2024年10月11日

ゲーム紹介:アルデバランデュエル



数寄ゲームズは、「アルデバランデュエル」日本語版を発売します。プレイ人数1-2人、対象年齢12歳以上、プレイ時間60-90分で、小売希望価格は税込6600円となります。

10月14日から数寄ゲームズ通販サイトにて先行販売の予約受付を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。

「アルデバランデュエル」は、「アンダーウォーターシティーズ」「エヴァキュエーション」などで知られるウラジミール・スヒィの手による2人用ゲームです(ソロプレイもあり)。実際遊んでみて個人的には「これはスヒィさん流の『宝石の煌き』の解釈では!?」などと思ったのですが、一緒に遊んだ人からはあまり賛同を得られていません(笑)

いや、でも、自分としてはかなりその色合いを感じるところが大きいので、この紹介記事ではその辺りも含めてゲームのキモをご紹介していければと思います。一言で言えば、カードプレイを通して手元を育てていくタブロービルド、拡大再生産の色味が強いゲームです。



テーマ的には2つの帝国の間で惑星間紛争が勃発するぞ、というお話ではありますが、生粋のユーロ畑のデザイナーであるスヒィさんらしく、殴り合いなどの直接的な妨害要素はなく、カードのドラフトやカット、2人用ゲームにつきものの綱引きの攻防などでインタラクションが作られています。

また、スヒィ作品と言えば2人プレイ適性の高さに定評があります。「アンダーウォーターシティーズ」は言うに及ばず、「ウッドクラフト」や「エヴァキュエーション」……「シップヤード」もそうかな? 多人数ゲームでも2人で遜色なく遊べるタイトルが数多い今風のデザインを得意としている人なのですが、「それじゃスヒィさんが2人専用ゲームを作ったらどうなるの?」という問いかけはなかなか面白い設問だと思うのですね。

そして、この「アルデバランデュエル」はまさに本気で作られた2人専用ゲームであり、2人専用ゲームならではの工夫がそこかしこに散りばめられています。また、数寄ゲームズではこれまでスヒィさん作品を多く取り扱ってきたのですが、最近では魅力的な2人用ゲームにも注力しています。

ウラジミール・スヒィ×2人専用ゲーム! まさにこれは数寄ゲームズでやるべきゲームでしょ!

……ということで、今回、日本語版を出版することになったのです。

ということで具体的なゲーム内容をご紹介していきましょう。



◆手番には、カードを取るか、プレイするかの2択だけ

「手番にはAかBをするだけの簡単なゲームです」のような言い回しは、昨今では重量級ゲームのインストでの常套句となっている感もありますが(大体は簡単ではない)、本作も組み立てとしては同じです(簡単かどうかで言えば、少し難しい、くらい)。具体的にはカードを取るか、カードをプレイするかの2択。1アクションを行ったら相手に手番を移し、2人ともパスするまでこれを繰り返します。

カードを取るアクションでは、場に並べられた6枚のカードから欲しいものを取るのですが、取り方として「価値3までのカードを取ることができる」というルールがあります。

さて、価値とはなんぞや? と言いますと、カードは場に3段2列に並べられているのですが、下段のカードは価値1、中段のカードは価値2、上段のカードは価値3となります。これらの中から組み合わせで価値3までカードを買っていいよーという仕組みなので、実際にカードを取る組み合わせは「下段2枚」「下段1枚+中段1枚」「上段1枚のみ」のいずれかになります。



カードを獲得した後、空いたスペースは下に詰められて新しいカードが補充されます。そのため、価値3のカードでも待っていれば価値が下がって入手しやすくなります。


注意事項として、このゲームには7枚の手札上限があります。手札上限をオーバーするようにカードを取ることはできませんし、手札が7枚ある場合はカードを取るアクションは行えず、カードをプレイするアクションを選ばなければなりません。

それでは具体的にどのようなカードを取るべきなのか? それをお話しするためには、もう1つのアクション、カードのプレイから説明する必要があります。


カードのプレイでは手札から任意の1枚をプレイします。この時、カードに示されているコストを別のカードで支払う必要があります。

つまり、各カードは「カード」と「コスト」のどちらかの用途で使用することになるわけです。「サンファン」などのゲームを遊んだことがある人ならイメージしやすいかもしれませんね。



そのため、カードを取る際には、もちろんプレイしたいカードを取ることが第一なのですが、そのカードをプレイするためのコストとなるカードも確保しなければなりません。欲しいコストのカードが常に場に出てくるとは限らないのでコストの確保も結構なポイントですよ。


さて、ゲーム中には5種類のカードが登場します。各カードはプレイすることで様々なボーナスをプレイヤーにもたらしてくれるのですが、中にはボーナスを得るために条件が必要なものもあります。

1. 生産ステーション

「生産ステーション」は、プレイすることで、カードプレイに必要な資源を永続的に割引きます。「宝石の煌き」などを遊んだ人ならばわかると思いますが、割引はめちゃ重要です!


2. スペースシャトル

「スペースシャトル」は、プレイすることでラウンド終了時に得点の綱引きを行う軍事/貿易/外交のトラックを1歩進めます。要するに得点獲得手段です。


3. 惑星

3つ目の「惑星」は……ここからがちょっと複雑なのですが、プレイするだけではボーナスを得られず、完成させて初めてボーナスを得られるカードです。基本的には後述する「入植」を行わないと惑星からはボーナスを得られません。


4. 入植

続く4つ目は「入植カード」で、惑星の空きスペースを埋めるようにして配置することで惑星のセットを完成させるパーツです。大体の惑星は入植カードの色を指定してくるので、この辺をマッチさせるのがなかなか難しいところです。


入植の図。最終的には風車みたいな感じになったり。


5. 植民船

最後の5つ目は「植民船」で、入植が完了した惑星1つにつき1枚プレイすることができます。様々なボーナスをもたらすのですが、コストが安くてオトクなカードです。見た目が「スペースシャトル」と似てるのですが、カード右下のアイコンで判別することができます。

コスト比で考えると「植民船」は単純に強いので、惑星の入植を行うならば植民船のプレイまで終わらせて1セットと考えたほうがいいでしょう。「惑星」「植民」「入植船」は1セット。入植は結構手間がかかるので、ここまでやらないと元が取れません。


とまあ、そんな感じで、ゲームの基本的な流れとしては、「カードを取ってプレイする」「カードのボーナスを得ることで割引や得点源を得る」のサイクルを繰り返していく形になります。

これを続けていくとそのうち場札が尽きますので、カードを取ることもプレイすることもできなくなったらパス。両プレイヤーがパスしたところで1ラウンドが終了という流れになります。


◆ラウンド間に研究と綱引き

両プレイヤーがパスしたら次に「研究」を行います。実はプレイヤーの手にはゲーム開始時にドラフトで獲得した研究カードが5枚あり、このうち1枚をこのタイミングでプレイすることができます。カードのプレイにはここだけでしか使えない「科学」の資源を支払う必要があり、この支払いが結構重いです。

科学カード


で、実はこの研究カードが戦略上はかなり重要です。「手札上限が7枚から8枚になる」効果を得られたり、「特定のカードをプレイすると追加の得点を獲得する」効果を得られたりと、かなりハデ目な特殊能力を獲得することができます。この研究カードの選択とプレイが勝敗に大きな影響を及ぼします。

先述の通り、研究カードはゲーム開始時にドラフトで獲得するので、目指すべき戦略の補助線となります。科学カードはゲーム中3枚しかプレイできないので、どのカードをどのタイミングでプレイするかを事前に検討する長期的な視野も必要になりますね。


続いて、影響力ボード上で綱引きを行います。

これは「スペースシャトル」のボーナスで得られた軍事(オレンジ)、経済(緑)、外交(紫)のトラックの差分だけ駒を自分方向に引き寄せるもので、自分の陣地側に駒をより多く引き寄せることで高得点を狙うことができます。



基本的にはある分野に特化すると得点効率がいいので、どれか1分野に集中して1点突破を狙いたいところです。ということは、相手の特化行動を阻止するのも大事ということなんですけども。

また、影響力ボード上の駒はラウンドを跨いでもリセットされない! ので、一度大敗すると2度3度と点数を献上することになってしまったりも。逆に序盤でそうした得点基盤を作れると強いのですが、序盤は生産の土台を作りたい時期でもあるので悩ましく……


とまあ、こんな流れを1ラウンドとして、3回繰り返したらゲーム終了。カードは時代を経るに従ってよりコストが重く、より強力になっていきます。


◆2人専用ゲームならではの駆け引きが熱い!

プレイ時間60-90分という表記からもわかる通り、それなりに要素の多いゲームではあるのですが、慣れてくるとカードの取り合いが熱いことがわかります。

実はこのゲーム、コストを割引してくれる「生産ステーション」が強力です。というのは、先述の通り、後半になればなるほどカードプレイのコストが重くなるため、割引力の差が手数の差として顕著に出てくるのです。そのため、特に序盤の「生産ステーション」は見かけたら即確保で正解と言えます。

例え、価値3で手番に「生産ステーション」1枚しか取れないとしても見返りは十分にあります。というのは、「生産ステーション」を取る行為は同時に相手が取るのを防ぐ行為でもあるからです。いわゆるカットですね。

その前提で、「生産ステーション」を入手するためには手札に空きを作っておく必要があります。そう、手札は7枚までしか持てないんですよ! この縛りが実に効いてます。

手札を7枚にした瞬間にポロッと「生産ステーション」が出てきたら、相手は悠々とそのカードを獲得することができます。こちらは次の手番にはカードをプレイしないと手札が空かないのに!


そのため、ゲームに慣れてくると「今、手札何枚?」と相手の手札枚数を確認する機会が増えてきます。そうした手札枚数のハンドリング、マネジメントが地味に効いてくるゲームなのです。

手札枚数が多いと行動の選択肢が狭まるけど、そもそも手札を溜めないとカードのプレイ自体ができないというこのジレンマ。これを解決する意味でも割引は強力な要素です。また、別解として手札とは別に保持できて、ワイルド資源として支払えるワイルド資源トークンというものもあります。これも強力。


ゲーム全体に渡って「手札上限は7枚」という縛りと「カードをプレイするのにコストとして別のカードが必要」という仕組みがすーーーごくよく噛み合っているんですよね。ぼくが「宝石の煌き」っぽいと評するのはこの辺りのジレンマ構造を指していて、かつ、このジレンマって多人数ゲームでは制御しにくいので(上家の気分次第)、自分の行動が相手に直接的な影響を及ぼす2人ゲームでより輝く組み合わせでもあります(なのでぼくは「宝石の煌き」は理論上は2人ベストだと思っています。が、2人だとガチに寄り過ぎるので3人のほうが適度にゆるく遊べるというのも事実です)。


慣れてくると、いかに「生産ステーション」をポロリさせないように立ち回るかとか、「生産ステーション」がポロリしたとしてもダメージを最小限に抑える動き方だとか、細かいテクニックも見えてくると思います。この辺のリスク管理は、ちょっと「ジャイプル」っぽさがあるかもしれません。

ただ、この駆け引きって「『生産ステーション』が強い」という事前知識がないと思い至らない部分でもあると思います。まあ、1回遊べばすぐわかることでゲームの寿命を縮めるようなことでもないので言ってしまいますが、「『生産ステーション』は強い!」です。

その前提でゲームに取り組むと「相手が欲しがってる資源をカットする手があるぞ」とか、「相手が特化したい分野をカットする手があるぞ」とか、様々な応用も思いつくかと思います。直接的な攻撃手段こそ用意されてはいないのですが、どうしたら相手が嫌がるかを考えて締め付け合い、互いに我慢比べを始める洗面器ゲームの側面もあります。

とは言え、同時に欲しいカードがポロッと出てくるガチャ的な快感もあり、運と技術の要素がバランスよく用意されたタイトルだと思います。苦しいけども窮屈過ぎないというか。また、そうした小細工を吹き飛ばす科学カードのオーバーパワーぶりがチマチマ刺し合うだけのゲームで終始しないスケール感を演出してもいます。


◆出版社 Dino Toysとはナニモノ?

さて、このゲームは、スヒィさんの作品でありながら、出版はいつものデリシャスゲームズではなく、Dino Toysという聞きなれない会社から出版されています。その辺り、ちょっと不思議に思った方もいるかもしれません。

このDino Toys、実はチェコのおもちゃメーカーです。日本だと……カワダさんとかの会社のイメージなんですかね(ぼく自身、カワダさんもDino Toysも全貌を知っているワケではないのであくまでイメージです)。

で、Dino Toysは自前で印刷工場を持っていまして、デリシャスゲームズの作品は殆どがDino Toysの印刷工場で印刷されていたりします。Dino Toysは少量ながらボードゲームを出版していることもあり、そこからの繋がりでスヒィさんのゲームがDino Toysから出版されることになったのでしょう。

一方のデリシャスゲームズ側としても、ゲームを出版する計画が数年先まで既に決まっていて、かつ、それらは多人数用のタイトルであるという方針があり、デリシャスゲームズのリソースでは2人専用の「アルデバランデュエル」まで手が回らなかったという事情もあるようです。まあ、デリシャスゲームズって数人で運営している家庭内出版社ですからね。


Dino Toys自体はボードゲームがメイン事業ではないそうなので、ルールブックの書き方やらアイコンデザインやらサマリーの構成やら、ちょっとこなれてない面はあります。ゲーム自体はそこまで難しくはないんですが、各要素の順序構成など、ルールを読んでて、ちょっとこんがらがる箇所はあり……

個人的にそうした読みにくさを感じたこともあり、今回は手製のサマリーを用意しました。こちらは数寄ゲームズ通販サイトの直販分に添付いたします。大分スッキリと要素をまとめられたと思いますのでプレイの補助にお役立ていただければ幸いです。




そう言えば豆情報ですが、日本語版では「アルデバランデュエル」のタイトルロゴを新たに書き起こしています。原版は意図してレトロを狙っているのでしょうが、なんか古めかしさが先だってちょっと好きになれなかったんですよね。



個人的には日本語版の方が今風な仕上がりになっていると思います。日本のファンの方々に気に入って貰えるように日頃から知恵を絞っているのですが、少しでも気持ちが伝わっていれば嬉しいです。


アルデバランデュエル

プレイ人数:1-2人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-90分

ゲームデザイン:Vladimir Suchy
アートワーク:Jozef Bard Murcko
小売希望価格:6600円(税込)
posted by 円卓P at 11:14| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする