2014年12月22日

トスのインタラクション

 この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2014 の22日目の記事として書かれました。

 どうも、数寄ゲームズの円卓Pです。なんかボードゲームの動画とかポッドキャストとか色々やってます。秋ゲムマでは姫騎士逃ゲテ〜というゲームを出展しました。
 来年も大阪ゲムマでも鍋野企画さんと一緒に出展予定ですので、お見知り置き頂ければと思います。

 という感じで、今日はドイツゲーム特有? ドイツゲームっぽいインタラクションの話をちょっとしようかなと。

 さて、ぼくは自前でボードゲーム数寄語りというポッドキャストをやっているんだけど、ゲストとして出演して頂いたゲーム作者の方に「ドイツゲームは遊ばれますか?」と聞くと、「ほとんど遊ばない」という答えが返ってくることもあって驚かされたりする。
 と言っても具体的な件数を挙げると2例だけなのだけどw ただ、ぼくの中では同人とは言え自前でゲームまで作ってしまおうという人はよっぽどドイツゲームにどっぷりなのだろうという思い込みがあったので、この返答は衝撃的ではあったのだ。

 今の同人ゲーム界隈はその出自がドイツゲームだけに限らず、TCGやTRPG、コンシューマ、ゲームブック、果てにはマンガ、小説、イラスト、演劇、ゲームですらないありとあらゆるエンターティメントのバックグラウンドを持つ人々が集まっている印象がある。まあ、それは熱に浮かされたゴールドラッシュ的な活況でもあるんだけど、同時にとても密度の高い空間でもある。当のぼくも鉱夫の1人と言って差し支えない。
 なんというか、映画を志した若者が夢破れてアニメやゲーム製作に流れて、そこから多様な文化が育まれていったように、爛熟の揺り籠となる文化の交雑を今のこの界隈からは感じたりする。任天堂の宮本さんだって子供の頃はマンガ家を夢見ていたのだ。
 そういう意味で、この辺はこれから5年後10年後が楽しみな界隈だ。飽きっぽいぼくがこの界隈に身を置いているのも、なんとなくこの金鉱に夢があるように感じられるからではないかな。という表現は、ちょっと露骨過ぎるかもしれないけどw でも、夢を見られる空間は居心地がいい。

 で、作る側の出自がそれぞれだからゲームの文法もそれぞれで、却ってドイツゲーム文脈のゲームなんて(今では?)少数派なくらいなんだけど、ぼく自身の好みはドイツゲーム寄りなので現状の分布だとドイツゲーム文脈のゲームを探すには若干苦労する。ドイツゲームでなければイカンと堅苦しいことを言うつもりはないし、どんな文脈のゲームが流行ってもいいんだけども、ドイツゲーム文脈のゲームは埋もれてしまっているように感じることは多い。作る側となると指を折って数えるほどだし、その中で面白いゲームを作れる人となると希少性さえ生まれるw
 多分、現状では他文脈の出自のゲームの方が平均的に「こなれている」。ただ、それはドイツゲームのポテンシャル自体が低い、ということではなく、単純に馴染みが薄い、人口が少ない、研究が浅い、ということなんだと思う。

 とは言え、層が薄いのは翻って言えばチャンスでもあって。今年はニューゲームズオーダーがモダンアートや交易王と言ったクニツィアの諸作をリメイクした年ではあったのだけど、それらは新しいプレイヤーにも愛好されている……印象がある。この辺、具体的な数字を示せないので断言はできないのだけど。
 クラシカルなドイツゲームの作風はむしろ新鮮なのだ。ぼく自身もそんなドイツゲームの風に引っ張られてきたクチなので、そういうゲームが増えることを願ってやまない。

 なので、遊ぶ側としてはドイツゲームをぜひぜひ作って欲しい。だけども、作る側としてはドイツゲームの美しさを真似るのは結構難しい。
 感覚としてはわかっていても、実現には苦慮する。なので、今日はその仕掛けの一つを紐解いてみたい、というのが本題だ。
 これから書くことは昔からドイツゲームを愛好している人にとっては物凄く当たり前のことだと思うけども、ぼくはこれに気づいて、そーだったんだ、と思わず膝を打ったのだ。
 なにせモダンユーロの流行はそこから更に一歩も二歩も進んでいる。ちょっと昔の流行はなかなか顧みられないものだ。
 なので気づきが遅れたんだ、と言ってもこれは許して貰えるのではないか。と、言い訳はこの程度にしておいて。

 物凄く極端なことを言ってしまえば、それはインタラクションのあり方なんだけど、クラシカルなドイツゲームを倣うのに一番手っ取り早い方法は「トスすること」だと思う。
 この「トス」という概念は他のゲーム文脈にはあまり見られらないものではないか。バレーボールでいうところのトスを上げて他のプレイヤーにアタックして貰う、そんなインタラクションだ。

 TCGで意図せず相手のコンボを成立させてしまう「友情コンボ」という用語があるけども、それに近い。
 ただ、基本的に2人用対戦ゲームであるTCGではトスなんかあげたらゲームには負けてしまう。当たり前だ。
 でも、マルチゲームなら、自分が相手にトスを上げるのと同様に、対戦相手Aから、Bから、Cからトスを貰う機会がある。トータルで誰よりもトスを貰っていればそのゲームに勝てる。
 交互にトスを上げながら時にアタックする。それがぼくの考えるクラシカルなドイツゲームの姿だ。

 で、トスは「相手を勝たせる」インタラクションだから、前提がもう既に不条理だ。だからこそ、その存在だけで猛烈なジレンマが生まれる。その例をちょっと挙げよう。

 コロレットでスタートプレイヤーが虹色のカードを引く。「あっ」と誰もが息を呑むこの光景はトスのインタラクションのわかりやすい一例だ。
 このリスクがあるからコロレットはカードを引くのに躊躇う。しかし本質的には「トスが上がってしまう」ルールになっているから、なるべく相手の受けづらいトスを上げる、相手をなるべく儲けさせない動きになる。

 ゲシェンクは失点カードを取らされるゲームだ。ただ、得点チップを1枚場に出すことで失点カードを次のプレイヤーに回すことができる。
 次のプレイヤーも失点カード(と溜まった得点チップ)を取るか、得点チップを出すか、その選択に悩まされる。ただ、状況としては前のプレイヤーよりも「分がいい」し、得点チップを出して失点カードを回せば、次のプレイヤーは「もっと分がいい」状況になる。
 これは最悪の状況を先延ばししながら折り合いをつけるゲームなのだけど、これで題名がゲシェンク(贈り物)なんだから、まったく皮肉が効いているw

 こんな感じでトスのインタラクションはとても迂遠でいやらしく、ジレンマを生む活力として大いに機能する。ただ、トスにも一つ弱点がある。
 それはわかりにくい、ということだ。コテコテの京都人の悪口くらいわかりにくい。
 直接攻撃の方がわかりやすし、見た目にもハデだ。何より人は得よりも損に敏感なのだ。なので基本的に人から貰ったトスはありがたみが薄い。
 ケイラスで、自分が建てた建物の使用料1点2点よりもその建物自体を使いたいという感覚も近い。実際には結構なトスを貰っているんだけど、先に使われて損した感覚の方が強かったりする。
 だからゲシェンクはトスと損がセットになっているところが白眉だったりする……というのはちょっと話が逸れるんだけど。

 で、面白さとは密度だ。この不明瞭なトスというインタラクションの解像度を上げるには、一手の重みを強めるのが有効だ。
 コロレットは列に並べるカードは3枚までという制限がある。1枚のカードを置くだけで3分の1の可能性を潰してしまうのだから、その一手は重い。
 ゲシェンクの手番1回は軽い。ただ、手番はチップを1枚出すだけという強烈な手軽さがある。-35点のカードが見る間にチップで埋まって判断の問われる重い一手のタイミングがすぐに到来する。これも密度を高める仕掛けだ。

 あと、インタラクションのわかりにくさをごまかす手法としてはキャッチーなテーマを被せる手もあったりする。そういう小細工の方がぼくは得意と言えば得意なんだけど、ちょっとゲームそのものから離れすぎるのでここでは触れない。

 とまあ、そんな感じで。
 直接相手のリソースを削る・奪うインタラクションと比べるとトスのインタラクションは眠気を催すほど緩慢なのだけど、この回りくどさこそがドイツゲームの味を構成する調味料の一つではある。
 よく使われる意味の分からない、でもなんとなくわかるニュアンスの言葉、「切れ味」という用語があるけども、これはゲームに「切れ味」を備えるための一つのアプローチではないかと思う。

 例えばモノポリーなんかはぼくからすると直接的すぎるインタラクションのゲームではあるけども、あのインタラクションはとてもわかりやすい。そういう強みがある。で、ドイツゲームはその対極に位置するものだ。
 わかりにくい道を敢えて行こうとするのだから、この道は茨の道だ。日頃からドイツゲームを堪能する諸氏ならお分かり頂ける通り、面白いドイツゲームを作るのはとても難しいw
 そう脅かすと、やっぱりドイツゲームは避けよう、と思われてしまうのかもしれないけどw まあ、チャレンジしがいのある分野だとは思う。

 秋ゲムマの中では海底探検がドイツゲームの匂いが強いゲームだった。ああいうのは好きだなあ。


 そんなところで。
 だったら自分で作れば、という声には、善処します、という誠意ある態度でお応えしようかとw
 東京ドイツゲーム賞の第2回目とかないんですかね。そしたらそれから考えようw
posted by 円卓P at 20:34| Comment(0) | ゲームデザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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