2018年06月21日

ハリウッドライヴス観劇記録

ハリウッドライヴスとは?
このイベントの特徴は?
16:15(10 分) 脚本の公開
16:25( 5 分) 脚本の競売
16:30(30 分) 配役とトレーラーの準備
17:00(20 分) トレーラーの公開
17:20( 5 分) アカデミー賞投票とスターカード回収
17:25(10 分) 休憩
17:35(10 分) アカデミー賞授賞式
17:45(15 分) 【フィナーレ】
18:00(----) 終演

 先日、縁あって某所にて開催されたハリウッドライヴスを観劇させて貰った。この催しがとても面白く、興味深い内容だったので、当日の様子を書いてようと思う次第。
 そもそもの発端としては、ある日「ハリウッドライヴスいいなー」と呟いたところ、偶然にも今回のイベントの企画者の方に「今度やるんですけど見に来ませんか?」とお誘い頂いた。のでホイホイ乗っかってった次第。こんな感じで何事も口に出してみると意外な形で願いが叶ったりするので今後も軽率に願望を垂れ流していこうと思う。

◆ハリウッドライヴスとは?


 さて、「ハリウッドライヴスとは何か?」そして「このイベントの特異性について」まずは触れたいと思う。
 ハリウッドライヴスはケヴィン・ジャクリーンとライナー・クニツィアの共著によるライブRPGだ。作者のクニツィアはドイツゲーム界隈では最も著名なゲームデザイナーだろう。もう一人のジャクリーンは何者か、と言えば、どうもクニツィアの友人の一人で、このゲームは彼が考案したルールをクニツィアが整えたもの、らしい。
 プレイヤーは映画俳優及びプロデューサーに扮して映画界における名声とお金の多寡を競う。プロデューサーが競り落とした脚本を元に俳優陣は演技のプランを練り、実際に3分間の寸劇を行う。観劇が終了した後、プレイヤー全員による投票が行われ、この年のアカデミー賞を決定する。
 このゲームにおいてプレイヤーは自ら台本を考案し、演じるとともに、他プレイヤーの映画を鑑賞し、評価する。映画における主体と客体を忙しなく行き交うところに独特の楽しさがある。
 プレイ人数は10人以上を必要とし、プレイ時間としては4時間を要する。その立ち位置やプレイスタイルはテーブルを囲んで勝敗を競う一般的なボードゲームよりは、人狼の方がより近いかもしれない。ルールはシンプルで直感的なので呑み込みやすいが、ゲームをより有利に進めるにはルールの行間に隠されたちょっとしたコツに気付く必要があるかもしれない。

◆このイベントの特徴は?


 さて、この日のイベントはハリウッドライヴスとしても少し特殊なコンセプトに立脚していた。それは「劇団所属の役者がハリウッドライヴスをプレイしたらどうなるか?」というものだ。まとめサイト的なアオリをすれば「ハリウッドライヴスをプロに演じさせてみた結果www」という感じだ。
 本来ハリウッドライヴスのプレイヤーは、一般的なゲームプレイヤーであり、職業的な映画人ではない。なので演じられる寸劇にさほどクオリティを求められることはない。たどたどしい動きやセリフすらも笑いになる。気のおけない仲間内であればそれで十分だ。
 しかし、プロの演者がハリウッドライヴスをプレイしてみた場合、そこでどんなゲームプレイが繰り広げられるのか。これは単純に気になる。見たい。

 開催に必要な費用すべては主催者であるニューゲームズオーダーさんとテンデイズゲームズさんが負担している。演者には出演料が支払われ、会場の手配や小道具の準備などもすべて主催者が用意する。つまり、結構なお金がかかっている。



 広報活動の一環と捉えることもできようが、ハリウッドライヴスという無名に近いゲームのバジェットから考えると労力が大きすぎて、趣味が先行しすぎている。率直な感想を言えば、頭がおかしい。理知的とは言えないし、こんな試みが継続するとも思えない。
 しかし、それだけにプレミア性があるとも言える。長野の片田舎から上京してでも観劇する価値はあろう、と思ったのもそうした理由あってのことだ。
 観劇のみの参加、という意味では、本来のハリウッドライヴスの楽しみ方とはこれは若干異なる。言わばデジタルゲームのゲーム実況を見るような感じだ。でもまあ、それもゲームの楽しみ方の一つではあろうし、ゲーム自体の理解にも繋がる。ぼく自身の話をすればハリウッドライヴスという異文化のゲームをいつかどこかで開催したいとは思っていたので、その場合の参考になればという思いも強かった。

 しかし、この心躍る試みは一方で少なくないリスクも抱えていた。今回のプレイヤーはあくまで演者だ。いわゆるボードゲームの文脈に通じたゲームプレイヤーではない。
 そうしたプレイヤーにとって、この剥き出しのゲームデザインはともすると劇薬にもなるのではないか、という思いはある。作者が思い描いた光景が再現されないのではないか。プレイヤーは途中でやる気を失ってしまうのではないか……
 企画者の方もそうしたリスクを意識していたようで、参加に際しては「実験」の側面を強く訴えられた。そんなこともあって観客は意図的に制限された。観劇のためにこのイベントに参加した人間は片手で足りるほどだ。
 無駄足になる危険性を考慮されたのだろう、企画者の方からはフル参加よりは熱の入る後半からの観劇を勧められ、4時間の長丁場に潜在するリスクを検討したぼくは素直にそれに従った。結果的には「いや、前半も見るべきだったわこれ!」と後悔したんだけども。



 当日、ぼくが会場を訪れると既にハリウッドライヴスは前半戦を終え、2年目に入るところだった。ハリウッドライヴスは一般的に2セットの流れを行う。1セットを1年と呼び、2年の成果で最終的な勝者を決める。
 とは言え、1年目で派手な活躍を決めて男優賞を獲得したプレイヤーなんかは2年目では警戒されるし、1年目の細かい選択が2年目にも影響する。モダンゲームの視点からするとかなり古典的な力学の働くゲームなのだけど、こうしたプリミティブなインタラクションは時代を経ても腐らないし、ビビッドでインパクトがある。それだけに毒性が強い、というのは繰り返しになるのだけども。

◆16:15(10 分) 脚本の公開




 会場の奥には張り出された3枚の脚本。それぞれタイトルは「トレインスポッターと秘密の部屋」「リベンジャーズ」「レザボアダックス」。どこかで聞いたようなタイトルだ。
 そして張り出された脚本を取り巻くようにして、プレイヤー、劇団所属の本職の演者達が歓談とも交渉ともつかない会話を繰り広げている。



 これら脚本は公開の後にオークションにかけられるのだが、脚本にはタイトルとジャンル、必要な配役、製作費用、期待される興行収益などが記されている。それら情報を元に、プレイヤーはこの脚本を落札してプロデューサーの立場を得るべきか、あるいはそうした野心を抱くプロデューサーにいち早く自分を売り込みに行くかを検討する。
 オークションまでの10分の時間、プレイヤー間ではそうした静かな駆け引きが繰り広げられているのだ。

◆16:25( 5 分) 脚本の競売


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 オークションが始まる。まず競りにかけられたのは「トレインスポッターと秘密の部屋」。ジャンルはサスペンス。
 しかし、オークショナーが競りの開始を告げたにもかかわらず、続いて競り値を宣言する声はなかった。戸惑いが滲むプレイヤーの視線が交差する。

 「1ドル」

 ようやく出たのは最低落札額である1ドル。ちなみに1ドルとは言うものの、ゲーム的な単位としては1ミリオンドルということになる。
 それからたっぷりと時間を置いて、オークショナーの何度かの確認の後、逡巡の籠もった「2ドル」の声。
 応札は、なかった。

 わずか2ミリオンドルで落札された「トレインスポッターと秘密の部屋」。前半を見ていないぼくはこの会場で形成された相場観を知るよしもないのだが、会場の異様な空気感から落札額が格安であることはわかった。
 驚きの低予算フィルムということになる。大ヒット小説の映画版というよりは、その成功に乗っかって小銭稼ぎでもしてやろうかという意識が透ける類似のインディータイトルという趣さえある。
 しかし、ゲーム的に考えればこの脚本を落札したプロデューサーは一歩勝利に近づいたということになる。制作費用を極力抑えられたのだから、浮いた予算を有望な役者の獲得に回すことができる。それは大きな興行収入を約束する。このゲームは出演俳優が多い作品ほど大きな興行収入が得られるようにできているのだ。

 続く「リベンジャーズ」のオークションは先程とは打って変わって2人のプロデューサー候補による熾烈な応札の応酬が続いた。

 「15!」「16!」「20!」「21!」「25!」「26!」……

 一方は5刻み、一方は1刻み。ここは各人の性格が出る。より穏当な価格で脚本を落札することは大事だが、しかし金を出し渋るしみったれのプロデューサーは果たして役者からどんな視線を向けられるだろうか。
 結局「リベンジャーズ」の脚本は54ミリオンドルという驚愕の高値をつけて落札された。実に「トレインスポッターと秘密の部屋」の27倍。歴史に残る大型バジェットだ。
 あるいは、これだけの人気作が後に控えていただけに「トレインスポッターと秘密の部屋」が手控えされた、という事情もあるのかもしれない。

 最後の「レサボアダックス」は、プロデューサーになれる最後のチャンスということもあってか、様々なプレイヤーが応札を表明し、最終的に31ドルの価格で落札された。やはり結果を見ても「トレインスポッターと秘密の部屋」の安値にはインパクトがある。

◆16:30(30 分) 配役とトレーラーの準備


 オークションが終わり、ここからは「配役とトレーラーの準備」の時間となる。時間にして30分、プロデューサーは役者と出演交渉を取り交わし、台本作りや小道具の選択、演技の練習など上演までのすべての準備を終える。
 出演交渉に用いる時間と演劇の練習時間が一体化されているのがルール的にはミソなところで、出演交渉に時間をかけすぎると練習時間が削られる。なので基本的には手早く出演交渉を纏めて練習時間を確保したい。より完成度の高いトレーラーを披露するために練習時間はいくらあっても不足するということはない。
 しかし、一方で役者は自分を高値で売り込みたいし、なるべくなら目立つ役も欲しい。プロデューサーとしては実力派俳優を囲い込みたいし、できれば出演料は安く抑えたい。各人のそうした思惑が交差すると話はなかなか纏まらない。そうこうしているうちに時間だけが無為に過ぎていってしまうのだ。

 自身にもハリウッドライヴスのプレイ経験があるテンデイズゲームズのタナカマさんもこの場には臨席していたのだが、タナカマさんによると出演交渉は軽めに終わらせ、練習を綿密に行うのが普通の流れらしい。企画者の一人も「どこか1つ出演交渉が纏まれば、他の映画もそれに倣うだろう」と言っていた。
 しかし、その予想に反して、プレイヤー達の出演交渉はタフに長時間に渡って繰り広げられた。

 出演交渉が特に難航したのは「トレインスポッターと秘密の部屋」であるように見受けられた。なにせタダに近い価格で落札された脚本だから制作費は有り余っている……ように傍目からは見える。少なくとも他の2作のプロデューサーよりは金払いがよさそうだと考えるのはおかしな考えではないだろう。
 一方で超大作として世間の期待を集める「リベンジャーズ」は役者の確保に苦労しているようだった。製作規模に反比例するであろう出演料もそうだが、当のプロデューサーが去年のアカデミー賞作品賞を受賞したプレイヤーだっただけにさらなる一人勝ちを警戒されたのかもしれない。アカデミー賞を獲った敏腕プロデューサーの次回作となれば出演を希望する役者も多そうなものではあるが、そうした本命は敢えて外して大穴に乗っていこうとする思惑が働くところがこのゲームのルールの妙味だ。
 そして、この考え方は至極ゲーマー的な思考法でもあり、参加者全員が勝利を目指すプレイヤーである場合に成立する。今回のイベントのプレイヤーが果たしてそうしたゲーマー的思考に理解を示せるか、企画者には危惧があっただろうが、それは杞憂だったらしい。
 結果的に「リベンジャーズ」は3名の役者のみでの製作を余儀なくされた。今回のプレイヤー総数は12名で、用意された脚本は3本。プロデューサーも役者として映画には出演するので各映画は平均して4名の役者を得ることになる。



 役者の多寡は直接的に興行収入に反映されることもあって「リベンジャーズ」は興行的には辛い状況とも言える。しかし、いち早く出演交渉を終えたことで他の作品よりも多くの練習時間を得ることができた。これが映画の完成度に寄与し、大金の動くアカデミー賞の結果にも繋がる……かもしれない。



 そして最終的に「トレインスポッターと秘密の部屋」は4名の、「レサボアダックス」は5名の役者を得た。ここまで20分。残り10分で両企画はストーリーを決め、練習を終え、上演に臨まなければならない。厳しい状況ではある。

◆17:00(20 分) トレーラーの公開


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 10分後。狂騒の30分は終わりを告げ、トレーラーの上映が始まる。一番手は「トレインスポッターと秘密の部屋」。



 女が意識を取り戻すところからトレーラーは始まる。舞台は牢屋。この施設には幾人もの虜囚がいるのか、静まり返った牢獄には呻き声が時折響く。
 彼女は記憶を失っている。なぜこの不気味な牢獄にいるのか、自分は何者なのか、何もわからない。……ただ一つのある言葉を除いて。
 そして、隣の部屋には彼女と同じように過去の記憶を持たない男が収監されている。男もまたある一つの言葉だけを覚えていた。女と男は壁(に見立てた移動式仕切り)越しにその言葉を呟く。

 「「トレインスポッター」」

 男はやがて刑務官と思わしき男に牢屋から引きずり出され、悲鳴を残して舞台を去る。女は壁向こうの凶行に身を震わせながら、自身の置かれた不条理に苦悩する。
 男は一体どうなってしまったのか? そしてトレインスポッターとは? やがて女はすべてを思い出すが、背後から刑務官が忍び寄り、女を昏倒させる。引きずり出される女。謎を残してトレーラーは幕を閉じる。

 全編、沈黙と謎に満ち満ちた重苦しい雰囲気。終始場面を覆う暗さはフランス映画的な趣も。サスペンスの名に恥じない緊張感。床を叩いて足音を演出するなど音響にも工夫がある。
 タイトルから想像される内容をいい意味で裏切った味わい深い作品。2ミリオンドルの低予算映画ならこうなるよねと思わせる限定された舞台設定と配役も面白い。


 続く「リベンジャーズ」は娯楽の王道を行く大作アクション映画だ。界隈をどよめかせた大バジェットなだけに期待感も大きい。



 剣を手に舞台に躍り出る男。這いつくばる姉と妹。「妹の命だけは助けてください!」姉の必死の懇願に男は頷く……と見せかけて剣を突き刺す。
 絶叫する妹。男に殴りかかるもあえなく昏倒させられる。「この国はすべてオレのものだ!」高笑いを上げる男。
 実はある国の王族だった妹。すべてを失った彼女は荒野を彷徨い、老人(さっきの男と一人二役)と出会う。「強くなりたいか?」問いかける老人に妹は頷く。そして始まる謎特訓。やがて老人は妹に剣を与える。
 場面は変わり、戦う力を得た妹は姉の仇である男と対峙する。白熱のアクションシーン。勝つのはどちらだ!? ……というところで終了。

 10分にも感じられる濃密な3分間。途中で「カット!」の声がかかったらどうしようかとハラハラしていた。
 やはり本職の演者なだけに一つ一つの動作にキレがあって、アクションシーンが様になる。素人ではこうはいかない。
 演者が3人だけということもあり、途中退場した姉は以後ナレーションを担当するなど1人1人の活躍に印象が残る。エンターテイメント成分たっぷりに魅せる娯楽映画の王道作品だった。


 最後は「レザボアダックス」。ジャンルはドラマ。5名の演者を用意し、そのうち2名は去年のアカデミー男優賞、女優賞を獲得しているという質量ともに揃った期待作だ。



 舞台中央で四つん這いになりながら低く長く呻き声を上げる男。その傍らには女。女は男に気づく様子もなく、ただ虚空を見つめ続けている。男と女の関係はここでは明かされない。
 場面転換。街角で花を売る女はチンピラにぶつかり因縁をつけられる。チンピラを嗜める男。男はチンピラの兄貴分だった(個人的にこのチンピラの演技がキレてて助演男優賞をあげたい)。
 出会ってしまった男と女。彼らは恋に落ち、やがて女は子供を身籠る。これを契機としたのか、男は組の金を奪って逃げる。組織から放たれた追手を振り切り、抱擁を交わす2人。
 しかし次の瞬間。

「ごめんね」

 男は呻き声を上げて二歩、三歩と後ずさりする。女の手には光るナイフ。うずくまる男。

「どうしてこんなことに……」

男は女に問いかける。女は答えない。

 終演後も余韻が残るトレーラーらしいトレーラー。ナレーションを効果的に交えたスピーディな場面転換と巧みな構成が特筆モノだ。
 カットバックから始まる構成はともすると難解さが先立つ恐れもあったが、ナレーションに人員を割けるだけの人数の力を存分に生かしている。
 ヤクザもののベッタベタな展開に笑いを散りばめる温度感も好み。

◆17:20( 5 分) アカデミー賞投票とスターカード回収


 三者三様のトレーラーが終わり、続いてアカデミー賞を選出する投票へ移る。アカデミー賞は作品賞、男優賞、女優賞の3つの賞が用意されていて、作品賞に関してはプレイヤーとして参加した自分の作品を除く2作品のいずれかに投票し、男優賞、女優賞については自分以外のいずれかのプレイヤーに投票することになる。

 なお、ゲーム的にはこの投票に関して交渉を行ってもいいということになっている。自分に投票をお願いする代わりに袖の下を渡すとか、相互に票を入れ合うとか、そういう小細工も可能なのだ。ただし、この投票は基本的には非公開なので、約束を破ってもバレることはない。結局は口約束でしかないということだ。

 このように基本的に投票はプレイヤー間で行われる行為なので、観客であるぼくは投票には参加しない。……ハズだったんだけど、ここでイレギュラーが発生した。作品賞と女優賞で同票タイが発生したのだ。作品賞に至っては3作品全てが同票になるというまさかの事態。
 本来のルールとしては司会進行を務めるディレクターが勝者を選ぶ、ということになっているんだけど、企画者の方の計らいで急遽観客の投票で勝者を決めることに決まった。
 正直な話、どれもこれも甲乙つけがたい内容だったので、めちゃくちゃ悩んだ。なんというかそれぞれの方向性が別物なので、一つのものさしで計りにくいというか、「アグリコラ」と「ワニに乗る」と「私の世界の見方」のどれがオススメか聞かれているようなものだ。そんなの決められるワケないやろ、という話でもある。
 とは言え、時間の制約もあるのでここは苦渋の決断を下す。あとは発表を待つだけとなった。

◆17:35(10 分) アカデミー賞授賞式


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 授賞式が始まり、先程の上演とはまた別種の緊張感が場を満たす。各プレイヤーの勝敗の不沈は、ノミネートか、本賞か、どのタイミングで名前が呼ばれるかにかかっているのだ。プレイヤーの緊張感がこちらにも伝わってくる。
 授賞式は女優賞、男優賞、作品賞の順番で発表され、結果的に「リベンジャーズ」が女優賞、男優賞、作品賞を総ナメにした。わずか3人の出演者がそれぞれ各賞を獲得したのだから驚きだ。
 結果は「リベンジャーズ」の一人勝ちのようには見えるが、前述の通り作品賞と女優賞は同数タイだったので、その差はごくわずかなのだ。映画人同士の評価としては各作品の評価は甲乙つけがたいものだった。
 今回「リベンジャーズ」が選ばれたのはその結果を一般人である観客に委ねたからであって、つまり最も大衆受けする向きだったのが「リベンジャーズ」だったから、というところはある。
 ボードゲーム的に言えばドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞の違いというか、本来ドイツ年間ゲーム大賞的に選ばれるべき賞が特例としてドイツゲーム賞的に選ばれた結果、とも言える。
 そういう意味では本来このゲームが内包する哲学とは若干異なる形での評価ではあるのだけど、ぼく個人としては投票に参加できたのは素直に楽しかった。結局何を言いたいかと言えばどれもこれもステキな作品だったということだ。
 あと、「リベンジャーズ」については、脚本のオークションでの高騰ぶりがぼくには理解できなかったんだけど、あるいはアカデミー賞向けの映画作りとは何か、を逆算した結果があれだったのかもしれない。プレイヤー全員が十分な演技のスキルを持っているからこそ、勝負は脚本で決まる。それが演者のみのハリウッドライヴス世界なのかもしれない。……とも思ったのだけど、これは後付けに過ぎるだろうか。

◆17:45(15 分) 【フィナーレ】


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 アカデミー賞の発表が終わり、最後に勝利者の発表が行われる。このゲームの勝利者は演者の格を示す「スター」を最も集めたプレイヤーと、最もお金を稼いだプレイヤー、そしてスターとお金を集めたプレイヤーの3人となる。
 本来的には勝利者は「一番多くスターを集めたプレイヤー」と「一番多くお金を稼いだプレイヤー」の2名だけなのだが、この日のルールは若干の修正が加えられて「お金とスターを集めたプレイヤー」という3人目の勝利者が設定されていた。詳しいルールは知らないが、お金とスターの順位をそれぞれ出して、低い方を基準にするクニツィアライクな算出方法なんではなかろうか。
 ともあれそんな形で勝者が選出された。2度のアカデミー賞を獲得し栄華を極めたプレイヤーがいる一方で、わずか2ドルで脚本を落札したはずの「トレインスポッターと秘密の部屋」のプロデューサーはなぜか1文無しでゲームを終えていた。映画ビジネスの光と闇である。

◆18:00(----) 終演


 そんな形でハリウッドライヴスはこの日の公演を終えた。時間は18:00。当初のタイムスケジュールピッタリの終幕である。これはディレクターを務めたスタッフの苦心の成果だ。
 出演者全員が劇団員という壮大な試み。何をもって成功とみなすか、人によって物差しは違うだろうけど、「来てよかった」「見てよかった」というのがぼくの素直な感想だ。緊張感に満ちた、とても刺激的な時間と空間だった。
 同種のイベントが今後も開催されるのかはわからないけれど、もし次回があるのならぼくはまた見に行きたい。



 その道の熟達者は難しいことをいとも容易くやってのけてみせる。高橋名人がプレイするシューティングゲームは、敵が自殺するかのように自弾に吸い寄せられていき、まったく簡単なゲームに見えたりもする。
 それを見て思うのは、これなら自分にもできるんじゃないか、という錯覚だ。事実それは錯覚でしかないのだけど、その錯覚は挑戦へのハードルを著しく下げる働きがある。
 自分が同じようにハリウッドライヴスに挑んでも同等のクオリティを発揮するのはそりゃ無理な話だろう。無理なのは前提として、そこから学べることは幾つもある。大事なのはそういうことなんじゃなかろうか。
 ……とまあ、そんな感じで開き直ることはできたので、ハリウッドライヴス、どこかでやれたらいいなあと思ってはいるのだけど、なかなか実現のハードルが高いのもまた事実なんだよなあ。
 ということで、また軽率に願望を垂れ流すけども、ハリウッドライヴスやってみたい、という話があったらぜひ誘ってください。お願いします。

 追記:
 見てた側の感想としては楽しかった、というのは伝わったと思うんですが、演じた方の感想もちょっとお伝えしておきます。終演後、役者の方々のテンションは総じて高く「またやりたい」「普通に遊びたい」「仲間内に広めたい」という声を色々な方からお聞きしましたよ。























posted by 円卓P at 21:01| Comment(0) | ゲームデザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月10日

ゲムマ参加者に推したい朝食ビュッフェのススメ「三井ガーデンホテル汐留イタリア街」編

 この記事は朝食ビュッフェを愛好し、賛美するぼくが、ゲムマ参加者の中で誰も朝食ビュッフェについて書かないので(当たり前だ)、朝食ビュッフェについてとことん書くことにした記事です。

◆ゲムマ、それは果てなきトライアスロン……

 ゲムマの1日は忙しい…… 開場前のブース設営から始まり閉場後の片付けに至るまで、一般参加と比べて2,3時間は長く会場に留まり続け、しかも開催中はほぼ立ちっぱなし(これは人によりけり)、声を上げっぱなし(これも人によりけり)、気を使いっぱなし(これも略)で肉体的、精神的な負荷はハンパない。しかも少人数で回す個人ブースであれば、人員に余裕がないのが常で、開場から閉会までワンオペで通すブースも少なくはない。どこのブラック企業やねんという状況である。
 ぼくの例で言えば、蒼猫の巣出張所は私的に手伝いを買ってくれる仲間1人との2人体制でほぼ回していた。ここ2回のゲムマでは出展者希望の仲間が1人増えて3人で回すようになったけども、それでも会場でゆったりとした昼食を取ることは難しい。基本的にぼくは昼食抜きでゲムマの1日を過ごしている。
 でまあ、1日だけであれば、そうした強行軍も押し通せるのだけども近年のゲムマは2日開催に移行し、より体力面への要求が高まった。土日の両日に出展する団体自体は少数派と言えなくもないのだけども、1日のみ出展でもう片方は一般参加という形でゲムマと付き合う人は少なくはないはずでゲムマ後の疲労感に苛まれている人もいるんじゃなかろうか。
 さらにぼくの場合、地方住まいでゲムマのたんびに上京するという環境が体力面での負担を押し上げていて、しかも移動は高速バスと来たもんだから、かなり高レベルのゲムマトライアスロン参加者という分類になる。冷静に書き出してみたらあんまり平均的な参加者像じゃない気がしてきたぞ……

◆そこで朝食ビュッフェだ!

 で、ぼくは数年前までは上京時の出費はケチる派だった。出展よりも一般参加の時代が長かったこともあって、ゲムマで散財するためにそれ以外の用途のお金はなるべく節約する気持ちで参加していたものだ。これはまあ、清く正しいマニア像ではあると思う。
 ただ、いつだったか忘れたけど、数年前のゲムマ後のこと、猛烈に体調を崩して重い風邪クラスに寝込んだことがあって、それからはちょっと考えを改めた。「栄養だけはちゃんと取らんとヤバい!」
 出展者はゲムマを走り通すだけで結構な体力を消耗するというのに、そこで十分なエネルギー供給が行えなければ体に伸し掛かる重みは2倍3倍となる。まあ、単純に加齢による体力の衰えなのかもしらんのだけども、若さだけで乗り切れる時分は終わったなと自覚した。休みを取ってから1日寝込むと社会人としてのダメージがハンパないので多少の出費であっても体をケアした方がトータルでのコストは軽い。もともと体力に自信ニキでもないので、自分の体にはトコトン甘くしようとあっっさり方向転換を図ることにした。
 ということで、いろいろ考えた結果、ぼくが得た結論が朝食ビュッフェだったのだ。

 朝食ビュッフェはいいぞ! パッと見お金がかかるように見えて上京時の2食分を賄えると思えば経済的ですらある! 何よりも好きなものを好きなだけ食べられるという根本の理念に抗える人はいないだろう。
 数寄ゲームズのモットーは「好きな人と、数寄なゲームを、好きなだけ」だけど、朝食ビュッフェは「好きなホテルで、数寄な料理を、好きなだけ」という感じだ。ヒャッハア、たまんねえ! 行ったばかりだけどもう行きたい! 次のゲムマはまだか!
 もちろん、ぼくが朝食ビュッフェを推すのはゲムマで必要なエネルギーを補給するという機能的な側面もあるけども、単純に非日常なイベントとして楽しいからというのもある。普段は滅多に行かないホテル併設のレストランでハイクオリティな料理の数々に舌鼓を打つ。贅沢と呼ぶにはちょっと庶民チックかもしらんけども、ゲムマの予算をそこに大胆に割いていくのだからこれは一面では贅沢にも程があるとも言える。そうした背徳感にも似た昂揚が料理の味を引き立てるので満足感がハンパない。うーん、ぼく東京味わっちゃってます……!(田舎者並感) あ、大阪ゲムマでも朝食ビュッフェ行きましたけどね。
 そう、旅先に一つ目的が増えることで旅の楽しみは2乗になったりもするのだ。これまでゲムマのために東京だったり大阪だったりに足を伸ばすのはまさにゲムマのためだけの移動だった。しかし、そこに朝食ビュッフェという新たなコンテンツを加えることによって旅先の楽しみに新たな軸と広がりが生まれたのだ。
 であるからこそ、ゲムマの結果が例えトホホなものだったとしても朝食ビュッフェで楽しい思いを味わえばトータルではいい1日だったね、という印象になる。メンタルの安定を図るという言い方をすると無機的にすぎるかもしれないけれども、体に心にいい影響を与える朝食ビュッフェは波乱万丈のイベントが渦巻くゲムマのまさに補完関係にあると言えるのではなかろーか!

◆で、朝食ビュッフェってどんな感じ?

 さて、ここまで語ればみんな朝食ビュッフェに興味津津だろう。うん、そうに違いない。
 「で、朝食ビュッフェってどんなんなん?」「そうは言ってもお高いんでしょ?」「ホテルに泊まる必要があるんでしょ?」等、色々疑問に思うところもあるはず。まあ、ぼくのスタンス語りはこの辺にして、ここからは実際にぼくが体験した朝食ビュッフェの話をしてみたい。

 今回のゲムマ2日開催、ぼくは2つの朝食ビュッフェを堪能したけども、初日に訪れたのは汐留にある「三井ガーデンホテル汐留イタリア街」。ここは朝6:30から朝食ビュッフェが始まっていて、なおかつゆりかもめ始発駅であるところの新橋駅にほど近い場所なので、ゲムマ参加者としては絶好の立地なのだ。



 朝食ビュッフェは朝7:00から始まる場所も多いんだけど、出展者の朝は忙しいのでゆっくりと楽しむためにも早くから開いている方が望ましい。また、立地も重要で朝食ビュッフェを終えたあと、いかにビックサイトまでスムーズに移動できるかをきちんと計算に入れていないと慌てて席を立つ羽目になる。両者を満たしているこの「三井ガーデンホテル汐留イタリア街」はゲムマ朝食ビュッフェの最適解の一つと言えるだろう。
 ちなみにこうした朝食ビュッフェはホテルに併設されたレストランで開催されるんだけど、レストランに独自の名前がついていると経営母体が異なることが多いので、ホテルに泊まる泊まらないに関わらず利用できることが多い。ホテル利用者でもそうでもなくてもレストランにとっては同じお客さんということだね(ホテル利用者であれば料金面で優遇される場合もあるけども)。
 ホテルの公式サイトを調べてみて利用料金が書かれているものは概ね一般利用も可能。ホテルフロントで「朝食のみ利用したいんですけど」と尋ねればすぐに案内してくれるはずだ。
 ちなみにこれまでの朝食ビュッフェの経験からすると、こうした一般利用で怪訝な顔をされることも稀によくあるんだけど、この「三井ガーデンホテル汐留イタリア街」は外来(宿泊利用のお客さんと区別するために外来と呼ばれることが多い)のお客さんも慣れてるようでテキパキと案内してくれた。
 特にこのホテルは接客が細やかだ。基本的に朝食ビュッフェってどの席に着くかは客任せというか自由なんだけど、ここでは席まで案内してくれる。もちろん、料理との動線を考えると自分で席を決めた方が満足が行く場合もあるんだけど、朝食ビュッフェに慣れていないとあからさまに近い席はガッツいてるみたいで恥ずかしかったりもする。いやまあ、他の人はそんなこと気にしていないんだけど。
 あとまあ、出展者、特に地方からの上京者は設営用の荷物を多く抱えてたりもするので荷物を置くスペースのある席に案内してくれるのがありがたい。初見の会場で満足する席を取るのはなかなか難度が高い。
 なので、席はここですよ、と決めてくれるのは心理的にはありがたい。昼食ビュッフェ初体験の人に特にオススメの一店と言えるだろう。

 三井ガーデンホテル汐留イタリア街公式サイト

 ちなみに気になるお値段は税込み1620円(2018年5月現在。割とこの手の価格は上方に改定されるので最新情報はチェックした方がいい)。ぼくが利用する朝食ビュッフェの価格帯としてはやや高めと言ったところ。
 高級ホテルの朝食ビュッフェになると4000円くらいの場所が多くて、そこまで行くと及び腰になるというか、ゲムマのついでというよりはそれメインで臨みたくなるんだけど、これくらいならそれほど心構えも必要ない。ゲムマでも1500円のゲームなら気軽に買えるのと同じ感じだ。
 ちなみに逆に1000円以下の朝食ビュッフェはあんまりオススメしない。都内の場合、そういう場所は殆ど死滅していてそもそも選択肢がないんだけど、長続きしないのには色々理由があるんだろうな、という辺りから察して欲しい。

 さて、肝心の料理はどうか。一般的にこういう料理の詳細は写真でお伝えして「おいしそうでしょー」「綺麗でしょー」とやるべきなんだけども、実のところ、ぼくは料理を写真で取りまくるインスタ大好きマンではない上に、ゲムマ出展を数時間後に控えている臨戦体勢の兵士でもあるので、そんな余裕は全くないんである。ただひたすら食べるだけに集中したい。限りある時間を自らの幸福の探求に注ぎたい。
 そんなワケで実際の料理の様子が知りたい人はググってください。URLも用意してやったぞ! ほらよ!

 「三井ガーデンホテル汐留イタリア街+朝食」

 一応、貴重な時間を使って渋々取った写真が1枚あるけども、あんまり見栄えとか気にしてないのでおいしそうに見えないかもしれない。ただまあ、写真を見返すと料理が鮮明に思い出せるのでやっぱり写真は撮っといた方がいい気はしますね。



 写真で写っているものだと豆腐はここの名物らしいんだけど、ぼく的には「うーん、ちょっと味の濃い木綿豆腐?」という感じでそれほどインパクトはなかった感。まあ、あんまり豆腐好きでもないしね……
 抜群においしかったのはかぼちゃのなんか。なんか……ってなんか料理名があった気がするんだけどそれは忘れた。とにかくおいしかった(小並感)。
 汁物は味噌汁とミネストローネがあって、今回は後者を選んでみたんだけど、ミネストローネってやっぱりこんな感じなのね、という感じ。自分でも以前ミネストローネを作ってみたことがあってその時の感想は「うっすらトマトの味しかしねえ……」というものだったんだけど、ホテルのミネストローネもこういう感じならミネストローネとはそういうものなのだろうという知見が得られた。まあ、これはこれで収穫と言える。そう、ゲームでも朝食ビュッフェでもぼくが大事にしているのはおいしいかどうかもあるけども、新しい気付きがあるかどうかだ。好奇心によって人は生きるのだし、発見があるからこそぼくは朝食ビュッフェに向かうのだ。
 魚はサンマとサバがあったけど、これは両方おいしかったなあ。魚は調理が手間であんまり自宅では作らないのでこうしたものが食べられるのは嬉しい。
 肉系のおかずは控えめで朝からガッツリ肉食いたいマンとしてはもう少しドッシリ感のあるものが欲しいところではあるかな。ぼくが朝食ビュッフェを評価するポイントの一つとして、メインディッシュとなりうる肉系のおかずがあるかどうか、という点がある。写真に写ってるのはメンチカツだったかコロッケだったか忘れたけど、衣はサクッとして中身はホロッとして高級感があった。なんか安物ってギッチリしてるじゃないすか? そういうのがなくていい感じだった。ソースをかけてないのは見逃してただけ。
 肉系に関しては写真には写ってないけど、定番のソーセージとかベーコンはあるので肉味が欲しければその辺でもいいのかも。ただ、定番料理には非日常を感じないのでぼくの評価からはちょい外れる感。
 ピザはおいしいはおいしいけどピザの常で冷えかけだとおいしさも半減なので、常においしいものが食べられるかというと安定感には欠けるかな。でも朝食ビュッフェのピザとしてはバラエティもあってよかったしおいしかったのでトータルではいい印象。
 そう言えば写真にサラダ系のものが写ってないのでやたら色味が褐色に傾いている感があるけども、サラダはデザート関係の場所に纏められてるもんで最初は気づかなかったんですな。朝から新鮮な野菜を食するとなんか「健康に気を使ってるなフフフ!」って感じしますね。野菜の鮮度は朝食ビュッフェによって結構違ってたりするんだけど、ここのはよかった。

 もうひとつ、評価のポイントとしては飲み物も挙げられるかな。飲み物は大別してお茶・コーヒーなどのお茶系、牛乳などの乳飲料系、りんご、オレンジなどのジュース系の3系統に分けられる。このうち、お茶系はどこにも絶対あるんだけど、ジュース系統は場所によっては用意されていないことも多い。
 個人的にはフレッシュジュースのバラエティは重要なポイントでもあって、アセロラ黒酢はちみつジュースとか他では見られない変なジュースとかがあったりすると真っ先に飛びついてしまう。
 さらに大別すると飲み物はデキャンタやポットが用意されているところとドリンクバー形式のところの2種類があるんだけど、ドリンクバーだとファミレスとかネットカフェを連想してしまってなんか安っぽく感じられるので、中身が同じでもポットで提供されていた方が嬉しい。まあ、ドリンクバー形式だとコーラとかカルピスとかの選択肢も広がったりするんだけど、朝のはよからそういうジャンクなのを飲むのもなあ、という気分もあり。
 そういう観点ではここの朝食ビュッフェはジュースまで揃っていてポットで提供されているので気分はバッチリ。カパカパ飲んでトイレを近くすることに勤しむ。

 ここの朝食ビュッフェはデザートの充実ぶりも特筆に値する。デザートは割とクオリティにばらつきが出やすいところで、デザートがなくても成立するのが朝食ビュッフェなのでどこまで盛り込むかは各店の個性が出るところでもある。
 ここのデザートは定番の缶詰フルーツ、ヨーグルト、カットフルーツに加えて、ケーキ系のデザートも数種類。これは日によってメニューが変わるらしいけど、この日はチョコ風味のパウンドケーキとレアチーズケーキがあった。もうデザート前に既に満腹だったんだけど、レアチーズケーキ大好きマンなので目の色変えて飛びついて「甘いものは別腹ってマジなんだなあ」と真顔で思ったり。よいです…… レアチーズケーキ最高です……

◆総評:また来たい!

 ここの料理の品数は50種類ということで、これは朝食ビュッフェではバラエティ豊かな方。大体目安は40くらいだと思っていて、これを下回るとバラエティに乏しいなあという感覚になる。こういうのって飲み物の種類までカウントしてたりするので、基本的に種類は多いに越したことはない。
 トータルでの感想としてはここの朝食ビュッフェはかなりのハイクオリティだった。「あれがあったらなー」と思うことが少なく、しっかりとした満足感が味わえる。値段もまあ若干平均よりも高い辺りなのでそれくらいはあってもいいよね、とは思ってたけど充実感がかなり高い。よいです。オススメです。
 あとは席にも空間にも余裕があって気分がいい。安いところは狭かったり相席が必要だったり料理を取る場所が混雑してたり落ち着かないので料理のクオリティという意味でも快適性という意味でも少し多目にお金を出した方がトータルでは高いコストパフォーマンスが望めると思う。賑やかな方が好きという人もいるだろうけど、朝食ビュッフェに関してぼくの究極的な好みを言えば他に誰もいない空間で一人で気兼ねなく歩き回っては好きなものをチョイスしてただひたすら食べることなので閑散としてた方がむしろ嬉しいですね。
 この日はゲムマ初日ということもあって、設営の時間を捻出するために1時間足らずで席を立ったんだけど、この場を去るのがちょっと心惜しかった。両日出展の場合、2日目の方が時間に余裕ができるので、次回があるならぜひ2日目に行きたい。っていうくらいには気に入った感じです。

 ちなみにここのオススメはタイカレーらしいんだけど、あれ、ぼくタイカレー食べてない…… そもそも朝食ビュッフェでカレーあんまり食べないマンなので(カレーなんかどこで食ってもうまいに決まってるだろ!)、見逃していたようだけど、タイカレーがあるところはそうそうないのでこれは手痛い失敗……! タイカレー大好きマンでもあるのに……!
 ゲムマ初日ということもあってあまり落ち着けなかったことも一因としてはあるんだけど、これはもう一度行かなきゃいけませんなあ……(ゲス顔)

 ちなみにこのホテル、宿泊利用までしようとすると朝食付きで一泊15000円からみたいな感じだったので、まあ、あれですね、今後も朝食だけお邪魔させて頂こうと思います。
 朝食ビュッフェに行ってみて満足したところは「それなら宿泊利用もしちゃえば話が早いな!」とか後で調べることもあるんですけども、価格を調べると大抵真顔になりますね。そういうクラスのホテルで気軽に朝食を食べられるという意味ではとてもオトクなんじゃないかとも思います。
posted by 円卓P at 20:34| Comment(0) | くいだおれうちうじん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月03日

百科審議官:ひもについてとことん語る



 百科審議官のコンポーネントのメインと言えばなんと言っても「ひも」です。他のゲームではあまり見ることのないこのひもは、「ベン図をボードにするとあまりにも大きくなりすぎるからひもで代用しよう」という発想から生まれたものでした。
 実際に百科審議官のプレイに必要なボードを想定するとA3サイズのボードが必要になります。これは重厚な戦略ゲームと同等のボードサイズですし、加えて箱も巨大化せざるを得なくなるので製造コストはうなぎ登りです。それをコンパクトに纏めるためのアイディアがひもなのです。今回の再販ではデザイナーの千石一郎さんと色々相談したんですが、そうした事情からひもを採用した方が何かと便利じゃないかという話に落ち着きました。
 
 さて、この百科審議官の製作を千石さんに持ちかけたのは去年の春のゲームマーケットでのこと。それから千石さんとの話し合いで、コンポーネントのサンプルをまずは試作して、千石さんのお眼鏡に適ったら再販にゴーサインを出しましょう、という流れが決まりました。
 そして、ここで千石さんから出された課題の一つが「ひもの端の処理を自然にできないか」というものでした。初版の百科審議官では輪になったひもの両端を金具で固定していたのですが、これが千石さんとしては苦肉の策でどうも気に入らなかったようです。金具は見た目にも異物感がありますし、ケガに繋がる危険性もあるということでしょう。
 かと言って、ひも同士を結ぶのは結び目の見た目がよろしくないということで、とにかく千石さんはその辺りアーティスティックな思考の方でした。かくいうぼくは再販を実現するためにはどんな難題でも受け入れるしかないもので「わかりました、なんとかしましょう!」と算段もないのに承諾しまして「さて、実際どうしよう……」とそれから長いこと頭を悩ませることになったワケです。


 ちなみにこれがひもの新旧対照。上が旧版なんですが、金具で端を留めているのがわかると思います。

 ボードゲームの製作をこれまで数年続けてきて、ゲームの主要な素材であるところの紙の扱いにはちょっとだけ詳しくなったぼくですが、紙と同様にひももまた奥深い世界でした。そもそもぼくはひもに関しての知識はまったくなくて、百科審議官で採用されているこのひもが一般的になんと呼ばれているかもわからないという有様でした。これは割と重篤な問題で、名前がわからないと同じものを発注できないし、そもそも調べることもできないんですよね。ひもって千差万別なので、単純にひもだけで検索しても欲しい情報って全く出てこないんです。
 手探りで色々と調べたところ、どうやらこのひもはアクリルコード、ファッションコードと呼ばれる部類の組紐だということがわかりました。アクリルコードの名前の通り、アクリルでできた化繊のひもです。コプラスを製作する際には半透明のタイルを作るためにアクリル版について色々と調べたんですが、今度はアクリル繋がりでアクリルコードについて調べることになりました。と言ってもこの二者で共通する知識ってあんまりないんですけども……

 さて、調べたところアクリルコードは熱を加えることで縮む性質があるということがわかりました。ということは、アクリルコードの両端をほぐして搦めて火で炙ってやればなんか合体して一本のひもになったりするのではないか? と考えたぼくは手芸店で買ってきたアクリルコードをチャッカマンで炙る実験に乗り出しました。
 結果から言えば、ひもの両端が焦げただけでまったく絡まないというか、ひもが焦げて短くなるので絡むよりも解ける方向に力が働いてしまうということがわかりました。うーむ、このやり方ではダメだ!
 こんな感じの実験を色々と試しては失敗に終わり、「結局金具を使うのが早いんじゃないの……?」と思ったりもして。しかしながらこの金具がちっちゃい割に意外と値が張るので、コスト面の要請からも金具を使わない方法を見出さざるを得ない状況だったのです。しかも一つ好感触だった試作を千石さんに見せたところ「強く引っ張っても解けないでしょうか?」という指摘が入り、さらにひもの製造条件の一つとして「引っ張っても解けない」が加わったのです。改めて条件をまとめると「見た目が自然で」「簡単で」「安くて」「引っ張っても抜けない」ひも端の処理をぼくは求められていたわけです。うーん、なかなかの無理ゲー。

 それからいろいろと試して千石さんからのオッケーが出たのは秋ゲムマも目前に迫ってきた11月の半ばのことでした。まあ、ボトルインプ日本語版やらの他の案件の合間を縫っての研究ではありましたが、実に半年の間、ひもと向き合い続けてきたことになります。

 秋ゲムマが終わってからは大阪ゲムマに向けてひもの量産に着手することになりました。50m単位のひもをネットで購入して、それをまずは1.5m単位にはさみで切り分けます。この切ったひもは折れたりヨレがあったりと使用感があって見た目がよくないので、このヨレを取るためにスチームアイロンをかけます。スチームアイロンをかけて真っ直ぐになったひもはそうめんのように1回干して水気を抜きます。ほどよく乾いたところで今度はひもを輪にして両端を留めます。これでようやく1本が完成。これを3回繰り返すとようやく1箱分のひもが揃うわけです。
 このひもの量産工程は想像以上に時間がかかって労力もかかるのですが、その光景はまるっきり内職というか、古式ゆかしい同人ゲームの製造工程です。今どきの多くのゲームは印刷所さんに製造を頼めば部材がきっちり箱詰めされてシュリンクまで終えたゲームがスポンと届くことも珍しくないんですが、百科審議官に関しては製造工程の多くの部分が手作業によって賄われています。この辺は初版が発売された12年前の製造工程と同じようなことをやっているんではないかと思います。そういうこともあって、部材のクオリティには若干のばらつきがあるんですが、それも手作りの味だと思って頂ければありがたいです。
 特に製造工程で重い割合を占めるアイロンがけに関しては、作業効率をアップさせるために研究用として新しいアイロンを2つ買ったりもしました。今後も作業効率を上げるための設備投資は積極的に行う予定ではあります。作業面積が広くて収納がラクないい感じのアイロン台も欲しい…… とか言ってると本当にこれはゲームづくりの話なのかという雰囲気でもあります。

 とまあ、そんな感じで皆様にお届けする百科審議官のひもは作られています。大阪ゲムマからのこの1ヶ月、ずっとひも作りに没頭してきたのでぼくのひも作りスキルはなかなかの練度に達してきましたよ。
 一応、数寄ゲームズ製品の常として、ゲムマ後は一般販売が控えているのですが、どれだけの人が求めに来るのか読めないところもあって、ちょっと怖いところもあります。即日でダンボール1箱2箱をポーンと送り出せるゲームではないもので引き合いがワッと来ると怖いなーみたいな、でも売れてくれないとそれはそれで困るなーみたいな、色々と複雑な心境のままでゲムマを迎えることになります。
 まあ、これを読んで「大変だなー」と思われた方は応援の気持ちでお一つお買い求め頂けると、ぼくの一年も報われますんでよろしくお願いします。その結果、またひも作りの日々を迎えることになったとしてもそれは嬉しい悲鳴と言うやつです。ぼくの5月がひも作りに終始することになるかどうかは皆様のお気持ち次第です。
 まあ、百科審議官はそれくらいの苦労をしてでも多くの人に届ける価値のあるゲームということで。皆様どうぞよろしくお願いします!
posted by 円卓P at 23:41| Comment(0) | 百科審議官 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする