後乗りできるしで、「まあ、ゆるゆると肩を暖めて行こうや」と言ったノリだったのですが、「モバイルマーケット」では各カードを取得できるのは先着1名限りということもあって、最初から激アツなテンションでゲームが始まります。

 そして、技術カードは販売価格を安く設定したプレイヤーから、販売施策カードは販売価格を高く設定したプレイヤーから獲得するため、必ずしも安売りが正義ではありません。重視すべきは技術か宣伝か、自社の成長性を踏まえた選択が重要になります。


 強化要素の増大は自由度という観点から言えば大幅なパワーアップではあります。一方で、特殊能力をゲーム冒頭にだけ確認すればよかった「スマートフォン株式会社」に対して、「モバイルマーケット」は各ラウンドでユニークカードを確認する必要があるため、プレイの負荷は高まっているとも言えます。


 遊びやすさだけに焦点を絞るのであれば、軍配は「スマートフォン株式会社」に上がるとは思います。スッキリとしたプレイ感でドッシリとした満足感を得られるのは「スマートフォン株式会社」の大きな利点です。

 一方で、回数を重ねるとどうしても戦略が似通ってしまう、同じようなゲーム展開になりやすいと感じる方もいるのではないかとも思います。そういった方々に対して「モバイルマーケット」が用意するカード群はバリエーション豊かな戦略を提供します。完成度が高いのはどちらかを云々するのは実に難しいのですが、ゲートウェイゲームとしての「スマートフォン株式会社」、エキスパートゲームとしての「モバイルマーケット」という表現が両者の対比としては適切なのかなと感じています。

 ただ、そのエキスパートゲームという表現にしてもメチャクチャ複雑な処理を要求するよという意味合いではなく、比較対象はあくまで「スマートフォン株式会社」ですから、この手のゲーム(数寄ゲームズがよく出すゲーム)に慣れている人であれば標準的な複雑度ではあります。その辺の塩梅の取り方はデザイナーIwan Lashinの上手さですね。


 また、プレイ感の割と大きな変化として、タブロービルド感が強まって、手元のカードの構築要素の比重が高まったため、最終ラウンドのジャンケン感がうまく漂白されているようにも感じます。もちろん、最終ラウンドの結果が一番大きく勝敗に影響を与えるように意図的なインフレが設定されているんですけども、それ以上にそれまでのラウンドで積み重ねてきた技術や販売施策の蓄積が勝敗を左右する部分が大きく、結果への納得感が強いのではないかと思います。


 テーマ性からの視座で言えば、大きなボードならではの陣取り要素がオミットされて、単一の市場にフォーカスされたのも感覚としては大きな変化があります。要するに「スマートフォン株式会社」で地球を捉えていた衛星カメラがグーッと地表をズームアップしていって顧客の顔が見える距離まで近づいたのが「モバイルマーケット」という感じで、ゲームのスケール感で言えば小さくなってはいるんですけども、泥臭くも現実味のある単一商圏での争いはよりロールプレイの肥やしにしやすい舞台設定とも言えます。

 また、各ラウンド冒頭で公開され、ゲーム展開にちょっとした影響を及ぼすイベントカードも実装されました。これはKS版「スマートフォン株式会社」のストレッチゴールの要素を取り込んだものなんですけども、フレーバーとその影響がよくマッチしていて面白いですね。




◆スマホ&モバマ比較レビューコンテスト、やります

 とまあ、それぞれの違いを軽く語り出したらなかなか終わらないのでちょっと困っているんですけども、「スマートフォン株式会社」と「モバイルマーケット」は同じようでいて結構な違いがある両作です。どちらかがどちらかの完全上位互換ということはなく、相補的な関係の二作と言えるので、ぜひ両作の違いを楽しんでみて貰えると楽しいのかなと思っています。


 また、個人的にこうしたゲームデザインの比較対照を趣味として楽しんではいるんですけども、もっと多くの方々にそういった楽しさを共有してもらいたいなと思いまして、今回の発売を記念して、「スマートフォン株式会社」と「モバイルマーケット」の両者の違いに関するレビューを募集するコンテストを実施したいと思います。これはテキストだけに限らず、動画レビューも受け付けたいなと。


 今回の紹介記事でもいくつかの相違点については述べさせて貰ったんですけども、いやいや、両作にはこれだけに留まらない様々な特徴の違いがあります。似通っているだけにその差が際立つところはあるので、レビュー記事を書くためのお題としてはやりやすいのではないかと思っています。


 以前発売した「厄介なゲストたち」でバリアントルールを募集するコンテストを開催したんですけども、ノリとしては同じような感じで、優れたレビューを応募して頂いた方には賞品を贈呈したいなと考えています。

 「厄介なゲストたち」のバリアントルールコンテストは審査がめちゃくちゃ大変なこともあって応募者の方々にご迷惑をおかけした部分もあるんですけども、こちらはそれほど審査の負担は大きくないとは思うので大丈夫なんじゃないかと思っています。詳しい要綱は改めて告知させて頂きますが、それまでに「スマートフォン株式会社」を復習して頂きまして、レビュー内容を練って頂けると嬉しいです。


 また、レビューコンテストの開催に合わせて両作のオトクなセット販売なんかも考えていますので、どうぞご検討頂ければと思います。


◆長らくお待たせした「モバイルマーケット」がいよいよ発売です

 さて、この「モバイルマーケット」は、出版社がロシアのCosmodrome Gamesということもあり、なかなか先行きが見えなかったタイトルではあります。戦争が継続中の間はCosmodrome Gamesもなかなか動きにくい状況ではあるでしょうね(今年のエッセンも出展できないでしょうし)。

 ついでに言えば、開発会社のOpen Borders Studioは旧名Comrades Development(和訳すると「同士開発」)という名前だったんですけども、この響きがあまりにもロシアっぽかったんで設立後わずか数年で改名したりもありました。戦争の影響はこんな形で現れたりもするワケです。


 そうした事情もあり、なかなか発売を発表できず、やきもきさせた方々も少なくないのではないかと思いますが、なんとか発売までの道筋が見えたこともあり、先日告知をさせて頂きました。大変多くの反響を頂きまして、ちょっとビックリしたくらいです。


 Cosmodrome Gamesは戦争を抜きにしても仕事が早いとは言えない出版社ではありまして、「スマートフォン株式会社」は日本語版の発売までに相当な時間がかかりましたし、こちらもなんだかんだで5年くらいは付き合いがあるので、その辺の性格も熟知してる感じではあります。


 なので、ようやく発売できそうな…… まあ、この記事を書いている最中はまだ手元に現物が届いてないんですけども、なんとか発売できそうで、いやー、良かったなーと思っています。


 また、「スマートフォン株式会社」と比べて対応人数が1−4人と狭まりはしましたが、これは単純なスペックダウンと言うよりは「スマートフォン株式会社」がフルスペックを発揮するのに多くのプレイヤーを必要としていた面もあるため、「モバイルマーケット」は意図して少人数寄りにフォーカスしたゲームと言えます。タブロービルド系のゲームはそもそもが内向きの少人数寄りのデザインになりがちではあります。

 ソロプレイ用のバリアントではAIプレイヤー「スティーブJr.」が対戦相手を務めてくれますが、これを2人プレイに持ち込んでもいいかもしれません(ルールブックではそうした推奨はありませんが)。


 元々「スマートフォン株式会社」は優れたタイトルではあったんですけども、それがよりお求めやすい価格で、かつ、より深化した内容のものをお届けできるということで、個人的にもとても期待しているタイトルです。

 ぜひ皆さん、大いに遊んで頂いて、さらに言えばゲームレビューコンテストにも応募して頂ければこれ以上の嬉しさはありません。

 どうぞ「モバイルマーケット」をよろしくお願いいたします!


モバイルマーケット

プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60分

ゲームデザイン:Ivan Lashin
アートワーク:Viktor Miller Gausa
小売希望価格:5500円(税込)
posted by 円卓P at 11:30| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月17日

ゲーム紹介「エンバーカデロ」




 数寄ゲームズはアメリカ西海岸で廃船を土台に建物を建設する都市発展ゲーム「エンバーカデロ」を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間60-90分で、小売希望価格は税込8800円となります。

 また、拡張「沈まない船」も同時発売となります。こちらはプレイ人数を5人まで拡張し、新たな船カード、建物カード、イベントカードを含むミニ拡張となります。小売希望価格は税込2530円となります。

 数寄ゲームズ通販サイトでは3月20日より予約販売を始め、その後、全国のボードゲームショップさんでの販売も予定しております。




 「エンバーカデロ」は新人Adam Buckinghamと、唐辛子を栽培して注文を達成する戦略ゲーム「Scoville」の作者Ed Marriottの共作…… ということで、制作陣の顔ぶれからはそこまでガツンと響くタイトルとは言えません。誰やねん? という人も多いでしょうし、その辺はぼくも割と同じ印象です。

 つまり、この手のゲーマーズゲームで極めて信頼性の高い「作者買い」の通じにくいゲームではあるのですが、そんな無名のゲームの日本語版を敢えて出版する…… というところに数寄ゲームズとしての意気込みやら自信やらを感じて頂ければ幸いです。近い例で言えば「リフトフォース」もこのパターンでしたね。

 数寄ゲームズは後発の出版社ではありますので、新規出版については取引先からの売り込みを待つよりも、自分から積極的に問い合わせていく例のほうが多いです。このゲームは「惑星Xの探索」で知られるRenegade Game Studiosの作品なので、傍目からは「惑星Xの探索」で出版実績を作ってからの第2弾というように見えるかもしれませんが、実は「エンバーカデロ」を出版したいがためにRenegade Game Studiosに問い合わせを行い、その副産物として「惑星Xの探索」も出版したのが流れとしては正しかったりします。つまり、それほど出版を熱望していたタイトルではあったのです。


 じゃあ、なぜ出版の順番が前後したのかと言えば、「エンバーカデロ」はこれまで英語版以外のローカライズ例がなく、そのために海外のディストリビューターに提供するローカライズキットを用意するために余分な時間がかかってしまったという裏事情があったりします。しかもローカライズキットが届いてみたらKS版の古いバージョンで使い物にならず、作り直しが発生したりなんだりと…… いやまあ、色々ありました。

 それに比べると「惑星Xの探索」は各国で販売されているため、すでにローカライズキットが整備されていて、速やかにローカライズが進んだのです。同じ会社のタイトルであっても雲泥の差、月とスッポンなんですね。

 このように日本語版制作というものは、様々な事情によって時間がかかったりかからなかったりするものなのです。多分、皆様が思っている以上に様々な遅延のバリエーションがあります。


 ……とまあ、のっけから早速ゲーム内容とは全く関係のない周辺事情を語ってしまいましたが、なぜその辺りを触れたかと言えば、やっぱりこのゲームを扱う理由の一端を雰囲気としてでも感じて貰いたかったという点があります。

 数寄ゲームズが前評判の高い著名なゲームを扱うことは、まあ、ほぼないんですけども(後発の小規模出版社ですゆえ)、その中でも「エンバーカデロ」はゲーム好きしか知らないような「無名のゲーム」であることは間違いなく、では、なぜ、そのタイトルを敢えて出版するのかといった点を詳らかにするのはメッセージとして大事なんじゃないかなと思っているワケです。まあ、それはまた後で改めてたっぷりと。


◆廃船を土台に街を作るぞ! ……それって、ホントにあった話?

 さて、この「エンバーカデロ」の舞台は1850年のサンフランシスコ。時折しもゴールドラッシュの真っ最中、一攫千金を夢見る労働者が船に乗って大挙した。よおっ、べべん!

 こうして街には移民船として使われた遺棄船が溢れることとなりました。「エンバーカデロ」においてプレイヤーはこの街の実業家の一人となり、これらの遺棄船を土台にしてホテルや倉庫、学校や市庁舎など様々な建物を建設することになるのです。


 プレイヤーは手札として船カードと建物カードを持っています。船カードをプレイすることで土台となる船タイルを配置するとともに資源を入手し、建物カードを配置することで船タイルの上に建物を作っていきます。基本的には建物を建設することで様々な得点要素にアクセスできるようになっているので、資源を集めて建物と建てればええんやとゲームの構造は極めてオーソドックスです。



 さて、各建物にはそれぞれ建設するために必要なスペースを示す「建物のサイズ」が設定されていて、大きな建物ほど大きな土台が必要となります。そうした建物を建てるためには土台となる多くの船が必要になりますし、また建物の壁となる「構造物」も必要となります。

 このゲームの建物は言ってみれば「壁」と「屋根」から成り立っていまして、最終的な目的となる建物カードのプレイは「屋根をかけて建物を完成させること」を意味しています。



 一方で屋根をかける前には、まず「壁」が必要です。「壁」の建設には「構造物」を獲得する必要がありまして、この構造物は(主な手段として)手札を捨てることで獲得することができるのです。

 ……察しのいい方であればもうお気づきかもしれませんが、つまり手札を屋根としてプレイするか、捨て札として壁にするか、ここに1つジレンマがあるワケです。この辺は「サンファン」なんかの、カードをコストとして使うか建物として使うかの感覚に近いかもしれません。

 ただ、「エンバーカデロ」ではこの捨て札効果が一律同じではなく、カードそれぞれで異なるため、どのカードを捨ててどのカードを使うかの組み合わせがべらぼうに悩ましくなっています。カードを捨てて得られるのは構造物だけでなく、お金だったり、得点だったり…… なんか色々ある! 組み合わせが! 組み合わせが多い!


 手番にはカードを1枚プレイするか、カードを1枚捨てるか。言ってしまえばそれだけの簡単なゲームなんですけども、やりたいことを達成するためのルート探しが非常に悩ましいゲームでもあります。

 正直に言えば、初回プレイはこの情報量の多さに面食らいました。インストが終わってから始めてみるものの、一手目が踏み出せない。ぼくは重ゲーにはそれなりに慣れている方だと思うんですけども、そういうゲーム、たまにあります。

 で、こういうゲームって明確な正解に辿り着けるようにはなってるけども正解へのアクセスが難しいというタイプのゲームで、飲み込んでしまえば大好物なんですけども、飲み込むまでが大変ではありますね。2手目から早くも「もう1回最初からやらせてくれー!」って叫びたくなるゲームではあって、これをボードゲームあるあるとして共感できる方はこのゲームも肌に合うのではないかと思います。



 また、このゲームでは建設された建物がプラスチック駒の壁と厚紙タイルの屋根で立体的に表現されるのが見た目として面白いところで、ゲームの終了時には高層建築が林立するサンフランシスコ市街が完成します。

 基本的にこのゲームは同じ建物カードでも上層階に建設することで効率的に得点を稼ぐことができるようになっているので、建物は上に伸ばしていった方がオトクです。建物は最大で4階層まで建てられますが、最上階まで建て切るには長期的な建設プランが必要となります。

 また、1点注意として、各パーツは崩れにくいように工夫されてはいるんですけども、いかんせん軽くてちょっと触っただけでもズレるので、特に猫ちゃんなど飼われている方はお気をつけください。


 あと、船上に街を作るとか、そういうアクロバチックな建設って本当にあったの? とかツッコミたくはなりますよね。どうもサンフランシスコの街の下に廃船が埋まっているのは事実らしいんですけども、プカプカ浮いている船の上に建物を建てるというトンチキではなく、湾岸の埋め立ての際に船ごと埋め立てて基礎とした、というのが実際のところのようです。

 このゲームではあたかも現役の船がそのまま土台として使われているかのような表現をしていますが、それはゲーム上の誇張表現ではあるようです。水上都市サンフランシスコではなかったと。

 ちなみに勝海舟が咸臨丸でサンフランシスコに訪れるのはこのゲームの10年後の1860年になります。つまり日本で言えば江戸時代の末期にサンフランシスコでは建物をボコボコ建設してたってことですね。バブリー!


◆カードプレイだけじゃない悩ましさ。カード補充にも一捻り

 さて、このゲーム、手番にカードを1枚プレイするか、捨てるかを選ぶだけの簡単なゲーム…… 先程はそう言いましたが実はそれはウソです。

 カードの使い道と並んでもう1つの悩まし要素…… それが手札の補充です。このゲームは山札からランダムにカードを引くのではなく、公開された4枚の船カードと建物カードの合計8枚の中から欲しい1枚をお金を払って購入します。これはマストです。

 で、単純に8枚のカードの中からベストの1枚を選ぶのは相応に悩ましいよねという話に留まらず、それに加えてプレイヤーは購入したカードも含めて手札から1枚を選んで次ラウンドのために保管しなければなりません。これが! 実に! 悩ましい!

 各ラウンド、プレイヤーは手札5枚からスタートするんですけども、5手番をかけて次ラウンドの手札5枚を選出していくワケです。ちなみに手札を使い切ったところでラウンドは終了。つまり1ラウンドは5手番ということになりますね。



 プレイヤーは常にどのカードを手札に残すかの短期計画と次ラウンドでどのカードが必要になるかを見通す長期計画を求められます。次ラウンドで自分の手札を見て「この手札でどうしろと……」と呻いたとしても、それは前ラウンドの自分がプレゼントしてくれたものなのです。責めるのは己しかありません。


 基本的にこのゲームは強力な建築物はコストが嵩むようにできているため、プレイを後回しにしたいんですよね。また、先程も少し触れたとおり、同じカードでもより上層に建設することでより多くの得点を得られたりもします。

 そのためにカードの確保だけして「建設は次ラウンドの自分に期待しよう」というムーブを取りがちになります。で、こういうことが続くと「過去の自分は未来の自分を過大評価しすぎやねん……」となったりします。

 また、逆のパターンで、すぐに使いたいカードが2枚あるけども、どちらか1枚は次ラウンドに送らなければならない…… という局面もよくあって、このカードの保管はちょっとしたツイストなんですけども、めちゃくちゃ悩ましい仕組みなんですよね。いやらしい!


 ちなみに、カードをプレイするのではなく、カードを捨てることで、購入可能な公開カードのうち船カードか建物カードをリフレッシュできたりします。これは忘れがちな処理ではありますが、覚えておくとイザと言うときに役立ちます。


 ということで、手番の流れをまとめると下記の通りとなります。

1. 船カードのプレイ or 建物カードのプレイ or 手札1枚を捨てる
2. 船カードか建物カード1枚を購入。手札を捨てていればリフレッシュも可
3. 手札1枚を次ラウンドのために保管

 この3ステップで1手番が終わりです。先ほども少し触れましたが1ラウンドは5手番。そしてゲームは3ラウンドで終了、つまり全部で15手番のゲームということですね。

 この手の戦略ゲームの平均的な手数は20手番前後なので、そこからするとやや少ない手番数です。それだけに一手の密度が濃い、知恵熱必至のゲームと言えましょう。


◆陣取り合戦は近寄るか離れるか? ハリネズミのジレンマ!

 さて、このゲームでは全体ボード上に船タイルを配置して、自分の建設予定地を示していきます。大きな建物を建設するためには広い建設予定地が必要となるため、時にはスペースの奪い合いも起こります。


 この手の陣取りゲームではすでに配置しているタイルに隣接するように新しいタイルを配置してね〜、といった制約があるものが多いですが、このゲームではそうした制約が薄いせいもあり、唐突に仁義なき土地争奪戦(海だけど)が発生することがままあります。
 では、殴り合い要素の強いゲームなのか? と言われればそうでもなく、そうした空中戦が起きる可能性を孕みつつも、多くの場合は他者と共存する形に落ち着く局面が多いゲームではあります。

 というのは「他人の建物に隣接するように構造物を置くと、議会トラックを進められるよ」というボーナスがあるため、お隣様の存在が時にありがたい作りでもあるのです。「テラミスティカ」みたいですね(恩恵を施す側と受ける側は逆ですけども)。

 議会トラックは進めることで様々なボーナスを得ることができ、また様々な機会で得点にも絡んでくるので、それを無料で進められるのは絶対的にオトクなんですね。広々とした空間でのんびり建築に勤しむよりも、他人と競いながら建設する方がトータルでは点数が伸びるようにできています。

 そんな事情から、このゲームは他プレイヤーとの場所取り合戦は遠からず近からずの絶妙なポジション取りを要求されるゲームでもあります。相手に隣接しつつも今後拡張する逃げ場所を確保するような冷静なポジショニングが重要です。


 ちょいと上記のルールを補足すると、配置した構造物1個ごとに隣接のチェックは行われます。3個の構造物を配置した場合、議会トラックを最大3スペース進められる可能性があります。


 また、全体ボードには何本かの桟橋が初期配置されていて、この桟橋を巡るマジョリティ争いもゲームの重要なポイントです。



 1ラウンド目と3ラウンド目の終了時には、各桟橋について、桟橋に隣接している構造物の数でマジョリティ争いを行います。これが結構バカにならない得点源なので、桟橋には積極的に船タイルを隣接配置したい…… のですが、桟橋に隣接するように船タイルを配置するには入港料を支払う必要があるため、お財布との相談が必要になります。このゲーム、手番ごとにカードを購入する必要があるため出費の機会は多いのですが、それに反して定期収入は少ないため、お金周りがズンドコにシビアです。


◆粗さは見え隠れするも、最近の流行を捉えたモダンゲーム

 とまあ、そんな感じでこの「エンバーカデロ」、カードの使い道や取捨選択をメインに手元を育てる箱庭感をメインに据えつつ、桟橋や議会トラックと言ったマジョリティ争いや、全体ボード上でのポジション争いといったインタラクションを備えたゲームです。

 少し前のドイツゲームはプレイヤー同士の絡み合いが濃厚なインタラクションの強い「外向き」のゲーム、昨今のゲームは手元をカチャカチャするパズル要素の強い「内向き」のゲームが主流と言えますが、このゲームは「内向き:外向き」の割合で言えば「7:3」くらいで、内向きベースのちょうどいい塩梅のゲームと言えるのではないかと思います。

 ちょうどいい、という意味では、最近のゲームは端々まで丹精に整えられたキッチリとしたゲームも多いんですけども、このゲームは随所に荒々しさ、野趣も残していて、その辺りがカードメインのゲームの楽しさの根本をキチンと踏まえているなと感じさせてくれます。カードゲームの楽しさ、をもうちょっと噛み砕くと「そのカード強すぎだろ!」「このカード弱いんだけど!?」といったカード価値の評論という視点が一つあって、カードバランスが整いすぎたゲームはお上品すぎて塩気まで足りないと感じることもあるんですけども、このゲームはゲームバランスを逸脱しない範囲での強カード、弱カードというグラデーションがあるように感じます。負けたのは引き運のせい!


 また、ゲームの進行と共に発展していく立体的な街並みは目にも楽しいです。一方でバランスゲーム的な手先の器用さを要求される局面もあり、100%ポジティブな要素かと言えば、そこは手間とのトレードオフとの関係ではあります。

 ぼくは根がシステム派なので見た目一辺倒の要素の評価は辛いんですけども、とは言え、これを別のものに代替するのが難しいゲームデザインであることは確かですし、そのためにタイルやらプラ駒やら工夫している点を見ると意欲は感じられます。


 資源を集めて建物を建設するというゲームの構造自体はそこまで目新しい点はないのですが、カードの補充と保管でジレンマを増やしつつ、より計画的なゲーム運びを実現していて、遊び終わった後に納得感があるのはよいところです。運に翻弄される感じもありつつ、でも終わってみれば落ち着くところに落ち着いたなという感もあり、次はもっとうまくやれるんじゃないかと思わせてくれるので、運要素のまぶし方が適切なんだと思います。


 一方で、端々まで気の効いた、全てのルールが適切で美しいゲームかと言えば、実はそうとも言えない、脇の甘さも垣間見えるゲームではあります。野性味!

 例えば、「2ラウンド目以降は、その時点で最も得点の少ないプレイヤーがスタートプレイヤーになる」ルールがあるんですけども、マジョリティ争いをするゲームって基本的には後手が有利なんですね。デザイナーは「先手番はカードの購入で選択肢が広いため有利である」とBGGで述べているんですけども、これはちょっとプレイした実感とは違うかなーという印象もあります。

 また、議会トラックを進めることでプレイヤー共有の建造物となる「ランドマークカード」が公開されるんですけども、これも単純なめくりでガチャ運が相当に強いんです。自分が得しないばかりか他人の得になってしまう局面もあるため、やや乱暴に感じる人もいるかもしれません。


 なので、その辺が気になるようであれば、ハウスルールとして下記のような処理を行うのもアリかとは思います。ただ、「絶対にこうした方がいいよ!」というものではありませんので、適用の際には参加者の同意を得たほうがよいかと思います。単純にプレイヤーに判断を迫る機会を増やしてテンポを悪くするので、こうしたゲームに慣れている人向けの選択肢です。


●P16 「次ラウンドの準備」の最後の項目を読み替えます。

読み替え前:
・得点トラック上で最高尾にいるプレイヤーにスタートプレイヤーマーカーを渡します。〜〜〜

読み替え後:
・得点トラック上で最高尾にいるプレイヤーは、任意のプレイヤーにスタートプレイヤーマーカーを渡します。〜〜〜


●P11 「ランドマークカード」の最初の段落を読み替えます。
読み替え前:
議会トラック上のランドマークスペースに到達(または通過)するたびに、プレイヤーはランドマークカードの山の一番上のカードを表向きにし、船/建物市場の近くに置きます。〜〜〜

読み替え後:
議会トラック上のランドマークスペースに到達(または通過)するたびに、プレイヤーはランドマークカードの山の上からカードを2枚引き、1枚を表向きにして船/建物市場の近くに置き、もう1枚を裏向きのまま山の底に戻します。〜〜〜


 まあ、プレイヤーの皆様におかれましては色々と試してみて頂いて、様々な意見を交わして貰えると面白いのかなとも思っています。ゲームバランスについて諸々議論できるのもゲーマーズゲームならではの魅力、懐の深さだと個人的には思っています。


◆拡張「沈まない船」について



 同時発売する拡張「沈まない船」には3つの要素が含まれています。「新しい船カード/建物カード」「イベントカード」「5人プレイ対応」です。


 「沈まない船」の名の通り、この拡張では「不沈船」が登場します。建物の建設コストとして手持ちの船を沈める必要がある建物カードがいくつかあるのですが、「不沈船」はそうしたコストとして割り当てることができないデメリットがある反面、様々な特殊効果を持っています。



 また特殊能力を持った新しい建物カードも追加され、カードプールが潤沢になります。基本的にこの追加カードはパワーカードが多いので、カード選択の面では先手有利に傾くのではないかと思います(し、ゲームデザイナーの先手有利発言は拡張の存在前提の話かとも思います)。


 「イベントカード」を導入すると各ラウンドでちょっとしたランダムイベントが発生します。プレイ感を大きく変えるほどではなく、若干キツさが緩和する方向のラッキーイベントを追加するといった塩梅です。

 ちなみに拡張の各要素はモジュール式となっているため、実装の取捨選択が可能です。

 「5人プレイ対応」は、その名の通りに5人目のプレイヤー用の内容物が含まれています。マップは4人用と変わらないので桟橋の奪い合いがより激化することでしょう。


 マストバイな拡張かと聞かれれば、どうかなー、あった方が嬉しくはあるけどなー、くらいの拡張だとは思います。一度基本を試してみてからでも遅くはないのかなと。追加のカードは面白い効果のものが多いですけども、最初は振り回されちゃいそうな気がしますし、慣れたから目にした方がパワーカードは笑えて面白いのはあると思います。


◆面白さは太鼓判! あとは皆様のご支持が頂ければと!

 「エンバーカデロ」は数寄ゲームズとしては珍しい出版プロセスを踏んだタイトルと言えます。というのは、このゲーム、友人がゲーム会に持ち込んだものを遊ばせて貰ったのが最初の出会いなんですけども、その時点では出版意欲はゼロだったんですね。

 というのは、版元のRenegade Game Studiosは日本でも付き合い先が多いところなので、まあ、面白ければどこかが日本語版を出すだろうし、そうでなければそういうことだろう、と構えていたからです。なのでいっちょ試してやろう的な感覚ではなく、普通にゲームを遊ぶ感覚、完全にニュートラルな気持ちで遊んだんですね。

 でまあ、遊んでみたら、こりゃ面白いぞと。ゲームの構造は理に適っているし、オリジナリティもあって、スケール感もある。多少の粗はあるにしてもそれをねじ伏せる快感があるし、もう1回遊びたい気持ちも強くてインパクトも脳裏に残ると。こりゃどこかから日本語版が出るなーと思ったワケです。

 ただ、待ってみても、どうにもそうした雰囲気がなかったので、うーん、これは問い合わせてみてもいいのかなと思えてきました。そこでRenegade Game Studiosに問い合わせてみたところ版権は利用可能だったので契約に至るという運びになります。まあ、そこからが結構長かったんですけども。


 1プレイヤーの立場で遊んだタイトルを自分主導で出版できるのは本当に稀有な例でして(まあ、トリテでは例があるんですけども)、これはラッキーなのかもしれないし、いや、自分の感覚が単に世の中とズレているのかもしれない、と思うところもあります。

 ただまあ、これまで出版してきたタイトルの受け取られ方を見る分には、そこまで自分の感覚は狂ったものではないハズで、だとすると、このゲーム、めちゃくちゃ面白いのに埋もれているタイトルということになるぞ、と思ってはいるんですよね。

 なので、このゲームについては「遊んだ人に損はさせないぜ!」という結構な自信があります。とは言え、最初に述べたとおり、このゲームは「知る人ぞ知る」というヤツでして、「全ゲームファン待望のあの名作がついに発売!」というテンションではありません。残念ながら。少しでも知って貰おう、知られないままに終わってしまうのはあまりにもったいないぞ、と思っているのでこうして紹介記事を書いています。


 逆に言えば、このゲームの本当の面白さを広められるのは、実際に手に取って遊んでみたあなたかもしれません。あなたの感性と体験をもってして、このゲームの真価を広く世に問うこともできる。そういう機会を与えてくれるタイトルとも言えます。

 年初の話として「メッシーナ1347」が発売からまあまあな時間差があってから盛り上がったことがありまして、ぼくはこのムーブメントを興味深く感じていたんですよね。

 発売した直後も、発売から半年後も、ゲームの面白さ自体に変化があったワケではありません。でも、受け取られ方が大きく変わったワケです。不思議なもんですね。

 「メッシーナ1347」も発売前からぼくとしては自信のあったタイトルではありまして、「これは日本のゲームファンの肌感に合うぞ!」と思って送り出したものの、その価値が皆様に浸透するまでは思ったよりも時間がかかりました。だから発売直後は、「うーん、感覚がズレてたかな?」と不安に思ったこともあったんですけども、徐々に盛り上がってくれたことでなんとか自信が取り戻せた気持ちにもなったんですよね。


 結局のところ、ゲームの盛り上がりってユーザー主導と言いますか、本当の熱気は遊んだ人達の中から醸成されるものであって、究極的にはこっち側の都合でどうこうできるもんじゃないんですよ。ただまあ、本当に面白いゲームはちゃんと評価されるので。そこはぼくはゲーム好きの人たちを信頼しています。

 なので、信じて、送り出す。こっちにできることはそこまでですよと。「これは絶対に面白いよ!」と確信したゲームだけを送り出して、あとはジャッジを受け手に委ねる。それがまあ、一番健全なやり方なのかなと思っています。

 そういうワケでこの「エンバーカデロ」、尖った面白さは保証済みのタイトルです。そこは自信があります。
 あとはこの面白さをもっと多くの人と共有したいと皆様にも思って貰えれば嬉しいんですが、はてさて、どうなるでしょうか。ここは神のみぞ知るといった心境です。


 また、そんな抜群の面白タイトルをお届けするまで大変なお時間を頂いてしまったことは申し訳ない気持ちもあります。とは言え、ようやくお届けできそうだぞという安堵感が今は勝っています。

 まあ、先述の通りに粗もあるタイトルと言えばそうですが、そうした粗さも含めて愛嬌のあるタイトルだとは思いますし、多くの方にぜひ遊んで頂きたい一作です。どうか触ってみて貰って、一言でもいいので感想をつぶやいて貰えれば嬉しいです。


エンバーカデロ

プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-90分

ゲームデザイン:Adam Buckingham, Ed Marriott
アートワーク:Janos Orban
小売希望価格:8800円(税込)

拡張:沈まない船
プレイ人数:1-5人
小売希望価格:2530円(税込)
posted by 円卓P at 18:40| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする