
こちらは旧版(2012年第2版)のパッケージイラストです。当時はキャラメル箱でしたが、今回の第3版は組箱になります。
「娘は誰にもやらん」は2012年の春にメサイア・ワークスさんが初版をお手製で製作し、これが好評を博したことからその秋のゲムマで第2版が製作されました。となれば第3版の製作はメサイア・ワークスさんが直接するのが普通の流れです。ただまあ、実際はそれから4年の空白が過ぎて、この秋に数寄ゲームズ名義で第3版が製作されることになりました。「こりゃ一体どういうことじゃろな?」と首を傾げる方も少なくないのではないかと思います。
まあ、言ってしまえばその辺は「諸処の事情による」の一言で片付いてしまうアレではあるんですが、今年の7月、最初にぼくがメサイアさんに「再販はしないんですか?」とお聞きした際に最初に返ってきた言葉は「在庫リスクの問題が大きい」ということでした。
これは実際にゲームを作ってみたことがある方なら頷いて貰えるところだとは思うんですが、少なくないお金を出して大量のゲームが自宅に鎮座まします光景はあんまり愉快ではないワケで、挑戦には相応の勇気、時間、そしてお金が必要だったりします。
そんじゃまあ、そのリスクをぼくが引き受けたらどうでしょう? とお聞きしたら、「再販を希望される方はこれまでにもいたけれど、そういう申し出は初めてです」と言われました。そりゃそうだよなあ。
ぼくとしてはこのゲームを遊ぶための最も建設的な提案がこれだったと言いますか、在庫リスクが解決することで再販が現実的になるのであれば、それは手としてアリなんじゃないの、という考えから申し出てみた次第です。
ただ、実際にその辺がクリアになったとしても、それで全部の問題が解決するワケではありません。在庫リスクなんてのはあくまで諸問題のうちの一つでしかないんですよね。
その中で最も大きい課題はゲーム製作のスタンスでしょう。要するに「自分はなぜゲームを作るのか?」という理由づけです。多くの人はゲームを作る行為自体に様々な醍醐味を見出しているはずです。「自分が作ったゲームを多くの人に遊んで欲しい」という人もいれば「たくさんゲームを売って儲けたい」という人もいるでしょう。「ゲームで取り上げたテーマをみんなに知ってほしい」という人もいるでしょうし、「仲間と一つのものを作り上げるのが楽しい」という人もいるでしょう。そこには様々なスタンスが存在します。
なので、横からポッと出てきた人間が「リスクは全部こっち持つから再販やらせてよ」なんて言ったところで、それがデザイナーの方の思想信条と合致しないのであれば企画としては成り立ちません。それはまあ、ぼくとしても重々理解していたので、断られて当たり前、ダメで元々で聞いてみた次第です。……いやあ、マジメな話、よく承諾して貰えましたねw
特にメサイアさんはアマチュアリズムを大事にする気風の方で、「個人的には300円で販売したいんです」なんてことも仰っていました。今のゲムマではそういった手作りのゲームは殆ど見受けられないようになりましたが、メサイアさんが参加してた2012年頃はそれほど珍しいものではなかったんですよね。まだゲムマが浅草で開催されていた頃です。
なので、そこから「販売価格はどうするの?」という話題に及ぶのは自然な成り行きではありました。回答としては、仕様次第と言いますか、従前のイラストを使うのであれば抑えられるでしょうし、新規に起こすのであれば膨らむでしょうと、まあ、面白みのない返答をしてw イラストに関してはこれまではメサイアさんの奥さんが描いていたのですが、メサイアさんご自身もそれを気に入っているそうなので、今回もそうするのかなーという雰囲気がその時はありました。
結局そこはどういう形で再販をするか、当時のままで出すのか、もう少し手を加えるのか、その辺も含めてメサイアさんの希望はどうでしょうか、というところから固めて行かなければなりませんでした。まあ、そうしたゴール地点の確認がまずは最初に来るワケです。
というところで、メサイアさんには1回この件を持ち帰って貰いました。再販をするのかどうか。新規作業が発生するのかどうか。有り体に言えば企画の規模をどの辺に設定するのか、その上でGoサインを出せるのかどうか、ということです。
返答があったのは3日後…… というか、ぼくがDMを見落としていて、実はもっと早く結論が出てたみたいなんですが。
どうもメサイアさんが奥さんにかけあったところ、イラストを一新してもいいんじゃないの、ということになったらしく。第3版ではイラストを改めましょうということになりました。そうなると誰に頼むのかという話に当然進むので、「えー、じゃあ鍋野さんに聞いてみます」という風にぼくはお答えしました。鍋野さんの作風はこのゲームの空気感にマッチしてますし、これまで何度かイラストをお願いしていることもあってやりやすい間柄ということもありました。鍋野さんからも快諾を頂けて、ここでようやく「娘は誰にもやらん」の再販企画が立ち上がったということになります。
でまあ、イラストを一新しつつも価格はメサイアさんの希望から1000円で行きたい、と大枠の部分が固まって、それじゃカードがこうでこうでこうで…… ああ、これは手作業がめっちゃ増えるヤツだな…… と目算を立てたりもして。
実際のところ、この企画の座組ではゲームデザインがメサイアさん、イラスト・グラフィックデザインが鍋野たまさんで、制作に関してはこのお二方がいれば成立します。さらにメサイア・ワークス側と言いますか、メサイアさんの奥さん、海月ひとでさんが新規イラストに関してはチェックを入れ、鍋野企画、鍋野ぺすさんがゲーム全体に関するアドバイザー的な役割を果たしていたので…… あれ、ぼくやることないんじゃないの? という状況もしばし。初期の段階でのぼくの仕事はここまではお金出せるけど、ここからは勘弁して、みたいな財布の紐を調節する役割でした。
まあ、ぼくの役割は製造・広報・流通と言った裏方の仕事がメインで、これは入稿データが完成して印刷が始まってからが本番という立ち位置になります。なので今はこうしてブログを書いたり箱詰めしたりしてるんですが、こういう体制下でのゲーム作りというのは未経験だったこともあり、作業中は立ち位置を掴むのに四苦八苦していたような印象があります。
ともあれ、こんな感じでこの企画は動き出したのでした。