2025年02月25日

ゲーム紹介:アクアティカ:珊瑚礁



数寄ゲームズは、「アクアティカ:珊瑚礁」日本語版を発売します。プレイ人数1-5人(5人プレイには「氷海」拡張が必要)、対象年齢14歳以上、プレイ時間60分で、小売希望価格は税込5500円となります。

3月3日より数寄ゲームズ通販サイトにて先行予約を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。


「アクアティカ:珊瑚礁」は、「アクアティカ:氷海」に続く「アクアティカ」の第二拡張となります。部族モジュールの導入でゲーム構成をアグレッシブに変化させた「氷海」に対して、「珊瑚礁」では新しい得点要素となる「珊瑚」と、個人ボードの強化要素となる「岩礁」の2つによって新たなプレイフィールを創出しています。


「アクアティカ」本体及び「アクアティカ:氷海」については以前にも紹介記事を書いているので過去作についてはそちらをご覧頂くとして、この記事では「アクアティカ:珊瑚礁」の新要素を主にご紹介していきましょう。

アクアティカ
http://sukigames.seesaa.net/article/471410197.html

アクアティカ:氷海
http://sukigames.seesaa.net/article/479586750.html


◆新たな強化要素「岩礁トークン」とは?



「岩礁トークン」は、深海シーフォークとともにボード上に並べられ、対応する深海シーフォークを雇用することでオマケに獲得できるトークンです。オマケ……とは言っても実はこっちが本体かも? と言えるほどのポテンシャルも秘めています。

獲得した岩礁トークンは個人ボードのスロットの上部に配置します。以降、対応するスロットは差し込まれたロケーションカードに様々な影響を及ぼす特殊能力を持つようになります。例えば、「このスロットに差し込まれたロケーションカードは即座に完全上昇させることができる」といったようなものです。

なので、深海シーフォークの雇用アクションは、単純に手札を強化するだけでなく、どの岩礁を獲得すべきかの考慮も必要になりました。岩礁トークン自体はモノによって強かったり弱かったりとメリハリのある設計となっているため、岩礁トークンの獲得を目的として深海シーフォークの雇用やコインの支払いを検討するのも全然アリなバランスになっています。


基本ゲームでは手札の強化はそこまで重要ではなく、手札の強化に手番を割くよりもロケーションの獲得に注力した方が展開を優位に進められるゲームではありました。手札プレイをメインエンジンに据えたゲームにも関わらず、手札を強化する行動が実はそこまで強くないというちょっと罠めいた設計だったりもしたのです。

その辺りは「氷海」でゲーム自体の長期化を図ったことで大分風向きが変わってきたんですけども、それをさらにアグレッシブに推し進めようとする動きが「珊瑚礁」での岩礁トークンの役割とも言えます。岩礁トークンを効率的に獲得できる新しい深海シーフォークなんかもいて、この新要素を積極的に活用していくのも一つの手と言えるでしょう。雇用アクションを持つシーフォークの価値も俄然高まりました。


今回追加された新シーフォーク「海の歌姫」は強力な雇用能力を持つカード。


裏を返せば「アクアティカ」に習熟していない人には岩礁トークンの強弱の見極めが難しく、「わからん殺し」にあってしまう可能性がないとは言えません。そういう意味でも「珊瑚礁」は段階を追ってから導入すべき、より玄人向けの拡張セットと言えるのではないかと思います。


◆得点化のルート構築がより重要になる「珊瑚」



「珊瑚」は、岩礁トークンと並ぶ「珊瑚礁」の主要な新要素の1つで、1個あたり1点相当の価値があります。岩礁トークンの多くは珊瑚とも関係が深く、岩礁トークン特有の条件を満たすことでロケーションカード上に珊瑚駒を配置することができます。

ただ、ロケーションカード上に珊瑚を配置するだけでは得点にはならず、ロケーションを得点化することでようやく得点化できます。裏を返せばきちんと得点化まで繋げないとせっかく配置した珊瑚が無価値に終わってしまうため、アクアティカ特有の得点化までの経路をより強調する作りとなっています。よりハイリスクハイリターンに。


珊瑚自体の得点は1個1点と地味な存在なのですが、珊瑚に関係した様々な要素を組み合わせることで強力な得点産出エンジンを組み上げることもできます。盤面によってロケーションを集めた方が強いのか、珊瑚生産エンジンを組んだ方が強いのかが変わってくるため、ゲームごとの変化がこれまでよりも大きくなりそうです。


「アクアティカ:氷海」から登場した「部族モジュール」との絡みでは、部族カードの雇用のためのコストを獲得した珊瑚駒で支払うこともできます(従来通りロケーションカードの得点で支払うこともできますし、珊瑚と混ぜることもできます)
そのため、部族カードにアクセスするためのアプローチ手段が増え、よりフレキシブルに部族カードを利用することができるようになりました。今回の拡張では新しい南方部族も登場します。新要素の岩礁や珊瑚に関連する能力を持つものが多いですね。



◆初期セットアップにも変更点。まさかのさよなら「海の王」?

「珊瑚礁」では、新しい初期セットアップ方法として「手番順マンタモジュール」が加わりました。後手番ほど便利な追加のマンタを持ってゲームを始めるこのモジュール、なんとこれまで親しんできた「海の王」との差し替え、二者択一となります(従来どおり海の王を使って遊ぶこともできますよ)。



様々な特殊能力を持つ海の王と引き換えにマンタ1個を貰うだけではちょっとプレイが地味になるのでは…… と思いきや、マンタ1個から貰える1金や1武力が存外デカく、序盤からハデな動きができるようになるのでこれはこれでアリな内容になっています。

特に、これまで序盤では高額な深海シーフォークに手が出しにくかったのですが、お金を産出するマンタが1つ余計にあるだけで手が届く範囲が広がり、付随してよりよい岩礁トークンを取りやすい、という影響が出てきました。マンタ1個の違いで序盤の自由度が結構変わるので、地味な変化ではありますがぜひ試してみてほしいモジュールです。


一方で従前通りに海の王を使用することも可能です。「珊瑚礁」にも新要素を活用する新たな海の王カードが加わるのでこちらを活かした戦略を探してみるのも楽しいと思います。


初手から強力な岩礁トークンを獲得してゲームを始められる「不朽のライオネル」


また、初期手札として従来の5種に加えて新しく「メデューサ・アルカディオ」が加わります。「メデューサ・アルカディオ」は新しい効果、「駐留」を持つシーフォークです。



「駐留」は、言わばロケーションの独占予約を行う能力で、手持ちのマンタを配置することでロケーションを予約することができます。



予約されたロケーションは捨て札置き場に置かれる際、捨てられる代わりに個人ボードに差し込むことができるため、「探索」を行ってロケーションを流すことでロケーションをタダで獲得することができます(その際、駐留に使用したマンタは「活動状態」で手元に帰ってくるので使用済みマンタを駐留に使うとちょっとオトク)。

マンタ1個がしばらく使えなくなること、ロケーションの獲得までタイムラグがあることと欠点はありますが、どれだけ高額なロケーションであっても無料で獲得できる可能性があるため、「駐留」はかなり強力な効果です。「メデューサ・アルカディオ」自体はマンタを獲得できるロケーションには駐留できないという制約がありますが、新しい深海シーフォークの中には全く制限なしに駐留可能な能力を持つカードもあるため、こうした深海シーフォークをうまく活用するのも手と言えましょう。


「珊瑚鎧の騎士」は「駐留」して即時に「探索」まで行う自己完結型。


また、誰かが「駐留」を行うと、他プレイヤーの心理としては「探索」を手控えたくなったりします。そりゃあ無料でロケーションを明け渡すのはシャクですからね。逆に複数のプレイヤーが「駐留」すると互いに協力して探索を進めることもあったりして、基本的に「アクアティカ」はソロ志向なゲームでしたが、「駐留」によって今までにないインタラクションが発生するのは興味深いです。


◆「氷海」拡張との組み合わせで盛り盛りのゲーマーズゲームに

「珊瑚礁」は基本ゲームと組み合わせることも、「基本」+「氷海」+「珊瑚礁」の全盛りで組み合わせることもできます。

「氷海」との組み合わせでは様々なモジュールの取捨選択ができるのですが、ザックリ言えば「基本モジュール+珊瑚礁」と「部族モジュール+珊瑚礁」の二種に大別できるかと思います。より高難度なのは後者の「部族モジュール+珊瑚礁」で、こちらは基本からはかなり距離の離れた結構なゲーマーズゲームになります。というかテキストが多い!

なにせ手札にテキストがあり、部族カードにテキストがあり、岩礁トークンにテキストがあり、それらが相互に関連しあうため、基本と比べて見るべき情報が爆発的に増大します。そのため、全部盛りはある程度「氷海」や「珊瑚礁」に慣れてからをおススメします。


「基本モジュール+珊瑚礁」は、それよりは穏やかな組み合わせで、新要素の岩礁トークンの存在感を感じられる組み合わせだと思います。基本ゲームをもう少しディープに楽しみたいという人向けの組み合わせで、まずはこちらを試してみるのもよいのかなと思います。

もし仮に予算の都合で「氷海」か「珊瑚礁」どちらか一つしか選べない、ということがあれば、個人的にはプレイ感が大きく変わる「部族モジュール」が楽しめる「氷海」をおススメしたいところですが、実は「珊瑚礁」だけでも「部族モジュール」がお試しで遊べる作りなので、コスパがよいのは「珊瑚礁」と言えるのかもしれません。

「珊瑚礁」には部族モジュールの遊び方が記されていないので、部族モジュール周りのルールを公開します(「氷海」のルールと同一のものです)。
アクアティカ氷海(抜粋).pdf

……と言った感じで新拡張「珊瑚礁」は「アクアティカ」よりディープに楽しめる内容となっています。特に岩礁トークンを軸としたアッパーなプレイ感はより脳が煮える楽しさを味わうことができますよ。

「珊瑚礁」の発売と同時に、長らく在庫切れの続いていました「アクアティカ」「アクアティカ:氷海」も再販となります。色々と価格変更が相次ぐ世の中ではありますが、「アクアティカ」は税込5940円、「アクアティカ:氷海」は税込3520円と以前からの価格を維持させて頂きます。プレイ経験に応じて色々な遊び方ができるタイトルなので、ぜひこの機会にお買い求めいただければ幸いです。



また、ルールブックの内容物の記載に製品との相違があります。
下記が正しい内容物となります(説明書の記載に加えて合計6枚のカードが同梱されます)。

誤:
新しい深海シーフォークカード 22枚

正:
新しい深海シーフォークカード 24枚
新しい海の王カード 4枚



アクアティカ:珊瑚礁


プレイ人数:1-5人(5人プレイには「氷海」拡張が必要)
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:60分

ゲームデザイン:Ivan Tuzovsky
アートワーク:Victor Zaburdaev
小売希望価格:5500円(税込)
ラベル:アクアティカ
posted by 円卓P at 12:37| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする