2016年11月30日

「そんな顔してどうしたの?」制作記録 英語で伝えるムズカシさ



 これまでのあらすじ。「日本語版を作りたいんです!」とゲームデザイナーのPennieさんに伝えたら「日本版いいね! で、どこかいい博物館ある?」って返信が来ちゃいました。

 うっわーい、こりゃ困ったぞ! 困りはするけど、日本語版を作るためにここは丁寧に説明して根気よく理解を求めてかなきゃイカンですわね……!
 ということでPennieさんに返信の文面をば。まずはこちらの申し出に興味を示してくれたことに謝意を述べつつ、「ぼくの作りたいジャパニーズ・エディションはジャパニーズ・ランゲージ・エディションである」ということ、「ぼくはL.C.ベイツミュージアムの動物剥製に魅力を感じているのでその写真を使いたい」ということ、そして「日本の自然史博物館では上野の国立科学博物館が有名だよ!」と書きました。
 まあ、ぼくは国立科学博物館は行ったことないんですけども! でも公式サイトは英語での表記も充実してるんで、紹介するならここが妥当なんだろうなーと思った次第。

 http://www.kahaku.go.jp/

 ついでに(本来の目的とはちょっと離れてはしまうんですが)もしPennieさんが日本の博物館を題材にゲームを作る気があるなら協力は惜しみませんよ、的なことも書きました。まあ、日本版デッキもそれはそれで魅力的かもしれないなあ……

 とは言え本題としてはやっぱりL.C.ベイツミュージアムなワケでして。日本版もいいけど、まずはオリジナルの日本語版をぼくは作りたいのです。
 でもこの文章だけだとぼくの作りたい日本語版の意味がちゃんと伝わらないかもしれない…… うーむ、どうしたらPennieさんにぼくのやりたいことが伝わるだろうか……

 あ、そうだ。実際にゲームのどの部分をどう変えたいのか画像を添付すればいいんだ!

 ということで、原語版の「Why the long face ?」の画像をちょっと加工した「ぼくの作りたい日本語版のイメージ」を添付してメールを送ったのでした。


 白尾ジカってめっちゃ適当な和訳…… 製品版ではオジロジカになってます。

 さて、この画像を見てもらえればわかるように、ぼくは当初から日本語版を出すにあたって日本向けのローカライズ、特に日本市場の特性上、パッケージに手を入れることは不可欠と考えていました。いや、そのまま出せるならそのままの方が作業も発生しないし、ラクでいいんですけども、さすがにちょっと簡素すぎるので……
 これはつまり、パッケージデザインその他諸々に手を入れることについて、まずPennieさんから了承を得る必要があると言うことです。単純に動物名の日本語化だけならまず反対はされないとは思うのですが、グラフィックデザインまで話を広げるとこれはゲームデザイナーのデザイン思想に抵触する恐れがありまして、ここで理解を得るのに時間を取られるかもなあ、という予感はありました。

 なんとか話の分かる人であって欲しいなあ、と気を揉みつつメールを出したところ、その3時間後に返事が来ました。早いよ!!!

 「メールと画像をありがとう! ところであなたはグラフィックデザイナーなの? あなたが絵を描いてくれるの?」

 うーん、とりあえずこっちの意図する日本語版の意味はわかってもらえたのかな? そしてグラフィックに手を入れること自体には抵抗がない雰囲気っぽい……? 具体的にこちらが何をするつもりか尋ねてる感じかな。
 でもまあ、これならもうちょっと踏み込んでも大丈夫そうだぞ。ええっと、つまり、こっちがやりたいことは以下の三点かな。

・日本向けにローカライズさせて欲しい
・ローカライズの作業はこちらでやらせて欲しい
・日本の印刷会社で印刷させて欲しい

 まあ、ぼく自身はグラフィックデザイナーではないけれど、それは専門の人にお願いするつもりですよ。その際に発生する費用等はこちら持ちでやりますよ。と、メールには書き加えて。
 要はローカライズ作業とはなんぞや的なことを1から説明した感じではありますが、これを全部慣れない英語で伝えないといけないのが頭の痛い問題ではありました。書き方をちょっと間違えただけでも異なる意味で捉えられてしまう可能性もあって(日本版と日本語版の違いはその先例ですよね)、なるべく解釈の幅が少ない書き方をしなければなりません。
 でまあ、そんな感じで四苦八苦しながらメールを送ったところ……

 「あなたは作品と制作の編集と管理のために私にお金を払うことを提案していますか? 日本であなたに配布したいのですか、ゲームを購入して自分で管理したいのですか?」(※Google翻訳)

 というような返信が来ました。うわー、なんかもう、何から話せばいいんだこれー! Pennieさんは結構砕けた文章を書いてくる人なので解読からかなりカロリーを使います。もうやめて! ぼくのMPはとっくにゼロよ!
 編集と出版と販売の諸々がぐっちゃぐちゃになった文章で危うく混乱しかけたんですが、それはつまりPennieさんも混乱してるということですから、ここは正気を保って一つ一つ丁寧に切り分けて説明していかないといけません。

 ただ、日本語版の製作と出版の流れを一から説明するのは複雑に過ぎる! 英文で誤解なく全てを説明できる気がしない……!
 ぼくの英文スキルを冷静に考えるに、一度メッセージを伝えた後にPennieさんに正しく理解して貰えたのかを精査する手順を挟む必要がありますし、意図から外れた解釈をさせてしまうと軌道修正の苦労は雪だるま式に膨らみます。何よりも、そんなやり取りを逐一続けていたらぼくもPennieさんも心が折れかねません。

 マジでこの時はどうしたもんかと頭を抱えました。これが素人同士の恐ろしさで、明確なゴールは脳裏に描けているのにその青写真を共有するのが極めて困難なのです。しかしここは言い出しっぺのぼくがリードして話を進めていかなければなりません。うわああああ、困った……!

 ただ、一つ希望はあって、Pennieさんは日本、そして世界のゲーム文化、ゲーム市場に対してとても強い興味を示してくれていました。だからこそ彼女はなんかよくわからない海外のインディーメーカーのなんかよくわからない英文につきあってくれているのです。
 その気持ちを無碍にしてはなりません。Pennieさんがやる気ならぼくはそれに応える責任があります。

 ぼくは日本でゲームを製造したいこと、そして日本でそれを販売したいこと(つまりfrom Japan to Japanです)、その代わりにPennieさんにロイヤリティを支払いたいことを簡潔に書き、肝心のゲームとお金の流れに関してはフロー図を用意して伝えるアイディアを思いつきました。
 これならこちらが考えているゲームとお金の流れも明瞭に示すことができますし、何よりPennieさんから見ても「このジャパニーズ、適当な英文を書いているんじゃないか?」という不安が拭えるはずです。



 ということで作ったのがこれです。ありがとういらすとやさん! ボードゲームを遊ぶ人のイラストというドンピシャで必要な素材がマジで助かりました!

 ……よし、これならぼくのやりたい日本語版の製作工程が間違いなく伝わるはずだ! ぼくはフロー図を完成させるとメールに添付して送信しました。そして……


 そして、それから連絡はプッツリと途絶えたのです。
 なんでえええええ!?


 続きます。
posted by 円卓P at 21:08| Comment(0) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月28日

「娘は誰にもやらん」 「娘カード」「男カード」紹介

 今日はゲームに登場する「娘カード」と「男カード」を紹介します。
 各プレイヤーはゲーム開始時に好きな「娘カード」1枚を受け取ります。



 「娘カード」はいずれ劣らぬかわいい娘たちですが、それだけに娘への求婚者となる「男カード」を見る目は自然と厳しくなってしまうかもしれません。
 以下がゲームに登場する「男カード」になります。


こんなだらしのない男に娘をくれてやれるか!
ええい、娘は誰にもやらん!


センスがなにもかも10年前なんじゃ!
ええい、娘は誰にもやらん!


ワシより年上のムコなんぞ御免こうむるわい!
ええい、娘は誰にもやらん!


語尾になんでもウェーイをつけるのはやめんか!
ええい、娘は誰にもやらん!


メガネを取ると(3▽3)になってそうじゃのう……
ええい、娘は誰にもやらん!


雰囲気は悪くない…… が、いかにも出世に縁遠い面構えじゃわい!
ええい、娘は誰にもやらん!


ク、クール系男子だと……? ワシにはネクラにしか見えんわ!
ええい、娘は誰にもやらん!


おおお、オイルマネー……! し、しかし娘が外国に行ってしまうのはイヤじゃ!
ええい、娘は誰にもやらん!


く、この男デキる……! いやいや、何か魂胆があって娘に近づいたんじゃろう!?
ええい、娘は誰にもやらん!


ゴージャス……っ! いやいや、これは夢に決まっとるんじゃ!
ええい、娘は誰にもやらん!


 ……以上がゲームに登場する「男カード」と「娘カード」になります。
 ちなみにこのゲーム、男の求婚を断るのが本題ではなく、あくまで娘に見合った結婚相手を見つけてあげるのが本題ですので。
 そこのところは誤解なきよう……
posted by 円卓P at 21:19| Comment(0) | 娘は誰にもやらん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月25日

「そんな顔してどうしたの?」制作記録 作りたいのは日本語版です


 遠くを見つめるオナガオコジョさん。ちなみに写真はデザイナーのPennieさんが撮影したそうです。


 記録を調べてみると「そんな顔してどうしたの?」のデザイナー、Penelope Talyorさんに初めて連絡をとったのは7月8日のことだったみたいです。翌日に早速返信があって、締めが「With my best,Pennie」で括られていたのでさすが海外の人はフランクだなあと妙な納得を覚えつつ、これはPennieさんとお呼びした方がいいのかなあ、と考えて、以後そのようにお呼びしています。

 さて、どうしてぼくが「そんな顔してどうしたの?」、原題「Why the long face ?」の日本語版を作ろうと思ったかと言えば、一番は自分が遊びたかったからです。キックスターターから始まったこのゲーム、その名前を知った頃には出資はとっくに終了していて既に入手が難しいゲームになっていました。

 ちなみにキックした人は日本では2人しかいないんじゃないか……というのがとある筋から得た情報です。ぼくは後から知ったんですが、それを聞いて思わずのけぞりました。そんなゲームの日本語版を作ろうとしてたのか、ぼくは…… 事前にそれを知ってたらもうちょい冷静になってたかもしれません。

 なんというか、傍からは隕石が頭にぶつかったか雷でも落ちてきたか、物凄く唐突に海外ゲームの日本語版を作ったなー、というイメージで見られてるのではないかと思うのですが、ぼくの視点では色々な伏線があった上での一つの結実といいますか、ようやく形にできた一つ目の成果と言えなくもなかったりします。
 「自分が遊びたいゲームが手に入らない!」「欲しい!」「作ろう!」という一連の思考経路は同じく秋ゲムマに出展する「娘は誰にもやらん」と同じルートを辿っているのですが、去年の夏頃、このルーチンで一つ日本語版を企画しようと思ったゲームが実はあったんです。まあ、これは結果的には頓挫してしまったんですが。
 とは言え、それは不幸な頓挫というワケではなく、今は某社から日本語版が出ているしっかりしたタイトルでして、ぼくの最終目的である「遊びたいゲームを手に入れる!」という部分はそれで達成されたのです。つまりこれは戦略的大勝利ではあるんですが、それでも一度「よっしゃ、こうなったらワイだけが知っとるオモシロゲームの日本語版を出したるで!」と固めた決意が盛大にスカって心中にモヤモヤが残ってはいました。

 海外のデザイナーに直接連絡を取って出版にまで漕ぎ着けるというある種の冒険は、つまるところ、心に期するものがなければなかなかなし得ないのではないでしょうか。まあ、ぼくはボードゲームを生業にしている人間じゃなくてただのゲーム好きですし。
 とは言え、一度失敗してしまえば、心理的なハードルは驚くほど低くなるもので「ダメで元々」の精神で特攻してみればいいじゃん、という気持ちにはなりました。日本には「言うだけならタダ」という素晴らしい言葉もあります。

 ということで、「そんな顔してどうしたの?」も最初のコンタクトで「日本の某社と話が進んでる」という返事もありえるとは思っていて、まあ、それならその話が聞けただけでもオトクだよね、という前のめりな姿勢で挑んだのですが、(仕事で英文ビジネスメールを書いた経験がある友人に頼んでようやく作成した)メッセージへの最初の返答は「私の『Why the long face ?』にメッセージをありがとう。私は日本のファンにとても大きな興味を持っています」といった内容だったのです。うおおおお、これはいい反応だぞ!
 「そもそも返信自体がない」「日本語版の出版自体に興味がない」「他人に弄られるのは嫌」「そもそもこれは学術振興であり商売ではない」「めんどくさい」「というか誰やねん」等々…… 最初のコンタクトで話が終わるパターンはそれこそいくらでも想定できたので、まずは「繋がったこと」。これがとても大きく感じられたのです。

 いや、だって、自分の身に置き換えて考えてみるに、海外の名も知れないインディーメーカーから「自国語版の出版を検討しているんですけどー」なんてメールが来たら絶対に「これはなんかの詐欺じゃないか!?」と疑うと思うのです。ちなみに「Why the long face ?」がキックで製作した部数は250部くらいなので、ぼくが作ったゲームよりも出回っている数としては少ない…… まあ、ぼくのゲームは基本的に国内で閉じているので部数から直接比較することはできないんですが、それにしたって突飛な申し出だったんじゃなかろうかと……
 果たしてPennieさんは一体ぼくの何を信じてくれたのか。一応自分でゲームを作り続けてそれなりに見せられるものがあったのがよかったのだろうか。そのうち一つが姫騎士とオークが追いかけっこするゲームであることをPennieさんはわかっているのだろうか。
 この辺は未だに謎です。掘り起こすのもちょっと躊躇われるのでその辺は敢えて聞いてません。

 ともあれ、前進はしました。いやー、なんでもやってみるもんです。何事も最初の一歩がなければ大業は完遂しないのです。でかしたぼく! よくやったぼく! これで日本語版が作れるぞ!
 興奮の中、ぼくはメールを読み進めました。

 「Are there any natural history museums in Japan that might want to have a version of the game made with them? I have received funding to travel to make a second edition of this game with an international museum.」

 ……パードゥン? えっと、どういう意味?
 ちなみにぼくの英語能力は中学生レベルで、高校の頃覚えた英語の多くはマジックザギャザリング(第4版)由来だったという程度に英語に親しみのない生活を送ってきたもので、お世辞にも英語のコミュニケーション能力は高くはありません。Google翻訳がなかったらまともに英文も書けないレベルです。というかGoogle翻訳が訳してくれた英文が正しいのかどうかすら判断に困るレベル。
 つまり、何を言いたいかというと上記の文章でPennieさんが何を言ってるのか、パッと見には理解できなかったわけです。よし、困った時はGoogle翻訳さんの出番だ! ポチッとな。

 「日本の自然史博物館には、ゲームのバージョンを作りたいと思っていますか? 私は国際的な博物館でこのゲームの第2版を作るために旅行する資金を受けました。」

 ふむふむ、なるほどね…… って、あれ、これ、日本語版じゃなくて日本版、日本の博物館のバージョンを作りたいって意味に受け取られてるううううう!?

 いやいや、違うんだって! ぼくは英語版の日本語版が作りたいの!(わかりづらい) つまりL.C.ベイツミュージアムの動物がいいの! 日本の博物館なんてそんなもん直接展示見に行けばいいでしょうがよ!
 アイ・ウォント・トゥ・メイク・ザ・ジャパニーズ・エディションなんですよ! なるほど、英語にしてみると日本語版と日本版の違いがわからん! 難しいな、英語!
 というか英語圏に人にとっちゃ英語が当たり前の生活だろうから翻訳したバージョンの出版なんて発想がないのかもしんない! 「日本人も英語習うでしょ? 問題ないじゃん、遊べるじゃん」とか思ってるのかもしんない! というか、そもそも日本の有名な自然史博物館ってどこだよ!

 ……いやいやいやいや、困ったぞこれは。ぼくはまず日本語版とは何か、どういう価値があるのかをPennieさんに説明しないといけないのか。しかも英語で。
 というか薄々そうかもしれないと思っていたけどアレだ、多分Pennieさんはいわゆるゲーマーではない……! アメリカのゲーマーはドイツ語版とかめちゃくちゃ拒否るって話を聞いたことがあるので母国語版出したいの意図も即座にわかるはず……!
 これはつまりどういうことかっていうと、おそらくはゲーマー同士なら言わんでも通じる文化が通じない可能性があるってことだ。それをぼくはPennieさんに説明しないといけないのか。しかも英語で。いやいやいやいや!

 最初の一歩は踏み出したものの…… 踏み出したものの、待っていたハードルの高さは想像以上で、のっけからこの文化摩擦を果たしてどうやって乗り越えていけばいいのか、ぼくは途方に暮れたワケで……
 だって素人だよぼく。そして相手も違う方向で素人だよこれきっと。素人素人アンド素人。
 果たしてこの転がりだした案件はどこに向かうのか。そしてぼくはどうやってこの困難を乗り越えていくのか。
 その時のぼくはまさしく「そんな顔してどうしたの?」と尋ねられるような表情で固まっていたのです……

 続きます。
posted by 円卓P at 21:43| Comment(0) | そんな顔してどうしたの? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする