2020年11月09日

3つのシステムから見る「ハリウッドセンセーション」



 ゲームマーケット秋に販売する「ハリウッドセンセーション」は2人用のトリックテイキングゲームです。4スート、7ランク、マストフォロー、切り札あり、ビッドなしの極めてスタンダートな構成と言えるこのゲームにはどのような特徴があるのでしょうか。

 今回は3つのシステムから「ハリウッドセンセーション」を紹介します。




・切り札は段階式のスートの強弱

 「ハリウッドセンセーション」の切り札はかなり独特です。一般的なトリテの切り札は、1つの切り札スートが他の3種のスートよりも強いもので、スートの強弱としては、「切り札スート > リードされたスート > それ以外のスート」となります。

 言い回しから切り札は「スペードのエース」のような特定の1枚を指すものと誤解しやすいのですが、一般的には、切り札は「スペードのスートが切り札」というように、1つのスート全体を指し示す場合が多いです。

 で、このゲームでは、ディールの開始時に4スートのカードをランダムに並べ、その順番でスートの強弱が決まります。「コケティッシュ > ホリック > モード > スキャンダル」というように。そういう意味ではワンアンドオンリーな従来の切り札とはちょっと趣が異なります。

 このようにスート間で強弱があるゲームは例えば「インシディアスセブン」のような例があり、基本的にはランクが同値のカードが複数プレイされた場合の判定用として取り入れられることが多いように思います。それに対して、このゲームでは2人用のトリテのままならなさを緩和するためにスートの強弱を取り入れています。

 この仕組みの効能として、弱いカードを差し込みやすい利点があります。2人用のトリテではハイランクのカードを手元に抱えている場合トリックに負けることが難しいのですが、スートに強弱をつけることで逃げる余地が生まれます。

 このゲームは得点システムの都合からそれぞれのスートに対して「カードをすべて集めるか、過半数を取るか(押し付けるか)」の方針を前もって立てる必要があるゲームです。スートの強弱が明確なことで、ディールの開始時からどちらの方針を取るべきかの補助線が引かれています。




・手札は6枚。1トリックごとに補充

 このゲームではカードは配りきりではありません。そもそもの話として、2人用トリテでカードを配りきってしまうと、自分の持っていないカードは相手が必ず持っていることになり、あとは最適解を辿るだけのパズルになってしまうからです。パズルを避けるために2人用のトリテでは何かしらの工夫が必要です。

 このゲームでは28枚のカードのうち手札としてそれぞれ6枚を配り、残り16枚を伏せて山札を作り、一番上の1枚をめくって公開カードとします。そして、トリックに勝ったプレイヤーは公開カードを手札に加え、トリックに負けたプレイヤーは山札から非公開カードを1枚手札に加えます。

 このシステムは「ジャーマンホイスト」という2人用トリックテイキングゲームの、えー、平たく言えばパクリなんですが、物凄く優れた仕組みです。


・まず2人用トリテの最初のハードルである、パズルを避けられる
・トリックに勝つ動機、負ける動機を明確にプレイヤーに与えられる
・1トリックごとに情報量が緩やかに蓄積していき、情報量のグラデーションをかけられる


 そもそも、手札を補充するトリテは基本的にスジが悪い仕組みです。「狙って枯らしたスートが手札の補充で復活したら……」とか考えるだけでイヤじゃないですか。

 これはトリテのマストフォローという大枠と強烈に相反するものです。ぼくとしては「トリテデザインべからず集」に載せるべき項目だと思っています。

 ただし、それは3人以上のトリテに限った話です。2人用のトリテでは、ゲームの綾を生むために手札の補充を組み込んだゲームがいくつもあります。それでいて、このシステムでは手札に加えられる新しい2枚のカードのうち1枚は素性がバレているので「さっきボイドしたスートでもう一度リードしたのにフォローされた」みたいな不条理な展開を生みにくい仕組みになっています。

 情報量のコントロールと言いますか、カード全体の何%が見えているとゲームは地に足が着くか、という話ではありまして、2人用のゲームでは情報量のコントロールは特に気をつけるべき観点です。カードの70%以上が見えないとぼくとしては遊びづらいなという印象です。




・手札の枚数に差をつける

 このゲームで最大に奇っ怪なシステムがこれです。2ディール目以降、得点的に劣勢なプレイヤーは配られた6枚の手札から規定の枚数を減らします。手札は最低で3枚になります。

 手札は減りますが、選んだ残りのカードは脇に伏せて置いて自分用の補充山札になります。これは共用の山札が尽きたあと、自分専用の山札として扱います。


 そもそもデザイナーのしぶさんはこれをハンデとして実装してきたんですが、ぼくとしては「ハンデとして機能するのかこれ……?」と首を傾げるルールでした。手札の枚数差がどのように機能するか直感的にわかる人がどれほどいるのか。「手札減った! よーしこれなら勝てるぞ!」ってなるか? ならんやろ?

 機能的には、手札が減ると選択肢が絞られるのでハンドリングがピーキーになります。基本的には先手に回ると選択肢が狭くてプレイしづらく、後手に回ると強烈なカウンターを繰り出せるか一方的にボコられるかのどちらか。

 逃げ場がなくなる一方で、ハマったときは強い、極端なゲームになります。単純に手札が多い/少ない方が弱い/強いという話にはなりません。100ポイントのスキルポイントを攻撃力と防御力にどう振り分けるか、みたいな話です。

 ただ、ゲーム的に劣勢な立場に置かれたプレイヤーは自ずとハイリスク・ハイリターンの戦術を取らざるを得ないのは確かで(「インカの黄金」とかそうですよね)、そういう意味ではゲームの進行に伴って逆転性を高めるための仕組みを取り入れるのは正しいのかもしれません。


 ……正しいのかもしれませんが、このルールのおかげでルールブックのテキスト量が2割増しになっていることを思うと、ルールブックをライティングする側の人間としては「クソ面倒なルール考えやがって!」とプンスカしています。

 そもそも、しぶさん原案では「個人用の山札」というものはなく、これをなんとかハンデっぽく機能させるためにぼくがひねり出したのが「個人用の山札」という仕組みではありまして、おかげでルールテキストがさらに増えたのが増改築に次ぐ増改築みたいでホントヤダなと思っています。美しくない!


 しかしながら、この仕組みは「トリテを複数ディール遊ばせるにはどうしたらいいのか?」という命題に対する踏み込みでもあって、なんとかディールごとにプレイ感に変化を持たせられないかと思ってやってるところがあります。単純にプレイヤー人数分だけディールを繰り返してねという提言はちょっと時代遅れなのかなとも思っています(で、これに今のところ最高の答えを出しているのが「ザ・クルー」です)。

 個人的にはこれ「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」みたいなルールなんですが、果たしてどれだけの人がこのルールに価値を感じて貰えるのか、楽しみでもあり、不安でもあります。




 ということで、今回は

・切り札は段階式のスートの強弱
・手札は6枚。1トリックごとに補充
・手札の枚数に差をつける

 という3つの観点から「ハリウッドセンセーション」の独自性について触れてみました。

 正直なところ、2人用トリテは面白くするためのハードルが非常に高いジャンルです。3人以上のトリテなら気にかける必要のない些末な事柄が、トリックテイキングを成立させるための障害として重くのしかかってきます。

 その課題に対して色々な工夫で答えを提案したのが本作ということになりますが、一方で遊びやすさを損なわないように極力シンプルな構造に絞りました。得点ルールとかやろうと思えばいくらでも複雑にできるんですが、それは今の環境的に向いてないなと。デザイナーのしぶさんが基本的に奇妙なことをやりたがる人なので今回はブレーキ役に回りまくりました。

 工夫には「スジのいい工夫」と、「スジの悪い工夫」があります。「スジのいい工夫」とはゲームを簡潔にする工夫です。「スジの悪い工夫」はゲームを複雑にする工夫です。

 「スジの悪い工夫」をなんとか「スジのいい工夫」に転化できないか知恵を凝らした結果、遊びやすさを担保しつつ、独自性のあるゲームに仕上がったのではないかと思っています。他では味わえない独特なプレイ感を持っているゲームなので、ぜひ遊んでいただけると嬉しいです。
posted by 円卓P at 11:16| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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