
表題通り、本日から数寄ゲームズ通販サイトで「ドラフトザウルス」を販売します。プレイ人数は2〜5人、プレイ年齢8歳以上、プレイ時間15分、価格は税込2750円です。独自の和訳ルールを添付する他、英語、ドイツ語、フランス語のルールブックが同梱されています。
デザイナーはチームカエダマ(アントワーヌ・ボゥザ、コランタン・ルブラ、ルドヴィック・モーブロン、テオ・リヴィエ)、パブリッシャーはフランスのankamaです。今年のフランス年間ゲーム大賞にノミネートし、大賞こそ逃したものの高い評価を得ております。チームカエダマの公式サイトによると、これで5つ目の賞を獲得したとかなんとか。
恐竜ポーズを取るチームカエダマの面々。 どういう経緯でこのチームが結成されたのかは公式サイトを見てもよーわからんのですが、チームカエダマ名義では日本語版も発売されている「ニンジャアカデミー」なんかも制作しています。
個人に焦点を当てれば、「世界の七不思議」や「花火」などで知られるアントワーヌ・ボゥザ、そのボゥザとあの「ガイジンダッシュ」を制作したコランタン・ルブラ、「キャッシュアンドガンズ」のルドヴィック・モーブロン、ウィンストンドラフトを採用した「雲海」や直接攻撃(物理)パーティーゲーム「ひっつきカメレオン」の作者、テオ・リヴィエと、フランスの著名なデザイナーが集まった強力なチームであることがわかります。
やはり、こうして並べてみると、フランスゲームの潮流の一つであるアクション要素も交えたファニーなゲーム作りを得意とする面々という印象が強いですね。で、果たしてこの「ドラフトザウルス」がどういうゲームなのか、と言えば、これはもう名は体を表す通りのドラフトゲームでございます。先述の通り、チームカエダマには「世界の七不思議」で知られるボゥザもいますから、こりゃもうドラフト好きにとっては避けて通れないゲームと言えましょう。
さて、このゲームの最大の特徴は普通はカードで行うドラフトを恐竜の木コマ(ミーザウルス……とでもいうべきか……?)を握って行うというところにあります。プレイヤーは恐竜コマの入った袋から(もちろん中は見ませんよ)ガッと6体の恐竜を引き抜いて、それを手のひらに隠しつつ自分の欲しい恐竜をピックしてドラフトするのですね。

袋の中には60体の緻密なデザインの恐竜コマがザックザク。
恐竜コマはそれぞれ形が異なりますから、ともすると狙って自分の欲しい恐竜を引き当てられそうな気もするんですけども、試してみたところ「うん、全然わからん!」ということがわかりました。結構形には特徴あるんですけども、触感だけでは全然わからず、ガンを気にする必要はなさそうです。
ちなみに数寄ゲームズから出ている
「ペーターと2匹の牧羊犬」も同様に数種類の動物コマを袋引きするゲームなんですけども、このゲームも製作中に「動物コマ、触感でわかっちゃいそうだけどええんか?」→「うん、わからん! 問題なし!」という模索があり、チームカエダマでもおそらく同じような試行錯誤があったのではないかなあと思うとちょっと親近感を覚えます。
もうちょいゲームデザインに寄った話をすると、「ペーター〜」の場合は2人用ゲームということもあって、自分が引かなかったコマはほぼ相手が持っているという論理の帰結から、あまりその辺は気にしなくてもいいというジャッジが下せたんですけども、こちらは最大5人まで遊べるゲームなので、より大胆なディレクションだなと感じます。この辺りデザイナー目線だと「ガンがあるのは以ての外だ!」みたいに考えがちなんですけども、プレイヤー目線だとあんま気にならない、という現象があるのは覚えておくと少し便利です。
さて、このゲームの得点システムはいわゆるセットコレクションで、舞台となる恐竜動物園の6種類のケージに上手いこと恐竜を収容できると得点になるよ、という仕組みになっています。同種の恐竜を集めることで得点が伸びる「共存の森」、逆に異なる種類の恐竜を集めることで得点が伸びる「異種の草地」、ちょうど三体の恐竜を集めると高得点になる「三本松」、指定の恐竜の数を他プレイヤーと比較するマジョリティ「ジャングルの王」など、得点条件はシンプルでゲーム好きなら馴染みのあるものばかりです。
ドラフトは自分の点を伸ばしつつ、(コマを受け渡す)下家の点を殺すムーブが基本なので、得点システムのわかりやすさはゲームのわかりやすさと直結します。またファミリーゲームという側面からも得点条件が整理されているのは好ましいと言えましょう。
あと、ドラフトゲームでよくあるのが下家に言われる「え、こんなの回ってきたの!?」というセリフです。このセリフ、結構苦手に思う人もいるようで、それは(発言者にそうした意図がない場合でも)自分の選択が失敗だったのではないかと不安に駆られるためでしょう。
言う側としては「もちろん上家には相応の理由があり、色々な偶然が重なった結果、これが残ったんだな」という意図を言外に籠めている(場合が多いと思う)んですけども、言われる側としてはやはり何か見落としがあったかも的な不安が芽生えるワケです。
でまあ、突き詰めるとその不安は、ルールの理解への不安であって、100人中100人がこれをピックするしかないという局面でのピックの後にそのセリフを言われても「まあ、しゃーないんや」で済む話なんですね。
ドラフトゲームって一見簡単なように見えて、自分と他人の状況を把握できて初めて成り立つ面がある結構なプレイヤー負担の重いメカニクスなので、その負担をどう軽くするかはデザイナーの腕の見せどころだと思います(ここを考慮しないゲームは自分の盤面だけ見てればいいやというゲームになりがち……)。
さて、自分がピックした恐竜は自由にケージに収容できるかと言えばさにあらず。このゲームにはもう一つの縛りがあります。
それが「配置ダイス」で、プレイヤーは持ち回りで手番に1回サイコロを振り、その出目に従って恐竜を配置しなければなりません(ただしダイスを振ったプレイヤーのみ、このターンは配置制限なし)。
概ね6種類中3種類のケージに配置するような制限があり、ダイス目によっては今回欲しかった恐竜を諦めて別の恐竜を配置せざるを得ない場合もありえます。普通のドラフトにダイス運を加味している点にも一捻りがありますし、ダイスを振るプレイヤーにちょっとした特典を与えるこのダイスの使い方って昨今流行りのロールアンドライトの援用でもありまして、流行に敏感なデザイナーの気風が伺えます。
得点システムも考えてみればロールアンドライト的な風合いがありまして、「ロールアンドライトのコンポーネントを強化してボードゲームに立ち帰る」というこれまた近年流行りの手法がここでも見られるという点でなるほどモダンなデザインなのだなと感じ入ります。誰でも遊べる手軽なファミリーゲームという外面ですけども、システム派の方々もぜひこの組み合わせの新規性は見て欲しいと言いますか、ただの目先を変えたドラフトゲームではないぞ、というユニークさを遊んで確かめて貰えればとも思います(ロールアンドライトでドラフトと言うとスコット・アルメスの「ブーメラン」を想像する向きもありますが、このゲームの出発点も案外同根なのかもしれません)。
さてまあ、そんなワケでルールは簡潔、コンポーネントはリッチ、新規性もあり、テーマは子供とアメリカ人に人気、と隙のないこのゲーム、うちでは珍しく多くの方に楽しんで頂けるタイプのゲームかと思います。どこでも取り出せてどこでも遊べる非常に使い勝手のよろしいゲームかと。
また、今回、宅急便コンパクトでは微妙に収まらないサイズということもあり、特別に「ドラフトザウルスお届け便」を設定して送料800円にてお送りします。単品でもお買い求め頂きやすくしましたのでどうぞご利用頂ければと思います(他の商品と合わせてお買い上げ頂いた場合は送料の高い方に統一されます)。
てか、箱、あと1cm薄くても問題なさそうなんだけどな…… フランス人にジャパニーズ宅急便コンパクトの存在を伝えて知らんがなと言われたい!(本年2度目)