2023年04月04日

「厄介なゲストたち」バリアントコンテスト結果発表



 昨年秋に募集を行いました「厄介なゲストたち」バリアントコンテストには応募総数43点のバリアントルールが寄せられました。たくさんのプレイヤーの方々から興味深い試案をご応募いただきました。本当にありがとうございました。

 また、本来の予定より大幅に発表が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。実施前に予想していたよりも多数のバリアントルールをご応募いただいたこともあり、審査に結構な時間がかかってしまいました。
 どのバリアントルールからも、「厄介なゲストたち」をより楽しむためにはどうしたらいいだろうかという熱意ある工夫が見られ、積極的にこのゲームを楽しんでいこうとする多くの方々の気持ちに触れられてとても幸せな気持ちになりました。

 厳正なる審査の結果、優秀賞1点、佳作3点、そして選外佳作として個人的に心をくすぐられた、いいね賞3点を選出しました。おめでとうございます。以下に受賞したバリアントルールをリンクしますので「厄介なゲストたち」をお持ちの方々はぜひ皆様試してみてください。



優秀賞
推理重視バリアント
キタカフェさん



佳作
初心者向け公開バリアント
カルピス(メギス)さん

左回り捜査1箇所バリアント
きんさんさん

ソリティア推理重視ルール 全員集めて「さて」と言いたい
ゆらさん



いいね賞
信頼のおける情報屋バリアント
パーティ太郎さん

プレイ時間を短くする
コウタロスケさん

手札公開による追加カードの取得と手札交換失敗時のバランス調整
ミミーさん




 以下、簡潔ながら選評を述べさせていただきます。



優秀賞
推理重視バリアント
キタカフェさん

 基本ルールからの変更点は1つだけ。交換したカードは(両プレイヤーとも)確認後に捨てるということだけです。

 すごくシンプルな変更なのですが、実際に試してみるとストレスが相当に軽減されることにビックリしました。新しい情報がどんどん出てきてスピード感のあるプレイは気持ちがいいです。

 それでいて、1人のプレイヤーが何回もカードを交換して情報を吸い上げてしまうような展開も防げます。カード交換を行ったプレイヤーはそのラウンド中、2度目のカード交換を行うのが難しくなるので、各プレイヤーのカード交換の機会は均等化されます。

 また先手プレイヤーの動向を見て、捜査の方向を被せるか、それとも違う方向に向けるか、ちょっとしたプレイ感の変化もあります。序盤で書斎を調べたい時なんかは先手プレイヤーの方がやりやすいかもしれません。後手のプレイヤーは意図的に山札引きを狙いやすくもなりますが、山札引きは基本ルールよりもメリットが減じています。

 というのは、ラウンドごとのカードの補充は手札が6枚になるまで行うので、手札が少なければその分だけ補充枚数も増えるからです。そうなると情報を握り潰すよりも積極的なカード交換で手札を減らす方がアドがありますし、情報価値の小さなカードは手札を減らすのに役立ちます(M:tGのキャントリップみたいな動きをします)。基本的には情報価値の高いカードが強いカードであることには変わりないのですが、情報価値の格差が薄まっている印象です。

 とまあ、色々とメリットを挙げてみたんですが、たった1つの変更でこれだけの違いが出てくるのがゲームデザインの妙味だと思います。


 ただ、大きく引っかかる点としては、このバリアント、公式の2人用バリアントと同じ内容なんですよね……!

 それをコンテストという場で評価していいものなのか、新規性、独創性の評価基準について果たしてどのようなスタンスを取るべきなのかという葛藤が自分の中にはありました。実利に優れてかつ独創性に溢れる応募案があればそれがベストですが、実利と独創性であればどちらをより高く評価すべきなのかと。これはなかなかの難問ではありました。

 ただ、「厄介なゲストたち」は2人プレイがとても高く評価されているゲームでもあります。ということは、公式2人用バリアントは素性の優れたルールであり、それを多人数プレイに援用することはなんら恥ずべきことではないのではないか、と結論しました。

 公式2人用バリアントをそのまま利用できるのは逆にメリットもあって、「ルールブックに書いてある2人用バリアントをそのまま多人数でも適用してね」で説明が通るという手軽さもあります。この手軽さは大きな長所です。


 結局のところ、楽しく遊べるルール、が最強のルールです。応募者の皆様からするとコンテストの盲点を突いたような形でもあるため、納得しかねる点もあるやもしれませんが、実際に試してみた上で素晴らしい効能があるのであれば、新規性の有無に囚われず評価すべきではないか、というのが自分のスタンスです。

 自分で同人ゲームを作った経験からも、ゲームやルールは実際に遊んだ人が楽しめてナンボと言いますか、新規性はそれだけでは評価の対象足り得ない、役を上がってからの裏ドラみたいな立ち位置だと考えています。まずは実利を評価しよう、というのが今回の結論です。


 シンプルな変更で、導入の敷居も低く、効果も抜群と、今回のバリアントルールコンテストの趣旨に叶う最適な一作ではないかと思います。ぜひ皆さん、試してみてください。



佳作
初心者向け公開バリアント
カルピス(メギス)さん

 色々なバリアントをご応募して頂いたんですが、その中でも独自性があるなと感じたのがこちらのバリアント。

 「厄介なゲストたち」は、ルール外の仕様と言いますか、インストでは説明しにくい細かいパターンがありまして、そうした内容をどこまで説明するかが難しいところではあるんですけども、インスト代わりにまずはこれで1ゲーム、というのは流れとしてアリではないかなと思いました。



佳作
左回り捜査1箇所バリアント
きんさんさん

 本来は2箇所指定する捜査箇所を1箇所だけにして、左隣の人がそのカードを持っているかいないかのガチャをする、そんなバリアントです。本来のゲーム性からすると結構大胆な変更ではあるんですけども、「厄介なゲストたち」は本質的にはカードドローのガチャで一喜一憂するゲームだと思っていますので、このバリアントはより本質に近づいているという見方もできるかと思います。

 その上で自分が欲しい情報にアプローチできる(アプローチできるとは言ってない)ところは残しているので、マイナスのデザインとして面白いなと思います。



佳作
ソリティア推理重視ルール 全員集めて「さて」と言いたい
ゆらさん

 1人用のバリアントルールという珍しいアプローチです。まーた同じカード来たよー、というストレスを軽減する意味もありますし、より競技的な納得感のあるルールではないかなと思います。その分カジュアルさは失われてしまうかもしれませんが、高難度のゲームに挑む人にとってはルールの公平感、納得感が重要だと思いますので、基本ルールはちょっと運任せ過ぎるだなと感じた人に試してみてもらいたいバリアントですね。



いいね賞
信頼のおける情報屋バリアント
パーティ太郎さん

 ゲームエンジンを大幅に変更するバリアント。意欲的で面白い試みですが、変更の大きさは導入の敷居の高さと表裏一体でもあり、そこが悩ましいところでもあります。実際作ってみても遊んでもらえないと悲しいですしね。

 ダウンタイムの解消手段としての同時処理は一つの解法です。それと同時に、同時処理ならではの不公平感をどうやって解消するか、苦労の跡が垣間見えます。



いいね賞
プレイ時間を短くする
コウタロスケさん

 情報価値3のカードを別デッキとして取り分けて毎ラウンド公開するというバリアント。試みは凄い合理的なんですけども、情報価値でカードを選別する工程が入るのって結構センシティブだなというか「ゲームの寿命が短くならないかな?」「いや、そもそも裏面にカード番号振ってあるがな」「気持ちの問題では?」みたいな脳内会議が繰り広げられました。出版社の立場上、ゲームの寿命を損ねる可能性があるものをどこまで評価するか…… いやー、難しいっすね。



いいね賞
手札公開による追加カードの取得と手札交換失敗時のバランス調整
ミミーさん

 内容は色々とあるんですけども、個人的になるほどと思ったのは山札引きを3枚ドローから2枚ドロー1枚公開に変更する点です。

 今回のバリアントルール公募では、バランス調整の部分にはあまり重きを置いてなかったんですけども(繰り返しになりますがガチャゲーやもん)、プレイ環境によって本来のゲームデザインの趣旨から逸れるゲームプレイが奨励されるのはよろしくないワケでして、その辺の報酬体系を適正化しようというのは意義ある提言だと思います。



 その他にも、なるほどなーと思わせてくれる様々なバリアントルールがありましたが、1個1個コメントしていくとただでさえ遅れている結果発表がいつまでもできないので、ここまでとさせて頂ければと思います。多くの力作をご応募いただきましてありがとうございました。

 コンテスト実施の概要に基づきまして、優秀賞、佳作の受賞者の皆様には後日副賞をお送りさせていただきます。ご応募頂きましたメールアドレスにご連絡させて頂きますので、メールの到着まで副賞の選択をご検討頂ければと思います。

 また、もともと予定していなかった、いいね賞の受賞者の皆様にも何か副賞をお送りしたいなとも思いまして、何か探偵テーマのゲームでもないかなと考えた結果、「乗り間違い」をお送りさせていただきます。こちらも発送先等情報について、ご応募頂きましたメールアドレスにご連絡させて頂きますので少々お時間を頂ければと思います。


 今回のコンテストを通して「厄介なゲストたち」の持つポテンシャルの高さ、そして豊かな伸びしろを感じさせてくれたのは大きな収穫だったと考えています。数寄ゲームズとしてこうした試みは初めてだったということもあり、大変不手際の目立つ内容ではありましたが、実際に意義ある試みだったと思いますし、皆様のご応募に感謝しております。

 また、とても多くの力の籠もったバリアントルールを応募して頂いたので、繰り返しにはなりますが、皆様にはぜひこれらのバリアントルールを実際に試してみて頂ければと思います。そして遊んだ感想を呟いて貰えれば応募した方々にも声が届くと思いますので、ぜひ皆様のフィードバックをお願いできれば嬉しいです。

 「厄介なゲストたち」は、もっともっと面白さを深掘りできるゲームだと思いますよ!
posted by 円卓P at 12:09| Comment(2) | サマリー・お役立ち情報等 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする