2019年05月23日

どのようにして「時代劇3600秒」はリメイクに至ったのか



 ゲームマーケットまで残すところと2日! 荷物も送ってしまったのでもはやジタバタできることもなく、あとは運を天に任せるのみという心境ではあるんですけども、以前「時代劇3600秒」の紹介記事を書いた時に、これは蛇足すぎるかなーと思ってカットした制作記録的なテキストがあるので、今日はどのようにして「時代劇3600秒」はリメイクに至ったのか、というお話をしたいと思います。

 考えてみればこの企画が持ち上がったのは何年前になるんでしょうかね。与太話として名前が挙がったのは軽く2年3年前だとは思うんですけども。2016年に「娘は誰にもやらん」を鍋野さんと一緒に作って、それが好評だったこともあって、じゃあまた同じ座組でやりたいですね、という話があったんです。つまり企画はこっちがやるからその代わりイラスト描いてねと。で、鍋野(ぺす)さんは「いいですよ!」と。まあ、描くのは鍋野(たま)さんなんですけど(笑)
 で、その中で候補に上がった企画の一つがこの「時代劇3600秒」でした。ただ、名前が上がってから実際にのーべーさんにお声がけするまでは結構な間がありました。というのは「やっぱりやるの大変でしょこれ!」というのがあったのと、スモール出版さんが同じのーべーさん作の「モレール」を2016年の春だったかに出版したこともあって、じゃあ「時代劇3600秒」もスモール出版さんから出るんじゃないの? という観測があったんですね。まあ、ぼくとしても自分で手をかけずにゲームが手に入るならそれはそれでという気持ちはあったワケです。
 ということで、しばらくは静観の構えだったんですが、これがいつまでも出る気配がなく(笑) じゃあこれはひょっとして自分から動いてかなきゃいけないのかな、ということで、のーべーさんにお声がけしたのが去年の春になります。ゲムマ大阪が終わってからかな。
 こういう話をゲームデザイナーさんに持ちかけるのはなかなか尻込みするんですけども、今回の件に関してはそんなには不安感はありませんでした。というのは、のーべーさんが「モレール」で商業出版を経験していらして、その辺の流れをご理解頂いていることが一番大きいです。まあ、『「モレール」で嫌な目にあったから、もうこういう話は懲り懲りだ!』と言った精神状態でなければ、あとは条件が折り合うかが焦点になるでしょうと、そう予想していたワケです。
 それでお声がけしたところ、ビックリするくらいすんなりと話がまとまりました。いや、こんな早く話が纏まるならこの数年間の様子見はなんだったんだ(笑)
 ちなみに「他社から出そうって話はなかったんですか?」という質問には、やはり版権がネックだという話を聞きまして、うーん、その辺も踏まえると実現できるのは小回りの効くウチしかないかもなーという気持ちにもなってきました。というのはやっぱりある程度大きなところだと手出ししたくない案件だとは思うんですよね。実は他の会社からも「うちもやりたかったんだけど……」という話を聞いてたりします。
 大きなところは手を出しづらく、しかしながら企画の都合上、完成させるにはそれなりのパワーがいる。そんな都合のいいところはやっぱり限られているワケですよ。
 まあ、数寄ゲームズもこの1年間で大分守るものが増えてきてしまっていて(正直1年前にはこの状況を想定していませんでした)、ちょっと腰が引けているところもあるにはあるんですけども、この件に関してはほそぼそとやっていけたらいいなと思っています。

 さて、企画はうち、イラストは鍋野さんにお願いするとして、グラフィックデザインを担当する人を別に立てた方がいいだろうなということは思っていました。というのは作業量の都合上、鍋野さんにかかる負担がめちゃくちゃ大きい案件なので、それを軽減するためにはやはり専任のグラフィックデザイナーが必要ではなかろうかと、こう考えたワケです。
 「娘は誰にもやらん」の時は「ゲムマで1000円で売ってね!」という作者のメサイアワークスさんの強い希望もあって省エネ志向で座組したんですけども、今回はお祭り企画と言いますか、ここはせっかくだから豪華なヤツを作ってやろうぜということで、有我さんにグラフィックデザインをお願いしました。
 ……ちなみに今、有我さんに初めて送ったメールを見返したら「カードのレイアウトを決めるのがあまりに億劫で人に任せたほうが早そうだからお願いします」みたいなことが書いてありました。なんかあの時期、めちゃくちゃテンションが低かったような記憶があります。
 ちなみにこの時点まで有我さんとの仕事的な絡みは一切ないです。ぼくのパターンとして全くこれまで絡みのない人にいきなり「こういう案件あるんですけどやってみませんか?」って仕事を振ることがよくあります(逆に言えば興味のある方はこちらまでお声がけして貰えれば、何かマッチしそうな案件の時に検討できます)。
 有我さんに関しては日頃ゲーム関係のアートワークをやりたいと呟いていたのを見かけていたので、ほんじゃまあ、お願いしてみようかなと思った次第です。有我さんの描いたマンガとかは読んでたのでまあスキル的には大丈夫やろなみたいなところはありました(同人誌を描ける人は完成させられる人なので)。
 で、ぼくはのーべーさんには「今回の座組はドリームチームです!」と紹介したんですけども、実際にぼくの期待通りに歯車が噛み合ってくれるかはこの時点ではわかるワケもなく(笑) まあ、そうなったらいいなくらいの気持ちだったんですが、結果としては「やっぱりドリームチームだったんじゃね?」という物づくりができてホッとしてます。
 有我さんはグラフィックデザインの諸々だけでなく、時代劇ファンということもあって色々なネタ出しをしていただきました。さすがギャグマンガを描いてる方はネタ出しが強い! かなり意欲的にネタを出して貰ってはぼくがボツにするという流れも多く(笑) そこは申し訳なさもあるんですけども、原版の空気感を守りつつ、新風を入れていくというバランスの取り方で頭を悩ませました。
 今回、リメイク作品ということもあって、ゴール地点が共有されていたのが結果的にはよかったんじゃないかと思います。豪華でワイワイ楽しく明るいオモシロゲーム。そこを目指せば自ずとディレクションも定まるので、齟齬が長引くということはなかったように思います。まあ、有我さんが譲歩してくれたのかもしれませんが(笑)

 のーべーさんには要所要所でプロトタイプをお見せして方向性をチェックしてもらいました。やはりぼくが想像している方向性とのーべーさんの方向性にはそれなりにズレがあり、それを都度修正していく形で作業が進められていきました。この手のリメイク案件で痛感しているのは「デザイナーの言うことが正しい」です。
 のーべーさんはしっかりと考えを言語化して伝えてくれる方なので、こちらも自身のズレにいち早く気づいて素早い方向修正が行えました。意外だったのは(と言っては失礼ですが)、ものすごく遊びやすさに気を使われている方だなということです。これは特にカードのレイアウトに関して「こういう配置はどうか?」と提案すると「これはこういう理由で改めたほうがいい」という回答を丁寧に返してくれるんですね。
 「なぜこのアイコンはこの位置にあるのか?」みたいな理由って実はそこまで詰められていないことも多くて、こういう質疑を通して洗練されていくことが多いんですよね。なので今回の諸々は凄く勉強になりました。ある意味でぼくがリメイクを手がける一番の理由がその辺にあったりします。色々なデザイナーの方の哲学に触れることで、より自分の知識を体系化する機会を増やそうというワケです。
 今回のリメイクでは原版ではビジュアル要素のなかったイベント札、事件札をどうビジュアルとして解釈するのかという点も頭を悩ませた部分でもあり、そこは試行錯誤が続いた部分ではありましたが、なんとか違和感のない形、原版もこうだったよね! と錯覚するような自然さに落とせたかなと思います。

 あとまあ、今回は製作期間を1年と長く取りました。まあ、それは鍋野さんの作業量を鑑みて、という意味合いが大きかったんですけども、蓋を開けてみれば一番最後に残ったのがぼくと有我さんの仕事というヒドい有様と言いますか、春ゲムマに間に合うのかどうか、かなり危険なスケジュールで進行していました。
 これは一番はスケジュールを統括しているぼくの責任でして、有我さんにはご迷惑をおかけしたなと反省しています。今までやってきた企画の製作期間はせいぜい半年の規模だったので、集中力が続かないというか、1年規模の企画にはそれに合わせた進め方があるなあと痛感したところです。まあ、これだけ面倒な案件はしばらくはないんじゃないかなあと思っていますが(笑)
 ちなみにゲムマのサークルカットが一面「アンダーウォーターシティーズ」なのは、そういうことです(笑) このタイミングでは「時代劇3600秒」ヤバいかも、という感じでした。ちなみに直前になると今度は「アンダーウォーターシティーズ」が間に合うかヤバいぞ、という状況になってたんですが(笑) 数日前に無事着荷も確認して、あとは輸送さえ問題なければ当日販売できる見込みです。
 そういう意味ではゲムマの半年に1回スパンはなかなかよいというか、集中力を切らさずにダレない周期で進めていけるのがこれくらいなのかなあという気もしてきました。製作期間が伸びると自然と製作を阻害する要因も増えますしね(結婚とか出産とかそういうおめでたい方向も込みの話で)。

 あとはまあ、箱詰めが大変だったなとか大変な話は枚挙に暇がないんですけども、作ってて充実感はあったように思います。みんなが喜んでくれるだろうなとワクワクしながら作って、発表後も予想外の大きな反響を頂けたのでそれを糧にしてまた頑張って。
 当日、欲しかったけど買えなかったというのは申し訳ないので、なるべく頑張ったつもりです。さすがに今回は在庫を家に取りに帰るのは嫌なのでたくさん持ち込みました。おかげでブースが狭くなりそうです。おかしいな、半年前は企業ブースはバックヤード広いなーってキャッキャしてたハズなんだけどな……

 ともあれ、C-06蒼猫の巣出張所ブースにて販売です。どうぞよろしくお願いします。
ラベル:時代劇3600秒
posted by 円卓P at 18:29| Comment(0) | 時代劇3600秒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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