

はい、というワケで表題通りなんですけども、トリックテイキングゲームレーベルNo.002として「トランプ、トリックス、ゲーム!」日本語版をゲムマ大阪から販売できるように今頑張っています。
プレイ人数は3-4人、対象年齢8歳以上、プレイ時間は30分となっています。イベント価格2000円。数寄ゲームズの他のゲームと同様にその後は一般流通に乗せたいと思っていますが、その際の価格は未定です。
アートワークについては、イラストレーターのOliver Freudenreichさんに連絡を取った結果、原版のデータが残っていたのでそれを使わせて貰える運びになりました。昔のゲームだとデータ自体が失われている場合も多いのですが、Oliverさんは売れっ子イラストレーターなので(最近有名なのだと「ザ・マインド」の人です、って言えば「ああ、あのクセのあるウサギの!」と思ってもらえるかと)、その辺はしっかり保管していたそうです。ありがたやありがたや。
ゲムマ秋に「知略悪略」を出してからの次の展開としては結構なスピード感ではないかと思いますけども、これもイラストが残っていたおかげです。話を進めて行く中で「あれ、この感じだとワンチャン間に合うのかな?」という感じだったのでちょっと頑張ってアクセルを踏むことにしました。
日本語版としてローカライズする際の諸々のグラフィックデザインは「知略悪略」でもお世話になった別府さいさんにお願いしました。原版のデータをいじるのは新規の描き起こしと違ってなかなか気合の必要な作業ではあるかと思いますが、色々な制約の中でうまいこと仕上げていただきました。
さて、知ってる人には「買うよね!」としか言いようがなく、知らない人は全然知らないという例のパターンのゲームなので(笑) ここは改めて一からご説明させていただきますが、「トランプ、トリックス、ゲーム!」は2005年にファランクスゲームズというオランダのメーカーから発売されたゲームです。このファランクスゲームズは既になくなってしまった……というか、ファランクスには何やら3つの系譜があって、その中の1つがイギリスで生き残ってるみたいな、どうも複雑な流れがあるらしいんですけども、この辺は本題から逸れるので割愛します。
基本的にはファランクスは海外のゲームを引っ張ってきては自国語版にローカライズして出版するメーカーではありまして、その中では稀有な独自発信タイトルがこの「トランプ、トリックス、ゲーム!」ではあったんですが、組織自体が活動停止しているので当然絶版状態でした。
作者はギュンター・ブルクハルト。古くから様々なゲームを世に送り出しているベテランゲームデザイナーで、2018年には娘さんとの共作でドイツ年間ゲーム大賞キッズゲーム賞を受賞しています(契約の最中、自慢げに写真が送られてきました)。そんなブルクハルトですけども、なんとこの「トランプ、トリックス、ゲーム!」が初の日本語版タイトルとなります(で、間違ってないはず)。
ブルクハルトは多数の商業トリテを世に送り出しているゲームデザイナーでもあるんですけども、手がけているトリテの数々が、まあ、それはそれはもう古式ゆかしいトリテ公家のお歴々からは眉を顰められるようなキワモノの数々でして…… しかしながら、ゲームとしては大層面白いという始末の負えなさもあって、ブルクハルトはトリテジャンキー御用達のデザイナーという地位を確立している感があります。
で、その変態トリテの数々の中では際立って正統派っぽい、アクが薄くて誰でも無理なく咀嚼できそうなのがこの「トランプ、トリックス、ゲーム!」でして、「ブルクハルトから引っ張ってくるならアレとかアレとかアレがあるだろ!」みたいな話は、まあ、各々あるかとも思いますけども、「ドラッグの売人はまず無料でドラッグを配る」みたいな話もありますので、そこは畑に種を蒔く心持ちで選んでいるところもあるワケです。
……正直な話、ブルクハルトと契約が結べたことで、ぼくの野望は広がりまくりんぐです。ご存知の方はご存知の通り、こういうことをやろうと思ったらMMRのノストラダムスばりに避けて通れないのがブルクハルトですから、お膳立てが整った今、後はこのゲームがどう受け入れられてどう道筋が広がっていくのか、全ては皆様に託されたところもあります。つまりは買ってちょうだい、ということですね!
次のトリテのために。次の次のトリテのために。皆様どうぞよろしくお願いします!
はい、で、この「トランプ、トリックス、ゲーム!」。本音を言えば「知略悪略」よりも先に出版したかった、先に出版する意義が十二分にあったゲームです。
実際は契約を取るのに時間がかかったことと、「知略悪略」を出版するタイムリミットが迫ったこと、そうした事情が重なったのはあったんですけども、もし、フリーハンドで出版順を選べたのであれば、間違いなく「トランプ、トリックス、ゲーム!」を先に選んだであろうという、それだけの意義とポテンシャルを持つゲームです。
誤解のないように言えば、これはどちらが面白いかつまらないか、という数直線上の話ではなく、両者の持つ性格がまーーーーったく違う、180度逆方向を向いてるせいであって、「知略悪略」ももちろん面白いゲームであることは間違いなく、現に大変な好評をいただいているんですけども、とは言え「知略悪略」を真っ先に持ってくるということにびっくらこいた人々も多かったのではないかと思うのです。はい、それは正しい! 完全に正しいです!
というのは、「知略悪略」が野球で言えばパームとかナックルとかのいわゆる「魔球 of 魔球」みたいな位置づけのゲームだとすると「トランプ、トリックス、ゲーム!」の位置づけはまさにストレート! ……いや、ストレートと言うにはちょっと変化が大きすぎるので、まあ、フォークとしましょうか! それも野茂とか佐々木級のフォーク(例えが古いな!)で、この一発でバッターをドンピシャ打ち取れる「決め球 of 決め球」です!
正直、このゲームは間違いなく面白いゲームでして、それでいて今の日本のトリテシーンに絶対に必要なゲームです。というのはトリテの正統派仕様であるところの「マストフォロー切り札ありビッドなしのポイントトリック」的なゲームの中で最も面白い商業ゲームと言ったらこれでしょと言い切れるゲームだからです。
正統派をハズレたゲームなら面白いものはいくらでもあるんですよ。「知略悪略」なんてまさにその最たるものの一つで。
商業トリテは他者との差別化のためにいかに独自性を生み出すかに軸足を置いています。言わば深海魚的な進化をしたゲームがそこら中に溢れているワケです。うまい! けど見た目はグロい! みたいな。
しかしながら、逆に「正統派の商業トリテを一つ挙げろ」と問われたら途端に答えに窮してしまうのもトリテ好きのあるあるでして、このゲームも自信を持って「これだ!」とは言いづらい大きなクセ(と同時に旨味)を備えてはいるんですけども、しかしながら、「色々比較検討した結果を言えばこれになるんじゃない?」というのは多くの人に同意して貰えると思うんですよね。
このゲームは技巧を凝らした変化球がひしめくこの界隈では稀少な球威一本で勝負する本格派投手なのですよ。なので球団としてはエースとしてシーズン開幕戦に登板させたかったのですが、調整がうまくいかずに別の軟投派投手を起用することになった……みたいな、まあ、こちらの事情を話せばそういうことです。
まあ、これはこれで意外性があったのでよかった面もあるんですけどもイロモノ路線が続くのかと思われた節は否定できませんね!
あと、商業ゲームにこだわらないならトランプという最強のコンポーネントがあるんですけども、これは反面、初見の人にはヒキが弱いのも否めなく「専用のコンポーネントで専用のゲームを遊ぶ贅沢さ」を優雅に味わうゲームシーンの主流にはイマイチそぐわないようにも感じています。人は純粋なゲームを求めつつ同時に商業的な華やかさを欲してもいるんですね。なんとワガママな!
とまあ、そんなワケで、どれだけ優れた変化球でもそれ一本では組み立てが成り立たないのが世の常です。その前後に緩急のつく球種を織り交ぜることで変化球もよりキレが引き立つワケですけども、そもそも投げられる球種が不足して組み立てに苦労しているトリテピッチャーが世の中には溢れていると感じています。そういう世の中に対して「アナタの次の持ち球として、これ、いかがですか?」というのが今回の提案と思っていただきたいのですね。
その上でトリテを知らない人にとっても最初に覚える球種としてこのゲームを選ぶ、も、大いにアリだと思います。やや複雑さが勝る向きはあるかもしれませんけども、「トリテ is こういうゲーム」を一番歪みなく感じられるゲームではないかなあと思うのです。
まあ、歪み、とか言い出すのはちょっと押し付けがましい提案なのかもしれませんけども、でも、実際問題として「トリテらしいトリテがわからない」で困っている人、悩んでいる人、恥ずかしく思う人、意外と多いように思うんですよね。別にそれは全然困ることでも恥ずかしいことでもないんですけどね!
なぜなら(そういう方はご存知ないと思うんですけども)、これはトリテを覚えていったら自然と解決する悩みなのかと言えば実はそうでもなく、「トリテらしいトリテを知ってもらうのに一番いいのはなんだろうね」ってのはぼくも今悩んでいるところだからです(笑) しかしまあ、暫定解に一番近いのはこれなんじゃないかなあというところから、このゲームを出版することに決めました。
あとは「知略悪略」の時には、ゲームを作る人向けに「メイフォローの教科書として活かして欲しい」的なことを言ったんですけども、そういう意味ではこちらは「正統派トリテの教科書」として活かしてほしいと思います。うん、やっぱり必要ですよ、このゲーム。
はい、そしてゲームの紹介。ここまでゲームの紹介をまったくしていなかったのですが、一言で言えば「マストフォロー切り札ありビッドなしのポイントトリック」のトリックテイキングゲームです。二郎とかスタバの注文みたいだなと思った方、特にこの意味を深く考える必要はないです! 面白いよ、ってことだけ覚えてください!
ちなみに「よくわからんけど『知略悪略』は遊んだことがある」というありがたいお方、「知略悪略」を同じ形で分類すると「メイフォロー切り札なしビッドなしのポイントトリック」という言い方になるかと思います。50%同じなので半分理解したも同然ですね。
繰り返しになりますが、仕様としては割と正統派を行くトリテなので、特徴としては変な部分を挙げた方が早いです。
1つ目の特徴としては、このゲーム、全部で4ラウンド(ディール)遊ぶんですが、第2ラウンド目以降はカードを配って手札にするのではなく、前のラウンドのトリックで獲得したカードをそのまま手札にします。
勘のいい方なら、ここで違和感を覚えるでしょう。「えっ、それだと2ラウンド目以降、手札の枚数がバラバラにならない?」
はい、それを防ぐために、このゲームでは1ラウンドで3回しかトリックを取れません(4人プレイの場合)。1ラウンド目に配られた12枚の手札を使って、2ラウンド目の12枚の手札を獲得し、その12枚の手札を使って3ラウンド目の手札を…… という感じです。
で、このトリック獲得制限は最終ラウンドである4ラウンド目では撤廃されて、最終ラウンドのみ「手札が強い=強い」な「力 is パワー」なトリテが展開されます。得点配分としても最終ラウンドが最も稼げるラウンドに設定されているので、勝つためには最終ラウンドに備えて手札を整えるように立ち回る必要があり……そのためには第3ラウンドでうまく立ち回れるように手札を整え……そのためには……という循環的な戦略が要求されます。
求められる思考は短期目標と長期目標があわさってかなり重層的で、目先の利益だけを追求すると先が立ち行かなくなります。そういう意味では結構なトリテ力(-とりてぢから)が必要ではあるんですけども「ここは勝ちたい! ここは負けたい!」「人を操ると嬉しい! 人に操られると超悔しい!」というトリテならではの感情の起伏やテクニックの気づきを存分に味わえるゲームです。うまいこと手札を整えて最終ラウンドに無双しまくると脳汁ドッバドッバで堪りません。
あとは日本語版の仕様についてですが、基本的には原版の仕様をそのまま踏襲していて、ルールの変更はありません。今回はイラストも原版のものが使えたので見た目的にもそんなに変化はなく…… 箱がやや小さくなって持ち運びやすくなったのは嬉しい人も多いでしょうか。
細かくはプレイアビリティを向上させるために若干のデザインの変更やサマリーカードの追加などを行っています。大手を振って手を入れられる稀少な機会なのでここは遊びやすくしたいなと。

マニュアルについては、原版が結構な難読文書だったので、今回は割と手を入れている箇所があります。特に追加ルールの2つ目がブルクハルトの口述筆記でもしたんじゃないかと思うくらいに複雑骨折してる文章だったので、ここはガッツリと手を入れました。
「運要素が減って競技的になるらしいけど、なんかよくわからんから追加ルールは遊ばない」って人、多かったんじゃないでしょうか。ぼくも数年前に最初に読んだ時「なんやこのルール!?」ってなったんですけど、落ち着いてよくよく読んでみるとなるほどそういうことかという気づきもありました。いいゲームなので味変がどういう風に影響するのかも楽しみたいですよね。
なお、タイトルの「トランプ、トリックス、ゲーム!」は結構悩んだ部分でして、ドイツ語の「Auf der Pirsch」は直訳すると「うろつくもの」的な、なんかこう浮浪者チックな響きを持つ言葉になります。
これがなんでこのように訳されるかというと、当時のメイフェアの英語版で「Trump, Tricks, Game!」と英訳され、それが輸入された日本では「トランプ、トリックス、ゲーム!」の呼び名が一般的になったからです。
で、このタイトル、初めて目にした時の印象を思い出してみれば「トランプゲームの一種かな?」というもので、お世辞にも「面白そう!」というプラスの感情を励起されたとは言いづらい響きではありました。play:gameでなんか高い点がついてるの見たけどスルー、みたいな。
いや、ホントに、このタイトルだけだと、面白さが全然伝わらないんですよ! なので、タイトル変更も考えた方がいいのかなあ、とは悩みました(個人的にこのジレンマを「ドキドキワクワク相性チェックゲーム問題」と呼んでいます)。ただ、色々な人に意見を聞いてみたところ、「やっぱりトランプでトリックスで、ゲーム! って感じでしょ」ということで、割とそのままなタイトルになりました。
ちなみに箱の印刷はタチキタプリントさんにお願いしたんですけども、最初に「トランプ、トリック、ゲーム!」のタイトルで入稿したら
ニューゲームズオーダーの吉田さんから「スを入れないと意味が変わっちゃうよ!」と指摘が入りました(ただ、カジュアルにはスなし派の人が多い印象です)。先日タチキタさん/NGOさんに伺った際に吉田さんからこのゲームへの思い入れを聞いていたこともあって、「ここは先人の感覚を素直に受け入れるのが良策やな」と考えて、今回のタイトルとなりました。
考えてみればNGOさんも「スルージエイジ」呼びがどちらかと言えば主流な中で「スルージエイジス」を定着させた方ではあるんで、大事なのはそういうことなのかもしれません。
まあ、そういうワケで、知らない人には若干伝わりにくい…… しかし、面白いことには疑いの余地のないゲームなので、こうやって面白いぞアピールをして、少しでも多くの人に存在を知ってもらおうと思います。いや、本当にマジで面白いゲームなんですよこれ!
ともあれ、日本のトリテシーンをさらに活性化させるために、今一番必要なゲームを用意したつもりです。
トリテは全然知らないという方々も騙されて買ってください。いや、むしろ、何も知らない3人か4人で遊ぶ「トランプ、トリックス、ゲーム!」めちゃくちゃ面白いと思いますよ。
このゲームが受け入れられるかどうかで次の手も変わってきますので、皆様どうぞよろしくお願いします!