2017年04月18日

解説! 「六次化農村」ってこんなゲーム

 考えてみたらなんも画像素材がない…… なんか貰えばよかったな。

「六次化農村」をゲームマーケットで発売致します。
http://www.b2fgames.com/article.php?story=20170414160157881

 さて、ゲームマーケット2017春にて拙作「六次化農村」がニューゲームズオーダーさんから発売されることになりました。
 このゲームは去年開催された第2回東京ドイツゲーム賞にて審査員特別賞を受賞したタイトルでして、かなりフリーク向けに寄せた2時間級のゲーマーズゲームということになります。
 このゲームについては上記のリンク先でNGOの吉田さんが色々と語っているんですが、ぼくも語りたいことが色々とあります。もうありすぎて困るんですが。ざっと書き出してみると以下の項目があります。

・六次化農村はどんなゲームなのか?
・六次化農村はどのようにデザインされたのか?
・六次化農村はどのように商品化が決まったのか?
・六次化農村はどのようにダメ出しされ、ディベロップされたのか?

 しかしながら、現状、周辺事情(項目としては最後)ばかりがオモシロがられていて、このゲームの魅力については全くアピールできていないような…… これはどうなんじゃろなという話でして。
 ニューゲームズオーダーさんの公式サイトでゲムマ春での取り置き予約も始まったことですし、「六次化農村はどんなゲームなのか?」という部分をざっくりと紹介したいと思います。

 さて、六次化農村。まずタイトルに冠された「六次化」という言葉は、殆どの方が耳慣れない単語だと思われます。
 ここでの「六次」とはいわゆる一次産業、二次産業、三次産業の乗算を意味していまして、生産(一次産業)、加工(二次産業)、販売(三次産業)の全てを一つの主体が行う、的な意味合いになります。旧来の農家は、農作物の生産だけを担当して、その加工や販売については協同組合に委託する役割分担を図ってきたのですが、これからの農家は加工や販売まで自前で賄うことで商品力を強めたり収益率を上げたりしよう、という動きです。……と、ぼくは理解していますが、詳しい人からはツッコミが入るかもしれません。
 ちなみにこの六次化という概念は一次二次三次の積なのがポイントで決して和ではないんですね。それはつまり全ての産業のシナジーを重視するという意味で、いずれかの産業が疎かになれば積もゼロになってしまうよ、ということなんです。

 ということでこの六次化農村は、その名が現すように農産物を生産・加工・販売してお金を稼ぐゲームです。もう少し踏み込むとそうやって得たお金を元手に新たな畑を購入することでドンドンと収入が膨らんでいく(みんな大好き)拡大再生産のゲームでもあります。ゲームに勝つためには「農産物の生産・加工・販売」と「畑の購入」をいかに効率的にぐるぐると回していけるかが課題となるでしょう。

 さらにこのゲームの要素をもう少し分解して、BGG的なメカニズム表記に落とし込むならば、

・Pick-up and Deliver
・Route/Network Building
・Voting

 のゲームという感じになるかと思います。ピックアンドデリバーやルート構築については「自分で作った農産物をピックしてルート内の直売所までデリバリーするゲームですよ」と言えばイメージは掴みやすいかと思います。
 プレイヤーは畑や牧場から3マス以内の任意の直売所に農産物を出荷できます。いち早く直売所まで農産物を出荷すれば高額で販売できる(かもしれない)ので手番順が重要です。
 ただし、一つの直売所に同種の農産物が出荷された場合、よりランクの低い農産物、より高価な農産物は売れ残ってしまいます。売れ残った農産物は廃棄されてしまい、一銭も得ることができませんので、生産の段階から他のプレイヤーとのバッティングを避ける作付計画を練らなければなりません。
 とは言え、基本的にこのゲームはバッティングが起こるようになってます。そこを何とかするのが「加工所」の存在。加工所に持ち込まれた農産物は加工品に生まれ変わって別物扱いとなるのでこれで晴れてバッティングを避けることができるワケです。

 では、プレイヤーはどうやって加工所を建設するのかと言いますと、ここで最後の要素、Voting、つまり投票要素の登場になります。
 このゲームには「議会」の要素があり、加工所を含めた様々な建物から「どの建物を建設するのか」「どのマスに建設するのか」をプレイヤーの投票によって採択します。
 バッティングしているプレイヤー間では加工所の建設自体は論を俟たないでしょう。しかし、加工所を「どこに建設するか」は意見が分かれるかもしれません。なにせ自分だけが使えて、相手が使えない場所に加工所を建設できればこのバッティングでは俄然優位に立てるからです。もちろん、お互いが使える場所に加工所を建設するという穏便な擦り合わせもありえますが、それには地理的条件など様々な前提が必要になることでしょう。
 また、「議会」では「建物の建設議案」と並行して「補助金制度の議案」の採択も行われます。「建物の建設議案」と「補助金制度の議案」で使用する投票コマは共用なので、投票コマをどちらで使うかの配分にプレイヤーは頭を悩ませることになるでしょうし、相手のそうした懐事情を見越して投票を優位に進めることもできるでしょう。
 さらに頭を悩ませるのは未使用で終わった投票コマの数に応じて、以降の手番順を決める権利が得られることです(※投票コマの持ち越しはできません)。先述の出荷の順番も含めてこのゲームは先手が有利な局面が数多くあり、ゲームが進むに従って手番順の重みはいや増して行くことでしょう。
 そんなこともあって「議会」での立ち回りは重要です。また、議案の採択に投票コマを使うと採択の結果に関わらず貢献度(※農地購入のコストとして使う)を得られるので議案の採択には積極的に関わった方がいいでしょう。

 さて、このように使い道が多岐に渡る投票コマ。でも使える投票コマは限られているし…… とお嘆きの皆様には朗報があります。

 なんと、このゲームでは手持ちのお金を減らすことで使える投票コマを増やせるのです。ふしぎ!

 ……農村における発言力とはすなわち財力なのかもしれませんね。あ、これはゲームの話です。
 ちなみに投票コマの相場(?)ですが、1つで1金、2つで3金、3つで6金…… とゲーマーにはお馴染みの三角数となっております。一時にドバッと集めると出費が激しいので、毎回コツコツ集めるのが経済的でしょう。なんかマキャベリの「褒美は小出しにせよ」という言葉に通じるものがありますね……



 とまあ、そんな感じでこのゲームの概要について簡単に触れてきましたが、ピックアンドデリバーに投票という要素の組み合わせがこのゲームのユニークな点と言えるかもしれません。そして、このゲームでぼくが表現したかったのはまさにそこなのです。
 多分、「農業ゲー」と聞いて多くの方が想像するのは「自然と共生するロハスでエコな生活」とか「自然の厳しさと対峙して収穫を得る喜び」みたいな、人間と自然とを対比した内容ではないかと思います。
 が、このゲームがスポットライトを当てるのは、プレイヤー同士の利害関係の調整だったり村に貢献しないと土地を買えない気風と言った農村における人間と人間の絡み合いなのです。六次化農村はそういう割とブラックな加減の農村風景を描こうとしている「農業ゲー」です。
 プレイヤーは意識高く六次化・自立化を目指すけれど、村社会では協調が大事で目立つ人は叩かれるし、補助金からは逃げられないんだよね、みたいな、ある種の農村への偏見が篭ったテーマチックなゲームとも言えます。

 また、こうしたゲーマーズゲームは各種リソースをいかに遺漏なく管理するかの内向きなリソースマネジメントの手腕を競うゲームが多いです。ぼく個人としてはそうしたゲームも大の好物です。
 しかし、このゲームに関しては(もちろんプレイヤーに最低限の計画性は求めますが)、自分と他人の都合をどのように擦り合わせるか、プレイヤーVSシステムではなく、プレイヤーVSプレイヤーのインタラクションを色濃くにじませた内容となっています。
 それはこのゲームが東京ドイツゲーム賞の応募作品だからです。「90年代ドイツゲームとはなんぞや?」という命題からコンセプトが立てられたゲームだからです。
 と言っても、この東京ドイツゲーム賞、実は90年代ドイツゲームそのままを提示したらアウトという罠が仕掛けられた賞なのではないかとぼくは思っていまして、90年代を踏まえた上でもっと古い時代、あるいは逆に時代の最先端の文脈をアクセントとして加味した今にしかないゲームこそ求められていたのではないかと思っています。
 なのでこのゲームでは、近年の洗練されたモダンユーロとは一風色合いの異なる、懐かしさを含んだ泥臭くも粘っこいマルチゲーム、大人のための経済ゲームを指向してみました。でも、本当にドロッドロなマルチゲーム(イントリーゲとか)はどうにも疲れるので、そこは今風の軽さに留めています。
 また、ぼく自身のゲーム経験について言えば、ぼくはドミニオン以降にボードゲームにハマったクチで90年代ドイツゲームをリアルタイムで経験してきた身ではありません。それだけに近年のゲームの様々な文法を織り込んでこのゲームは形作られています。
 つまりこのゲームは古くて新しいゲームなのではないかなあとぼくは思うのです。そういう意味で色々とユニークなゲームであるこの六次化農村。お手に取って頂ければそれに勝る嬉しさはありません。どうぞよろしくお願いします。


 なお、ゲームマーケット当日のご案内となりますが、六次化農村は「A-45 ニューゲームズオーダー」ブースのみの販売となります。「C31-32 蒼猫の巣出張所」ブースでの取り扱いはありませんので、「せっかくだから円卓さんから手渡しで買おうっと」と思っているJKの皆様にはとってもとっても申し訳ないのですが、どうぞニューゲームズオーダーブースにてお買い求めください。現在NGOサイトで当日分の取り置き予約も受け付けておりますのでこちらもご利用ください。
 ちなみに「ハツデン」はittenさんのブースで買えるのになんで六次化農村はダメなんよ、という話をちょっとしますと、このゲームのパッケージですが実はフードチェーンマグネイトと同サイズでして「あんな嵩張るもん狭い個人ブースに置けるか!」という話からそうなった次第です。どうぞご理解頂ければ幸いです。

「六次化農村」ゲームマーケット取り置き予約を受け付けます。
http://www.b2fgames.com/article.php?story=20170415192603248
ラベル:六次化農村
posted by 円卓P at 21:12| Comment(0) | 六次化農村 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする