2020年05月17日

数寄ゲームズ通販サイトで利用できる10%割引クーポン配布のお知らせ[期間限定]

 数寄ゲームズが利用している通販サイト「BASE」にて利用できる10%割引クーポンが配布されました。
 数寄ゲームズ通販サイト



・数寄ゲームズ通販サイト全ての商品が対象です(数寄ゲームズ製品だけではなく、全ての商品が対象になります)。
・購入画面にクーポンコード入力欄がありますのでお支払い前にクーポンコードを入力してください。
・お一人様1回限り使用可能です。クーポン利用後にキャンセル等を行った場合、クーポンは再利用できませんのでご注意ください。
・5月18日(月曜日)00:00から5月21日(木)23:59まで利用可能です。
・利用期限満了前に配布が終了する場合がありますので、お早めの利用をオススメします。

 5月18日からは新作「アンダーウォーターシティーズ 新たな発見」や「モンスターベイビーレスキュー! / Monster Baby Rescue!」の販売が始まりますので活用できる機会は多いと思います。また、先日販売を始めました「ブードゥープリンス」もこの機会にお求めいただけるとオトクです。

 この10%割引クーポン、割引分の価格については後日BASEからショップに還元される仕組みです。なので「割引は嬉しいけどちょっと申し訳ないな」とは思わずに遠慮なく使っていただければと思います。クーポンコードを入力するだけなので操作も簡単です。
 同種のクーポンは数ヶ月に1回配布されていまして、その度に簡単にお知らせはしているんですけども、実際の利用率はそんなに高くないので今回告知させていただきました。送料無料ラインを越える勢いで買ってるのにクーポン使ってない人を見ると告知が足りなかったのかなと気になってしまうので……
posted by 円卓P at 07:21| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月06日

ライナー・クニツィアの新スタンダードトリテ「ブードゥープリンス」を発売します



 というワケで表題通りなんですけども、トリックテイキングゲームレーベルNo.004として、ライナー・クニツィアの「ブードゥープリンス」を販売します。本来はゲムマ春に間に合うタイミングで製造してたんですけども、コロナウィルスの関係で若干遅れて4月下旬の販売を見込んでいます。


 プレイ人数は2-5人、対象年齢8歳以上、プレイ時間は20分となっています。販売価格の税込1980円は今回かなり頑張りました。自分としては常々このトリテシリーズは小箱ゲームとしては若干お高いなという引け目がありまして、現在のゲームシーンにトリテを根付かせるためにも価格面での努力が必要だと考えていました。

 理想としてはもっと手に取りやすい価格にしたいんですけども、なかなか一足飛びに辿り着ける領域ではなく、製造面でのノウハウを積み重ねてようやく少しずつ成果が出てきたかなという感じです。この成果が次に繋げられるかどうかは、やはりこのゲームの反響次第ですので、プレイヤーの皆様には「ぜひともお買い上げください!」と強くお伝えしたいところでございます。


 アートワークに関してはイラストは原版と同じStephanie Böhmさん(ドイツ名字っぽいんですけどもフランス在住の女性の方です)、グラフィックデザインはお馴染み別府さいさんのご助力を頂いて原版クオリティをさらにブラッシュアップさせた内容になりました。実はこれを実現させるのが結構大変だったんですけども、この辺りは後ほど詳しくお伝えしようと思います。


 さて、「ブードゥープリンス」です。どのようなゲームか説明しますと、5スート、マストフォロー、切り札ありの、トリテとしては割とスタンダードな内容。カードが配り切りではないのがややパーティー寄りで、若干の特殊カードもありますけども、そこはスパイスといった風情で、あくまで伝統的トリテの色合いを強く残したクラシカルな構成です。

 しかしながら、伝統トリテから大きく逸脱するのが得点回りのルール。このゲームは1ラウンド(1ディール、1ハンド)において、規定の回数のトリックに勝利したプレイヤーが現ラウンドから抜けてしまい、以降はトリックに参加しません! そして獲得できる得点は、「ラウンドを抜けた時点での、他プレイヤーが勝利したトリック数の総数」になります。

 その上で、ラウンドの最後まで残ってしまったプレイヤーは「自分が勝利したトリック数しか得点を獲得できません」。この得点回りのルールがこのゲームの最大にして際立った特徴です。


 少し例を交えて説明してみましょう。3人プレイの場合、ラウンドから抜ける条件のトリック数は4トリックになります。

 まず、プレイヤーAがラウンドの最初の4トリックを立て続けに勝利したとします。そうするとプレイヤーAはこの時点で即座にこのラウンドから抜けることになります。プレイヤーA以外のプレイヤーはまだトリックに勝利していないので、プレイヤーAが獲得する得点は0です。

 続けてプレイヤーBが続く4トリックを立て続けに勝利したとします。この時点でプレイヤーBもラウンドから抜けることになりますが、プレイヤーAがすでに4トリック勝利しているので、プレイヤーBが獲得する得点は4点になります。

 プレイヤーAとBが抜けてプレイヤーCだけが残ります。この時点でプレイヤーCも得点計算を行いますが、Cが勝利したトリック数は0なので獲得できる得点は0点です。

 こうしたラウンドを5回繰り返して総得点を競うというのがこのゲームの骨子です。


 まあ、この例は極端ですけども、つまるところ、このゲームは「ギリギリ最後まで粘ってからラウンドを抜けるゲーム」です。チキンレース要素のあるトリテと言えばよいでしょうか。

 なので、序盤はなるべく勝たず、他のプレイヤーに勝ちを譲ってから、終盤に勝利を畳み掛けてラウンドから抜ける。そんなムーブが理想です。

 しかしながら、それがうまく行かないようにできているのがトリテの構造的な仕組みでして、基本的にトリテってリードプレイヤー(最初にカードをプレイするプレイヤー)が一番不利な作りなので、連続してトリックに勝つのは難しいんですね。一度トリックに勝つと次のトリックでは一番不利な順番で勝負しなければならないと。よほど手札が偏っていない限りは例のような4連続トリック勝利なんてことは起こり得ないようになっています。

 なので、終盤になってから急にアクセルを踏み込んでも加速が間に合わないんです。序盤、中盤にも少しだけエンジンを吹かしといて、いざフラッグが振られたらガッと踏み込むような、スパートのタイミングを計るテクニカルなゲームと言えます。


 さて、このゲームには白眉な点が2つありまして、1つはこの得点回りのルールです。勝ちすぎず負けすぎずというこのシンプルなジレンマはまさにトリテの本質であるところの「どこで勝ち、どこで負けるか?」というハンドリングを簡潔明瞭に導き出していて、まさに「得点システムがゲームを作る」好例と言えましょう。

 クニツィアのキレッキレなゲームデザインがトリテでも存分に発揮されていて「未だクニツィア衰えず!」を実感させてくれる辺りも1ゲームファンとして堪りません(まあ、その2年後にクニツィアは「ラマ」を生むワケですけども、このゲームの出版時、クニツィア近年の代表作はしばらくこのゲームになるだろうなと思っていました)。

 詳しく説明するとネタが割れてしまうのでちょっとここでは詳細な説明は省くんですけども、ぼくがトリテに求める傑作の条件をこのゲームは存分に満たしています。それもシンプル極まりないルールで! というのが実にやられた感があります。


 そしてもう1つは伝統的トリテの作風に囚われない斬新さです。

 実はこのゲーム、クニツィアとしては初の本格トリテです。「本格トリテ」というのはぼくの勝手な造語で、複数スート、マストフォロー、切り札ありの伝統的トリテに倣ったトリテを指します。この条件を満たさなくてもいいのであれば「綱渡り」というか「カップル危機一髪」というかのアレがありますので、まあ、トリテを作ってなくはないという表現にもなります。この辺はトリテの定義にもよるんですが。

 あと、ちょっと前までは「クニツィア唯一の本格トリテ」と言えたんですけども、今年の春にイタリアのクラニオクリエイションからまた本格トリテが出るようなので、ここでは「初の」という言い回しになります。

 で! ゲームデザイン歴30年(1990年の「金鉱掘り」を便宜上のスタートとして)にも及ぼうというクニツィアがなぜ近年まで本格トリテの制作をずっと避け続けていたのかと言えば、クニツィアの理想とする「簡潔明瞭で美しいルール」は実は伝統トリテで既に果たされてしまっているからではないかと思っています。「簡潔明瞭で美しいトリテ」を遊びたければトランプを遊べばいいんです。

 伝統トリテからの逸脱こそが価値であり表現である商業トリテの世界では「簡潔明瞭で美しいトリテ」を成立させるのが難しいという事情があったのではないかと考えます。

 では、クニツィアはどうやって商業と伝統の折り合いをつけたのか? と言えば、「過度の競技性の否定、ファミリーゲームへの傾注」に突破口を見出したのではないでしょうか。

 遊んでみればわかるんですけども、このゲームは結構パーティ寄りのゲームです。手札が配り切りではないことに加えて最も特徴的なのは「ラウンドの途中でプレイヤーが抜ける」という点です。5人プレイのトリテが終盤では2人プレイになってしまうんです。

 これは本格トリテを知る人なら腰を抜かすほどの大胆なデザインでして、なぜならトリテはプレイされたカードから残りの手札を類推するカウンティングの要素に負うところが大きいメカニクスだからです。プレイヤーが途中で手札を抱えたまま抜けてしまってはカウンティングが成り立ちません。この一点を取ってみても、このゲームにおいてクニツィアはもう完全にカウンティングを否定しているワケです。

 ぼくはカウンティングができないプレイヤーなので、そのデザインも納得できるんですけども、トリテに親しむ人にとっては度肝を抜かれるというか、許しがたいゲームですらあると思っています。競技トリテへ唾するかのようなこのクニツィアの飄々とした態度は、裏返せば誰もが遊べるファミリーゲームへの強い傾倒と信念が感じられ、クニツィアのゲームデザインの美学を感じることができます。


 種々の特殊カードの存在もこれまた伝統トリテからの解放というか、自由闊達さを感じさせる、ファミリーゲームの色合いを濃くするスパイス的存在です。



 最弱のランク0のカードは、最強ランクのカードが同時にプレイされている場合に限り、最強ランクのカードよりも強くなるという特殊なカードです。これは割と既視感のある効果ではありますけども、最強ランクの切り札でも負ける可能性があり、ゲームに緊張感が生まれます。

 しかもそのカードが誰かの手札にあるかどうかは配り切りじゃないからわからない! というのがまたルールとルールのシナジーがあってイノシン酸とグルタミン酸の掛け算やー! ってな感じで旨味が凄いワケです。



 ミドルランクのランク5と7は、このカードでトリックに勝利すると、2勝分になるという特殊カードです。トリックに勝つのはやや難しいランクですが、奇襲が決まれば相手プレイヤーの計画をズタズタにすることができるでしょう。

 翻って自分の計画がズタズタになることもあります。


 あと、アメリカのゲームライトがリメイクした「マシュマロテスト」ではこれら特殊カードがなくなっているそうで、私的にはそれはクニツィアっぽさが増してるなと思わなくもないんですけども、クニツィアのゲームってシンプル過ぎて無味無臭みたいなゲームも中にはあるので、まあ、「ブードゥープリンス」くらいの味付け、キャッチーさはあっていいんじゃないかなと思っています。

 「ブードゥープリンス」のスパイシーさは、結構血を吐く思いでやってんじゃねえかなとも思っています。


 また、これは本当にマニアックな見方になってしまうんですけども、ギュンター・ブルクハルトの「トランプ、トリックス、ゲーム!」は、このゲームとの多くの類似点と相違点を抱えたゲームです。この2者を比較することでクニツィアとブルクハルトの思想の違いが見えてきてゲームデザインの面白さ奥深さを堪能することができます。


 トリテレーベルNo.002の「トランプ、トリックス、ゲーム!」もこれまた名作

 「トランプ、トリックス、ゲーム!」も「ブードゥープリンス」と同様に規定のトリック数を獲得したプレイヤーがラウンドから抜けるゲームです。両者の大きな違いはラウンドから抜けたプレイヤーが以降もトリックに参加するかしないかの違いです。

 「トランプ、トリックス、ゲーム!」は現ラウンドで獲得したカードが次ラウンドの手札になるという独特のルールから、ラウンドを抜けたプレイヤーは以降のトリックにも「仮想的に」参加してカードをプレイする必要がありますが、「ブードゥープリンス」は以降のトリックに参加することはありません。

 こうすることで「ブードゥープリンス」では、プレイヤーがラウンドから抜けた後の例外的なルールの数々を省くことができ、クニツィアの理想とする「簡潔明瞭で美しいルール」を実現させることができました。一方でブルクハルトは伝統的なトリテの守護者にして継承者という立ち位置のデザイナーですから、カウンティングを破壊するルールの選択を潔しとせず、ルールが過剰になっても伝統的なトリテからの逸脱を避けるワケです。

 もうこれだけでも両者の美学の違いが出て面白いじゃないですか……! ぼくはこれだけで軽く1時間は語れますよ。


 ですからぼくとしては「ブードゥープリンス」を遊んだ方にはぜひ「トランプ、トリックス、ゲーム!」も遊んで頂きたいんですよね。似てるようでまったく違う両者の味わいを楽しんで欲しいんです。それが手軽にできるのがこのシリーズの価値だとさえ思っています。


 めちゃくちゃ脱線してしまいましたが、とにかく「ブードゥープリンス」は、クニツィアらしいファミリーゲームの視点を備えたトリテであることが極めて秀逸だと言いたいのです。というのは、やはり「トリテに興味あるんだけど最初に何を遊べばいいの?」というトリテ数寄者にとっては避けて通れない難問に対しての一つの回答になりうるゲームだと思っているからです。

 本格的な複数スート、マストフォロー、切り札を備えていて、ルールが多すぎず、それでいて勝ち負けの実感を掴みやすい。それらを完備したゲームがこれです。

 トリテの面白さがわかりにくい原因の一つとして「このトリックに勝利/敗北したことは果たしていいことなのか悪いことなのか?」のフィードバックが初めての人には分かりづらいという点があります。常に勝てばいいわけではない。負けるべきときがある。なんのこっちゃという話です。

 これはゲームを作る人に覚えて欲しいんですけども、負ける方が勝つよりベネフィットを得られる構造を作るのは快楽原則から遠ざかるんです。奥深さを得られる代わりに直感性を失うということです。これは基本的にはトレードオフの関係にあって、奥深いゲームは面白さが伝わりにくいし、逆も然りです。

 トリテに限った話ではありませんけども、日本のゲームシーンにおいてトリテは常にこの命題を抱えていると言っても過言ではありません。その中で「ブードゥープリンス」は奥深さとわかりやすさを高い位置でバランシングした、新しいスタンダードなトリテだと考えています。


 さて、日本語版の特徴についても少し触れましょうか。このゲームの原版はイラストをStephanie Böhmさん、レイアウトをシュミット社のLeon Schifferさんが担当しています。日本語版ではLeon Schifferさんが担当した部分を別府さいさんにお願いしています。


 これは契約回りの話になりますが、このゲームはシュミット社ではなくクニツィア本人と契約しています。その上でイラストの版権はイラストレーターのStephanie Böhmさんが持っているので、彼女とも出版契約を結びました。

 さて、Stephanie Böhmさんが持っている版権はイラストとカードのフレームのみでして、実はタイトルロゴやカードの背景などはシュミット社の帰属となります。同じようなゲームの作り方は「トランプ、トリックス、ゲーム!」で経験があり、あの時はイラストの版権の持ち主が全部の版権を持っていたので話が早かったんですけども、今回はところどころ版権の持ち主が入り混じっているので面倒な話になりました。

 韓国語版の「ブードゥープリンス」の絵柄が独自のものだったり、「マシュマロテスト」がテーマそのものを変更したのはこの辺の事情があるのかもしれません。

 で、ぼくとしては原版を踏襲した「ブードゥープリンス」が欲しかったので、シュミット社に連絡を取り、デザインを新規に描き起こすことで権利侵害を回避できないか確認しました。シュミット社からは問題ない旨の連絡をいただき、日本語版での細かいデザインは別府さんに描き起こしていただくことになりました。

 従って日本語版のロゴは原版とは若干異なりますし、カードも背景やランクなどは新規に描き起こしています。


 左が原語版、右が日本語版です。微妙に違う

 これは正直に言えば二度手間ではありましたが、同時にUIを見直す機会も与えてくれました。特に問題と感じていたのが特殊カードのアイコンの視認性で、これは当初から手を入れる必要があると思っていました。

 最初はアイコン自体に手を入れるべきかと思っていたんですけども、アイコンの配置自体がランクの下にあるために改良が成果には結びつかず、抜本的にランクを囲うフレーム自体の形を変更することでより特殊カードの存在感を際立たせる方向にシフトしました。


 ランク0とそれ以外のランクのフレームに注目。◇と○

 日本語版では他にも特殊カードに冠するサマリーカードを追加しています。特殊カードの細かい挙動などは、やはり初回のプレイでは把握が難しいので手元で確認できるサマリーの存在は役立つかと思います。



 もうひとつ日本語版の追加点として数寄ゲームズ考案のバリアントルールの実装があります。これは原版の「ブードゥープリンス」の弱点である逆転の難しさを緩和するバリアントで、ゲームに慣れた人向けの選択肢です。

 そもそもこのルールは「逆転性を強めるバリアントルールを考案して欲しい」とクニツィアにお願いしたところ、「それは難しい」とあっさり却下されたところから始まっています。えっ、こういうバリアントのお願いって「OK、考えてみるよ」って快諾してくれるもんじゃないの……? 皆様、世界のクニツィアだからと言ってルールをポンと考えてくれるというものではないようです。

 で、クニツィアからは「何かアイディアはない?」と聞かれたので、無い知恵を絞って伝えたところ「よくわからない」と言われました。英語メールでルールを伝える難しさよ……

 仕方がないのでパワーポイントを使って図入りで説明したところ、なんとかわかってもらえたようで「ルールが増えるので好きではないけど、数寄ゲームズ考案のバリアントって明記してルールに載せてもいいんじゃない?」という回答を頂きました。


 全5ページに渡る力作パワポ


 ということで正確を期すと、数寄ゲームズ考案クニツィア認定のバリアントルールという表現になります。

 まあ、考えた人間としては、やること自体は簡単で、楽しみは増え、かつ競技方向にちょっと寄せな感じだと思いますので、いいんじゃないでしょうか。


 そんな感じで、原版を持っている人もちょっと欲しくなる日本語版になったかと思います。正直買い換えるまでのことはないかなとは思いますし、元々持っていないけど欲しい人をターゲットにしているのであんまりドメスティックな変更は加えていません。ゲーム自体は先述の通りにいいものですので。

 また、このゲーム、これまでのレーベルの作品と違ってものすごく最近の作品です。そこがどう受け取られるのかが興味深いと思っています。

 先述の通り、「ブードゥープリンス」は新しいスタンダードなトリテです。初めてトリテを遊ぶ人にとっては明瞭な、これまでトリテを遊んでいる人にとっては刺激的な、まさに誰にとっても遊ぶ価値のあるトリテですので、ぜひお買い上げ頂ければと思います。よろしくお願いします!




 さてまあ、ここまで「ブードゥープリンス」のゲーム的な価値について滔々と語ってきたワケですが、実は数寄ゲームズのトリックテイキングレーベルとして出版する価値についてはまだ触れていません。以降は余談なので暇な人だけ読んでください。

 まあ、「面白い」「斬新」という2点を満たしていることが出版する上では最も大事な価値でして、それだけでも「ブードゥープリンス」は出版に値するゲームです。「面白い」「斬新」なゲームを扱うことが結果的には多くのプレイヤーの幸福に寄与するからです。


 プレイヤーの幸福。実はこれがものすごく大事なポイントです。

 というのは、このゲームが、なぜ「今このタイミングで」「数寄ゲームズから」出版されるのか? への回答でもあるからです。


 「ブードゥープリンス」の原版の出版は2017年でして、それから既に3年が経っています。日本語版の出版時期としてはレスポンスが早いということもなく、さりとて復刻というワケでもない微妙な時期です。ネガティブな表現をすれば、時期を逸した、という言い方もできるかもしれません。


 ちなみに版権交渉を始めてから出版までの諸々の時間は半年と言ったところです。クニツィアの最初のメールの返信は、確認したところ2019年の11月26日でした。実務上で苦労する場面があったとは言え、ゲーム制作としては極めてスムーズな部類です。


 では、なぜこの時期の出版なのか? 簡単に言えば、「ブードゥープリンス」の日本語版版権はそれまで別の出版社が持っていたからです。

 2019年の前半にその出版社の持つ権利が失われ、フリーになった版権を数寄ゲームズが取得して出版まで漕ぎ着けた。流れとしてはこうなります。

 クニツィアとの契約は基本的に出版期日が設定されていて、その期日までに出版することが契約の一部として定められます。それをオーバーしてしまった場合は(実際にぼくは契約を破った経験がないので想像になりますが)再度ロイヤリティを支払って契約を結び直すか(これには遅延金という性格もあるでしょう)、頼み込んで延長して貰うか、契約が破棄されるか、その辺りになるでしょう。

 数寄ゲームズが「ブードゥープリンス」の版権を獲得したということは、それまでに版権を持っていた出版社は契約の延長を望まず版権を放棄したということになります。出版するために獲得した版権を行使せずにそのまま放棄に至ったということです。


 失効も契約の一部ですから、一連の流れは契約が条文通りに履行されただけです。ただ、結果として、この3年の経過で誰が幸せになったのかと言えば、誰も幸せになっていないんです。


 日本語版の発売を長く待ち望んでいた一人として、ぼくはそれが悲しいし、怒りすら覚えます。


 幸いなことに、ぼくは多少ながらこの状況に関与できる位置にいました。優れた作品であるにも関わらず多くの人に知られることなくすり減っていくゲームをこのまま見過ごしていいのか? 10年後、20年後、日本語版の出版ができる立場にいて、それを見過ごしたことを後悔しないと言えるのか?

 それがこのゲームを出版するに至った最も大きな動機です。


 なぜ「今このタイミングで」「数寄ゲームズから」出版されるのか? 答えは簡単で、それがベストだとぼくが判断したからです。

 だからこれは、翻って、数寄ゲームズらしいゲームなんです。


 これまで数寄ゲームズは10年前、20年前の価値あるゲームを復刻してきましたが、根底に流れる意志は今回も同じです。10年後、20年後にも価値を持ち続ける確かなゲームを未来に繋いでいくことです。

 10年後、20年後、「ブードゥープリンス」はトリテレーベルを構成する立派な一部となっているはずです。名作が名作を引き立て、また名作によって引き立てられる、そんな存在です。

 それが確信できるからこそ、他の何よりも出版を急ぎました。今待っている人が一番多いトリテはこれです。


 まあ、結果として自分でも納得できるものが手に入るのは行幸と言えるのかもしれませんけども。失われた3年間が少しでも早く取り戻せるように、皆様の手元にお届けするべく頑張っています。「ブードゥープリンス」をどうぞよろしくお願いいたします。
posted by 円卓P at 12:21| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月23日

数寄ゲームズ ゲームマーケット2019秋特設ページ

 予約お申し込みフォームはこちらからどうぞ。

 今回はブース名をこれまでの「蒼猫の巣 出張所」から「数寄ゲームズ」に改めました。前回、ブース名で多少の混乱があったことからの変更です。蒼猫の巣から出禁になったとかそういう内幕はないのでご安心ください。個人的には画数が少なくなったので発送の手間が減りそうなのはよいです。


 サークルカットを描いている段階で出せる情報が「地下迷宮と5つの部族」だけでした。が、一番納品がギリギリになりそうなのもこれです。なんかこのパターン多いような……


 数寄ゲームズは今回は企業ブースのエー14になります。バネストさんの斜向いなので開幕バネストさん(ダッシュ厳禁)の後にどうぞお立ち寄りください。
 角地なので荷物を置くのはラクだけど、今回持ち込み数がヤバそうなので果たしてどうなるか。

 今回の初出展作品新作は、「命中」リメイクの「地下迷宮と5つの部族」、エッセン新作の「Terramara/テラマラ」と「Aquatica/アクアティカ」です。


 「地下迷宮と5つの部族」はイベント価格2000円です。後日、全国のゲームショップ等で一般販売を予定しております。事情でゲムマに足を運べないという方や、当日買い逃したという方はそちらのご利用もご検討ください。


 「テラマラ」はイベント価格8500円です。和訳ルールが付属します。イベント販売後、残部があれば、数寄ゲームズ通販サイトで取り扱います。


 「アクアティカ」はイベント価格7000円です。和訳ルールとカードシールが付属します。こちらは数寄ゲームズ通販サイトでも既に販売中です。

 「地下迷宮と5つの部族」「テラマラ」「アクアティカ」、そして春新作の「アンダーウォーターシティーズ」「時代劇3600秒」は持ち込み数を計りたい都合もありまして、ゲムマでの取り置き予約を実施します。※「テラマラ」は予約を終了しました。

 予約受付フォームはこちらになります

 必要事項をご記入ください。なお〆切は11月20日いっぱいとなります。また、状況によっては早期に予約を締め切る可能性があります。

 今回、送料負担が大きい関係から、持ち込み数を絞りたいと考えています。ご入用な方はご予約をお勧めします。

おしながき
地下迷宮と5つの部族 3-5人:30分:10歳- 2000円
テラマラ 2-4人:120分:12歳- 8500円
アクアティカ 1-4人:60分:12歳- 7000円
アンダーウォーターシティーズ 1-4人:人数*40分:12歳-:7500円
時代劇3600秒 2-7人:人数*10分:3000円
トランプ、トリックス、ゲーム! 3−4人:30分:8才-:2000円
トランプ、トリックス、ゲーム!専用弾丸コマ 500円
知略悪略 4-6人:30分:10才-:2000円
ペーターと2匹の牧羊犬 2人:15-30分:8才-:2500円
百科審議官 3人:20分-:2500円
コプラス 2-4人:30分:9才-:4500円
そんな顔してどうしたの? 3-8人:20分:6才-:3000円
娘は誰にもやらん 2-6人:10分:10才-:1000円
犯人は踊るポーカー 3-4人:10分:10才-:500円
姫騎士逃ゲテ〜 4人専用:20分:10才-:1000円


























posted by 円卓P at 14:01| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月20日

「地下迷宮と5つの部族」サマリーカードの不足と対応のお知らせ

 ゲムマから販売予定の「地下迷宮と5つの部族」には、プレイの補助として下記のようなサマリーカードが付属します。



 これは意図としてプレイ人数に等しい枚数が必要なものですが、製造の際の指示ミスで本来5枚あるべきところが4枚しか同梱されていないことが判明しました。

 そこで急遽、不足分のサマリーカードを別口で印刷し、箱の外側に添付する形で販売を行うことを決めました。
 これはゲムマ販売分のみということではなく、今回製造分全てが対象で、今後の一般流通でも同様の形での提供となります。

 また、印刷形態が異なるもので、紙質、表面処理、色味の違いがあります。ただ、サマリーカードという性質上、他のカードと混ぜたりするようなこともありませんので、プレイングの妨げにはならないと思います。
 とは言え、本来、このような製造ミスは避けなければならないものなので、反省するよりありません。製造工程の見直しを行い、チェック体制を強化することで品質の確保に努めていきたいと考えています。

 これまでご予約を頂いた方には上記の内容についてメールでご連絡をいたします。ご予約の順番でメールをお送りしますので、お申し込みのタイミングによってメールが届くまで時間がかかることがあります。

 また、このような製造の瑕瑾が発生し、楽しみにお待ちいただいている皆様にはお詫びするよりありません。本当に申し訳ありませんでした。
posted by 円卓P at 10:39| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月15日

「Terramara/テラマラ」紹介



 Terramara/テラマラは紀元前15世紀のイタリア北部を舞台にしたワーカープレイスメントゲームだ。イタリアのゲーム制作集団アッキトッカによる10年ぶりの新作としてオランダのQuined Gamesから発売された。

 アッキトッカ名義での作品は10年前の「エジツィア」以来だが、メンバーのギグリとブラジーニは「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」の製作者に名を連ねており、この両名は「コインブラ」のデザイナーコンビでもあるため、ドミニオン世代である自分にも馴染みがある。しかしながら自分には純正アッキトッカ名義でのゲームのプレイ経験がないため、「名前だけ知ってるあの伝説のバンドが再結成!」なノリで今作を捉えている。

 ちなみにこのゲームはQuined Gamesのマスタープリントエディションの25作目でもある。このマスタープリントエディションはなんかよさげなデザイナーのゲーマーズゲームを集めたシリーズなのだが、オリジナルモノと他社メーカーの再販モノがごっちゃになっていて、このゲームは分類としてはオリジナルモノの方になる。


 ゲームは王道的なワーカープレイスメントで、全5ラウンドでの獲得勝利点を競う。4人プレイの場合、各ラウンドのアクションスペースが4個、全ラウンドで使用可能な本拠地アクションスペースが5個あるため、第1ラウンドで使用できるアクションスペースの数は9個だ。

 それに対してプレイヤーはワーカーとして4個の探索者コマと1個の族長コマを持っている。つまり4人分でワーカーは20個。明らかにアクションスペースが足りない……!

 しかし! このゲームでは2つのギミックでこの疑問に答えている。

 1つ目のギミックはワーカーの後乗りだ。このゲームでは1つのアクションスペースに2人までのワーカーを配置できる。

 1人目のワーカーはノーコストでアクションスペースに配置できるが、2人目のワーカーは配置の条件として、1人目のワーカーの持ち主より高い「軍事力」を持たなければならず、さらにコストとして「軍事力」を1つ支払わなければならない。

 「軍事力」は獲得が難しいリソースなので、「軍事力」を支払ってでも実行しなければならないアクションなのかをよくよく考える必要がある。また、2種のワーカーのうち族長は、こうした「軍事力」の縛りなしに後乗りできる強力なワーカーなので、要所で使いたい。


 説明書記載のワーカー配置例。なんかごちゃごちゃ書いてあるがセオリーの組み合わせなので理解は難しくない。

 2つ目のギミックは将来のラウンドのアクションスペースの使用だ。先程、第1ラウンドで使用できるアクションスペースは9個と言ったな。あれはウソだ。

 実は最初から5ラウンドほとんどのアクションスペースを使用できるため、使用できるアクションスペースは実に29個もある。それだけあるとどのアクションスペースを使うか迷ってしまいそうなものだが、将来ラウンドのアクションスペースには「そのラウンドの終了時にならないとワーカーが戻ってこない」という強烈なデメリットがあるため、実効的な選択肢はさほど多くはない。

 ただ、ラウンド終盤にもなると、少ないリソースを得るよりは遠いラウンドでも多くのリソースを得たい局面もある。なにせこのゲーム、アクションスペースが少ないのだ。

 その結果、プレイヤーの手番数はそれぞれ異なる場合がある。遠くにワーカーを派遣すると自分だけ手番が少なくて手持ち無沙汰になる「アグリコラ」あるあるを久々に味わえるぞ!

 このギミックはある種の前借り、借金のようなものだが、UIが統一されている上にリスク&リターンが明瞭で、とても合理的な仕組みだ。王道的なワーカープレイスメントは小さくまとまりがちな面もあるが、このような飛び道具を持ち込んでダイナミズムを両立させた手腕はさすがと言えるだろう。

 ちなみに、各ラウンドの終了時には現在のラウンドを構成するタイルが裏返り、アクションスペースが封鎖される。一応、十字路アクションスペースという追加のアクションスペースが用意されるのだが、基本的にはゲームが進むにつれ、アクションの選択肢は減る。ゲームを通してアクション数が緻密にコントロールされているため、引き締まったプレイ感が続く印象だ。


 さて、この一風変わったワーカープレイスメントのシステムがゲームの根幹だとするならば、循環する血流として「襲撃」アクションの存在がある。「襲撃」アクションはラウンド中1回しか行うことができない特殊なアクションで、軍事力を1つ支払う必要があるが、他プレイヤー全員のリソースを一方的に奪うことができる。

 「襲撃」を行った場合、襲撃者はその他のプレイヤーのリソースを「X分の1個」奪うことができる。Xは襲撃者と防御プレイヤーの軍事力(正確にはパワー)によって決まり、襲撃者の軍事力が高ければXは小さくなり、防御側の軍事力が高ければXは大きくなる。
 端数は切り捨てになるので、持っているリソースが少なければ結果としてリソースが奪われない場合もある。間接的な防御が可能ということだ。

 この「襲撃」は、全体を構成する濃厚なユーロ感に突如放り込まれた直接的なインタラクションで、強烈なスパイスとして作用している。思えば「コインブラ」でも他人のリソースを奪うカードがごく少数用意されていたが、あれがアッキトッカの味つけなのかもしれない。全然関係ないがドーラの「バレッタ」にも似たような要素があった。

 ともあれ、この「襲撃」の存在で、プレイヤーは「襲撃」を睨んだアクション選択を常に余儀なくされる。例えば基本ルールの場合、ゲーム開始時のプレイヤーの所持リソースは4個で、襲撃の効果は「5分の1のリソースを奪う」状態だ。

 この状態でAがリソース3個を獲得し、Bがリソース3個を獲得し、Cがリソース2個を獲得する。すると、Dは襲撃を行うことで各プレイヤーからリソースを1つずつ奪うことができる。

 結果、こんな感じになる。

A:リソース6個
B:リソース6個
C:リソース5個
D:リソース7個、軍事力-1

 軍事力1を引き換えにDはリソース面で若干の優位に立てる。ワーカープレイスメントの常として後手番のプレイヤーに残されたアクションスペースは貧弱なので、かなり効率的なアクションとも言える。

 「となると、初手でリソースを取りに行くのは悪手ではないのか?」「いや、全員がリソースを取らなければ『襲撃』も弱まるので自分だけなら大丈夫じゃないか?」「いっそ『襲撃』される前に自分が『襲撃』するのは……」と言ったシミュレーションがそれぞれの脳内で始まる。

 ゲーム開始からこんな殺伐としたやり取りが起きるところからも分かる通り、いつ誰が「襲撃」アクションを実行するのかがラウンドの焦点となる。これは「ネイションズ」の戦争と似たニュアンスがあって、誰かが実行してくれれば話が早いのだが、相応にコストもかかるので実行しづらく、また軍事力の乏しいプレイヤーが防御的に「襲撃」を行う場合もある(1ラウンドに1回しか行えないので)。

 ゲームのベースは極めてオーソドックスな作りなのだが、この「襲撃」を軸としたプレイ感はなかなかユニークだ。ゲーム中やたらと山賊じみた発言が多くなりがちなゲームだが、まあ紀元前1500年のイタリアだからそれも仕方ないね!


 さて、「襲撃」の存在を意識するため、自然とプレイヤーは溜め込んだリソースを放出することになる。リソースは主にアーティファクトの作成コストとして消費される。

 ただ、リソースには原材料と加工品の2種があり、アーティファクトのコストとして使えるのは基本的には加工品だけだ。加工品を作るためには一手間が必要なので、加工する手段を確保しないまま原材料だけをガッツリと集めると「襲撃」の餌食となりかねない。

 アーティファクトは作成したプレイヤーに様々な特殊能力と勝利点を与える。まあ、この手のゲームによくある建物みたいなやつを想像して貰えばいい。

 基本的にアーティファクトはコストとして同種の加工品を複数必要とするのだが、ゲームが進むにつれて要求コストが増大するので、「襲撃」の脅威度も上昇する。アーティファクトの中には、アーティファクトの製作コストを割引する効果を持つものもあるのだが、この効果の恩恵は他のゲーム以上にありがたい。

 他にも「『1ラウンドに1回、リソースを1個払うことで1移動力を獲得』を3回実行可能」なアーティファクトがあって、これ自体は字面で見る分には普通の効果なのだが、「襲撃」の絡みからリソース大量獲得の後に防御的に起動するなんて使い道もあって、これはちょっと唸った。デザイナーの小技が随所に光っていて、芸術点とか難度ではなく完成度で稼ぎに来るタイプのゲームだ。

 アーティファクトはボード下部に描かれているポー川の脇に並べられる。見た目は「スルージエイジス」などでよくあるダッチオークション風のそれだがコストの嵩増しはない。


 アーティファクトの獲得例。なんかズラズラっと書いてあるが要はカヌーの進んだ場所までのアーティファクトを獲得できる。

 基本ルールの場合、ゲーム開始時点ではこのうち左側3枚だけが獲得対象となる。ただ、ゲーム中、「文化度」を上げることでカヌーを進め、獲得の選択肢を広げることができる。「文化度」が4以上になるとアーティファクトの予約も(1枚だけ)可能だ。

 なので、「文化度」が低いといつまでも川下で人のおこぼれを待つしかないのだ。とは言え、ラウンドが進むと古いアーティファクトは適度に取り除かれるので停滞感はさほどない。


 あとは、「軍事力」「文化度」と並んで重要なリソースに「移動力」があるのだが、まあ、ここはそれほどひねりはないのでちょっと割愛。ただ、ゲームで勝利するために重要な得点源である前哨基地を活用するには「移動力」が必要なので、やはりこれも重要な要素だ。


 あと、ワーカープレイスメントのゲームとして触れておきたいのはスタートプレイヤー周りの仕様だ。最初に言っておくと、このゲームはスタートプレイヤーから時計回りでプレイする。この時点で既に渋面を浮かべているゲーマー諸君は、ちょっと我慢して先を読んで欲しい。

 次のラウンドのスタートプレイヤーはスタートプレイヤーアクションを実行したプレイヤーが務める。まあ、ここまではよくあるやつだ。

 で、その際に次のラウンドの手番順に応じてボーナスが与えられる。スタートプレイヤーは1移動力、おこぼれが嬉しい2番手にはなにもなし、3番手には1文化度、4番手には2軍事力と言った塩梅だ。

 知っている人ならこれは「ファーストクラス」の援用だと気づくだろう。ただ、「ファーストクラス」ではラウンド終了時に与えられていたこれらのボーナスが、このゲームではスタートプレイヤーアクションを踏んだ瞬間に即座に発生する。

 ここがちょっと不思議に思う点でもあるのだが、結果としてどうなるかというと、4番手が手番外で2軍事力を得るので、4番手のワーカーが配置されていたアクションスペースを踏みに行こうと思っていたプレイヤーは突如として計画が狂うことがある。仕様としてラウンド跨ぎでボーナスを与えることもできたと思うんだけど、処理を忘れそうな気もするし、ここはハプニング性を重視したのかな。


 とまあ、こんな感じで色々と語れるぐらいには見どころの多いゲームだ。実は8割がた書いた紹介テキストが1回吹っ飛んだので、ここでは内容をかなりコンパクトにお伝えしている。うだうだ語れる材料はまだまだあるのだがそれは遊んでみてのお楽しみということで。


 ゲーム全体としては、老練な、質実剛健な印象を受ける。ギグリやブラジーニの関係している「グランドオーストリアホテル」「ロレンツォ」「コインブラ」を並べてみるとコンボ性があり、華やかさや派手さの目立つ作風にも思えるが、このゲームはそれらとは違って相当に固い。

 一貫してゆるさのない、よく言えば緊張感があり、悪く言えばリラックスできない展開が続くので、人によっては疲労感を覚えやすいゲームかもしれない。これは2000年代のしっとり重厚なゲーマーズゲームの作風で、この辺があるいはアッキトッカらしさなのかもしれない。


 ただ、上級ルールのキャラクターを採用することで2010年代ならではの華やかさが生まれる印象もある。キャラクターはいわゆる非対称能力で、各プレイヤーにかなり派手な追加能力をもたらす。



 キャラクターはプレイングの方向性を積極的に方向づける能力を持っているので、この手のゲーマーズゲームに慣れている人なら初回から選択してもいいかもしれない。キャラクターと同時に初期リソースのドラフトを行うのだが、この選択方法がまんま「コインブラ」なのでニンマリする。

 また、キャラクターには裏表があり、ラウンド開始時に裏返すことで言わば成長し、全く異なる別種の能力を獲得する。基本的にキャラクターはリソースを獲得した場合に追加でリソースが得られるタイプの能力が多いが、裏返すことで勝利点をもたらすタイプの能力に変わるので、どのラウンドでキャラクターを裏返すかも重要なチョイスになってくるだろう。


 多種のキャラクター、そしてモジュラーボードでリプレイ性は高い。今年のエッセン新作の中でも特にこれまでのゲーマーズゲームに親しんだ人向けのサービス作だ。

 ここまでの紹介でなにか一つでもひっかかるフックがあるなら遊ぶ価値は大いにあるんじゃないかな。ゲームマーケットで販売予定だが、箱がデカいこともあって持ち込み数に悩んでいるので、確実に入手したい人は予約もオススメする。

ラベル:Terramara
posted by 円卓P at 12:10| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする