2016年11月25日

「そんな顔してどうしたの?」制作記録 作りたいのは日本語版です


 遠くを見つめるオナガオコジョさん。ちなみに写真はデザイナーのPennieさんが撮影したそうです。


 記録を調べてみると「そんな顔してどうしたの?」のデザイナー、Penelope Talyorさんに初めて連絡をとったのは7月8日のことだったみたいです。翌日に早速返信があって、締めが「With my best,Pennie」で括られていたのでさすが海外の人はフランクだなあと妙な納得を覚えつつ、これはPennieさんとお呼びした方がいいのかなあ、と考えて、以後そのようにお呼びしています。

 さて、どうしてぼくが「そんな顔してどうしたの?」、原題「Why the long face ?」の日本語版を作ろうと思ったかと言えば、一番は自分が遊びたかったからです。キックスターターから始まったこのゲーム、その名前を知った頃には出資はとっくに終了していて既に入手が難しいゲームになっていました。

 ちなみにキックした人は日本では2人しかいないんじゃないか……というのがとある筋から得た情報です。ぼくは後から知ったんですが、それを聞いて思わずのけぞりました。そんなゲームの日本語版を作ろうとしてたのか、ぼくは…… 事前にそれを知ってたらもうちょい冷静になってたかもしれません。

 なんというか、傍からは隕石が頭にぶつかったか雷でも落ちてきたか、物凄く唐突に海外ゲームの日本語版を作ったなー、というイメージで見られてるのではないかと思うのですが、ぼくの視点では色々な伏線があった上での一つの結実といいますか、ようやく形にできた一つ目の成果と言えなくもなかったりします。
 「自分が遊びたいゲームが手に入らない!」「欲しい!」「作ろう!」という一連の思考経路は同じく秋ゲムマに出展する「娘は誰にもやらん」と同じルートを辿っているのですが、去年の夏頃、このルーチンで一つ日本語版を企画しようと思ったゲームが実はあったんです。まあ、これは結果的には頓挫してしまったんですが。
 とは言え、それは不幸な頓挫というワケではなく、今は某社から日本語版が出ているしっかりしたタイトルでして、ぼくの最終目的である「遊びたいゲームを手に入れる!」という部分はそれで達成されたのです。つまりこれは戦略的大勝利ではあるんですが、それでも一度「よっしゃ、こうなったらワイだけが知っとるオモシロゲームの日本語版を出したるで!」と固めた決意が盛大にスカって心中にモヤモヤが残ってはいました。

 海外のデザイナーに直接連絡を取って出版にまで漕ぎ着けるというある種の冒険は、つまるところ、心に期するものがなければなかなかなし得ないのではないでしょうか。まあ、ぼくはボードゲームを生業にしている人間じゃなくてただのゲーム好きですし。
 とは言え、一度失敗してしまえば、心理的なハードルは驚くほど低くなるもので「ダメで元々」の精神で特攻してみればいいじゃん、という気持ちにはなりました。日本には「言うだけならタダ」という素晴らしい言葉もあります。

 ということで、「そんな顔してどうしたの?」も最初のコンタクトで「日本の某社と話が進んでる」という返事もありえるとは思っていて、まあ、それならその話が聞けただけでもオトクだよね、という前のめりな姿勢で挑んだのですが、(仕事で英文ビジネスメールを書いた経験がある友人に頼んでようやく作成した)メッセージへの最初の返答は「私の『Why the long face ?』にメッセージをありがとう。私は日本のファンにとても大きな興味を持っています」といった内容だったのです。うおおおお、これはいい反応だぞ!
 「そもそも返信自体がない」「日本語版の出版自体に興味がない」「他人に弄られるのは嫌」「そもそもこれは学術振興であり商売ではない」「めんどくさい」「というか誰やねん」等々…… 最初のコンタクトで話が終わるパターンはそれこそいくらでも想定できたので、まずは「繋がったこと」。これがとても大きく感じられたのです。

 いや、だって、自分の身に置き換えて考えてみるに、海外の名も知れないインディーメーカーから「自国語版の出版を検討しているんですけどー」なんてメールが来たら絶対に「これはなんかの詐欺じゃないか!?」と疑うと思うのです。ちなみに「Why the long face ?」がキックで製作した部数は250部くらいなので、ぼくが作ったゲームよりも出回っている数としては少ない…… まあ、ぼくのゲームは基本的に国内で閉じているので部数から直接比較することはできないんですが、それにしたって突飛な申し出だったんじゃなかろうかと……
 果たしてPennieさんは一体ぼくの何を信じてくれたのか。一応自分でゲームを作り続けてそれなりに見せられるものがあったのがよかったのだろうか。そのうち一つが姫騎士とオークが追いかけっこするゲームであることをPennieさんはわかっているのだろうか。
 この辺は未だに謎です。掘り起こすのもちょっと躊躇われるのでその辺は敢えて聞いてません。

 ともあれ、前進はしました。いやー、なんでもやってみるもんです。何事も最初の一歩がなければ大業は完遂しないのです。でかしたぼく! よくやったぼく! これで日本語版が作れるぞ!
 興奮の中、ぼくはメールを読み進めました。

 「Are there any natural history museums in Japan that might want to have a version of the game made with them? I have received funding to travel to make a second edition of this game with an international museum.」

 ……パードゥン? えっと、どういう意味?
 ちなみにぼくの英語能力は中学生レベルで、高校の頃覚えた英語の多くはマジックザギャザリング(第4版)由来だったという程度に英語に親しみのない生活を送ってきたもので、お世辞にも英語のコミュニケーション能力は高くはありません。Google翻訳がなかったらまともに英文も書けないレベルです。というかGoogle翻訳が訳してくれた英文が正しいのかどうかすら判断に困るレベル。
 つまり、何を言いたいかというと上記の文章でPennieさんが何を言ってるのか、パッと見には理解できなかったわけです。よし、困った時はGoogle翻訳さんの出番だ! ポチッとな。

 「日本の自然史博物館には、ゲームのバージョンを作りたいと思っていますか? 私は国際的な博物館でこのゲームの第2版を作るために旅行する資金を受けました。」

 ふむふむ、なるほどね…… って、あれ、これ、日本語版じゃなくて日本版、日本の博物館のバージョンを作りたいって意味に受け取られてるううううう!?

 いやいや、違うんだって! ぼくは英語版の日本語版が作りたいの!(わかりづらい) つまりL.C.ベイツミュージアムの動物がいいの! 日本の博物館なんてそんなもん直接展示見に行けばいいでしょうがよ!
 アイ・ウォント・トゥ・メイク・ザ・ジャパニーズ・エディションなんですよ! なるほど、英語にしてみると日本語版と日本版の違いがわからん! 難しいな、英語!
 というか英語圏に人にとっちゃ英語が当たり前の生活だろうから翻訳したバージョンの出版なんて発想がないのかもしんない! 「日本人も英語習うでしょ? 問題ないじゃん、遊べるじゃん」とか思ってるのかもしんない! というか、そもそも日本の有名な自然史博物館ってどこだよ!

 ……いやいやいやいや、困ったぞこれは。ぼくはまず日本語版とは何か、どういう価値があるのかをPennieさんに説明しないといけないのか。しかも英語で。
 というか薄々そうかもしれないと思っていたけどアレだ、多分Pennieさんはいわゆるゲーマーではない……! アメリカのゲーマーはドイツ語版とかめちゃくちゃ拒否るって話を聞いたことがあるので母国語版出したいの意図も即座にわかるはず……!
 これはつまりどういうことかっていうと、おそらくはゲーマー同士なら言わんでも通じる文化が通じない可能性があるってことだ。それをぼくはPennieさんに説明しないといけないのか。しかも英語で。いやいやいやいや!

 最初の一歩は踏み出したものの…… 踏み出したものの、待っていたハードルの高さは想像以上で、のっけからこの文化摩擦を果たしてどうやって乗り越えていけばいいのか、ぼくは途方に暮れたワケで……
 だって素人だよぼく。そして相手も違う方向で素人だよこれきっと。素人素人アンド素人。
 果たしてこの転がりだした案件はどこに向かうのか。そしてぼくはどうやってこの困難を乗り越えていくのか。
 その時のぼくはまさしく「そんな顔してどうしたの?」と尋ねられるような表情で固まっていたのです……

 続きます。
posted by 円卓P at 21:43| Comment(0) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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