数寄ゲームズは10種のギルドから4種を選んで対戦する2人用ゲーム「リフトフォース」を販売します。プレイ人数2人、対象年齢10歳以上、プレイ時間30分で、小売希望価格は税込3300円となります。
10月29日、30日のゲームマーケット2022秋にて先行販売を行います。こちらはイベント価格3000円でご提供させていただきます。
その後、数寄ゲームズ通販サイトでの販売、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。
「リフトフォース」はオーストリアの1 More Time Gamesという新興出版社が出版したゲームで、ひねりのある神経衰弱ゲームとして人気を博した「メモアァール!」(ゲムマで3団体が英語版・日本語版を販売するカオスを生み出したことで一部で有名)の作者でもあるイタリア人デザイナーCarlo Bortoliniの2作目となります。新興出版社かつキャリアの浅いデザイナーの作品ということで、発売前はさほど注目を集めてはいなかったのですが、じわじわと評価を高めた結果、なんと2021年のドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門推薦リスト入りを果たしています。
ちなみにこの時の推薦リスト入りタイトルは他に「バラージ」「グルームヘイヴン:獅子のあぎと」「イーオンズエンド」と高評価のゲーマーズゲームが勢揃い。これらの中で「リフトフォース」は2人用かつ軽量級ということで浮いた存在にも見えるんですけども、それだけこのゲームには確かな地力があるのだとも言えます。
ゲームの見た目としてはTCGでよくある2人用の殴り合いゲームなんですけども、アメリカンな特殊効果でハデハデな攻防を楽しむゲームではなく、計画的な選択と適度な運要素を織り込んだ典型的なユーロスタイルのゲームです。ボクシングというよりは柔術というか。野球というよりはサッカーというか。出会い頭の一発ではなく試合運びの巧みさが勝敗を分けるテクニカルなゲームです。
◆10種のギルドから4種を選択。最強のチームを作り上げる!
ゲームの初めにプレイヤーがまず行うのは、今回使用するギルドの選択です。このゲームには火、水、風、土など10種のエレメンタルを使役するサマナーのギルドがありまして、プレイヤーはそれらから4種のギルドをドラフトして選択し、それぞれのチーム同士で対決するのです。
各エレメンタルはそれぞれ異なる能力を持っています。
例えば火のエレメンタルは相手に与えるダメージが大きいですが、バックファイアとして味方を傷つけてしまうおそれがあります。風のエレメンタルであれば、戦場を自由に移動してダメージをばら撒くことができます。
こうしたエレメンタルの特徴や能力をうまく組み合わせて自分なりの戦略を模索できるところがこのゲームの醍醐味です。各能力はシンプルなテキストでまとめられているもののよく考えられていて、組み合わせによって思いもよらない強力なエンジンとなることもあります。
それぞれ自分のチームを組み上げたら対戦です。先に12リフトフォース(得点)を獲得したプレイヤーがゲームに勝利します。
得点を得る手段は2つ。相手のエレメンタルにダメージを与えて倒すか、自分のエレメンタルだけがいる土地で決算を行うかです。
手番では3つのアクション「手札のプレイ」「場札の起動」「手札の補充と土地の決算」のいずれかを行います。アクション1つを行ったら手番を相手に渡し、それを交互に繰り返していきます。
「手札のプレイ」では最大3枚までの手札をプレイして場札にできますが、プレイするすべてのカードの色か数字が同じでなければなりません。できるならば1手番で多くのカードをプレイしたいところです。
「場札の起動」ではコストとして手札を1枚捨てて、相手のエレメンタルに攻撃をしかけます。プレイヤーは最大3枚までの場札を起動することができるのですが、コストとして支払ったカードと同じ色か数字の場札しか起動できません。
「手札の補充と土地の決算」では手札を7枚まで補充し、自分のエレメンタルだけがいる土地から得点を得ます。
基本的な流れは「手札をプレイして場札を増やす」→「場札を使って相手を攻撃」→「手札が減ったら補充しつつ決算」とシンプルながら、それぞれのアクションは「まとめて実行できる」というところがポイントです。手札はまとめてプレイしたいし、場札はまとめて起動したいし、手札補充は一気に7枚ドローしたい…… それができればベストなんですけども、刻々と移り変わる戦況の中では理想的な動き方は難しく、プレイヤーは手札をどのように使うか、起動コストをどのように支払うかで終始頭を悩ませることになります。
基本的にはこのように箱裏に書いてあるのがルールのほぼすべてとも言っていいほどのシンプルさで、用意された多種のギルドによって肉付けがなされている感じです。ルールは簡潔ながら発見や研究余地の多い、遊びごたえのあるゲームと言えるでしょう。
◆あらゆる場所から滲み出る小粋なデザインセンス
このゲームは小品ではあるのですが、遊んでて思わずニヤリとしてしまうデザインの巧みさが垣間見えるのが魅力でもあります。
例えば、エレメンタルのカード構成もその一つです。
各ギルドは実際に戦闘を行う9枚のエレメンタルと、それぞれのエレメンタルの能力が記されたサマナー1枚からなります。エレメンタルはその両肩に数字が記されていて、これがエレメンタルの持つ体力(タフネス)となります。
エレメンタルの体力は5,6,7と3種類あるのですが、カード構成は5が4枚、6が3枚、7が2枚と統一されています。これがどういうことかと言えば、5のエレメンタルはデッキ内に多くあるので攻撃に使いやすく、反面、体力は少ないので防御力はひ弱なのです。7のエレメンタルはその逆になります。
シンプルなカード構成をエレメンタルの性格付けに結びつけているところなど気が利いていて、いやあ、職人技だなと感じ入ってしまいます。
他にも、「手札の補充と土地の決算」のアクションは手札が7枚の時には行えない、というのもよく練られたルールだったりします。最初にルールブックを読んだ時には単純に「手札7枚の時に補充するのは損だからやめようねー」というだけの話かと思っていたのですが、実際に遊んでみると手札の補充はどうでもよくて土地の決算だけを続けてやりたい局面が出てくるんですね。
しかしながらルール的には「手札のプレイ」なり「場札の起動」なりで手札を減らさないと再び「手札の補充と土地の決算」のアクションを行うことはできず、その一手番の間に相手が体勢を整えてしまうかもしれない……といった運びがあり、一度作った有利な状況でそのまま押し切ることが難しい作りになっているんですね。言い方を変えれば逆転の余地を持たせた作りと言いますか、攻守の状況が頻繁に入れ替わるテンポ感が心地よいゲームでもあります。
ボードゲームの魅力の一つに「ルールの行間に隠された意図の発見」があると思います。ルールを読んだだけでは全くなんのこっちゃとなるゲームを実際に遊んでみて「ああ、そういうことだったのか!」と気付かされる経験こそが、ボードゲームを鑑賞する最大のご褒美であるとさえ思っています。
古典的なドイツゲームはそうした行間に潜む相互干渉を活かしたゲームが多かったのですが、インタラクションが薄いゲームが主流となってきた昨今ではそうしたルール読みの楽しさを味わえるゲームが減ってきたように思います。「うん、ルールに書いてある通りの楽しさだね」というような。
その中で「リフトフォース」は久々に「そういうことか!」と膝を叩いた小気味よいゲームだったんですよね。これは、2人用ゲームがマルチプレイゲームと違ってインタラクションを薄める必要が少ないことが理由の一つとしてはあるとは思うのですが、デザイナーの工夫と手腕を読み解くことに楽しさを覚える人、ゲームデザインの奥深さを探究したい人にとっては、望外のプレゼントになるタイトルだと思っています。
◆新定番となりうる優れた2人用ゲーム
まあ、そういう研究者的な目線でなくても、このゲームには多くの魅力があります。ルールはシンプル、随所に気の利いた工夫があり、組み合わせにもバラエティがある、と長所に富んだこのゲーム、出版に至ったのは「今の時代に必要とされているゲーム」と感じたのが理由の一つとしてあります。
実は今年の1月に、東京は上野のコロコロ堂さんでゲームカフェのスタッフとして働かせて貰ったことがありまして(コロナの影響などもあって短期間ではありますが)、そこでの経験がこのゲームの出版に密かに結びついていたりもします。
ゲームカフェで実際にお客様と触れ合ってみて思ったことの一つは「良質な2人用ゲームっていくらでも欲しいな」ということです。コロコロ堂さんの「パッチワーク」なんかはめちゃくちゃ遊びこまれてタイルの印刷が剥げかけているのにビックリしたんですけども、実際にゲームを案内する立場になると「パッチワーク」のようなゲームってすごく紹介しやすいんですね。
良質、という言葉をもう少し噛み砕くと、ルールはシンプル、テーマに普遍性があって、プレイ時間はほどほど、なおかつ研究余地があって繰り返し遊びたくなるゲーム、と言い換えることができるかもしれません。特にインストの負担とそれに伴うプレイ時間の比率のコストパフォーマンスがゲームカフェではとても重要だなと感じたんです。
例えば、数寄ゲームズでは2人用ゲームとして「ウォーターゲート」を販売していますけども、これがゲームカフェ向きかと言えばちょっと難しいところがあるようにも思うんですよね。まず、絵面がいかめしい……(笑)
ゲームとしては抜群に面白いですし、遊びこむ余地も膨大なんですけども、インスト負荷もまあまああって、ファーストチョイスとしては中々選びにくいタイトルなのではないかと客観的に見ています。
それに比べると「リフトフォース」は、まさに理想的なゲームカフェ向きの2人用ゲームだと思うんですよね。それはもっと広く言えば、ご家庭内でゲームを遊ぶ人に楽しんで貰える2人用ゲームという意味でもあります。
もちろん「リフトフォース」の一番の魅力は面白いゲームであることそのものなんですけども、面白いゲームには事欠かない昨今、その中で生き残るにはより現環境に適した長所が必要なのではないかと思っています。ゲームの戦国時代ですな。
そんなワケで数寄ゲームズから提案する「ゲームカフェに一番ピッタリな2人用ゲームはこれだ!」というのが、「リフトフォース」でございます。海外ではすでに拡張が発売されていて、人気もますます加熱しております。
ぼく個人としても拡張の新しいギルドやルールを遊んでみたいなーという気持ちが強いので、拡張の発売に繋がるような皆様のご支援、ご声援を頂ければありがたいです。そのためには広く遊んで貰うことが第一だと思いますので、ゲームカフェでもどちらでも、どうぞ一度試してみて頂きたいと思っています。
◆数寄ゲームズは2人用ゲームに注力します!
数寄ゲームズと言えば、先日紹介記事を書きました「パーラ」のようなトリックテイキングゲームに力を入れている出版社というイメージをお持ちの方もいるかと思います。そういうイメージを持って頂けていたらありがたいなあとも思うのですが、今後は同様に2人用ゲームの発掘にも力を入れていきたいと思っています。「リフトフォース」はその1つ目のチャレンジという形にもなります。
これは以前発売した「ウォーターゲート」が思った以上の好評を得たことも影響してまして、ぼくが思っている以上に2人用ゲームへの要望って大きいんだなと気付かされたことが一因としてあります。ボードゲームを遊ぶ人の母数が以前と比べて増えていることで、2人用ゲームをメインに遊ぶ層も形成されてきているのかしら……と。
もちろん、2人用ゲームであればなんでもいいというワケではなく、確かな魅力を備えていて、しかしなかなか知られていない、そんなダイヤの原石のようなゲームを発掘して届けられればベストです。先程も少し触れましたが、様々なゲームが溢れる昨今、出版社により求められているのはゲームの面白さを見抜く力、相馬眼ならぬ相ゲーム眼なんじゃないかなと考えています。
自分自身の相ゲーム眼をより磨いていくためにも、新しいチャレンジは必要でして、2人用ゲームの世界という新しいグラウンドは自分にとっても魅力的な分野です。マルチプレイでは実装が難しい2人用ゲームならではのエレガントなシステムやルールって本当に多いんですよね。「ヨーロッパディバイデッド」の得点システムとかよかったなあ。パオロ・モリの「ブリッツクリーグ!」や「カエサル!」もえがった……
そういったアイディアの数々に触れられるのは、単純に1ゲーム好きとして楽しいし、嬉しいので、優れたメカニクスに触れる感動みたいなものを多くの人と共有していければいいなあと思っています。お前もシステム派にならないか?
リフトフォース
プレイ人数:2人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:30分
ゲームデザイン:Carlo Bortolini
アートワーク:Miguel Coimbra
小売希望価格:3300円(税込)
ラベル:リフトフォース