数寄ゲームズはアメリカ西海岸で廃船を土台に建物を建設する都市発展ゲーム「エンバーカデロ」を発売します。プレイ人数1-4人、対象年齢12歳以上、プレイ時間60-90分で、小売希望価格は税込8800円となります。
また、拡張「沈まない船」も同時発売となります。こちらはプレイ人数を5人まで拡張し、新たな船カード、建物カード、イベントカードを含むミニ拡張となります。小売希望価格は税込2530円となります。
数寄ゲームズ通販サイトでは3月20日より予約販売を始め、その後、全国のボードゲームショップさんでの販売も予定しております。
「エンバーカデロ」は新人Adam Buckinghamと、唐辛子を栽培して注文を達成する戦略ゲーム「Scoville」の作者Ed Marriottの共作…… ということで、制作陣の顔ぶれからはそこまでガツンと響くタイトルとは言えません。誰やねん? という人も多いでしょうし、その辺はぼくも割と同じ印象です。
つまり、この手のゲーマーズゲームで極めて信頼性の高い「作者買い」の通じにくいゲームではあるのですが、そんな無名のゲームの日本語版を敢えて出版する…… というところに数寄ゲームズとしての意気込みやら自信やらを感じて頂ければ幸いです。近い例で言えば「リフトフォース」もこのパターンでしたね。
数寄ゲームズは後発の出版社ではありますので、新規出版については取引先からの売り込みを待つよりも、自分から積極的に問い合わせていく例のほうが多いです。このゲームは「惑星Xの探索」で知られるRenegade Game Studiosの作品なので、傍目からは「惑星Xの探索」で出版実績を作ってからの第2弾というように見えるかもしれませんが、実は「エンバーカデロ」を出版したいがためにRenegade Game Studiosに問い合わせを行い、その副産物として「惑星Xの探索」も出版したのが流れとしては正しかったりします。つまり、それほど出版を熱望していたタイトルではあったのです。
じゃあ、なぜ出版の順番が前後したのかと言えば、「エンバーカデロ」はこれまで英語版以外のローカライズ例がなく、そのために海外のディストリビューターに提供するローカライズキットを用意するために余分な時間がかかってしまったという裏事情があったりします。しかもローカライズキットが届いてみたらKS版の古いバージョンで使い物にならず、作り直しが発生したりなんだりと…… いやまあ、色々ありました。
それに比べると「惑星Xの探索」は各国で販売されているため、すでにローカライズキットが整備されていて、速やかにローカライズが進んだのです。同じ会社のタイトルであっても雲泥の差、月とスッポンなんですね。
このように日本語版制作というものは、様々な事情によって時間がかかったりかからなかったりするものなのです。多分、皆様が思っている以上に様々な遅延のバリエーションがあります。
……とまあ、のっけから早速ゲーム内容とは全く関係のない周辺事情を語ってしまいましたが、なぜその辺りを触れたかと言えば、やっぱりこのゲームを扱う理由の一端を雰囲気としてでも感じて貰いたかったという点があります。
数寄ゲームズが前評判の高い著名なゲームを扱うことは、まあ、ほぼないんですけども(後発の小規模出版社ですゆえ)、その中でも「エンバーカデロ」はゲーム好きしか知らないような「無名のゲーム」であることは間違いなく、では、なぜ、そのタイトルを敢えて出版するのかといった点を詳らかにするのはメッセージとして大事なんじゃないかなと思っているワケです。まあ、それはまた後で改めてたっぷりと。
◆廃船を土台に街を作るぞ! ……それって、ホントにあった話?
さて、この「エンバーカデロ」の舞台は1850年のサンフランシスコ。時折しもゴールドラッシュの真っ最中、一攫千金を夢見る労働者が船に乗って大挙した。よおっ、べべん!
こうして街には移民船として使われた遺棄船が溢れることとなりました。「エンバーカデロ」においてプレイヤーはこの街の実業家の一人となり、これらの遺棄船を土台にしてホテルや倉庫、学校や市庁舎など様々な建物を建設することになるのです。
プレイヤーは手札として船カードと建物カードを持っています。船カードをプレイすることで土台となる船タイルを配置するとともに資源を入手し、建物カードを配置することで船タイルの上に建物を作っていきます。基本的には建物を建設することで様々な得点要素にアクセスできるようになっているので、資源を集めて建物と建てればええんやとゲームの構造は極めてオーソドックスです。
さて、各建物にはそれぞれ建設するために必要なスペースを示す「建物のサイズ」が設定されていて、大きな建物ほど大きな土台が必要となります。そうした建物を建てるためには土台となる多くの船が必要になりますし、また建物の壁となる「構造物」も必要となります。
このゲームの建物は言ってみれば「壁」と「屋根」から成り立っていまして、最終的な目的となる建物カードのプレイは「屋根をかけて建物を完成させること」を意味しています。
一方で屋根をかける前には、まず「壁」が必要です。「壁」の建設には「構造物」を獲得する必要がありまして、この構造物は(主な手段として)手札を捨てることで獲得することができるのです。
……察しのいい方であればもうお気づきかもしれませんが、つまり手札を屋根としてプレイするか、捨て札として壁にするか、ここに1つジレンマがあるワケです。この辺は「サンファン」なんかの、カードをコストとして使うか建物として使うかの感覚に近いかもしれません。
ただ、「エンバーカデロ」ではこの捨て札効果が一律同じではなく、カードそれぞれで異なるため、どのカードを捨ててどのカードを使うかの組み合わせがべらぼうに悩ましくなっています。カードを捨てて得られるのは構造物だけでなく、お金だったり、得点だったり…… なんか色々ある! 組み合わせが! 組み合わせが多い!
手番にはカードを1枚プレイするか、カードを1枚捨てるか。言ってしまえばそれだけの簡単なゲームなんですけども、やりたいことを達成するためのルート探しが非常に悩ましいゲームでもあります。
正直に言えば、初回プレイはこの情報量の多さに面食らいました。インストが終わってから始めてみるものの、一手目が踏み出せない。ぼくは重ゲーにはそれなりに慣れている方だと思うんですけども、そういうゲーム、たまにあります。
で、こういうゲームって明確な正解に辿り着けるようにはなってるけども正解へのアクセスが難しいというタイプのゲームで、飲み込んでしまえば大好物なんですけども、飲み込むまでが大変ではありますね。2手目から早くも「もう1回最初からやらせてくれー!」って叫びたくなるゲームではあって、これをボードゲームあるあるとして共感できる方はこのゲームも肌に合うのではないかと思います。
また、このゲームでは建設された建物がプラスチック駒の壁と厚紙タイルの屋根で立体的に表現されるのが見た目として面白いところで、ゲームの終了時には高層建築が林立するサンフランシスコ市街が完成します。
基本的にこのゲームは同じ建物カードでも上層階に建設することで効率的に得点を稼ぐことができるようになっているので、建物は上に伸ばしていった方がオトクです。建物は最大で4階層まで建てられますが、最上階まで建て切るには長期的な建設プランが必要となります。
また、1点注意として、各パーツは崩れにくいように工夫されてはいるんですけども、いかんせん軽くてちょっと触っただけでもズレるので、特に猫ちゃんなど飼われている方はお気をつけください。
あと、船上に街を作るとか、そういうアクロバチックな建設って本当にあったの? とかツッコミたくはなりますよね。どうもサンフランシスコの街の下に廃船が埋まっているのは事実らしいんですけども、プカプカ浮いている船の上に建物を建てるというトンチキではなく、湾岸の埋め立ての際に船ごと埋め立てて基礎とした、というのが実際のところのようです。
このゲームではあたかも現役の船がそのまま土台として使われているかのような表現をしていますが、それはゲーム上の誇張表現ではあるようです。水上都市サンフランシスコではなかったと。
ちなみに勝海舟が咸臨丸でサンフランシスコに訪れるのはこのゲームの10年後の1860年になります。つまり日本で言えば江戸時代の末期にサンフランシスコでは建物をボコボコ建設してたってことですね。バブリー!
◆カードプレイだけじゃない悩ましさ。カード補充にも一捻り
さて、このゲーム、手番にカードを1枚プレイするか、捨てるかを選ぶだけの簡単なゲーム…… 先程はそう言いましたが実はそれはウソです。
カードの使い道と並んでもう1つの悩まし要素…… それが手札の補充です。このゲームは山札からランダムにカードを引くのではなく、公開された4枚の船カードと建物カードの合計8枚の中から欲しい1枚をお金を払って購入します。これはマストです。
で、単純に8枚のカードの中からベストの1枚を選ぶのは相応に悩ましいよねという話に留まらず、それに加えてプレイヤーは購入したカードも含めて手札から1枚を選んで次ラウンドのために保管しなければなりません。これが! 実に! 悩ましい!
各ラウンド、プレイヤーは手札5枚からスタートするんですけども、5手番をかけて次ラウンドの手札5枚を選出していくワケです。ちなみに手札を使い切ったところでラウンドは終了。つまり1ラウンドは5手番ということになりますね。
プレイヤーは常にどのカードを手札に残すかの短期計画と次ラウンドでどのカードが必要になるかを見通す長期計画を求められます。次ラウンドで自分の手札を見て「この手札でどうしろと……」と呻いたとしても、それは前ラウンドの自分がプレゼントしてくれたものなのです。責めるのは己しかありません。
基本的にこのゲームは強力な建築物はコストが嵩むようにできているため、プレイを後回しにしたいんですよね。また、先程も少し触れたとおり、同じカードでもより上層に建設することでより多くの得点を得られたりもします。
そのためにカードの確保だけして「建設は次ラウンドの自分に期待しよう」というムーブを取りがちになります。で、こういうことが続くと「過去の自分は未来の自分を過大評価しすぎやねん……」となったりします。
また、逆のパターンで、すぐに使いたいカードが2枚あるけども、どちらか1枚は次ラウンドに送らなければならない…… という局面もよくあって、このカードの保管はちょっとしたツイストなんですけども、めちゃくちゃ悩ましい仕組みなんですよね。いやらしい!
ちなみに、カードをプレイするのではなく、カードを捨てることで、購入可能な公開カードのうち船カードか建物カードをリフレッシュできたりします。これは忘れがちな処理ではありますが、覚えておくとイザと言うときに役立ちます。
ということで、手番の流れをまとめると下記の通りとなります。
1. 船カードのプレイ or 建物カードのプレイ or 手札1枚を捨てる
2. 船カードか建物カード1枚を購入。手札を捨てていればリフレッシュも可
3. 手札1枚を次ラウンドのために保管
この3ステップで1手番が終わりです。先ほども少し触れましたが1ラウンドは5手番。そしてゲームは3ラウンドで終了、つまり全部で15手番のゲームということですね。
この手の戦略ゲームの平均的な手数は20手番前後なので、そこからするとやや少ない手番数です。それだけに一手の密度が濃い、知恵熱必至のゲームと言えましょう。
◆陣取り合戦は近寄るか離れるか? ハリネズミのジレンマ!
さて、このゲームでは全体ボード上に船タイルを配置して、自分の建設予定地を示していきます。大きな建物を建設するためには広い建設予定地が必要となるため、時にはスペースの奪い合いも起こります。
この手の陣取りゲームではすでに配置しているタイルに隣接するように新しいタイルを配置してね〜、といった制約があるものが多いですが、このゲームではそうした制約が薄いせいもあり、唐突に仁義なき土地争奪戦(海だけど)が発生することがままあります。
では、殴り合い要素の強いゲームなのか? と言われればそうでもなく、そうした空中戦が起きる可能性を孕みつつも、多くの場合は他者と共存する形に落ち着く局面が多いゲームではあります。
というのは「他人の建物に隣接するように構造物を置くと、議会トラックを進められるよ」というボーナスがあるため、お隣様の存在が時にありがたい作りでもあるのです。「テラミスティカ」みたいですね(恩恵を施す側と受ける側は逆ですけども)。
議会トラックは進めることで様々なボーナスを得ることができ、また様々な機会で得点にも絡んでくるので、それを無料で進められるのは絶対的にオトクなんですね。広々とした空間でのんびり建築に勤しむよりも、他人と競いながら建設する方がトータルでは点数が伸びるようにできています。
そんな事情から、このゲームは他プレイヤーとの場所取り合戦は遠からず近からずの絶妙なポジション取りを要求されるゲームでもあります。相手に隣接しつつも今後拡張する逃げ場所を確保するような冷静なポジショニングが重要です。
ちょいと上記のルールを補足すると、配置した構造物1個ごとに隣接のチェックは行われます。3個の構造物を配置した場合、議会トラックを最大3スペース進められる可能性があります。
また、全体ボードには何本かの桟橋が初期配置されていて、この桟橋を巡るマジョリティ争いもゲームの重要なポイントです。
1ラウンド目と3ラウンド目の終了時には、各桟橋について、桟橋に隣接している構造物の数でマジョリティ争いを行います。これが結構バカにならない得点源なので、桟橋には積極的に船タイルを隣接配置したい…… のですが、桟橋に隣接するように船タイルを配置するには入港料を支払う必要があるため、お財布との相談が必要になります。このゲーム、手番ごとにカードを購入する必要があるため出費の機会は多いのですが、それに反して定期収入は少ないため、お金周りがズンドコにシビアです。
◆粗さは見え隠れするも、最近の流行を捉えたモダンゲーム
とまあ、そんな感じでこの「エンバーカデロ」、カードの使い道や取捨選択をメインに手元を育てる箱庭感をメインに据えつつ、桟橋や議会トラックと言ったマジョリティ争いや、全体ボード上でのポジション争いといったインタラクションを備えたゲームです。
少し前のドイツゲームはプレイヤー同士の絡み合いが濃厚なインタラクションの強い「外向き」のゲーム、昨今のゲームは手元をカチャカチャするパズル要素の強い「内向き」のゲームが主流と言えますが、このゲームは「内向き:外向き」の割合で言えば「7:3」くらいで、内向きベースのちょうどいい塩梅のゲームと言えるのではないかと思います。
ちょうどいい、という意味では、最近のゲームは端々まで丹精に整えられたキッチリとしたゲームも多いんですけども、このゲームは随所に荒々しさ、野趣も残していて、その辺りがカードメインのゲームの楽しさの根本をキチンと踏まえているなと感じさせてくれます。カードゲームの楽しさ、をもうちょっと噛み砕くと「そのカード強すぎだろ!」「このカード弱いんだけど!?」といったカード価値の評論という視点が一つあって、カードバランスが整いすぎたゲームはお上品すぎて塩気まで足りないと感じることもあるんですけども、このゲームはゲームバランスを逸脱しない範囲での強カード、弱カードというグラデーションがあるように感じます。負けたのは引き運のせい!
また、ゲームの進行と共に発展していく立体的な街並みは目にも楽しいです。一方でバランスゲーム的な手先の器用さを要求される局面もあり、100%ポジティブな要素かと言えば、そこは手間とのトレードオフとの関係ではあります。
ぼくは根がシステム派なので見た目一辺倒の要素の評価は辛いんですけども、とは言え、これを別のものに代替するのが難しいゲームデザインであることは確かですし、そのためにタイルやらプラ駒やら工夫している点を見ると意欲は感じられます。
資源を集めて建物を建設するというゲームの構造自体はそこまで目新しい点はないのですが、カードの補充と保管でジレンマを増やしつつ、より計画的なゲーム運びを実現していて、遊び終わった後に納得感があるのはよいところです。運に翻弄される感じもありつつ、でも終わってみれば落ち着くところに落ち着いたなという感もあり、次はもっとうまくやれるんじゃないかと思わせてくれるので、運要素のまぶし方が適切なんだと思います。
一方で、端々まで気の効いた、全てのルールが適切で美しいゲームかと言えば、実はそうとも言えない、脇の甘さも垣間見えるゲームではあります。野性味!
例えば、「2ラウンド目以降は、その時点で最も得点の少ないプレイヤーがスタートプレイヤーになる」ルールがあるんですけども、マジョリティ争いをするゲームって基本的には後手が有利なんですね。デザイナーは「先手番はカードの購入で選択肢が広いため有利である」とBGGで述べているんですけども、これはちょっとプレイした実感とは違うかなーという印象もあります。
また、議会トラックを進めることでプレイヤー共有の建造物となる「ランドマークカード」が公開されるんですけども、これも単純なめくりでガチャ運が相当に強いんです。自分が得しないばかりか他人の得になってしまう局面もあるため、やや乱暴に感じる人もいるかもしれません。
なので、その辺が気になるようであれば、ハウスルールとして下記のような処理を行うのもアリかとは思います。ただ、「絶対にこうした方がいいよ!」というものではありませんので、適用の際には参加者の同意を得たほうがよいかと思います。単純にプレイヤーに判断を迫る機会を増やしてテンポを悪くするので、こうしたゲームに慣れている人向けの選択肢です。
●P16 「次ラウンドの準備」の最後の項目を読み替えます。
読み替え前:
・得点トラック上で最高尾にいるプレイヤーにスタートプレイヤーマーカーを渡します。〜〜〜
読み替え後:
・得点トラック上で最高尾にいるプレイヤーは、任意のプレイヤーにスタートプレイヤーマーカーを渡します。〜〜〜
●P11 「ランドマークカード」の最初の段落を読み替えます。
読み替え前:
議会トラック上のランドマークスペースに到達(または通過)するたびに、プレイヤーはランドマークカードの山の一番上のカードを表向きにし、船/建物市場の近くに置きます。〜〜〜
読み替え後:
議会トラック上のランドマークスペースに到達(または通過)するたびに、プレイヤーはランドマークカードの山の上からカードを2枚引き、1枚を表向きにして船/建物市場の近くに置き、もう1枚を裏向きのまま山の底に戻します。〜〜〜
まあ、プレイヤーの皆様におかれましては色々と試してみて頂いて、様々な意見を交わして貰えると面白いのかなとも思っています。ゲームバランスについて諸々議論できるのもゲーマーズゲームならではの魅力、懐の深さだと個人的には思っています。
◆拡張「沈まない船」について
同時発売する拡張「沈まない船」には3つの要素が含まれています。「新しい船カード/建物カード」「イベントカード」「5人プレイ対応」です。
「沈まない船」の名の通り、この拡張では「不沈船」が登場します。建物の建設コストとして手持ちの船を沈める必要がある建物カードがいくつかあるのですが、「不沈船」はそうしたコストとして割り当てることができないデメリットがある反面、様々な特殊効果を持っています。
また特殊能力を持った新しい建物カードも追加され、カードプールが潤沢になります。基本的にこの追加カードはパワーカードが多いので、カード選択の面では先手有利に傾くのではないかと思います(し、ゲームデザイナーの先手有利発言は拡張の存在前提の話かとも思います)。
「イベントカード」を導入すると各ラウンドでちょっとしたランダムイベントが発生します。プレイ感を大きく変えるほどではなく、若干キツさが緩和する方向のラッキーイベントを追加するといった塩梅です。
ちなみに拡張の各要素はモジュール式となっているため、実装の取捨選択が可能です。
「5人プレイ対応」は、その名の通りに5人目のプレイヤー用の内容物が含まれています。マップは4人用と変わらないので桟橋の奪い合いがより激化することでしょう。
マストバイな拡張かと聞かれれば、どうかなー、あった方が嬉しくはあるけどなー、くらいの拡張だとは思います。一度基本を試してみてからでも遅くはないのかなと。追加のカードは面白い効果のものが多いですけども、最初は振り回されちゃいそうな気がしますし、慣れたから目にした方がパワーカードは笑えて面白いのはあると思います。
◆面白さは太鼓判! あとは皆様のご支持が頂ければと!
「エンバーカデロ」は数寄ゲームズとしては珍しい出版プロセスを踏んだタイトルと言えます。というのは、このゲーム、友人がゲーム会に持ち込んだものを遊ばせて貰ったのが最初の出会いなんですけども、その時点では出版意欲はゼロだったんですね。
というのは、版元のRenegade Game Studiosは日本でも付き合い先が多いところなので、まあ、面白ければどこかが日本語版を出すだろうし、そうでなければそういうことだろう、と構えていたからです。なのでいっちょ試してやろう的な感覚ではなく、普通にゲームを遊ぶ感覚、完全にニュートラルな気持ちで遊んだんですね。
でまあ、遊んでみたら、こりゃ面白いぞと。ゲームの構造は理に適っているし、オリジナリティもあって、スケール感もある。多少の粗はあるにしてもそれをねじ伏せる快感があるし、もう1回遊びたい気持ちも強くてインパクトも脳裏に残ると。こりゃどこかから日本語版が出るなーと思ったワケです。
ただ、待ってみても、どうにもそうした雰囲気がなかったので、うーん、これは問い合わせてみてもいいのかなと思えてきました。そこでRenegade Game Studiosに問い合わせてみたところ版権は利用可能だったので契約に至るという運びになります。まあ、そこからが結構長かったんですけども。
1プレイヤーの立場で遊んだタイトルを自分主導で出版できるのは本当に稀有な例でして(まあ、トリテでは例があるんですけども)、これはラッキーなのかもしれないし、いや、自分の感覚が単に世の中とズレているのかもしれない、と思うところもあります。
ただまあ、これまで出版してきたタイトルの受け取られ方を見る分には、そこまで自分の感覚は狂ったものではないハズで、だとすると、このゲーム、めちゃくちゃ面白いのに埋もれているタイトルということになるぞ、と思ってはいるんですよね。
なので、このゲームについては「遊んだ人に損はさせないぜ!」という結構な自信があります。とは言え、最初に述べたとおり、このゲームは「知る人ぞ知る」というヤツでして、「全ゲームファン待望のあの名作がついに発売!」というテンションではありません。残念ながら。少しでも知って貰おう、知られないままに終わってしまうのはあまりにもったいないぞ、と思っているのでこうして紹介記事を書いています。
逆に言えば、このゲームの本当の面白さを広められるのは、実際に手に取って遊んでみたあなたかもしれません。あなたの感性と体験をもってして、このゲームの真価を広く世に問うこともできる。そういう機会を与えてくれるタイトルとも言えます。
年初の話として「メッシーナ1347」が発売からまあまあな時間差があってから盛り上がったことがありまして、ぼくはこのムーブメントを興味深く感じていたんですよね。
発売した直後も、発売から半年後も、ゲームの面白さ自体に変化があったワケではありません。でも、受け取られ方が大きく変わったワケです。不思議なもんですね。
「メッシーナ1347」も発売前からぼくとしては自信のあったタイトルではありまして、「これは日本のゲームファンの肌感に合うぞ!」と思って送り出したものの、その価値が皆様に浸透するまでは思ったよりも時間がかかりました。だから発売直後は、「うーん、感覚がズレてたかな?」と不安に思ったこともあったんですけども、徐々に盛り上がってくれたことでなんとか自信が取り戻せた気持ちにもなったんですよね。
結局のところ、ゲームの盛り上がりってユーザー主導と言いますか、本当の熱気は遊んだ人達の中から醸成されるものであって、究極的にはこっち側の都合でどうこうできるもんじゃないんですよ。ただまあ、本当に面白いゲームはちゃんと評価されるので。そこはぼくはゲーム好きの人たちを信頼しています。
なので、信じて、送り出す。こっちにできることはそこまでですよと。「これは絶対に面白いよ!」と確信したゲームだけを送り出して、あとはジャッジを受け手に委ねる。それがまあ、一番健全なやり方なのかなと思っています。
そういうワケでこの「エンバーカデロ」、尖った面白さは保証済みのタイトルです。そこは自信があります。
あとはこの面白さをもっと多くの人と共有したいと皆様にも思って貰えれば嬉しいんですが、はてさて、どうなるでしょうか。ここは神のみぞ知るといった心境です。
また、そんな抜群の面白タイトルをお届けするまで大変なお時間を頂いてしまったことは申し訳ない気持ちもあります。とは言え、ようやくお届けできそうだぞという安堵感が今は勝っています。
まあ、先述の通りに粗もあるタイトルと言えばそうですが、そうした粗さも含めて愛嬌のあるタイトルだとは思いますし、多くの方にぜひ遊んで頂きたい一作です。どうか触ってみて貰って、一言でもいいので感想をつぶやいて貰えれば嬉しいです。
エンバーカデロ
プレイ人数:1-4人
対象年齢:12歳以上
プレイ時間:60-90分
ゲームデザイン:Adam Buckingham, Ed Marriott
アートワーク:Janos Orban
小売希望価格:8800円(税込)
拡張:沈まない船
プレイ人数:1-5人
小売希望価格:2530円(税込)