2016年04月19日

夏休み大作戦製作記録 はなまるチップ誕生の裏にあの人の影


 競りボードとはなまるチップ、宿題チェックのプロトタイプ。EXCEL製。テストプレイ前なので数値の設定がめちゃくちゃ雑……

 さて、季節は2015年秋。ここまでテストプレイはほぼフォーセールのコンポーネントそのものを使っていました。それは得点であるお金カードにはホントに得点だけしか情報がない、という意味でもあります。
 夏休み大作戦の得点である日記カードには得点と色という2つの情報が乗っていますが、まだ夏休みというテーマすら乗っていないこの頃は「獲得したカードがそのまま得点になるだけ」という物凄くシンプルな得点体系だったのです。はなまるチップもありませんでした。
 で、さすがにこれだけシンプルだとプレイングにも創意工夫の余地が乏しい。強いカードを高得点のカードを獲得するためだけに使う。それが正解になってしまう。それはマズい。ということで、得点要素をプラスしようという模索はしていました。

 一つ方向性を示唆してくれたのはテストプレイに協力して貰った長谷川登鯉さんの「何か目標になる要素があった方がいいんじゃない?」という言葉です。だったと思います。長谷川さん、その節はありがとうございました。
 多分、長谷川さんの言う目標というのは、「ゲーム終了時に赤のカードを3枚持っていれば6点」みたいなのとか、あるいはキングダムビルダー的な得点システムで、とにかくプレイの方向性を定める「こっちに特化すると嬉しいことがあるよ」みたいなのを用意するといいんじゃないか、という話なんだとぼくは解釈しました。

 で、時期的に冬。冬といえばクリスマス。クリスマスと言えばアドベントカレンダーです。去年のアドベントカレンダー記事としてぼくはマジョリティについて書いたんですが、まさにこの頃マジョリティ要素をゲームに持ち込むことで、3色ないし2色にカードを色分けして獲得枚数のマジョリティでゲーム終了時に追加のボーナス得点が入るような仕組みを検討していたのです。
 で、マジョリティの効用については以前の記事で書いた通りなのでそこは省くんですが、ぼく的に好ましいと感じていたのはマジョリティ要素はトップ叩きに使えるという部分でした。つまり逆転要素を1つゲームに加えられるわけです。
 これは悪くない考えのように思えました。獲得したカード枚数のマジョリティ勝負があれば低い得点のカードを多数集める戦術と高得点のカードを少数精鋭で集める戦術と2つの方向性も生まれます。ということで、着眼点としては悪くないようにも思えたんですが、同時に感じたのは「無難すぎるなーこれ……」ということでした。どこにでもあるやつだなーと。

 で、結果的には「はなまるチップ」という早取りのセットコレクションと「宿題チェック」というこれもセットコレクション要素を加えました。得点のもう一つの柱として2つのセットコレクション要素を付け加えたのですが、なぜマジョリティ要素ではなくセットコレクション要素を採用したかと言えば、こちらの方がより小さな目標として駆動させやすいという点に利点を感じたのです。
 マジョリティも決算のタイミングを頻繁に設けることで小さな目標として駆動させることはできます。メディチなんかはそういうゲームですよね。
 ただ、このゲームの後半部分は長くても7ラウンドで終わるゲームです。そこに1ラウンドないし2ラウンドごとに決算が入るのはどうにも落ち着きがないようにも感じられますし、めくりの影響が大きすぎるのではないかとも感じられました。
 まあ、そこが面白いゲームも世の中にはあります。つまりメディチなんですけども。
 話は逸れるんですが、当時メディチを意識していた部分は結構ありました。が、その話は前半の競り部分の話で触れた方がいいのでまた別に機会を設けたいと思います。


 はなまるチップ置き場と宿題チェックの得失点表でもある教室ボード

 で、セットコレクション要素に話を戻すと。これ自体もマジョリティ要素と同様に低得点多数のカードを集める戦術と、高得点少数のカードを集める戦術の両方が成り立つ仕組みです。
 さらに今回はインタラクションを強めるために早取りの要素を押し出そうと考えました。例えば得点となるチップを少数しか用意しない。効率のいい得点チップを取るためには無理をしてでも早くセットを揃えなければならず、そこに競争性が生まれるという目論見です。
 この「無理をしてでも」というのがちょっと大事なところで、これまでは強力なカードを持っている人は高得点のカードが出るまでそれを大事に抱えていればよかったんですね。文字通りの切り札というやつで、持ってるだけでも他者に対する牽制効果が強いので、それで切り札が吐き出されるまでは積極的な手を打てないという息苦しさを感じる場面が多いように感じていました。
 なので、強いカードを使わざるを得ない場面を増やさなければならんじゃろな、とは思っていました。それがはなまるチップの早取り要素だったり、1ラウンドで2枚の日記カードを獲得できる「早起きは三文の得ルール」でもあります。強いカードの使いドコロを増やすことで相対的に弱いカードの使いドコロも増えるだろうという考えです。これはぼくが競りゲーにとって最も重要だと考える「相場を弛まず変化させる」ことにも繋がります。

 はなまるチップの獲得条件は最大でも5ページで、これは最速で2ラウンド目に達成できるように設定したものです。最初は「ゲームのクライマックスをそんな最初に持ってきていいものか?」とも思っていて、獲得に9ページ必要なはなまるチップなんてのも設定していたのですが、これだと手番順を争うタイミングが終盤にしか訪れないため、イマイチ競争が白熱しないように感じられました。
 そこで2ラウンド目(と言ってもめくりやら妨害やらで最速で達成するのはなかなか難しいんですが)から手番順の争いが生まれる5ページを最大ページ数として序盤の山場を作りました。
 後半は後半で、はなまるチップ自体が枯れる前に少しでもいいものを取る競争、ペナルティを回避するための宿題を片付ける競争といった第二の山場を用意することで、一つの障害を突破して一息ついたところで次の障害が見えてくるような起伏のあるコースを設計できたように思います。
 特に宿題チェックは「達成できないとはなまるチップを失う」ペナルティが味わいのある働きをしていて、高得点のチップを取るためには多くの手数が必要で、しかしチップを獲得した頃にはプレイヤーは宿題を片付けるための手数が十分残ってない。宿題を先に片付ければジレンマは解決するけど、今度はチップ獲得競争に出遅れるジレンマが生まれる。さてどうするか? みたいなぐっちゃぐっちゃした構造になっています。こういうのぼくが好きなヤツです。

 ちなみに「宿題チェックを達成できないとはなまるチップを失う」このペナルティは、3月に入ってからふと思いついて入れた仕様です。このゲームは入稿〆切間近のふとした思いつきが実は重要な歯車を担っていることが多くて、どうもぼくは〆切が迫らないと頭が働かない人間らしいです。こういうの、意識的に作れるようにならないといけないんですけどね……
 あと、セットコレクション要素としてはエリジウムやアウグストゥスのそれを参考にしました。エリジウムはとかく特殊能力に目の行きがちなテキストゲーにも見えるのですが、実のところ手番順の探りあいが熱いゲームです。ぼくは大好きです。アウグストゥスは……そんなに好きではないんですがw でも、あのボーナスタイルを巡る駆け引きは工夫があっていいです。

 さて、宿題チェックに話を移すのですが、これはテーマを夏休みと定めた時から絶対盛り込まなきゃいけない要素だよなと思っていました。ぼく自身、宿題は夏休みの最後の3日間で片付けるタチだったので(だから入稿〆切間際にならないと頭が働かない大人になってしまったんですが……)あの「もっと早く宿題やっとけばよかったー!」という後悔の気持ちを思い出させる要素は欲しいよね、という方向性は割とすんなり固まりました。
 時間をかけたのは得点の配分で、宿題を勝利に必須の要素としてしまうとこれはちょっと窮屈だろうなと。ストーンエイジの食糧踏み倒し戦術じゃないですけど、宿題をやらなくても楽しい夏休みが過ごせたならそれは(教育的にはともかく)ゲーム的には評価していいじゃないかとは思いますし、逆に夏休みをずっと勉強漬けで過ごすのもそれはそれでスゴいと評価するのが面白いんじゃないか、ということで、それらが全て成り立つ得点バランスはどんなものかで結構悩みました。
 結果的に宿題回りは最初は得点効率がいいけど、基準ラインに近づくに従って得点効率が落ちていき、基準ラインを越えるとまた得点効率が上がっていくという、正の二次曲線を描く形になっています。宿題特化戦術はハマればかなり強いです。

 で、こういう宿題回りの得点評価について頭を悩ませていた時に思ったんですが、これはスゴい大袈裟な言い方をするとゲームを通して一つの価値観を提示するということなんですよね。夏休みには勉強をする方がエラいのか。それとも遊びまわる方がエラいのか。果たしてどちらがエラいのか。ゲームとは勝ち負けという形でそれを評価するものです。
 うーん、わかりません。わからないので「このゲームは何をしたら勝ちなの?」という問いに対して「充実した夏休みを過ごしたら勝ちです」という曖昧な答えになってしまうんですよね。難しいもんです。

 ということで夏休みの話が出てきたので、次回はテーマの話をしようと思います。
posted by 円卓P at 23:01| Comment(0) | 夏休み大作戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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