2014年10月29日

姫騎士逃ゲテ〜製作記録 非対称ドラフトゲームで行こう!

 姫騎士逃ゲテ〜の一番の特色は姫騎士1人vsオーク3人の非対称な構図でドラフトをやっちゃおうという部分ではないかなと思うんですが、最初期のこのゲームはそうした枠組みのゲームではありませんでした。なので、今日はこの枠組みが決まったシステム上最大の転換点の話をしましょう。
 これはバチさんにお声がけしてから実際にイラストを発注する間の3週間ほどの話です。書き出してみたら物凄い長文になりましたので、興味のある方だけお読み頂ければと思います。



 最初期の姫騎士逃ゲテ〜は、プレイヤーそれぞれが秘密裏にキャラカードを1枚持って自分の陣営を勝利に導くという、まあ割と人狼ライクな感じのゲームではありました。乗せてるテーマもまだ推理小説でしたし。
 ただ、ぼく自身が人狼亜種ゲームの「カラヤのスルタン」という…… これ、あんまり知名度ないゲームなんですけど、ぼくは大好きでして、正体隠匿ゲームなのに正体がコロコロ入れ替わってしかも個人戦ライクなので勝ち陣営が見えたら勝ち馬に慌てて乗り変える、みたいなところが凄い独特で面白いゲームなんですね。
 なので、姫騎士Ver1とでも言うべきゲームは、その風味を拝借する形でプレイヤーとキャラカードがヒモ付けされていて、アクションカードの効果でキャラカードがガンガン入れ替わりつつ、自陣営の勝利を目指すというアグレッシブなゲームでした。
 高度な読みを要求されるカオス極まりないこのゲーム、「こりゃ面白いぞ!」と自信満々に地元ゲーム会で取り出してみたんですが、まあ、これが、その…… もうボロクソでした!

 悔しくて悔しくて色々と分析してみたんですが、カラヤのスルタンと姫騎士Ver1の一番の違いはキャラカード(役職)の公開・非公開だったんですね。姫騎士Ver1は、現状のようにキャラカードを公開で円状に並べてアクションカードの効果で自前のキャラがドンドコ交換されるゲームなんですが、あの、普通の人はですね、正体を明かした自分のキャラを交換されるのってメチャクチャ不愉快なんですよ! これはホント、同系列のゲームを作ろうと考えている人は覚えておいたほうがいいです。ぼくは血反吐を吐く思いでこれを理解しました。
 特に、そういう陣営がコロコロ変わるゲームだという事前の了承がないと、これはもう生理的嫌悪感に近いレベルで拒否感を抱かれます。ぼくはそのままならなさ、理不尽さを楽しむゲームという提案をしたつもりだったんですが、もう、これが、全然ダメでした。

 「自分のキャラが姫騎士だから姫騎士を勝たせるようにカード取ったらオークになってたんだけど!?」
 「いや、だからオークに交換されることを見越してオークを勝たせるようにアクションカード取るんですよ!」

 当時、マジでそんな会話をしてたんですが、今考えてみるとかなりのメタ読みを要求してますね、ぼく…… まあ、元ネタのひとつ、あやつり人形がそういうメタのメタのメタを読んで正解を導き出すタイプのゲームなので、それくらいのメタ読みは許されるだろう的な考えがあったんですが、正直な話、認識が甘すぎるというか、どれだけ濃いゲーマー相手のゲームを想定してたのかという話ではあります。
 あ、今でも姫騎士逃ゲテ〜は基本濃いゲーマーが大好きなゲームではあると思います。そこをフォーカスしてます。大分、万人向けに丸くはなりましたけども。

 これが正体隠匿だとキャラの交換って仕組みとして成り立つんです。なぜかというとですね、キャラの交換は自分の情報が増えるメリットがあるからです。自分だけの情報が増えるというメリットがあるからキャラ交換というままならなさに目を潰れるんですね。行動にはメリットを含ませなければならないんです。逆にいうと、メリットを提示することで行動をコントロールできる、という意味でもあります。
 なのでキャラカードを公開しつつのキャラ交換はアカン! と、断腸の思いで姫騎士Ver1の路線をぼくは切り捨て…… いや、簡単には切り捨てられず、「これから一体どうしたらいいんだ……」と途方に暮れたのでした。
 ……まあ、この時期はまだゲムマ出展応募前なので、いくらでも取り返しはつく時期ではあったんですが、いろんな人に「秋ゲムマ目処でゲーム出したいNE!」みたいなことは既に放言してて、メンツ的にもう撤退の二文字はないという精神状態に追いやられていたのです、ぼくは。

 正直なところですね、失敗の一番の原因は人様の作ったゲームにまったく理解を示さない狭量なプレイヤ…… いや、違う! それは違うぞ! 直感的な理解を妨げる複雑な設定を持ち込んだぼく自身のせいだイヤーッグワーッ!
 ……などと容疑者は語っており、人のせいにできればそりゃ気持ちはラクになりますが、それでゲームが寸分でも面白くなるかと言えば! まっ! たく! まったく面白くなるワケがないので、自分の失敗は自分で責任取らなきゃならんのだよなという当たり前の結論にぼくは至ったのです。
 要はぼくのゲームを面白くできるのはぼくだけなんですよ。ぼくの判断だけなのです。つまり悔しいことにゲームが面白くないのは、ぼくの判断が間違っていたということなのです……!

 さて、この件でぼくは学習しました。テーマを設定するなら。特に姫騎士VSオークなんて濃いいいテーマを設定するなら。ゲームの姿形はそのテーマに即したものでなければならないと。
 ぼくの場合、これは巷でよく言われる「テーマとシステムは一致した方がいいよね♪」とかそういう話よりももっと切実な「テーマとシステムを一致させないとそもそもゲーム自体を理解して貰えない!」という恐怖に由来するものです。これはトラウマですわ……
 なので、ぼくは姫騎士逃ゲテ〜の新しい枠組みを用意することにしました。簡単に説明すると「プレイヤーは妖精さんになって、姫騎士とオーク陣営、どっちが勝つかを賭ける」ゲームです。
 プレイヤーとキャラクターがヒモ付けされている限り、キャラクターの交換はできない! しかし! コンポーネントの制約から交換をメインアクションに据えなければならない!
 だからプレイヤーは…… そう、妖精さん! 妖精さんだ! オークでも姫騎士でもない! 妖精さんになって第三者の視点で下界の争いを眺める! これだ! これならプレイヤーとキャラクターのヒモ付けを切り離せる!
 ……なんかもう真顔で妖精さんを連呼するキマった人に成り果ててますが、割とマジでこの頃こんな感じでした。

 ぼくがもう一つ学習したのは、この案を早々にゲーム会に持ち込むという無謀は避け(仮に持ち込んだとしても凄まじい勢いで警戒されたんではと思いますが)、とりあえずこの案を人に見せて感想を聞くということでした。ヒアリングというやつでしょうか。すなわち「姫騎士VSオークのテーマにこの枠組みはマッチしてると思う!?」と。

 答えは案の定「マッチしてねーよアホか」でした。重いワンツーパンチ!

 しかしここでへこたれている暇はぼくにはありません。ならばどんな枠組みがこの姫騎士テーマには相応しいのか、必死でしがみついてヒアリングを続けたのです。もう、「ぼくの中で生まれてくる直観に裏切られ続けるのならば、いっそ人の提案に乗っかってしまおう!」くらいの心持ちでした。まあ、同時に「だが、最終的な判断を下すのはぼく自身だぜグワーッハッハッハ!」というチンケなプライドも併せ持っていたワケですが。

 さて、そんな哀れな男を見かねたTakPが提案してくれた次の枠組みが「プレイヤーは全てオークとなって、誰が真っ先に姫騎士を捕まえるか競う」というものでした。
 なるほど……! 確かにこれは姫騎士VSオークのテーマで大多数がパッと連想する枠組みと言える! わかりやすい!
 しかし、この枠組みは1ラウンド制とはかなり相性が悪いな!?  どうしたって先手有利になってしまう! ならば1ラウンド制を捨てざるを得まいか……!? うーん…… まあ、それもアリか!
 当時のぼくは切羽詰まっていたので、このゲームのコンセプトすらブン投げる勢いだったんですね。恐ろしい。

 わかりやすい枠組みに飢えていたぼくは一も二もなくこの提案に飛びつきました。これこそ姫騎士VSオークのテーマを実現させる唯一無二の方法なのだと。

 しかし!

 同じようにヒアリングをした一発命中Pという男が、姫騎士逃ゲテ〜の命運を決めた禁断の一言を放ったのです……

 「姫騎士のロールプレイしたい人もいるんじゃねーの?」

 そ、そうかああああああああ! それは盲点だったああああ!

 ……この頃のぼくは心が濁っていたこともあり、人の提案をそのまま受け入れる超絶素直な人間でした。後になって一発命中Pのこの思いつきに散々苦しめられることになるのですが、この時ばかりはこの提案は物凄く説得力があるように聞こえたのです……!

 姫騎士VSオーク! 確かにこのテーマはオークだけではない! 姫騎士が必要だ! 姫騎士のロールなんかしたいヤツがいるのかはよくわからんが! そもそもロールプレイのゲームなのかこれは!?
 しかし! しかし、問題がある! そんな複雑な構造をたった8枚のアクションカードに乗せきれるのか!? それはぼくの手に余るんじゃないか!?

 とは言え……! とは言え、姫騎士とオークの非対称対戦ゲーム……! これなら……! これなら1ラウンド制を崩すことなく、作り上げることができる……かもしれない!
 何よりも、そう、ユニーク……! ユニークだ……! 完成したら多分物凄いユニークなゲームになる……! これはワンチャンあるんじゃねえの……?

 そんな熱病患者のような風情でウフフアハハ言いながら1人の姫騎士と3人のオークが対決する、姫騎士逃ゲテ〜の現行の枠組みの開発が始まったのです。
 課題はありました。一つの大きな課題は苦渋を舐めた前回のテストプレイで、とあるテストプレイヤーが言い放った「姫騎士は牢屋にブチ込みてーよなー」という妄言の実装。
 これまでの姫騎士逃ゲテ〜は、姫騎士を捕まえたら勝ちという基本線自体は同じなのですが、その具体的な勝利条件が「ゲーム終了時に姫騎士とボスオークが隣接している」ことだったんですね。なので現行の「姫騎士を牢屋に送る」カードの類はこの頃一切なくて、カードプールの殆どがキャラクターカードの位置を入れ替えるカードで構成されていたのです。あと、あやつり人形の暗殺者みたいな他人のアクションを打ち消すカードなんかもありました。
 この勝利条件には大きなメリットがあって、どんな展開になってもとりあえずゲームに白黒つくんです。どちらかの陣営は勝つ。隣接しなきゃ姫騎士の勝ちだし、隣接したらオークの勝ち。わかりやすい。なのでカードプールに結構な自由度があったんですね。バランス調整も見通しが付きました。
 しかし、姫騎士を牢屋に送ることを勝利条件として設定するとなると、当然ながら「姫騎士を牢屋に送るカード」にカードプールの幾ばくかを割かなければなりません。たった8枚の中に!
 もちろん、1枚ではちょっと心もとないというか、そのカードが不発に終わった時点でオークの勝ち目がなくなるので、まあ最低でも2枚、あるいは3枚くらいはそうしたフィニッシュカードが必要になるでしょう。でも、増やせば増やすだけオークの勝率があがるワケでそうそう簡単に増やしていいってもんでもない。
 さらに姫騎士が1枚しかカードをピックできないことを考えると、その1枚のピックで勝ち負けがバランスよく展開するような、そんな都合のいいカード構成が必要で…… そんなんできるのか!? ぼくに!?

 難題でした。難題しかなかったとも言えます。
 ただ、「姫騎士を牢屋に送る」案。これはやらねばと思いました。現状の隣接したかしないかの勝利条件はオーク側のカタルシスがあまりにも薄かったのです。なんか巡りが終わったら勝ってた、みたいな。勝利の実感が乏しかったんですよね。
 なので「姫騎士を牢屋に送る」という凄い字面。これはアリだとぼくは思ったのです。それくらいの困難を乗り越えてこそ勝利の実感が湧くのだと。

 で、秋の夜長を自転車で30キロくらい走って考えました。職質されたら「すいません、イングレスやってて……」とか言い訳しようかと思っていましたが、幸いそういうことはありませんでした。
 今の季節になるともう寒くてそんなことできませんけど、やっぱ体を使ってヘトヘトになった時に、人間なんかこう、フッと降りてくるもので、エウレーカと叫んだアルキメデスじゃないですけど、そうした心持ちで突如浮かんだ一つのアイディアを抱いて家路を急いだわけです。

 ……できました。ぼくの中で、ある種の確信を抱いて作り上げた「姫騎士非対称版」。
 当時はまだタイトルが決まってなかったので姫騎士○○版という呼び方をしていたんですが、その時相談に乗ってくれたあひるホイッPに姫騎士非対称版をメインの案として見せたところ、待っていたのは驚愕の一言でした。

 「姫騎士のロールプレイって、いる?」

 え!?

 いるか、いらないか、と問われれば…… ……どうなんだこれ!?

 「だ、だって、一発命中Pはそう言ってたし(責任転嫁)」
 「別にいらないんじゃ……」

 な、な、なんてこったー!
 今でこそ、この方向性でよかったとは思うんですが、この当時のぼくは非対称的なこの枠組みの魅力を論理的に説明できる根拠がなかったんですよね。なんか面白そうだから……くらいで。
 なので、本当にそれが必要なのかという根本的な質問には笑っちゃうぐらい動揺するしかなかったのです。マジで情緒不安定だなこの人!

 「でも、可能性は感じる」
 「……え?」
 「オーク側がドラフトを介して無言で協力して…… それを姫騎士が打ち破るっていう」
 「そ、そう! そうなんだよ! その通り!」

 このゲームの今後磨くべき魅力の方向性をズバリ言い当てたのは、多くのテストプレイヤーの中でもあひるホイッPただ一人です。こと同人ゲームを見る目に関して彼女の相馬眼は並々ならぬものがあるとぼくは思っているのですが、その彼女がそういうのだからぼくの確信もまんざら間違ってはいないのではないかと、そう思えたのです。
 ちなみに実際あひるさんからその時貰ったコメントがこれ↓です。面白さの核から問題点まですげーよくわかっててくださる……

 メモ・やはりコンセプト3の非対称が面白そうな気がする。
 プレイヤー人数+1枚のアクションカードをプレイヤーAから操りドラフトする、残りのカードは公開してある状態。A姫騎士、BCDがオーク
 Dは最後2枚から1枚を選ぶ、最後の一枚はそのまま効果なしになるか、姫騎士が効果を発揮させるか選べるか、効果マストで発揮させるかは保留
 ドラフトがおわったあと、効果を発揮させると思うんだけど、そのときは、操りのように、1番ー、2番ー、とかってやるんだろうか?それとも全員アクションカードを公開して数字の若い順にアクションしていくのだろうか?
 カードが回ってきたときから、誰が何を取ったか、というパターン推理がはじまるため、最後のプレイヤーがかなり長考になる可能性がありそう。砂時計をつけるわけにもいかないだろうけどry、そこの悩みが面白さの部分でもあるし難しそう。
 姫騎士は1つのカードを取ることによる、オーク陣営の混乱を誘い、オーク陣営は某さいころ倶楽部3巻のごいた回のような、無言の意志の疎通を楽しむのかなー、可能性を感じる。シンプルなポイント制?テストプレイ後検討?メモ
 追記、どのコンセプトで行くにしろ、人数分のアクションカードリストがあるとプレイアビリティあがると思う。


 これは、行けるんじゃないか……? そんな自信を得て、ぼくはこの非対称の対戦ドラフトゲームという枠組みで勝負することに決めました。
 バチさんに若干のテーマ変更を告げ、正式にイラストを依頼しました。軸足はこれで定まりました! あとはただひたすら磨くだけです!



 ……と、この時は、そう思っていたのです。
 しかしながら、このゲームが完成するにはまだまだ大きな壁が立ちはだかっていたのですね。まあ、それはまた別の機会に……

 そんなところで。
posted by 円卓P at 21:10| Comment(0) | 製作記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月17日

姫騎士逃ゲテ〜製作記録 このゲームのコンセプトとは?

 ゲームマーケットのカタログ販売が始まったそうですね。地方在住者のぼくはいつも東京にいる友人にカタログを確保してもらっていたのですが、今回はサークル出展者ということで家までカタログを送って貰えるんですね。知らなかったのでちょっと得した気分です。カタログ代も含まれていると思えば出展料も思ったよりも高くはないのかも。サークルカットがどんな感じに仕上がってるのか早く見たいですねー。



 さて、この姫騎士逃ゲテ〜というゲームはテーマからシステムから何度もちゃぶ台返しを繰り返したゲームです。ただ、ちゃぶ台返しを繰り返して繰り返してその都度姿形は変わり続けてきたのですが、ゲームの発案当初から完成までずっと変わらなかったものがあります。それはゲームのコンセプトです。
 ということで、今回は姫騎士逃ゲテ〜のゲームコンセプトについて触れたいと思います。

 結論から言ってしまうと姫騎士逃ゲテ〜のコンセプトは2点。

 ・少コンポーネントでのゲーム
 ・1ラウンドで終わるゲーム

 です。

 姫騎士逃ゲテ〜のコンポーネントはカード17枚。これで全部です。
 ありがたいことに800円という値段は安すぎないか、という声もいただくのですが、ぼくからするとたった17枚のカードに出せるお金はこの辺りが限度じゃないかなあとも思っています。桜遊庵さんの春夏冬中がカード17枚とサイコロ4個だかで800円なので、むしろ割高ではないかと思ったりもして。ラブレターに至っては500円ですしね。
 春夏冬中やラブレターをわざわざ持ち出してくる辺り、この価格設定は野心的と言えばそうです。初出展のサークルが実績のあるサークルに張り合う必要なんか全くないわけで、身の丈に合わせた処世術というものがあるのですが、そこはその、あれですね、つい背伸びしてしまいました……!
 価格設定については色々と思うところがあるのですが、本題から離れすぎてしまうのでまた違う機会に触れたいと思います。

 ところでカード17枚という、この中途半端さもぼくからすると落ち着きが悪く、当初のカード枚数は16枚の予定でした。明らかにこれはラブレターへの意識バリッバリなワケですが、これは純然な対抗意識というよりは、「これだけキツいレギュレーションをクリアすれば次のゲーム製作がラクになるハズ!」という思い込みが大きかったりします。
 もちろん、この課題をクリアしたからと言ってゲーム作りのレベルアップが急速に進むかと言えばそれはまったくもって怪しいのですがw しかし、当時のぼくはそういう強迫観念を抱いてゲーム制作を進めていたのです。
 ただ、コンポーネントを絞るのは窮屈ではありますが、同時に制作費を抑えられるメリットもあります。カードの印刷費は元より、最初から外注と決めていたイラストも発注する点数を抑えられるのは大きな利点です。
 イラスト点数が少なければイラストレーターさんの「都合がつく」可能性が高まるワケで、これから相棒となるイラストレーターさんを探す身としてはなるべく選択肢を広く保持したいという考えもありました。
 何分、初めての挑戦である以上リスクマネジメントは不可欠で、転んだとしても怪我をしないように先手を打つ必要を感じてはいました。ぼくにとって少コンポーネントの製作はリスクマネジメントの一つの手段ではあったのです。
 とは言え、これは製作段階で直面するであろう問題に先に対処したという形であって、その反動は骨組みであるゲームデザインに降りかかってくるのも事実ではあります。要はどこで無理をしてどこで保険をかけるかの比重の掛け方なんですが。選択と集中っていうんですかね? 違いますかね。
 逆に言えば、保険をかけていたからこそ背伸びする余地があったとも言えますし、背伸びしなければこの制限下、まごうことなき素人であるぼくの手腕でゲームを完成させるのは難しいという現実もあったのです。実際、少数カードでの構築という条件は度々ぼくを悩ませました。
 しかしながら、それ以上にぼくが恐れたのは、特に理由も裏付けもなくただただ茫洋とコンポーネントが増えていくことで、これは作る上でも遊ぶ上でも費用対効果が最悪です。考えなしにゲームに手を入れると、とかく付け足し付け足しでコンポーネントを増やす方向に正解を求めがちなので、これを戒める意味でも最初から厳しく制限を課す意味はあったと思います。
 ミニマリズムの追求はぼく自身の手癖に対する自戒とも言えました。

 もう一つのコンセプト「1ラウンドで終わるゲーム」は言うまでもなくワンナイト人狼からの引用です。人狼をギュッと圧縮してデメリットを感じさせることなく1ゲームを終えるという圧倒的スピード感。この「ワンナイト」という発想はまさしくアイディアで、人狼に限らず長い・重い・難しいゲームの福音になるという確信がぼくにはありました。例えばワンナイトアグリコラを完成させたらこれは物凄いインパクトがあるでしょうね。
 で、コンポーネントの制約も踏まえて1ラウンド制でも成り立つ題材は何か。それもできれば重厚なゲームで1ラウンドで決着することが利点に繋がるようなものだとなおいいなと。

 色々考えた結果、ひとつのゲームが浮上しました。あやつり人形です。

 あやつり人形は建物カードが多いものの、主要メカニズムであるところのドラフトはわずか8枚のカードで成り立っています。 あのドラフトだけを切り出して駆け引きの楽しさを詰め込むことはできないか。また、収束性と若干の攻撃要素に好き嫌いがあるので、これも1ラウンド制で相殺できるのではないか。そんな目算を立てて姫騎士逃ゲテ〜のプロトタイプは「1ラウンド制のあやつり人形」という形で始まったのです。
 ぼくにとって「1ラウンドで終わるゲーム」は単純に軽いゲームを目指すという意味ではなく、「1ラウンドで終わるんだから中身はどれだけ複雑でもいいよね?」というエクスキューズでもありました。本来ゲーム全体で調整すべき重さ軽さのバランスを、骨組みは完全に軽いゲームと規定した上で、しかし肉付けはガンガン増やして重くするというアンバランスな作り方。それを自分に許してしまおうという話です。
 オークと言えばエルフですが(?)、この骨組み、肉付きは明らかにドワーフっぽい異形です。もっと具体的な表現をすると「カード効果をどれだけ複雑なものにしてもいいんだ。だって1ラウンドで終わるからね!」という解釈なのです。ヒドい話ですね!
 ここまでの話で「うわ、このゲーム、アカンヤツや……」と思われた方がいらっしゃるかもしれないので補足しておきますと、あくまでこれは製作開始当初のアプローチであって、結局はアンバランスすぎるこの異形から肉付けを削ぎ落として、調整して、また盛りつけて、やっぱりやめて、を繰り返して、完成版はかなーりバランスのいいガチムチ具合に仕上がっていると思います。
 さっき少コンポーネントでの製作はリスクマネジメントの一つの手段であると言いましたけど、1ラウンド終了も同じでリスクマネジメントの一手段なんですね。こちらはもっとゲームデザインに寄った安全装置です。
 実際のところ、1ラウンド終了というのは安全装置としては相当に優秀で、どれだけ盛り込んでも最悪終わるし(収束性が確保されるのは重要ですよ!)、ゲームの面白さにムラが生じる余地が少ない、つまり「このゲーム、ここは面白いけど、ここはつまらないよね」っていう余地がない、面白いかつまらないかそれだけなので、ダメなゲームはもうダメだとわかる。ダメなゲームほどダメっぷりが浮き彫りになるので改良速度が早まるという利点はあったような気がします。

 そう、コンセプトってなんだろうって話をすると、これは安全装置なのかもしれません。どれだけ無茶をしてもスジのいいコンセプトを踏襲している限りゲームは総体としていい方に導かれていくという。ぼくとしてはこの安全装置の高い信頼性(なにせ元ネタで実証済みです)に寄りかかって色々と試行錯誤を繰り返してきたわけですが、どれだけ困ったときにも「このレールを踏み外さない限り絶対に着地点が見つかるはず」という願望……もとい、確信を抱いてました。
 なので逆にコンセプトを間違えていたら、あるいはスジの悪いコンセプトを採っていたら、それはもう目も当てられないことになっていたのではないかとも思います。
 繰り返しになりますが、この1ラウンドで決着するスタイルはまだまだ発展性があると考えています。誰かワンナイトテラミスティカ作ってくれないカナー。

 ちなみにこげこげ堂本舗さんのヴィラネックスが同様に1ラウンドで決着するゲームだったので、ゲムマブログを見たぼくは春に続いてまたもやゲゲゲッとなったワケですが。まさかそこで被るとは…… とは思いつつも、まあ、引用元のあるコンセプトなので同時発生も納得ではありますし、やっぱりこのコンセプトはスジがいいのやもしれぬと安堵してたりします。

 そんなワケで、ヴィラネックスを「お、超高速箱庭ゲームたあ面白いとこ突いてくるねえ〜」と思われた方、お目が高い! 姫騎士逃ゲテ〜も近しい路線のゲームですのでぜひぜひご検討頂ければと思います!

 なんですかねえ、このゲスい〆は……
posted by 円卓P at 22:47| Comment(0) | 製作記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月15日

姫騎士逃ゲテ〜製作記録 テーマ決定に至った理由

ホールマップ.jpg

 ゲムマのブースマップが公開されましたね。我が数寄ゲームズこと蒼猫の巣出張所はC-04となりました。春のゲムマではR&Rステーションがあった辺のブースです! ゴッズギャンビットとか売ってましたねえ、春は。
 元商業ブースのスペースってことはつまり壁際! 壁サークルですよ壁サークル! 近くには錚々たる著名サークルの方々。あ、これ緩衝帯になるヤツや……!
 ということでC-04蒼猫の巣出張所。売り物は姫騎士逃ゲテ〜。これぞまさしく壁サーの姫……! ということで、どうかよろしくお願いしますー。



 さて、姫騎士VSオークにテーマを決めた経緯について書いて欲しい、との話を受けて、その辺のテーマ決定の経緯についてちょっと触れていきたいと思います。
 いきなり話は逸れるんですけど、ゲムマ秋の新作でゴリティアってあるじゃないですか。ゴリラがテーマの。
 で、多くの人は「一体なぜそのテーマを選んだ!?」と思わずにはいられなかったと思うんですよね。いや、もちろん、作る側には明確な理由があるでしょうし、ぼくもある程度は推測ができるんですけど、大胆なテーマ選択に踏み切った最大の要因は何か、というのは誰もが気になるところだと思うんです。
 で、「どうしてそのテーマを選んだゲー」という分類を作るなら多分この姫騎士逃ゲテ〜も同じカテゴリに分類されてしまうのではなかろうかと。いえ、ゴリティアとこれを一括りにするのは僭越にも程があるのですが、どうも出落ちゲーだと思われている節がなくもなく。いや、ゲーム部分もマジメに作ってますよ!
 で、「どうしてそのテーマを選んだのか?」という問いかけには、純粋な好奇心と一緒に「製作者の精神状態は大丈夫なのか?」という成分が混じっているようにも感じるんですね。この人は本当に正気なのかと。
 ぼくからするとこのテーマ選択にはまっとうな理由しかないので、わざわざそれを開陳することに気恥ずかしさすら覚えるのですが、まあ、自身の正気を証明しないことには色々と誤解を招くもので、これからちょっとばかし姫騎士VSオークのテーマ選択に至った経緯について触れたいと思います。

 前置きが長くなりましたが。実は当初このゲームは推理小説をテーマにしたゲームとして製作が始まったのです。ウソじゃないです。
 なので、姫騎士とオークを犯人と探偵なりに置き換えると、ほら、推理小説っぽくなりませんか? ゲームの紹介でスコットランドヤードとの類似を自分でも挙げましたが、来歴からするとそれも当然なのかもしれないと思えてきます。
 とは言え、当時のシステムは現行のものとは全く似ても似つかないもので、姫騎士逃ゲテ〜の発表を見て「面白そう!」と言ってくれたテストプレイ経験者の方が、ぼくが伝えるまで同じゲームだと気づかなかった、ということもありました。
 まあ、システムの変遷についても色々と語れることはあるんですがそれは長くなるので、今回はテーマの変遷に絞って話を進めたいと思います。

 さて、推理小説テーマのゲーム。いいじゃないですか。魅力的なテーマだと思いますし、売れ筋としても固いです。名作も多い人気のテーマと言えましょう。
 それがなぜイロモノ方面に転落…… もとい、ギャルゲー落ち…… もとい、誰もが未開拓の荒野に切り込んだかと言えば、そこには切実な理由があったのです。
 このテーマ変更を思いついたのは6月の頭でした。6月上旬。季節は初夏。ボードゲーム界隈に何があったかと言えば、そう、ゲームマーケット春です。春ですが初夏。あの照りつける日差しに入場前から体力をガリガリ削られたゲムマ春です。秋は事前入場できるからイイナーヤッター。
 そしてゲムマ春。そのゲームはあったのです。

 PURPRINさんのあやつり殺人事件……!

 実はこのゲーム、テーマとシステムがモロ被りでした。ゲムマブログでこのゲームの発表を見た時ゲエエエエと叫んだ記憶があります。
 まあ、全く同じゲームってのはそうそうないわけで、実際買って遊んでみたら違うことは違ったんですけど、困ったことにこれが面白かったんですね。面白かった。そう、面白かったんです(3度目)。

 これは…… その…… 真正面から勝負を挑むのは危険なのではないか……?

 ぼくの脳内で警戒警報がけたたましく鳴り響きました。あやつり殺人事件は売れ行きも好調らしく早い時間での売り切れをぼくも確認していたので、やはりテーマ選択的にこれはアリ、なのではあるけれども、やはり人気のテーマだけあって競合の可能性は高い……!
 現に推理小説テーマという区分では秋のゲムマではハッピーゲームズさんの幻影探偵団というゲームが出てきたわけで、やはり激戦区にツッコまなくてよかったと胸をなでおろした次第です。
 なんかノリがアオイホノオじみてきましたが、当時はマジメにそんなことを考えてました。競合は避けたい。が、残り物には残るだけの理由があるのです。いわばこれはテーマ選択のドラフト+バッティングゲーム……!
 競合を避けつつ勝負になるようなテーマ選択。それもシステムとマッチするもの……! 何か……! 何かないのか……!

 悩んだぼくはゲーム本来の魅力に立ち返ろうと思いました。快感を生む仕組みについて考えました。
 つまるところ、この推理小説ゲームは探偵が犯人を見事捕まえるその一点にカタルシスがあると言えます。犯人であれば逆に逃げ延びることにカタルシスがあるでしょう。
 であれば、捕まえたら嬉しいキャラクターを配置すればもっと嬉しいし、捕まりたくないキャラクターを配置すれば必死で逃げたくなる。そういうもんなんじゃないか?
 システム的な制約もありました。捕まる側は少数で捕まえる側が多数になる構図でなければなりませんし、捕まる側が暴力で捕まえる側を殴り倒すような事態はあまり望ましくありません。非力な少数と強大な多数。それがベストです。
 考えを進める中でふと浮かんだのは、ピーチ姫とクッパ一族でした。ぼくは任天堂っ子なのです。
 ……姫。姫か。姫っていいんじゃないか? 男の子だったら捕まえたくなるもんね、姫をね……!?
 姫は捕まる。これは伝統的なヒロイックファンタジーでも多用される由緒正しい法則です。ならばやはりそこには人間の根源的な本能とか欲求とか快感とかなんかそんなのがいっぱい詰まってるのでありましょう。

 王道だ! これが王道なのだ!

 ……で、思いついたのが姫騎士VSオークだったんですね。姫はいいとして相手が魔王とかだとちょっと相手が強すぎる。魔王相手に逃げ延びる姫というのはヒロイックファンタジーの文法を破壊するものでギャグになってしまいます。
 オーク相手だったら、まあ逃げられる術もあるでしょう。体格で勝る相手を知恵で翻弄するというのは、トムとジェリーではありませんが、これも昔から綿々と受け継がれている黄金率で、何より日本人は牛若丸と弁慶の例からもわかるようにその手の構図が大好きなのです。
 ここまで語れば姫騎士VSオークがいかに優れたテーマであるかご理解頂けることでありましょう。しかし、確信の萌芽こそあれ、ぼくの胸奥には未だに疑問の火種が燻っていたのです。
 姫騎士VSオーク。同人ボードゲーム界において人跡未踏の大地。行けるかもしれない。しかし、このテーマには大きな弱点がある……! それは……!

 すごろく屋さんに置いてもらえない!

 ……アオイホノオがなぜギャグとして成立するかと言えば、それは島本先生がマンガ家として大成した事実があるからで、未だ何も成していない、ぼくが、これを、言ってしまうのは、余りに、も…… うわあ、痛い痛い痛い!

 ……書いててちょっと辛くなってきましたががんばります。すごろく屋さんの主要な客層はファミリー層です。ならば子供の教育に好ましくないゲームは置かれないことは明白。「姫騎士ってなーに?」って子供に聞かれてもお母さん困るでしょ!? ぼくも困るわ!
 ちなみに今現在のイラストを見て「いやー、そんなこともないんじゃないかなー」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、当時はまだバチさんにイラストを頼むことが決まってなくて、もっとウッフンアッフンな選択肢も視野にあったというか、ゲムマ春の直後というこの時期、スライムアドベンチャーがTwitterで盛り上がっていた頃でもありました。当時、あやつり殺人事件ショックに自我を喪失していたぼくはその影に翻弄されていたのです。
 まあ、すごろく屋さんは置いとくとしても、このテーマは明らかに人を選ぶというか、推理小説テーマよりも狭い範囲にしか訴求できないことは確かです。自らマーケットを狭めるがごとき愚行をよしとして果たして勝ち目はあるのでしょうか? いや、勝ちってなんだよって話でもありますが。
 確かに訴求範囲は狭いのです。明らかに狭い。ですが、鋭さもある、かもしれない……! 大きなインパクトで一点を叩く。その衝撃で訴求範囲を広げられればあるいは……!? 大事なのは訴求層を確実に射抜く鋭さだとエラい人も言っていたような気がします。しかし……

 とかまあ、悶々と悩み続けたんですが、一人考えてみても自家中毒といいますか、考えにバイアスがかかるだけなので、単純に回りの人に聞いてみることにしました。「推理小説テーマと姫騎士VSオークのテーマ、どっちが行けると思う?」 ……聞かれた人は困ったでしょうねこれ。
 で、多分、これは聞いた相手が悪かったのかもしれないと今では思っているんですが、回答は全員「姫騎士VSオークの方が行ける」でした。全員って。もうちょっと顧客層とか考えようよおおおお!
 ぼくはむしろ「被ったとしても推理小説テーマで勝負した方がマシ」みたいな答えを実は期待していたんですが、まー、他人事だと思って適当言ってくれやがったなこの野郎というか、みんな自分の心に正直すぎると思います。
 ただし、ここで勝つための条件を一つ課されました。これも全員まったく異口同音で言うもんで君ら共謀してるんじゃないかと疑ったんですが。
 それは魅力的なアートワークを用意すること。デスヨネー。ぼくだってこのテーマは絵力が必要になることはよーわかるわ。
 というわけで、条件つきながら姫騎士VSオークはいけるんじゃないか、という結論が出たのです。とは言え、実際にイラストを依頼するまでのここから2ヶ月ほど、ぼくはテーマ選択をどっちにも切り替えられるように保険をかけてリャンメン待ちでゲーム製作を進めていったのでありました。

 とまあ、随分長くなりましたが、ここまでがテーマ選択の能動的な理由ということになります。受動的な理由としてはシステムの手直しが進むに連れて「推理小説テーマに拘らなくてもいいんじゃね?」という、システムとテーマの乖離が進んだこともまた理由の一つとして挙げられるのですが、それは強引に姫騎士に寄せるか、強引に推理小説に引き戻すかの違いでしかないので、決定的な理由ではないかなと思ったりもします。
 「姫騎士VSオークとはまた安易に流行に乗っかったなー」なんて見方もあるとは思いますが、ぼくとしては割と苦慮した末の選択というか、やはり選んだからには魅力は理解してはいるものの正解かどうかは疑問ですし、答えが出るのもこれからなのです。さらに当時はイラストのアテもなく、完成形の魅力が自分でもわからんわけです。そこが自分で絵を描けない人間の弱みですね。
 逆に素晴らしいイラストができあがったとしてもシステムがグダグダだったらこれはもう目も当てられないワケで、イラストに力を入れるのは掛け金を上乗せするのと同義で、ますます勝負としてはシビアになるわけです。こう、制作費にも乗っかって来るわけですしね。
 まだこの時期なら「ポッドキャストやってる人がノリでゲーム作ってみましたテヘ」ってのが許される時期だったのですが、この頃を境に「本格的にいいモノを作らねばヤバい」というプレッシャーが生じてきたのです。言わば自分で自分を追い込んでいったのですね。

 そんなところで。
posted by 円卓P at 22:12| Comment(0) | 製作記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月13日

姫騎士逃ゲテ〜製作記録 イラスト発注の頃の話

 10月8日に開催されました宇宙エレベーターの雨宮さん主催の創作テーブルゲームテスト会 in 高山にボドゲ仲間のTakPが参加するということだったので、姫騎士逃ゲテ〜の最新版のテストプレイをして貰いました。
 上記のリンクにはその際の雨宮さんの感想がありますので参考までにどうぞ。ぼくがダラダラ書いた文章よりも簡潔に概要が纏められてますw



 今回からカードの効果について触れていこうと思ったのですが、ちょっとテキストに手直しを入れたい箇所が見つかったので、それはちょっと後回しにしまして、姫騎士逃ゲテ〜の製作経緯についてダラダラお話しようと思っています。
 なので、これから書くことは、姫騎士逃ゲテ〜のメカニズムの理解を助けるものではなく、ゲーム製作の周辺事情を追った製作記録的な内容です。なので、その辺全然興味のない方にはスルーして貰えればと思います。

 さて、姫騎士逃ゲテ〜は、テーマからシステムから結構な回数のちゃぶ台返しを経て現在に至ったゲームなんですが、テーマが姫騎士VSオークという形に定まったポイントを切り出すと、それはカードイラストを依頼したタイミングになるかと思います。自分で描くならともかく「テーマはこれで行くぞ!」と踏ん切りをつけない限りはイラストを発注できないワケですからね。
 とは言え、このテーマは扱いが難しい内容でもあって、この選択は自分の中でも結構な葛藤がありました。ただ、その辺の話は長くなるので割愛しまして、やるぞ、と決めてからの経緯をこれからお話したいと思います。

 姫騎士逃ゲテ〜は、ぼく自身のお絵かきへのステ振りの欠如からイラストをバチさん(http://www.pixiv.net/member.php?id=1651312)にお願いしているのですが、この当時、姫騎士逃ゲテ〜のイラストの方向性には2つの選択肢がありました。アニメ路線とコメディ路線です。
 ぼくが当初考えていたのは、アニメ路線といいますか、姫騎士って言ったら誰もがパッと思い浮かぶようなその手の雰囲気のイラストでした。ただ、これはメリット・デメリット共に強烈な選択肢だったので強固に「これで行くぞ!」という考えではなく、よりトータルで適切な方向に舵を切るつもりでした。結果的にバチさんにお願いして皆様も目にした完成形に至ったので、素直によかったなと思っています。
 ちなみにボードゲーム数寄語りという自前のポッドキャストでイラストをお願いできる方とコンタクトを取れないかなとちょっと募集をかけてみたりもしたんですが、反応はまったくのゼロで、こういうことは自分の熱意を示して能動的に動いていかないとイカンのだなと痛切に思った次第です。

 ところでゲーム製作においてテーマ選択の重要性は周知の通りで、(システムとの親和性やらは一旦置いといて)面白そうなテーマを提示できれば、販売の段階で興味を持って貰える確率は当然高くなります。
 が、それとは別に優れたテーマ選択には、イラストをお願いする際にイラストレーターの方に興味を持って貰いやすく、イメージを共有しやすいという利点もあったりします。イラストレーターの方も余りにも自分の嗜好とかけ離れたテイストのテーマには手を出しづらいでしょうから、心をくすぐるテーマの選択は製作の段階でも恩恵があるんだなーというのが今回の発見でした。
 イラストレーターの方に「姫騎士テーマのゲームを作りたいんだけど……」と声をかけた時は、大体の場合「へー、どんなのどんなの?」と興味を持って貰えた感じはあります。「艶っぽいの無理ですよ」と最初に釘刺されたこともありましたがw これがまあ、例えば盆栽テーマのゲームだったりしたらどうだったんでしょうねえ。

 さて、バチさんに初めてお声がけしたのは記録によると7月16日のことなんですが、その時にまず尋ねられたのは納期までの時間、ファイル形式、イラストのテイスト、カラーかモノクロか、背景の有無でした。あと、イラストの点数とか稿料も重要なファクターなんですが、こちらは自分から切り出した形です。
 で、ぼくが悩んだのは背景の有無というヤツです。背景か! いるのか!? つーかこのゲームはどういう舞台設定なんだ!? この辺、事前に固めておかないと困ることになるという典型ですね。

 で、それでちょっと考えてイラストレーターの方に送った概要はこんな感じ↓。

 「逃げろ! 姫騎士!(仮)」
 「オークの追撃をかわし、エルフの村に逃げ込む高貴な姫騎士。しかしそれはオーク軍団の周到な罠だった! 姫騎士の足跡を辿り、闇夜に紛れてオークの一団が村に忍び寄る! 逃げろ、姫騎士! 追え、オーク! 最後に笑うのは誰だ?」
 という感じです。エルフの村が舞台になるので背景は村とか木とか林とか森がメインになると思いますが、描きやすいように舞台を変更することもやぶさかではありません。便宜的な舞台設定と思っていただければと思います。
 (略) ゲームの内容物としてキャラクターカード4種8枚、魔法カード8枚を想定しています。このうちキャラクターカードは背景なしでもいいかなと。魔法カードは構図によっては必要になるかなと思います。
 キャラクターカードはその名の通りで、内訳が姫騎士*1、ボスオーク*1、エルフ*3、魔術師オーク*3です。エルフと魔術師オークの絵柄は重複で構いません。


 てな感じで、その時はタイトルも仕様も現行とはちょっと違ってました。キャラも姫騎士とボスオークは変わりないんですが、ナイトとザコオークの代わりにエルフと魔術師オークがいて、アクションカードも「ポータル」とか「サイレンス」とかそんな感じで魔法戦の様相を呈していました。が、最終的に物理に寄ってったのはご存知の通りです。
 この辺の設定変更はゲームのシステムとも密接に関わっていて、当時は現在のナイト相当のエルフが「人間なんか知らんがな」的な中立的な動きをするゲームで、自陣営も非公開という正体隠匿要素があったんですね。まだゲームシステム自体は現行のそれとは隔たりのある内容でした。対応人数ももっと多かったような。
 で、そこから約2週間後の8月3日、バチさんに正式な依頼をしました。その時には現行のキャラ内容でお伝えしてるので、より現在に近しい形の内容になっていたようです。

 ということで、テーマは姫騎士VSオークに決まった、と一言に言っても相談を始めた時期から実際に作業に入って貰うまでのわずかな期間に細部がどんどん変化するのがこの頃でもありました。ただまあ、一度発注しちゃったら後はその構成でなんとかやりくりするしかないとも言えるので、ここで芯が定まったという感じです。
 最終的な〆切の前に9月頭にゲムマのサークルカットを提出しなければならないので、それに向けてまずはキャラクター4種を仕上げて貰い、それからアクションカード8種を考えようという進行になりました。
 アクションカード8種。そう、現行はアクションカード9種なので当初は1枚少なかったんですね。この辺もまたゲームシステムに密接に絡んでくる内容で話が長くなるので、その辺はまた改めて触れたいと思います。

 そんなところで。
posted by 円卓P at 23:06| Comment(0) | 製作記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする