2019年11月08日

「Aquatica/アクアティカ」紹介



 「アクアティカ」は、「スマートフォン株式会社」で一躍脚光を浴びたロシアのCosmodrome Games/コスモドロームゲームズの発売した今年のエッセン新作だ。デザイナーはこの作品がデビュー作となるIvan Tuzovsky。「スマートフォン株式会社」のデザイナーのIvan Lashinとは同名のイワン違いだが、Ivan Lashin自身もこのゲームのデベロップに参加しているらしくクレジットにその記載がある。

 テーマ的にはプレイヤーは海の王の一人となって、アクアティカ大王国の偉大な支配者になるために繁栄ポイントを稼ぐことが目的となる。タイトルの「アクアティカ」とは、どうやら「神聖ローマ帝国」みたいなそういう造語らしいw


 ゲームの終了条件は大きく2つあり、「いずれかのプレイヤーが4つの目標を達成する」か「シーフォークかロケーションの山札が尽きる」ことで、終了トリガーが引かれる。終了トリガーを引いたプレイヤーは最後にもう1回アクションできるので、基本的には終了トリガーを引いたプレイヤーが有利だ。このゲームは目標を人より早く達成することで、より高い繁栄ポイントを獲得できるので、最速の達成手順を探るレースゲームの趣が強い。

 で、基本ルールの4つの目標は、「手札を10枚まで増やす」とか「1つのタイプのロケーションを4枚獲得する」とか、さほど意識せずとも自然と達成できるように設定されている。なので初回プレイでは「あ、オレ目標達成できてるわ」ってなことがありがちw 目標達成を意識してゲームを展開できるようになればアクアティカ初心者を脱却できたと言っていいだろう。

 この目標は基本ルールで4種用意されているのだが、これらを個別に入れ替える上級ルールにはかなりひねった「お題」も含まれているので、どの順番で解決するかが腕の見せ所となるだろう。基本ルールは思ったよりもサックリと終わり、人によってはそれが物足りなく感じるかもしれないが、上級ルールではもう少しじっくりとした盤面作りを要求されることになる。

 直接的なインタラクションはさほどないのだが、目標達成の遅れが大きな差に繋がるので、自分と他人の進行状況を両睨みしたジリジリとした緊張感があるゲームだ。今風の中量級ゲームの王道デザインで、「スマートフォン株式会社」もそうだったが、このメーカーはどうも新興メーカーとは思えない垢抜けた都会っぽさがあるw

 プレイヤーの手番では、メインアクションとして1枚のカードをプレイし、追加のフリーアクションを任意に実行する。
 メインアクションで使用するシーフォークカードは、初期手札として全員共通の6枚のカードと固有の能力を持つ「海の王カード」が1枚ある。特に海の王カードの効果はどれも強力なので、勝つためには海の王カードの強みを活かした戦略の組み立てが必要だろう。上級ルールでは海の王カードのドラフトも選択することができるのでゲームに慣れてきたらこのバリアントも面白そうだ。


 王の一人「簒奪者ザンダー」。色々な効果が発動するよくばりセット。

 プレイされた手札は効果を処理したあとで捨札置き場に置かれる。捨札は初期手札の1枚である「マトロナ」をプレイすることで全て回収できるのだが、この辺りの挙動は少しゲームを齧っている人なら「コンコルディア」の手札循環メカニクスと言えば一発で伝わるだろうw


 妊婦さんっぽい「マトロナ」。名前の元ネタは帝政ローマ時代の上流階級の既婚女性、らしい。

 また、ゲーム中には個別の能力を持つシーフォークを「雇用」することによって手札のバリエーションを増やすこともできる。これらのカードは9種3セットと数字で見る分にはさほど多くないのだが、どれも特徴的な能力を持っているので使いこなしたい欲を掻き立てられる。


 ロケーションの獲得はこのゲームの重要なポイントだ。このゲームの物語設定は「資源が枯渇したので新しい土地を探して支配しよう!」というものだが、そのテーマ通り、システムにおいても太い幹として屹立するのがこのロケーションだ。

 ロケーションには様々な役割があり、ゲーム中のお金となる「武力」と「コイン」を生み出す役割もあれば、フリーアクションを提供する役割もあり、ゲーム終了時の得点にもなれば、ボーナスでマンタを与えてもくれる。

 まあ、とにかく様々な特典がロケーション経由で与えられるため、ゲーム的にも疎かにはできない存在で、「上昇」を絡めたメカニクスにもこのゲームならではの独自性がある。

 大体このゲームの特徴なコンポーネントでもある3層プレイヤーボードはこのロケーションを活かすためだけに設計されたものなので、それだけでもロケーションの重要性がわかるというものだw

 逆に言えば、それだけてんこ盛りの要素をカード1枚に閉じ込めたところにデザイナーの手腕が伺える。ただまあ、情報が多すぎて初見では何を重視していいのかがわからないw まあ、コストの高いロケーションは強いんだよぐらいの感覚でいいと思うw


 3層プレイヤーボードと差し込まれたロケーションカードの図。

 ちなみにロケーションの争奪戦は予想以上に激しい。自分が欲しいと思ったロケーションが手番が回って来る前になくなることもしばしば。この辺りはプレイ人数によって大きく変わってきそうだが、特に4人戦は盤面がダイナミックに動くだろう。

 少なくなったロケーションを補充する能力を持った「海竜騎兵」というシーフォークカードもある。あるにはあるのだが…… この手のアクションは実行した下家のプレイヤーが一番得な立場になるので、どうせなら上家に打って欲しいカードだw なので、ゲーム中は「誰かロケーション補充しろや!」という牽制も起こるw


 英名Sea Horseをそのまま訳すとタツノオトシゴになってカッチョ悪いので無理矢理「海竜騎兵」と訳したという事情がある。

 「海竜騎兵」は、補充と同時にロケーションを獲得できるので利点も大きいのだが、コストを支払うための十分なリソースがないと仕掛けにくい。ロケーションをめくった上でちょうどいい塩梅で獲得できるロケーションがあればいいが…… まあ、リスキーではあるw


 それゆえに受けを広くするためにも手元のリソースを増やすことに執心しがちなのだが、ロケーションをバンバン獲得した結果、プレイヤーはあることに気づく。「しまった、もうロケーション置く場所がない!」

 ロケーションを配置できるスロットは5枚分あるのだが、リソースを消費して出し殻になったロケーションはその後もスロットを占有し続ける。このロケーションを取り除くためには「上昇」や「得点化」のアクションが必要になる。

 ただ、ここが大変憎らしいところで…… 得点化に主に使用するシーフォークカード「波の語り手」は「2枚のロケーションを得点化できる」。となれば、1回のアクションで2枚のロケーションを得点化できるようにカチャカチャ準備しないとなんかムダっぽく感じるワケだ! リソースマネジメント欲をくすぐられる細かいながらもいい仕事と言えるw


ロボトミー/Lobotomyされたかのようなデザインの「波の語り手」。ペットのウツボがチャーミング。

 1回使った「波の語り手」は手札を回収するまで使えなくなるのでやはり無駄には打てないという制約もあり、台所事情は常に苦しいw ゲームが進む度にあの手この手でプレイヤーに課題を与えてくるので大変めまぐるしい。

 ロケーションには完全上昇させることで野生のマンタを得られるものもある。マンタはリソースやフリーアクションを提供してくれるのだが、このゲームはリソースの制約が厳しいゲームなので使用条件のゆるいマンタの存在はありがたい。

 例えば「得点化」を持つマンタはカードと違って1枚のロケーションしか得点化できない。単純なパワーは小さいが裏を返せば小回りが効くので重宝する。

 このように野生のマンタには貴重なアクションを提供するものもあり、また目標達成にもマンタを消費するので、マンタはあるに越したことはない。マンタが貰えるロケーションを優先的に獲得するのも一つの手だ。


 とまあ、こんな感じで、ロケーションの獲得と得点化を繰り返していくと自然と目標が達成されていく。ゲーム終盤の展開は思ったよりも早いので無駄なく手番を使わなくてはならない。特にロケーションを得点化できないままゲームが終わってしまうともったいないので風呂敷を広げるよりも畳む意識が大事だw


 幹となるメインアクションを中心に枝葉となる多数のフリーアクションで補完するシステムは当世風のゲームによく見られる作りで、簡便さと奥深さを両立した機能的なデザインだ。ルールを読む限りではサッパリとしたゲームかなと思わされがちだが、実際に遊んでみるとフリーアクションの使い場所と組み合わせのパズル感でかなりのコクがある。

 ただ、このコクは人によってはアクにも感じるかもしれない。ロケーションもただ使えばいいだけでなく、将来を見越した進め方が求められるので効率的に手を進めようとすると考慮すべき要素の数に圧倒されてしまうかもしれない。

 とは言え、ゲーム自体は手札が2巡する頃には終わるので短く深く知的勝負を楽しめるという意味ではよい塩梅なのだろう。アクもなければコクもないサッパリしすぎたゲームよりは「ここを楽しませたい!」というポイントが明瞭で好感が持てる。

 エッセン新作のBGG人気を表すGeekBuzzではまさかの第2位を獲得し、いやいや、これファミリーゲームじゃないの? と思っていたのだが、遊んでみると根はゲーマーズゲームでその辺りがギークに支持されたのかもしれない。


 欠点を言えばプラ製のマンタが造形的には細かくてデキがいいのだが、肝心のアイコンが一色刷りで見づらいことだ。そこは大事なところだろ! こう考えてみると「アズール」のリッチさと視認性を両立させたコンポーネントはよく考えられているw

 これ、立体に拘らずにパンチボードの厚紙タイルとかにすれば視認性の問題も解決したんだろうけど、多分それだと今のアメリカ市場の要求からはチープに映っちゃうんだろうなあ……w なまじ3層プレイヤーボードというコンポーネントをウリにしたゲームという側面もあって、なかなか手を抜きづらい事情はあるんだろう。

 あと、微妙にボードのくぼみとカードのアイコンがズレているのも気にはなる。まあ、それで遊びにくさを感じることはないんだけど、「スマートフォン株式会社」と同様、作りの詰めが甘いところが散見されるw まあ、実際作るのは大変なんだろうなあというのはわかるんだけど。


 とまあ、気になるのはそれくらいで全体としては質がいいと思う。「スマートフォン株式会社」もそういうところがあったのだが、「宝石の煌めき」辺りからもう一歩ゲーマーズゲームに踏み込みたい、という人に適したゲームなんじゃないかな。

 販売は数寄ゲームズ通販サイトで行っている他、ゲームマーケット秋でも扱う予定なので気になる方はどうぞ。多少の原語依存があるので今回はカードに貼る和訳シールも同梱してます。

 一応セールストークを付け加えておくと、今回販売分にはエッセン限定のプロモカードが2種入っている。プロモカードの類は本当に入ってるのか怪しくてあんまり触れてなかったんだけど(「アンダーウォーターシティーズ」でデータ入稿までしたプロモカードが外付けだったという経験もあり)、なかなか面白い効果のカードなのでプレイの幅が広がりそうだ。

 このゲーム、コスモドロームゲームズに無理を言ってエッセン販売分のうちのいくつかを回して貰ったんだけど、エッセンでは2日目だか3日目で完売になったらしいので、いやー、ちょっと申し訳ないなーとも思ったり。ただ、それだけ日本のファンに楽しんで欲しいとも言っていたのでぜひ試してみてもらいたいね。
ラベル:aquatica
posted by 円卓P at 12:10| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする