2016年12月02日

そんな顔してどうしたの? まとめ

ゲームマーケット2016秋に出展します「娘は誰にもやらん」のまとめページです。





※上の画像2点はゲームの紹介用途に限り、自由に使って頂いて構いません。

ルールマニュアルはこちら(※クリックでpdfが開きます)
そんな顔してどうしたの? マニュアル(PDFが開きます)。
※2016年11月22日公開

ゲーム紹介
解説! 「そんな顔してどうしたの?」ってこんなゲーム

製作記録
「そんな顔してどうしたの?」制作記録 作りたいのは日本語版です
「そんな顔してどうしたの?」制作記録 英語で伝えるムズカシさ
「そんな顔してどうしたの?」制作記録 なぜ返信が来ないので?

そんな顔してどうしたの?
プレイ人数:3〜8人
プレイ時間:20分
対象年齢:6才〜
価格:イベント価格3000円/一般小売価格3240円
ゲームデザイン:Penelope Taylor
イラスト:Mutsumi Kawazoe
デザイン:Osamu Kurata

内容物
・動物カード 40枚
・ダイス 1個
・説明書 1枚
・番号タイル 3枚
・動物図鑑 1冊
posted by 円卓P at 22:12| Comment(3) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「そんな顔してどうしたの?」制作記録 なぜ返信が来ないので?



 これまでのあらすじ。よっしゃー、いらすとやさんの素材を使って日本語版の製作スキームを纏めたぜー! Pennieさんこれでどうですか!? ……あれ、返事が来ない。


 困った。これは困った。なんでかわからんけども返事が来ない。もう10日経ってるんですけども……
 一応これまでのやり取りでは3日もすれば返信が来るぐらいで、そのレスポンス速度からもPennieさんのノリ気が感じられたんですが、フロー図を送ってからPennieさんからの便りはパッタリと途絶えてしまいました。なーぜーだー。

 最もマズいパターンとして考えられるのは、Pennieさんが想定していた日本語版の製作スキームからあまりにかけ離れた提案をぼくがしてしまっている場合です。特に「印刷を日本側主導で行う」という部分は割と大胆な提案でもあって、要はPennieさんの手から出版に関する一切のコントロールを預かる形になりますから、その権限を場末の海外のインディーメーカーに委ねるのはリスクが高すぎる、とPennieさんが考えてもおかしくはないワケですよ。

 実際にそういう話も聞きますね。日本の某ゲームに海外のメーカーから出版の声がかかったまではいいものの、いざ製品が出来上がってみたらなんか別物になってたみたいな事例。もちろんデザイナーの許可なしにです。印刷の一切合切を預けるというのはそういうリスクを含んでいます。
 ぼくはそんなこと怖くて絶対やらないですけども、他人から、ましてや海外から、その真否を判断できるワケもなく。要は信用問題なんですが、誰かが保証してくれるほど堅固な信用はないという現状でもあって。信用はこれから作っていくしかないんですね。

 あとまあ、今回の場合、輸送コストを考えると日本で印刷するのが妥当ですし、何より箱の製造を原版とは全く変えるつもりなので、その辺は日本の印刷会社に頼む方がコストと納期を計算しやすいという事情もあります。海外の印刷会社は小口での注文は難しいとも聞きますし、その辺をPennieさんに丸投げするのもちょっと難しいでしょう。
 ということで一番現実味のある提案をしているだけ、というのがぼくからの視点なんですが、果たしてPennieさんにそれが伝わっているかどうかはわかりません。というか、疑問に感じているなら説明しますんでどうか返信をください!

 逆に最も楽観的なパターンを考えるなら、それは「ごめん、連絡するの忘れてた!」みたいな場合です。ぼくら日本人からすれば「いやいや、そりゃないだろ!」と思うようなすっぽかしがこの界隈はよくある……らしいので。
 日本語版出版の相談をしてたら連絡が半年途絶えた、とか、再販の相談してたらモニャモニャとかウニャウニャとか。海外の人はテキトーだなー! ……という印象はあります。特にイタリアの人。

 とは言え、タイミングがタイミングなんすよねえ。いかにもなんか逆鱗に触れてんじゃないかっていう内容ではありまして。
 本音を言えば、もう少し時間をかけてお互いの希望や価値観なんかを擦り合わせてから「こういう形で行きましょう!」という話を始めたかったんですが、Pennieさんは話を進めたがってる雰囲気もありましたし、きちんとした案を提示できないと頼りない人だと思われるんではないか、という恐れもあって。うーん、ネゴシエートは難しい……

 とは言え、まあ、言うて10日ですわ。まだ10日ですよ。ちょっと忙しくて返事が遅れているだけかもしれません。〆切がある話でもないですし、ここは落ち着いて待ちましょう。


 ……って、構えていたら1ヶ月経ちました。まだ返信が来ません。

 うわああああ、ダメならダメだと言ってくれええええ! それならそれで諦められるから! 別になんか損切りする話でもないし!

 で、ちょっと記録を探すのが難しいので若干ここは記憶だけで書くんですが、さすがにこの時は「1ヶ月前に送ったメールの件だけど、どうなってますか?」的なメッセージをTwitterか何かで送ったような気がします。PennieさんはTwitterにちょこちょこ書き込みはしてたので、事故や病気の可能性は薄かったんです。

 そしたら。

 「ごめんごめん、夏休みだったんだー」

 という返事が来ました。

 そっかー、夏休みかー!!! 夏休みじゃしょうがないよなー!!!

 このメールの絶えていた時期はまさに7月半ばから8月半ば。北半球で夏休み大作戦が決行される時期です。
 そりゃー夏休みだもん。休暇中の相手をビジネスメールで追い立てるなんて無粋な真似をPennieさんがするはずがないでしょう。ジャパニーズビジネスマンだって夏は休むに決まってるんですから。あれ、なんか目から水が……

 言うて連絡をスッパリ断ち切っちゃうのはそれはそれで豪快すぎやしないかという気もしつつ、いやいや、これくらいの感覚が世界標準なのかもしれぬ、と、なんかもうこの件に関しては拭い難いカルチャーショックを勝手にぼくは味わっていました。まあ、こちらから催促を入れてればまた話は変わったとも思うので、結局のところ、コミュニケーションの取り方に不足があったんでないの、という話になっちゃうんですが。

 あ、フロー図自体には「great ideas」と賛意を貰えました。
 ただ、実際問題として夏休みであるがゆえに話を進められなかったという事情もあったようで、Pennieさんは知り合いのコンサルタントにフロー図を見せて疑問点を確認したかったけど、まあ、当然その人も夏休みなのでもうちょっと待って欲しい、というようなメールが後ほど(連絡遅れてごめんなさい、とちょっとこちらが恐縮するほど丁寧な文面を添えて)送られてきたのでした。

 ちなみにPennieさんご自身は夏休みでどこかの田舎に行ってたらしいです。この方、なんかメールの度に「旅から帰ってきたところよ」と書いてるので本業は旅人なのかもしれません。
 さらに余談なんですが、Pennieさんはフロー図に載せたいらすとやさんの外国人女性のイラストをえらく気にいったみたいで

「I really like the cartoon Pennie in the flow chart! Thanks again for sharing your thoughts in an awesome way :) 」

 というお褒めの言葉を頂きました。国境すら越えるいらすとやさんパワー、パネエッすわ。

 まあ、モヤモヤしっぱなしの1ヶ月ではあったんですが、結論としては日本語版の製作スキームはほぼ了承して貰えたということで、ぼくは「よかったあああああああああ……」と肺の中の空気全部を吐き出すほどの安堵を覚えていたのです。


 その時のメールには今年の春にL.C.ベイツミュージアムの新顔になったらしいボブキャットの写真が添付されていて、未だカード化されていないこの写真を送って貰えたことがPennieさんからの信頼の証のようにぼくには思えたのです。……なんかフラグくさい文章だなこれ。

 ということで最大の懸念が晴れたぼくはウッキウキでPennieさんにメールを返信したのです。この時ぼくがどれだけウッキウキだったかというと……

 「メールをありがとう。君がトラブルに巻き込まれているんじゃないかと心配してたよ。だけどぼくの心は今平穏に包まれているよ! 写真もありがとう。彼はとってもハンサムだね。ぼくの友達が彼の顔真似をしている風景を想像すると顔がにやけてくるよ。ところで君は初版から動物カードを増やすつもりなのかな? それは嬉しくもあるけど…… ワオ、困ったな、製作コストも上がっちゃうね!」

 自分で書いてて「なんやコイツ……」と思わざるを得ないウザい書き出しで、ちょっと当時のぼくを殴ってやりたい気持ちが抑え切れません。

 さて、これでようやく「Why the long face ?」の日本語版製作の合意が取れました。後ほど契約を取り交わしてからが正式な意味でのスタート、ということにはなりますが、実務的には日本語版をどのような形で出版するのか、より具体的な相談を始める場が整ったワケです。

 ここでぼくはゲームマーケット2016秋への出展をPennieさんに提案しました。「日本では新作お披露目の機会としてゲームマーケットというイベントが年に3回あるよ」「そこに間に合わせられたらステキじゃない?」「まあ、間に合わなくても次のゲムマを目指せばいいんだけど」みたいな感じで。
 ぼくとしては着地地点を決めることでスケジュール意識の共有を図るとともに、今回のような連絡の途絶を防ぎたい、という意図がありました。さすがに今回みたいなことが再発すると精神的にシンドいですし、催促するにも口実の一つもあった方がやりやすいワケです。

 ちなみに12月11日のゲムマ出展に間に合わせるとなると、箱詰め作業やらを考えて11月末には現物が手元にあって欲しい。となると印刷に出すのは10月中旬から下旬がリミット。そしてこの日は8月25日。入稿データ作成に使える時間は最大で2ヶ月。そしてグラフィックデザインをお願いする人はこれから探さないといけない。結論としてはあんまり時間がない。

 ということで、秋ゲムマに間に合うかどうかは、大きなトラブルがなかったらと仮定して確率的には70%くらいかなーと見積もっていました。そして多分、この確率は削られることはあっても、回復することはないでしょう。そんなこともあって今回のゲムマカタログのサークルカットには「『Why the long face ?』日本語版を出します!」とは書けなかったワケです。

 「まあ、結構ハードワークにはなります」とPennieさんにはお伝えしました。でもまあ、Pennieさんからは「I think it's a great idea.」と了承を頂けたので、ここで日本語版をゲムマ秋に出展したい、という時期的な目標が定まりました。
 さて、こうなれば、あとは手を動かすだけです。まあ、実際に汗を流すのはぼくというよりはグラフィックデザイナーさんなんですけども。
 で、そのグラフィックデザイナーさんに作業をお願いするにしても、弄るためのデータがなければ作業は空転してしまいます。なので早速Pennieさんにゲームで使う画像データをください、とお願いしました。原版で使ったデータをそのまま貰えればいいですよと。しかし……



 しかし、ぼくの手元にデータが届くのはそれから1ヶ月後のことになるのでした。


 続きます。
posted by 円卓P at 22:00| Comment(0) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月30日

「そんな顔してどうしたの?」制作記録 英語で伝えるムズカシさ



 これまでのあらすじ。「日本語版を作りたいんです!」とゲームデザイナーのPennieさんに伝えたら「日本版いいね! で、どこかいい博物館ある?」って返信が来ちゃいました。

 うっわーい、こりゃ困ったぞ! 困りはするけど、日本語版を作るためにここは丁寧に説明して根気よく理解を求めてかなきゃイカンですわね……!
 ということでPennieさんに返信の文面をば。まずはこちらの申し出に興味を示してくれたことに謝意を述べつつ、「ぼくの作りたいジャパニーズ・エディションはジャパニーズ・ランゲージ・エディションである」ということ、「ぼくはL.C.ベイツミュージアムの動物剥製に魅力を感じているのでその写真を使いたい」ということ、そして「日本の自然史博物館では上野の国立科学博物館が有名だよ!」と書きました。
 まあ、ぼくは国立科学博物館は行ったことないんですけども! でも公式サイトは英語での表記も充実してるんで、紹介するならここが妥当なんだろうなーと思った次第。

 http://www.kahaku.go.jp/

 ついでに(本来の目的とはちょっと離れてはしまうんですが)もしPennieさんが日本の博物館を題材にゲームを作る気があるなら協力は惜しみませんよ、的なことも書きました。まあ、日本版デッキもそれはそれで魅力的かもしれないなあ……

 とは言え本題としてはやっぱりL.C.ベイツミュージアムなワケでして。日本版もいいけど、まずはオリジナルの日本語版をぼくは作りたいのです。
 でもこの文章だけだとぼくの作りたい日本語版の意味がちゃんと伝わらないかもしれない…… うーむ、どうしたらPennieさんにぼくのやりたいことが伝わるだろうか……

 あ、そうだ。実際にゲームのどの部分をどう変えたいのか画像を添付すればいいんだ!

 ということで、原語版の「Why the long face ?」の画像をちょっと加工した「ぼくの作りたい日本語版のイメージ」を添付してメールを送ったのでした。


 白尾ジカってめっちゃ適当な和訳…… 製品版ではオジロジカになってます。

 さて、この画像を見てもらえればわかるように、ぼくは当初から日本語版を出すにあたって日本向けのローカライズ、特に日本市場の特性上、パッケージに手を入れることは不可欠と考えていました。いや、そのまま出せるならそのままの方が作業も発生しないし、ラクでいいんですけども、さすがにちょっと簡素すぎるので……
 これはつまり、パッケージデザインその他諸々に手を入れることについて、まずPennieさんから了承を得る必要があると言うことです。単純に動物名の日本語化だけならまず反対はされないとは思うのですが、グラフィックデザインまで話を広げるとこれはゲームデザイナーのデザイン思想に抵触する恐れがありまして、ここで理解を得るのに時間を取られるかもなあ、という予感はありました。

 なんとか話の分かる人であって欲しいなあ、と気を揉みつつメールを出したところ、その3時間後に返事が来ました。早いよ!!!

 「メールと画像をありがとう! ところであなたはグラフィックデザイナーなの? あなたが絵を描いてくれるの?」

 うーん、とりあえずこっちの意図する日本語版の意味はわかってもらえたのかな? そしてグラフィックに手を入れること自体には抵抗がない雰囲気っぽい……? 具体的にこちらが何をするつもりか尋ねてる感じかな。
 でもまあ、これならもうちょっと踏み込んでも大丈夫そうだぞ。ええっと、つまり、こっちがやりたいことは以下の三点かな。

・日本向けにローカライズさせて欲しい
・ローカライズの作業はこちらでやらせて欲しい
・日本の印刷会社で印刷させて欲しい

 まあ、ぼく自身はグラフィックデザイナーではないけれど、それは専門の人にお願いするつもりですよ。その際に発生する費用等はこちら持ちでやりますよ。と、メールには書き加えて。
 要はローカライズ作業とはなんぞや的なことを1から説明した感じではありますが、これを全部慣れない英語で伝えないといけないのが頭の痛い問題ではありました。書き方をちょっと間違えただけでも異なる意味で捉えられてしまう可能性もあって(日本版と日本語版の違いはその先例ですよね)、なるべく解釈の幅が少ない書き方をしなければなりません。
 でまあ、そんな感じで四苦八苦しながらメールを送ったところ……

 「あなたは作品と制作の編集と管理のために私にお金を払うことを提案していますか? 日本であなたに配布したいのですか、ゲームを購入して自分で管理したいのですか?」(※Google翻訳)

 というような返信が来ました。うわー、なんかもう、何から話せばいいんだこれー! Pennieさんは結構砕けた文章を書いてくる人なので解読からかなりカロリーを使います。もうやめて! ぼくのMPはとっくにゼロよ!
 編集と出版と販売の諸々がぐっちゃぐちゃになった文章で危うく混乱しかけたんですが、それはつまりPennieさんも混乱してるということですから、ここは正気を保って一つ一つ丁寧に切り分けて説明していかないといけません。

 ただ、日本語版の製作と出版の流れを一から説明するのは複雑に過ぎる! 英文で誤解なく全てを説明できる気がしない……!
 ぼくの英文スキルを冷静に考えるに、一度メッセージを伝えた後にPennieさんに正しく理解して貰えたのかを精査する手順を挟む必要がありますし、意図から外れた解釈をさせてしまうと軌道修正の苦労は雪だるま式に膨らみます。何よりも、そんなやり取りを逐一続けていたらぼくもPennieさんも心が折れかねません。

 マジでこの時はどうしたもんかと頭を抱えました。これが素人同士の恐ろしさで、明確なゴールは脳裏に描けているのにその青写真を共有するのが極めて困難なのです。しかしここは言い出しっぺのぼくがリードして話を進めていかなければなりません。うわああああ、困った……!

 ただ、一つ希望はあって、Pennieさんは日本、そして世界のゲーム文化、ゲーム市場に対してとても強い興味を示してくれていました。だからこそ彼女はなんかよくわからない海外のインディーメーカーのなんかよくわからない英文につきあってくれているのです。
 その気持ちを無碍にしてはなりません。Pennieさんがやる気ならぼくはそれに応える責任があります。

 ぼくは日本でゲームを製造したいこと、そして日本でそれを販売したいこと(つまりfrom Japan to Japanです)、その代わりにPennieさんにロイヤリティを支払いたいことを簡潔に書き、肝心のゲームとお金の流れに関してはフロー図を用意して伝えるアイディアを思いつきました。
 これならこちらが考えているゲームとお金の流れも明瞭に示すことができますし、何よりPennieさんから見ても「このジャパニーズ、適当な英文を書いているんじゃないか?」という不安が拭えるはずです。



 ということで作ったのがこれです。ありがとういらすとやさん! ボードゲームを遊ぶ人のイラストというドンピシャで必要な素材がマジで助かりました!

 ……よし、これならぼくのやりたい日本語版の製作工程が間違いなく伝わるはずだ! ぼくはフロー図を完成させるとメールに添付して送信しました。そして……


 そして、それから連絡はプッツリと途絶えたのです。
 なんでえええええ!?


 続きます。
posted by 円卓P at 21:08| Comment(0) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月25日

「そんな顔してどうしたの?」制作記録 作りたいのは日本語版です


 遠くを見つめるオナガオコジョさん。ちなみに写真はデザイナーのPennieさんが撮影したそうです。


 記録を調べてみると「そんな顔してどうしたの?」のデザイナー、Penelope Talyorさんに初めて連絡をとったのは7月8日のことだったみたいです。翌日に早速返信があって、締めが「With my best,Pennie」で括られていたのでさすが海外の人はフランクだなあと妙な納得を覚えつつ、これはPennieさんとお呼びした方がいいのかなあ、と考えて、以後そのようにお呼びしています。

 さて、どうしてぼくが「そんな顔してどうしたの?」、原題「Why the long face ?」の日本語版を作ろうと思ったかと言えば、一番は自分が遊びたかったからです。キックスターターから始まったこのゲーム、その名前を知った頃には出資はとっくに終了していて既に入手が難しいゲームになっていました。

 ちなみにキックした人は日本では2人しかいないんじゃないか……というのがとある筋から得た情報です。ぼくは後から知ったんですが、それを聞いて思わずのけぞりました。そんなゲームの日本語版を作ろうとしてたのか、ぼくは…… 事前にそれを知ってたらもうちょい冷静になってたかもしれません。

 なんというか、傍からは隕石が頭にぶつかったか雷でも落ちてきたか、物凄く唐突に海外ゲームの日本語版を作ったなー、というイメージで見られてるのではないかと思うのですが、ぼくの視点では色々な伏線があった上での一つの結実といいますか、ようやく形にできた一つ目の成果と言えなくもなかったりします。
 「自分が遊びたいゲームが手に入らない!」「欲しい!」「作ろう!」という一連の思考経路は同じく秋ゲムマに出展する「娘は誰にもやらん」と同じルートを辿っているのですが、去年の夏頃、このルーチンで一つ日本語版を企画しようと思ったゲームが実はあったんです。まあ、これは結果的には頓挫してしまったんですが。
 とは言え、それは不幸な頓挫というワケではなく、今は某社から日本語版が出ているしっかりしたタイトルでして、ぼくの最終目的である「遊びたいゲームを手に入れる!」という部分はそれで達成されたのです。つまりこれは戦略的大勝利ではあるんですが、それでも一度「よっしゃ、こうなったらワイだけが知っとるオモシロゲームの日本語版を出したるで!」と固めた決意が盛大にスカって心中にモヤモヤが残ってはいました。

 海外のデザイナーに直接連絡を取って出版にまで漕ぎ着けるというある種の冒険は、つまるところ、心に期するものがなければなかなかなし得ないのではないでしょうか。まあ、ぼくはボードゲームを生業にしている人間じゃなくてただのゲーム好きですし。
 とは言え、一度失敗してしまえば、心理的なハードルは驚くほど低くなるもので「ダメで元々」の精神で特攻してみればいいじゃん、という気持ちにはなりました。日本には「言うだけならタダ」という素晴らしい言葉もあります。

 ということで、「そんな顔してどうしたの?」も最初のコンタクトで「日本の某社と話が進んでる」という返事もありえるとは思っていて、まあ、それならその話が聞けただけでもオトクだよね、という前のめりな姿勢で挑んだのですが、(仕事で英文ビジネスメールを書いた経験がある友人に頼んでようやく作成した)メッセージへの最初の返答は「私の『Why the long face ?』にメッセージをありがとう。私は日本のファンにとても大きな興味を持っています」といった内容だったのです。うおおおお、これはいい反応だぞ!
 「そもそも返信自体がない」「日本語版の出版自体に興味がない」「他人に弄られるのは嫌」「そもそもこれは学術振興であり商売ではない」「めんどくさい」「というか誰やねん」等々…… 最初のコンタクトで話が終わるパターンはそれこそいくらでも想定できたので、まずは「繋がったこと」。これがとても大きく感じられたのです。

 いや、だって、自分の身に置き換えて考えてみるに、海外の名も知れないインディーメーカーから「自国語版の出版を検討しているんですけどー」なんてメールが来たら絶対に「これはなんかの詐欺じゃないか!?」と疑うと思うのです。ちなみに「Why the long face ?」がキックで製作した部数は250部くらいなので、ぼくが作ったゲームよりも出回っている数としては少ない…… まあ、ぼくのゲームは基本的に国内で閉じているので部数から直接比較することはできないんですが、それにしたって突飛な申し出だったんじゃなかろうかと……
 果たしてPennieさんは一体ぼくの何を信じてくれたのか。一応自分でゲームを作り続けてそれなりに見せられるものがあったのがよかったのだろうか。そのうち一つが姫騎士とオークが追いかけっこするゲームであることをPennieさんはわかっているのだろうか。
 この辺は未だに謎です。掘り起こすのもちょっと躊躇われるのでその辺は敢えて聞いてません。

 ともあれ、前進はしました。いやー、なんでもやってみるもんです。何事も最初の一歩がなければ大業は完遂しないのです。でかしたぼく! よくやったぼく! これで日本語版が作れるぞ!
 興奮の中、ぼくはメールを読み進めました。

 「Are there any natural history museums in Japan that might want to have a version of the game made with them? I have received funding to travel to make a second edition of this game with an international museum.」

 ……パードゥン? えっと、どういう意味?
 ちなみにぼくの英語能力は中学生レベルで、高校の頃覚えた英語の多くはマジックザギャザリング(第4版)由来だったという程度に英語に親しみのない生活を送ってきたもので、お世辞にも英語のコミュニケーション能力は高くはありません。Google翻訳がなかったらまともに英文も書けないレベルです。というかGoogle翻訳が訳してくれた英文が正しいのかどうかすら判断に困るレベル。
 つまり、何を言いたいかというと上記の文章でPennieさんが何を言ってるのか、パッと見には理解できなかったわけです。よし、困った時はGoogle翻訳さんの出番だ! ポチッとな。

 「日本の自然史博物館には、ゲームのバージョンを作りたいと思っていますか? 私は国際的な博物館でこのゲームの第2版を作るために旅行する資金を受けました。」

 ふむふむ、なるほどね…… って、あれ、これ、日本語版じゃなくて日本版、日本の博物館のバージョンを作りたいって意味に受け取られてるううううう!?

 いやいや、違うんだって! ぼくは英語版の日本語版が作りたいの!(わかりづらい) つまりL.C.ベイツミュージアムの動物がいいの! 日本の博物館なんてそんなもん直接展示見に行けばいいでしょうがよ!
 アイ・ウォント・トゥ・メイク・ザ・ジャパニーズ・エディションなんですよ! なるほど、英語にしてみると日本語版と日本版の違いがわからん! 難しいな、英語!
 というか英語圏に人にとっちゃ英語が当たり前の生活だろうから翻訳したバージョンの出版なんて発想がないのかもしんない! 「日本人も英語習うでしょ? 問題ないじゃん、遊べるじゃん」とか思ってるのかもしんない! というか、そもそも日本の有名な自然史博物館ってどこだよ!

 ……いやいやいやいや、困ったぞこれは。ぼくはまず日本語版とは何か、どういう価値があるのかをPennieさんに説明しないといけないのか。しかも英語で。
 というか薄々そうかもしれないと思っていたけどアレだ、多分Pennieさんはいわゆるゲーマーではない……! アメリカのゲーマーはドイツ語版とかめちゃくちゃ拒否るって話を聞いたことがあるので母国語版出したいの意図も即座にわかるはず……!
 これはつまりどういうことかっていうと、おそらくはゲーマー同士なら言わんでも通じる文化が通じない可能性があるってことだ。それをぼくはPennieさんに説明しないといけないのか。しかも英語で。いやいやいやいや!

 最初の一歩は踏み出したものの…… 踏み出したものの、待っていたハードルの高さは想像以上で、のっけからこの文化摩擦を果たしてどうやって乗り越えていけばいいのか、ぼくは途方に暮れたワケで……
 だって素人だよぼく。そして相手も違う方向で素人だよこれきっと。素人素人アンド素人。
 果たしてこの転がりだした案件はどこに向かうのか。そしてぼくはどうやってこの困難を乗り越えていくのか。
 その時のぼくはまさしく「そんな顔してどうしたの?」と尋ねられるような表情で固まっていたのです……

 続きます。
posted by 円卓P at 21:43| Comment(0) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月22日

解説! 「そんな顔してどうしたの?」ってこんなゲーム



 先日告知していました「そんな顔してどうしたの?」の入稿がほぼ終わりましたのでゲームの紹介をしたいと思います。Penelope Taylor氏デザインの動物顔まねゲーム「Why the long face?」の日本語版ということになります。


 豆知識。レッサーパンダは英語ではレッドパンダと言います。
 このゲームはこのような動物カードを使って遊ぶゲームです。

ゲーム概要

「そんな顔してどうしたの?」は、あなたの顔を使うジェスチャーゲームです。
剥製になった動物たちの顔カードから出題者が選んだ一つを回答者が推理します。
プレイヤーはL.C.ベイツミュージアム(メイン州の自然史博物館)の剥製たちの顔を知り、
またその過程で自分の顔の表現力を知ることにもなるでしょう。


 ゲームの流れはこんな感じです。
 最初に準備として3枚の番号タイルを並べ、その両脇によくシャッフルした動物カードを6枚を表にして並べます。ゲーム中は常に6枚の動物カードが場に並んでいることになります。



 プレイヤーのうち1人が出題者となり、残り全員が回答者になります。出題者はダイスを秘密裏に振り、今回、顔真似をする動物を決めます。
 ここで出題者には二つの選択肢があります。

・出題者がその目に応じた動物の顔真似をします。回答者は出題者がどの動物の顔真似をしているか推測します。
・直接対決(FACE-OFF)を行います。出題者はダイスを公開します。回答者全員がその動物の顔真似をして、顔真似の正確さを競います。勝敗は出題者が判定します。

 つまり出題者は、「自信があれば自分で顔真似をする」「こりゃ難しそうだなと思ったら回答者全員に顔真似をしてもらう」のどちらかを選ぶ感じです。
 一問終わったところで出題者は時計回りに移ります。そしてゲームは顔が疲れるか、山札が尽きたところで終わります。

 このゲームで求められるのは動物の細かな特徴を捉える観察力、そして顔の動きだけで動物らしさを再現する表現力です。パッと見では無表情な動物でも、視点次第で「らしさ」を見つけられることもありますし、それを表現することで「わからないけどなんかわかる!」という不思議な意思疎通を味わうこともできるでしょう。

 
 人間とは顔の作りから異なるウシ目の動物の違いをどう表現するか?

 また、「動物の表情を頑張って真似る」という行為自体が普通の生活ではまず味わえないシチュエーションですので、このゲームで繰り広げられる光景そのものがシュールでユニークな体験を提供してくれることでしょう。


 ところでここまで読まれた方でゲームに慣れている方の中には「どうやって勝敗をつけるんだろう……?」と疑問を覚えた方もいるのではないでしょうか。ルールを読んで同様の疑問が浮かんだぼくはデザイナーのPenelope Taylorさん(Pennieさんと呼んでます)に質問しました。
 その返信は「There is no victory condition in my set of rules(私のルールに勝利条件はありません)」でした。そ、そうだったのかー! ……ということで、このゲームには勝敗がありません。

 このゲームの勝敗が曖昧なのは、おそらくは家族や友人間でアクティビティとして楽しむためなのでしょう。中には「動物の顔真似なんか恥ずかしい……」という人もいるでしょうから、競技性を極力薄めているのも意図したものと思われます。

 とは言え、日頃は競技的にゲームを遊んでいる身としては白黒ハッキリした方がスッキリするのも確かではあります。やっぱり「ぼくが一番動物の顔真似が上手いんだ!」って言いたいですよね。言いたくないですか?
 ということで、競技性のあるルールを用意して貰えないかPennieさんにお願いしたところ、日本語版では勝敗の明確なバリアントルールを同梱してもらう運びになりました。


 とは言え、基本的には楽しさ優先のゲームだとは思うので、「このルールが絶対です!」と言いたいのではなく、一つの目安としてこんな感じはどうでしょうかという提案です。遊び方は参加者全員で「こうしたらいいんじゃないの?」と話し合って自由に楽しんで貰えればと思います。
 そんなバリアントルールも含めた詳しいルールはこちらになります(PDFが開きます)。

 また、製品にはゲームで使う用具の他、「そんな顔してどうしたの?」で取り上げられた動物の紹介を纏めた動物図鑑が付属します。



 記述量自体はそれほど多くはないのですが、ゲームに登場する動物たちの背景について知ることで、一層真に迫った顔真似ができるようになる……かもしれません。


 ゲームが遊ばれている様子は「Why the long face?」公式サイト(英語)でも見ることができます。


 ※この写真は英語版「Why the long face?」を遊んでいる風景です。

そんな顔してどうしたの?
プレイ人数:3〜8人
プレイ時間:20分
対象年齢:6才〜
価格:イベント価格2500円
ゲームデザイン:Penelope Taylor
イラスト:Mutsumi Kawazoe
デザイン:Osamu Kurata

内容物
・動物カード 40枚
・ダイス 1個
・説明書 1枚
・番号タイル 3枚
・動物図鑑 1冊
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