2018年10月04日

Klaus Paleschのメイフォロートリテ、「知略悪略」の日本語版を出版します



 はい、というワケで表題通りなんですけども、「知略悪略」の日本語版をゲムマ秋から販売します。プレイ人数は4-6人、対象年齢10歳以上、プレイ時間は30分となっています。イベント価格2000円。数寄ゲームズの他のゲームと同様にその後は一般流通に乗せたいと思っていますが、その際の価格は未定です。


 再販の報に反応する人には耳タコかもしれませんけども、まずはゲームの概要からお伝えさせて頂きますと、「知略悪略」は、1999年にベルリナーシュピールカルテンというドイツの出版社から発売されたゲームです。このベルリナーシュピールカルテンは残念ながら既になくなってしまったんですけども、色々な小箱の名作を世に送り出したメーカーでもありまして、今でいうところのNSV的な立ち位置…… は、まあ、ちょっと言い過ぎでしょうけども、とにかく小さいながらも独自の存在感を示すメーカーではあった……のだろうと思います(ぼくはそこまで深いゲーム歴ではないので当時の感覚を知りませぬ)。ベルリナーで最も有名なのはテンデイズゲームズさんから日本語版から発売されているクニツィアの「ゼロ」でしょうか。

 で、この「知略悪略」、そもそもの出版部数自体の少ない割とレアなゲームなんですけども、カードのみのコンポーネントなので構成としては地味ですし、「ボトルインプ」のように目に見える高値がつかないので存在感も薄く……(笑) 正直なところ、これだけ多くの方に反応して頂いたのは不思議な気持ちではあります。

 ただ、何度かリメイクされた「ボトルインプ」に比べると「知略悪略」は初めてのリメイクなのでその辺も注目されているのかもしれません。「オイオイあいつ死ぬわ」的な注目なのかもしれませんけども(笑)

 まあ、それぐらいマイナーなゲームです。……だと思っているんですけども、ぼく自身は前々からこのゲームを凄く欲しいと思ってはいて、欲しいけど手に入らないので作ることにしました。「欲しいものは権利取って作る」は数寄ゲームズのモットーです。


 さて、「知略悪略」はいわゆるトリックテイキングゲームでして、さらに言えばその中でもメイフォローというルールを備えた割と変化球みの強いタイトルでもあります。メイフォローとはなんぞやという話をすると長くなりすぎるのでここでは説明を割愛しますけども、世の中の多くのトリテはマストフォローを採用しているゲームでして、メイフォローのトリテはユーロゲームの中でも1割にも満たないというマイノリティな存在です。つまり作りづらいゲームなんですね。

 メイフォローに分類されるタイトルの代表格を挙げるとすると今現在はNSVから発売されている「シュティッヒルン」になるかと思います。これも「知略悪略」と同様にパレッシュ作のゲームです。またパレッシュは「ハットトリック」というこれまたメイフォローのトリテを作っていまして、パレッシュはメイフォローを作る名手という不思議なポジションのデザイナーでもあります。


 システムとして特徴的なのは前述のメイフォロー、そして4つのスート(色)のうち、2色だけを集めると高得点、3色以上を集めると今度は得点が目減りしていくというわかりやすい(ルールの字面だけを追うとわかりにくい(笑))得点システムです。


※以下、ルールの話をしますけども、知ってる人は飛ばして貰っていいです。


 メイフォローに関しては前述の「シュティッヒルン」なんかに比べると若干の縛りを持っていまして、要は1トリック中に4スート中3スートしかプレイできないゲームです。なので完全なメイフォローではありません。そういう意味ではメイフォローの亜種という位置づけのゲームではあるんですけども、そのおかげで若干のコントロール性を得ているのでこちらの方を好む人もいるでしょう。

 ちなみにトリテに慣れてる人なら「4スートABCD中、3スートABCしかプレイできないなら、4スート目のDしか手札にない場合はどうなるの?」という疑問を得るかと思いますけども、その場合、ここでトリックを途中終了するとともにラウンドも即座に終わります。カードは配り切りではありますけども、フォローできなかったら即終了(メイフォローでフォローできなかったら、というのも変な言い回しですが)で手札を全部使うパターンはむしろ少ない…… この辺のルールの組み合わせは後年のブルクハルトのトリテ「ポテトマン」での援用を見ることもできますね。

 また、このゲームの語り草でもあるユニークな得点システムは、得点計算に掛け算、割り算を使う結構な大胆不敵ぶりで、4色のスートABCDをA>B>C>Dの枚数で集めた場合の計算式は(A*B)/(C+D)となります。つまりどれだけ得点となるAやBのスートを集めたところでCやDのカードを1枚でも取るとごっそり得点が減っていくという地獄ぶりで、ゲーム終盤は何気ない一手から阿鼻叫喚に至ることも多々。さらにメイフォローならではのコントロールしにくさは、このゲームのリスクマネジメント性を浮き彫りにしていまして「とにかく一手が重い」という遊んだ方の呻き声をよく耳にします。

 そしてこの得点システムを活かすべく、トリックの勝者はカードの半分を獲得し、次いでトリックの敗者が残り半分のカードを獲得するというルールもついてきます。自律的に得点を稼ぐにはトリックに勝つべきなんですけども、強いカードをプレイしている人の欲しくないスートを集めているならトリックに負けるのも一つの手、というような駆け引きもありまして、とにかくメカニクスが相互に噛み合っている、そんな印象を持たせるゲームではあります。まあ、やはりこの辺の機微は実際に遊んで確かめて頂きたいので、今は発売をお待ち下さい、ということになりますかね。


※ルールの話、ここまで。


 やはりルールにユニークな味を持つゲームなので、ついついルールを語りたくなってしまうんですけども、そこは百聞は一見に如かずなので、文章で説明するのは程々に留めておきます。その上でお伝えしたいのは、率直に言えば「どうぞ買ってくださいお願いします!」ということです。

 いや、何もこれはがっぽり儲けたいという意味ではなく、こうした試みを次に繋げたいという気持ちでのお話です。今回の契約に関しましてパレッシュからはある印刷部数を提示されたんですけども、これまでの経験から鑑みるに「この数をそのまま飲み込んだら半分以上売れ残るぞ……」という数字でした。

 なので、そこは日本の市況をお伝えした上で頭を下げて「もう少し少ない印刷部数でお願いできませんでしょうか? これこれこういう条件でもいいので」と冷や汗をかきながらお願いして、結果快く了承して頂きました。

 これは数寄ゲームズ自体、小規模なメーカーで販売力に乏しいことも理由としては当然あるんですけども、それ以上に日本のボドゲ市場、トリテ市場はまだまだ発展途上の域にあるという認識からの判断です。ぼくは小心者なので契約の前に出版経験の豊富な方々に部数についての相談もしていまして、これは何もぼく個人の勝手な憶測ではなく、ある程度の業界の景況などを踏まえての判断です。

 この辺りは本当に残念なことながら多くの名作トリテが日本語版を出版できない状況からもご想像頂けるかとも思います。「トリテは売れない」は、常識のように語られていますし、個人的に大好きな「ペッパー」もひとまず販売終了に至ってしまいました。悲しい。

 ただ、そういう現状とは言え、市場を作っていかなきゃ市場は生まれないんだと私的には思っています。そのために良質なトリテを取り揃えて多くの人にトリテの魅力を知ってもらうことが大事だと思っていますし、それをプレイヤーの方々も求めていると思っています。……ここは幾分かの自己欺瞞も篭っていますけども、でも本当にそう思っていますし、そう信じています。でないと出版なんてやってられませんよ!

 ということで、願わくばトリテを愛する皆様にはぜひお力をお貸し頂きたいのです。

 おかげさまで「ボトルインプ」は大変な好評を頂きました。ただ、正直なところ、「ボトルインプ」はトリテのフラグシップ的な立ち位置のゲームでして、「これが売れなかったらもうトリテは全部諦める!」クラスのゲームです。半分は勝てるなと思っていて、負けるにしても損害は微小で済むだろう、みたいな安心感はあったんです。実際はそれよりもずっといい結果だったんですけども、出す前は(予想以上に大きな勝負に膨れ上がっていたこともあって)ヒヤヒヤものでした。

 で、「ボトルインプ」と比べると「知略悪略」の心もとなさは相当なもので、負けるにしても死なないようにダメージコントロールを幾重にも重ねて、それでも生き残れるのか不安な心境です。予想以上の反応を頂けても「ホンマかいな? みんなそんなに知略悪略欲しいんかな?」と疑っている有様です。

 ただ、逆にこのクラスのトリテを多くの方に支持して頂けるなら、出版の選択肢はめちゃくちゃ広がるんです。みんなの欲しいアレもアレもアレも手を伸ばせます。まあ、先にぼくの欲しいアレとアレとアレから手を出しますけど!

 そして何よりデザイナーの方に「すみません、日本市場は小さいので……」と弁解することもなく自信を持って交渉できます。今回は幸いにも契約に漕ぎ着けられましたけども、大きな部数を作れるなら契約も結びやすくなりますし、色々と条件もよくなるんです。

 今回「知略悪略」をこういう形で出版するのはその辺の事情もありまして、「やりたいこと」と「やれること」の完全な一致を果たせたかと言えばそうではないところはあります。お力添え頂いた方々のベストなパフォーマンスに比べて、ぼく自身の力不足を感じてもいます。ただ「やれること」の中で精一杯の「やりたいこと」を選びました。それは確かです。


 また「知略悪略」を出版する意義として、日本国内で誰でもすぐに参照できるメイフォローのトリテが必要だと感じていたこともあります。

 というのは同時に進行している「ペーターと2匹の牧羊犬」のデザイナーであるところのしぶさんが去年作った別のトリテの試作もメイフォローだったんですけども、正直なところ、あまりよい触感は得られなかったんです。そういう時に参考となるテキストがあるとないのとでは大きく違うので、そうしたゲームはやはり必要なんじゃないかなと思ったのです。

 今回のゲムマでも、なんだか予想以上の数のオリジナルなトリテを目にするんですけども、同時にそうした創作熱に応えられるだけの教科書は足りているんだろうかという疑問はあります。特にメイフォローは扱いの難しい、事故りやすいシステムの最たるものではあるんですけども「カッコいい響きだしルールも複雑にならないしリボークも防げるし」みたいなノリで組んでみて、結局できあがったものはメイフォローではなくノーフォローでした、みたいなこともありがちなので、やはり参考資料はいくらあっても足りないということはないと思っています。

 ただ、メイフォローの教科書として参照すべきゲームとしてまず「知略悪略」を挙げるのかというと、そうではなかろうというのも事実なんですけども……(笑)


 最後に、原題の「Mit List und Tücke」をGoogle翻訳に入れると「狡猾と背教で」と翻訳されるように、「知略悪略」は元々メビウスゲームズさん独自の訳語です(正確には「智略・悪略」)。ミヒャエル・リーネックも同名のゲームを作っているのでドイツではよく使われるフレーズなのかもしれませんがよくは知りません。ともあれ、今回の日本語版の製作に際してはメビウスゲームズさんにお伺いしてタイトル使用の許可を頂きました。この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。

 その上で呼称がブレると混乱の元になりますので、今回の日本語版では今現在最も使用頻度が高いと思われる「知略悪略」の表記を採用しました。


 とまあ、そんな感じでサラッと書くつもりで結構な分量になってしまった感もありつつ、まだまだお伝えしたいことは色々とあるもので今後とも数寄ゲームズブログやTwitterにてお知らせしていければと思います。よろしくお願いします。
ラベル:知略悪略
posted by 円卓P at 00:07| Comment(0) | 知略悪略 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月27日

ゲムマ秋に「ペーターと2匹の牧羊犬」を出展します


 ゲームマーケット2018秋に新作の2人用ゲーム「ペーターと2匹の牧羊犬」を出展します。ゲームデザインはしぶさん、アートワークは別府さいさん。対象年齢は8歳以上、プレイ時間は15-30分、イベント価格は2500円となっています。



 このゲームはトリックテイキングとマンカラを組み合わせた新基軸のゲームです。少なくともぼくの知る限り、この組み合わせのゲームは見たことがありません。それだけに元となるアイディアがしぶさんから提示された時にはびっくり仰天しました。新規性があり、なおかつ理に適っている。ぼくからは出てこない発想のゲームだ! と、感じました。

 概要としては、プレイヤーは牧羊犬となって多くの動物を自分のナワバリに集めることを目指します。得点になるのは羊、豚、牛の3種の家畜で、狼はそうした家畜を食べてしまう邪魔者です。なので、プレイヤーは家畜を集めつつも狼を相手に押し付ける動きを要求されます。
 とは言え、そこにトリックテイキングとマンカラ特有のルールが絡んでくるので一筋縄ではいきません。ひょっとしたらブルーノ・カタラがまかり間違って作りそうな硬質な2人用ゲームという印象もあります。
 それでいてゲーム自体に豊かなテーマ性を与えることができたので、多くの人に楽しんで貰えるゲームになっているのではないかと思っています。「骨太なトリックテイキングゲームに豊かな肉付けのテーマ性」は、ぼくが常に目指している目標の一つですね。

 ちなみにこの牧場テーマを考案したのもゲームデザイナーのしぶさんです。「動物が嫌いなボードゲーマーなんていません!」ということで、素晴らしい着想ですね!
 ……しかし、着想は実現しなければアイディアにはならんのですぜ…… 牧場テーマを遂行するにあたって、コンポーネントをどうするの? たくさんの動物コマを入れたいけど、サイズが…… 種類が…… 予算が……
 というところで、しぶさん個人の手に負えない企画に膨れ上がったので、そんじゃまあ、ぼくがなんとかしましょう、ということで助け舟を出す形で数寄ゲームズ名義の企画として動かすことになったワケです。
 座組としてはかぶけんさんのコプラスと同じ塩梅ですが、しぶさん自身にはゲーム作りの経験がないということもあって今回はぼくもデベロップに結構関わっています。コプラスの場合、かぶけんさんが経験豊富ということもあってゲームデザインは見守るだけという態度を取っていたんですが、今回はそれよりもかなり積極的に取り組んでいる形です。おかげで当初のルールからは大分ブラッシュアップされました。



 また、数寄ゲームズとしては、新人ゲームデザイナーのデビュー作を数寄ゲームズ名義で出版する初の試みとなります。これもやはりコプラスの延長線上のチャレンジではあるんですが、実はアートワークを手がけている別府さんはかぶけんさんを介してオファーに至った経緯もありまして(別府さんの連絡先がわからなかったのです)、これまでの色々な道のりがあってこそ、このゲームの発表に至ることができたのかなと思っています。かぶけんさん、その節はありがとうございました。

 さて、これは全くの余談なんですが、しぶさんと話していてハッとさせられた話で、ゲムマを取り巻く環境の変化の一つとして「ゲームを作る人の処女作」への期待感ってドンドン低下しているなーってことがあります。ぼくが初めてゲームを出展したのが5年前の2013年なんですが、その頃はまだ新人や処女作に期待があるというか「わざわざゲムマに骨を折って自作のゲームを送り出す酔狂な人間」への好奇心があったと思うんですよね。ひょっとしたら何か凄いモノを出してくるかもしれぬぞ、と。ゲムマ出展者はまだミステリアスな存在だったのです。
 ただ、ここ5年間でボドゲ人口が増え、制作のハードルも下がり、カジュアルにゲームが作られるようになって、ゲムマ出展者の特別感がどんどん希釈されていって。それでいて、経験豊富な先達者はさらにゲーム作りにこなれていくので、わざわざ新人のゲームを掘り起こさなくてもいいのかな、という状況にもなっています。処女作への期待感はいまやズンドコで、新人には厳しい時代だと言わざるを得ないでしょう。
 そうした中で新人デザイナーのデビューに力添えすることはなかなかに意義あることなのではないか、ともぼくは思うんですよね。特にそれがキラリとした見どころのあるダイヤの原石であればなおさらで、それが磨き方が足りないばかりに埋もれてしまうのではあまりに勿体無いと思ったんです。
 もちろん「あなたのゲーム、このままじゃ埋もれますよ!」なんて言い出すのは失礼の極みですが、そこは幸いにもしぶさんとぼくは元から面識があり、なおかつしぶさんはぼくのゲーム作りを評価してくださっていたので、話はスムーズに運びました。おかげで製造、販売、広報をぼくが担当し、しぶさんはゲームデザインに専念するという二人三脚の体制を作ることができたのです。そういう意味ではお互いにとってお互いの存在が幸運だったと思います。

 ゲムマまでの残りわずかな期間、しぶさんはルールの細部を詰めて、そしてぼくはコンポーネントを箱に詰めますw
 3Dプリンターで出力できるコンポーネントは自家製なので現時点でも色々とお見せできるんですが、箱などの印刷物が上がってくるのは10月下旬か11月上旬といった辺りなので、その辺になったらまたお見せできるものも増えてくると思います。
 他にもお伝えしたいことは色々とありますので、今後も都度更新していきたいと思います。「ペーターと2匹の牧羊犬」をどうぞよろしくお願いします。



ペーターと2匹の牧羊犬

プレイ人数:2人
対象年齢:8歳+
プレイ時間:15-30分
イベント価格:2500円

内容物:
動物コマ 28個
組み立て式柵 8本
ついたて 2枚
袋 1つ
説明書 1部
posted by 円卓P at 19:58| Comment(0) | ペーターと2匹の牧羊犬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月21日

ハリウッドライヴス観劇記録

ハリウッドライヴスとは?
このイベントの特徴は?
16:15(10 分) 脚本の公開
16:25( 5 分) 脚本の競売
16:30(30 分) 配役とトレーラーの準備
17:00(20 分) トレーラーの公開
17:20( 5 分) アカデミー賞投票とスターカード回収
17:25(10 分) 休憩
17:35(10 分) アカデミー賞授賞式
17:45(15 分) 【フィナーレ】
18:00(----) 終演

 先日、縁あって某所にて開催されたハリウッドライヴスを観劇させて貰った。この催しがとても面白く、興味深い内容だったので、当日の様子を書いてようと思う次第。
 そもそもの発端としては、ある日「ハリウッドライヴスいいなー」と呟いたところ、偶然にも今回のイベントの企画者の方に「今度やるんですけど見に来ませんか?」とお誘い頂いた。のでホイホイ乗っかってった次第。こんな感じで何事も口に出してみると意外な形で願いが叶ったりするので今後も軽率に願望を垂れ流していこうと思う。

◆ハリウッドライヴスとは?


 さて、「ハリウッドライヴスとは何か?」そして「このイベントの特異性について」まずは触れたいと思う。
 ハリウッドライヴスはケヴィン・ジャクリーンとライナー・クニツィアの共著によるライブRPGだ。作者のクニツィアはドイツゲーム界隈では最も著名なゲームデザイナーだろう。もう一人のジャクリーンは何者か、と言えば、どうもクニツィアの友人の一人で、このゲームは彼が考案したルールをクニツィアが整えたもの、らしい。
 プレイヤーは映画俳優及びプロデューサーに扮して映画界における名声とお金の多寡を競う。プロデューサーが競り落とした脚本を元に俳優陣は演技のプランを練り、実際に3分間の寸劇を行う。観劇が終了した後、プレイヤー全員による投票が行われ、この年のアカデミー賞を決定する。
 このゲームにおいてプレイヤーは自ら台本を考案し、演じるとともに、他プレイヤーの映画を鑑賞し、評価する。映画における主体と客体を忙しなく行き交うところに独特の楽しさがある。
 プレイ人数は10人以上を必要とし、プレイ時間としては4時間を要する。その立ち位置やプレイスタイルはテーブルを囲んで勝敗を競う一般的なボードゲームよりは、人狼の方がより近いかもしれない。ルールはシンプルで直感的なので呑み込みやすいが、ゲームをより有利に進めるにはルールの行間に隠されたちょっとしたコツに気付く必要があるかもしれない。

◆このイベントの特徴は?


 さて、この日のイベントはハリウッドライヴスとしても少し特殊なコンセプトに立脚していた。それは「劇団所属の役者がハリウッドライヴスをプレイしたらどうなるか?」というものだ。まとめサイト的なアオリをすれば「ハリウッドライヴスをプロに演じさせてみた結果www」という感じだ。
 本来ハリウッドライヴスのプレイヤーは、一般的なゲームプレイヤーであり、職業的な映画人ではない。なので演じられる寸劇にさほどクオリティを求められることはない。たどたどしい動きやセリフすらも笑いになる。気のおけない仲間内であればそれで十分だ。
 しかし、プロの演者がハリウッドライヴスをプレイしてみた場合、そこでどんなゲームプレイが繰り広げられるのか。これは単純に気になる。見たい。

 開催に必要な費用すべては主催者であるニューゲームズオーダーさんとテンデイズゲームズさんが負担している。演者には出演料が支払われ、会場の手配や小道具の準備などもすべて主催者が用意する。つまり、結構なお金がかかっている。



 広報活動の一環と捉えることもできようが、ハリウッドライヴスという無名に近いゲームのバジェットから考えると労力が大きすぎて、趣味が先行しすぎている。率直な感想を言えば、頭がおかしい。理知的とは言えないし、こんな試みが継続するとも思えない。
 しかし、それだけにプレミア性があるとも言える。長野の片田舎から上京してでも観劇する価値はあろう、と思ったのもそうした理由あってのことだ。
 観劇のみの参加、という意味では、本来のハリウッドライヴスの楽しみ方とはこれは若干異なる。言わばデジタルゲームのゲーム実況を見るような感じだ。でもまあ、それもゲームの楽しみ方の一つではあろうし、ゲーム自体の理解にも繋がる。ぼく自身の話をすればハリウッドライヴスという異文化のゲームをいつかどこかで開催したいとは思っていたので、その場合の参考になればという思いも強かった。

 しかし、この心躍る試みは一方で少なくないリスクも抱えていた。今回のプレイヤーはあくまで演者だ。いわゆるボードゲームの文脈に通じたゲームプレイヤーではない。
 そうしたプレイヤーにとって、この剥き出しのゲームデザインはともすると劇薬にもなるのではないか、という思いはある。作者が思い描いた光景が再現されないのではないか。プレイヤーは途中でやる気を失ってしまうのではないか……
 企画者の方もそうしたリスクを意識していたようで、参加に際しては「実験」の側面を強く訴えられた。そんなこともあって観客は意図的に制限された。観劇のためにこのイベントに参加した人間は片手で足りるほどだ。
 無駄足になる危険性を考慮されたのだろう、企画者の方からはフル参加よりは熱の入る後半からの観劇を勧められ、4時間の長丁場に潜在するリスクを検討したぼくは素直にそれに従った。結果的には「いや、前半も見るべきだったわこれ!」と後悔したんだけども。



 当日、ぼくが会場を訪れると既にハリウッドライヴスは前半戦を終え、2年目に入るところだった。ハリウッドライヴスは一般的に2セットの流れを行う。1セットを1年と呼び、2年の成果で最終的な勝者を決める。
 とは言え、1年目で派手な活躍を決めて男優賞を獲得したプレイヤーなんかは2年目では警戒されるし、1年目の細かい選択が2年目にも影響する。モダンゲームの視点からするとかなり古典的な力学の働くゲームなのだけど、こうしたプリミティブなインタラクションは時代を経ても腐らないし、ビビッドでインパクトがある。それだけに毒性が強い、というのは繰り返しになるのだけども。

◆16:15(10 分) 脚本の公開




 会場の奥には張り出された3枚の脚本。それぞれタイトルは「トレインスポッターと秘密の部屋」「リベンジャーズ」「レザボアダックス」。どこかで聞いたようなタイトルだ。
 そして張り出された脚本を取り巻くようにして、プレイヤー、劇団所属の本職の演者達が歓談とも交渉ともつかない会話を繰り広げている。



 これら脚本は公開の後にオークションにかけられるのだが、脚本にはタイトルとジャンル、必要な配役、製作費用、期待される興行収益などが記されている。それら情報を元に、プレイヤーはこの脚本を落札してプロデューサーの立場を得るべきか、あるいはそうした野心を抱くプロデューサーにいち早く自分を売り込みに行くかを検討する。
 オークションまでの10分の時間、プレイヤー間ではそうした静かな駆け引きが繰り広げられているのだ。

◆16:25( 5 分) 脚本の競売


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 オークションが始まる。まず競りにかけられたのは「トレインスポッターと秘密の部屋」。ジャンルはサスペンス。
 しかし、オークショナーが競りの開始を告げたにもかかわらず、続いて競り値を宣言する声はなかった。戸惑いが滲むプレイヤーの視線が交差する。

 「1ドル」

 ようやく出たのは最低落札額である1ドル。ちなみに1ドルとは言うものの、ゲーム的な単位としては1ミリオンドルということになる。
 それからたっぷりと時間を置いて、オークショナーの何度かの確認の後、逡巡の籠もった「2ドル」の声。
 応札は、なかった。

 わずか2ミリオンドルで落札された「トレインスポッターと秘密の部屋」。前半を見ていないぼくはこの会場で形成された相場観を知るよしもないのだが、会場の異様な空気感から落札額が格安であることはわかった。
 驚きの低予算フィルムということになる。大ヒット小説の映画版というよりは、その成功に乗っかって小銭稼ぎでもしてやろうかという意識が透ける類似のインディータイトルという趣さえある。
 しかし、ゲーム的に考えればこの脚本を落札したプロデューサーは一歩勝利に近づいたということになる。制作費用を極力抑えられたのだから、浮いた予算を有望な役者の獲得に回すことができる。それは大きな興行収入を約束する。このゲームは出演俳優が多い作品ほど大きな興行収入が得られるようにできているのだ。

 続く「リベンジャーズ」のオークションは先程とは打って変わって2人のプロデューサー候補による熾烈な応札の応酬が続いた。

 「15!」「16!」「20!」「21!」「25!」「26!」……

 一方は5刻み、一方は1刻み。ここは各人の性格が出る。より穏当な価格で脚本を落札することは大事だが、しかし金を出し渋るしみったれのプロデューサーは果たして役者からどんな視線を向けられるだろうか。
 結局「リベンジャーズ」の脚本は54ミリオンドルという驚愕の高値をつけて落札された。実に「トレインスポッターと秘密の部屋」の27倍。歴史に残る大型バジェットだ。
 あるいは、これだけの人気作が後に控えていただけに「トレインスポッターと秘密の部屋」が手控えされた、という事情もあるのかもしれない。

 最後の「レサボアダックス」は、プロデューサーになれる最後のチャンスということもあってか、様々なプレイヤーが応札を表明し、最終的に31ドルの価格で落札された。やはり結果を見ても「トレインスポッターと秘密の部屋」の安値にはインパクトがある。

◆16:30(30 分) 配役とトレーラーの準備


 オークションが終わり、ここからは「配役とトレーラーの準備」の時間となる。時間にして30分、プロデューサーは役者と出演交渉を取り交わし、台本作りや小道具の選択、演技の練習など上演までのすべての準備を終える。
 出演交渉に用いる時間と演劇の練習時間が一体化されているのがルール的にはミソなところで、出演交渉に時間をかけすぎると練習時間が削られる。なので基本的には手早く出演交渉を纏めて練習時間を確保したい。より完成度の高いトレーラーを披露するために練習時間はいくらあっても不足するということはない。
 しかし、一方で役者は自分を高値で売り込みたいし、なるべくなら目立つ役も欲しい。プロデューサーとしては実力派俳優を囲い込みたいし、できれば出演料は安く抑えたい。各人のそうした思惑が交差すると話はなかなか纏まらない。そうこうしているうちに時間だけが無為に過ぎていってしまうのだ。

 自身にもハリウッドライヴスのプレイ経験があるテンデイズゲームズのタナカマさんもこの場には臨席していたのだが、タナカマさんによると出演交渉は軽めに終わらせ、練習を綿密に行うのが普通の流れらしい。企画者の一人も「どこか1つ出演交渉が纏まれば、他の映画もそれに倣うだろう」と言っていた。
 しかし、その予想に反して、プレイヤー達の出演交渉はタフに長時間に渡って繰り広げられた。

 出演交渉が特に難航したのは「トレインスポッターと秘密の部屋」であるように見受けられた。なにせタダに近い価格で落札された脚本だから制作費は有り余っている……ように傍目からは見える。少なくとも他の2作のプロデューサーよりは金払いがよさそうだと考えるのはおかしな考えではないだろう。
 一方で超大作として世間の期待を集める「リベンジャーズ」は役者の確保に苦労しているようだった。製作規模に反比例するであろう出演料もそうだが、当のプロデューサーが去年のアカデミー賞作品賞を受賞したプレイヤーだっただけにさらなる一人勝ちを警戒されたのかもしれない。アカデミー賞を獲った敏腕プロデューサーの次回作となれば出演を希望する役者も多そうなものではあるが、そうした本命は敢えて外して大穴に乗っていこうとする思惑が働くところがこのゲームのルールの妙味だ。
 そして、この考え方は至極ゲーマー的な思考法でもあり、参加者全員が勝利を目指すプレイヤーである場合に成立する。今回のイベントのプレイヤーが果たしてそうしたゲーマー的思考に理解を示せるか、企画者には危惧があっただろうが、それは杞憂だったらしい。
 結果的に「リベンジャーズ」は3名の役者のみでの製作を余儀なくされた。今回のプレイヤー総数は12名で、用意された脚本は3本。プロデューサーも役者として映画には出演するので各映画は平均して4名の役者を得ることになる。



 役者の多寡は直接的に興行収入に反映されることもあって「リベンジャーズ」は興行的には辛い状況とも言える。しかし、いち早く出演交渉を終えたことで他の作品よりも多くの練習時間を得ることができた。これが映画の完成度に寄与し、大金の動くアカデミー賞の結果にも繋がる……かもしれない。



 そして最終的に「トレインスポッターと秘密の部屋」は4名の、「レサボアダックス」は5名の役者を得た。ここまで20分。残り10分で両企画はストーリーを決め、練習を終え、上演に臨まなければならない。厳しい状況ではある。

◆17:00(20 分) トレーラーの公開


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 10分後。狂騒の30分は終わりを告げ、トレーラーの上映が始まる。一番手は「トレインスポッターと秘密の部屋」。



 女が意識を取り戻すところからトレーラーは始まる。舞台は牢屋。この施設には幾人もの虜囚がいるのか、静まり返った牢獄には呻き声が時折響く。
 彼女は記憶を失っている。なぜこの不気味な牢獄にいるのか、自分は何者なのか、何もわからない。……ただ一つのある言葉を除いて。
 そして、隣の部屋には彼女と同じように過去の記憶を持たない男が収監されている。男もまたある一つの言葉だけを覚えていた。女と男は壁(に見立てた移動式仕切り)越しにその言葉を呟く。

 「「トレインスポッター」」

 男はやがて刑務官と思わしき男に牢屋から引きずり出され、悲鳴を残して舞台を去る。女は壁向こうの凶行に身を震わせながら、自身の置かれた不条理に苦悩する。
 男は一体どうなってしまったのか? そしてトレインスポッターとは? やがて女はすべてを思い出すが、背後から刑務官が忍び寄り、女を昏倒させる。引きずり出される女。謎を残してトレーラーは幕を閉じる。

 全編、沈黙と謎に満ち満ちた重苦しい雰囲気。終始場面を覆う暗さはフランス映画的な趣も。サスペンスの名に恥じない緊張感。床を叩いて足音を演出するなど音響にも工夫がある。
 タイトルから想像される内容をいい意味で裏切った味わい深い作品。2ミリオンドルの低予算映画ならこうなるよねと思わせる限定された舞台設定と配役も面白い。


 続く「リベンジャーズ」は娯楽の王道を行く大作アクション映画だ。界隈をどよめかせた大バジェットなだけに期待感も大きい。



 剣を手に舞台に躍り出る男。這いつくばる姉と妹。「妹の命だけは助けてください!」姉の必死の懇願に男は頷く……と見せかけて剣を突き刺す。
 絶叫する妹。男に殴りかかるもあえなく昏倒させられる。「この国はすべてオレのものだ!」高笑いを上げる男。
 実はある国の王族だった妹。すべてを失った彼女は荒野を彷徨い、老人(さっきの男と一人二役)と出会う。「強くなりたいか?」問いかける老人に妹は頷く。そして始まる謎特訓。やがて老人は妹に剣を与える。
 場面は変わり、戦う力を得た妹は姉の仇である男と対峙する。白熱のアクションシーン。勝つのはどちらだ!? ……というところで終了。

 10分にも感じられる濃密な3分間。途中で「カット!」の声がかかったらどうしようかとハラハラしていた。
 やはり本職の演者なだけに一つ一つの動作にキレがあって、アクションシーンが様になる。素人ではこうはいかない。
 演者が3人だけということもあり、途中退場した姉は以後ナレーションを担当するなど1人1人の活躍に印象が残る。エンターテイメント成分たっぷりに魅せる娯楽映画の王道作品だった。


 最後は「レザボアダックス」。ジャンルはドラマ。5名の演者を用意し、そのうち2名は去年のアカデミー男優賞、女優賞を獲得しているという質量ともに揃った期待作だ。



 舞台中央で四つん這いになりながら低く長く呻き声を上げる男。その傍らには女。女は男に気づく様子もなく、ただ虚空を見つめ続けている。男と女の関係はここでは明かされない。
 場面転換。街角で花を売る女はチンピラにぶつかり因縁をつけられる。チンピラを嗜める男。男はチンピラの兄貴分だった(個人的にこのチンピラの演技がキレてて助演男優賞をあげたい)。
 出会ってしまった男と女。彼らは恋に落ち、やがて女は子供を身籠る。これを契機としたのか、男は組の金を奪って逃げる。組織から放たれた追手を振り切り、抱擁を交わす2人。
 しかし次の瞬間。

「ごめんね」

 男は呻き声を上げて二歩、三歩と後ずさりする。女の手には光るナイフ。うずくまる男。

「どうしてこんなことに……」

男は女に問いかける。女は答えない。

 終演後も余韻が残るトレーラーらしいトレーラー。ナレーションを効果的に交えたスピーディな場面転換と巧みな構成が特筆モノだ。
 カットバックから始まる構成はともすると難解さが先立つ恐れもあったが、ナレーションに人員を割けるだけの人数の力を存分に生かしている。
 ヤクザもののベッタベタな展開に笑いを散りばめる温度感も好み。

◆17:20( 5 分) アカデミー賞投票とスターカード回収


 三者三様のトレーラーが終わり、続いてアカデミー賞を選出する投票へ移る。アカデミー賞は作品賞、男優賞、女優賞の3つの賞が用意されていて、作品賞に関してはプレイヤーとして参加した自分の作品を除く2作品のいずれかに投票し、男優賞、女優賞については自分以外のいずれかのプレイヤーに投票することになる。

 なお、ゲーム的にはこの投票に関して交渉を行ってもいいということになっている。自分に投票をお願いする代わりに袖の下を渡すとか、相互に票を入れ合うとか、そういう小細工も可能なのだ。ただし、この投票は基本的には非公開なので、約束を破ってもバレることはない。結局は口約束でしかないということだ。

 このように基本的に投票はプレイヤー間で行われる行為なので、観客であるぼくは投票には参加しない。……ハズだったんだけど、ここでイレギュラーが発生した。作品賞と女優賞で同票タイが発生したのだ。作品賞に至っては3作品全てが同票になるというまさかの事態。
 本来のルールとしては司会進行を務めるディレクターが勝者を選ぶ、ということになっているんだけど、企画者の方の計らいで急遽観客の投票で勝者を決めることに決まった。
 正直な話、どれもこれも甲乙つけがたい内容だったので、めちゃくちゃ悩んだ。なんというかそれぞれの方向性が別物なので、一つのものさしで計りにくいというか、「アグリコラ」と「ワニに乗る」と「私の世界の見方」のどれがオススメか聞かれているようなものだ。そんなの決められるワケないやろ、という話でもある。
 とは言え、時間の制約もあるのでここは苦渋の決断を下す。あとは発表を待つだけとなった。

◆17:35(10 分) アカデミー賞授賞式


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 授賞式が始まり、先程の上演とはまた別種の緊張感が場を満たす。各プレイヤーの勝敗の不沈は、ノミネートか、本賞か、どのタイミングで名前が呼ばれるかにかかっているのだ。プレイヤーの緊張感がこちらにも伝わってくる。
 授賞式は女優賞、男優賞、作品賞の順番で発表され、結果的に「リベンジャーズ」が女優賞、男優賞、作品賞を総ナメにした。わずか3人の出演者がそれぞれ各賞を獲得したのだから驚きだ。
 結果は「リベンジャーズ」の一人勝ちのようには見えるが、前述の通り作品賞と女優賞は同数タイだったので、その差はごくわずかなのだ。映画人同士の評価としては各作品の評価は甲乙つけがたいものだった。
 今回「リベンジャーズ」が選ばれたのはその結果を一般人である観客に委ねたからであって、つまり最も大衆受けする向きだったのが「リベンジャーズ」だったから、というところはある。
 ボードゲーム的に言えばドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞の違いというか、本来ドイツ年間ゲーム大賞的に選ばれるべき賞が特例としてドイツゲーム賞的に選ばれた結果、とも言える。
 そういう意味では本来このゲームが内包する哲学とは若干異なる形での評価ではあるのだけど、ぼく個人としては投票に参加できたのは素直に楽しかった。結局何を言いたいかと言えばどれもこれもステキな作品だったということだ。
 あと、「リベンジャーズ」については、脚本のオークションでの高騰ぶりがぼくには理解できなかったんだけど、あるいはアカデミー賞向けの映画作りとは何か、を逆算した結果があれだったのかもしれない。プレイヤー全員が十分な演技のスキルを持っているからこそ、勝負は脚本で決まる。それが演者のみのハリウッドライヴス世界なのかもしれない。……とも思ったのだけど、これは後付けに過ぎるだろうか。

◆17:45(15 分) 【フィナーレ】


pan1nizedのハリウッドライヴスゲーム会場2をwww.twitch.tvから視聴する

 アカデミー賞の発表が終わり、最後に勝利者の発表が行われる。このゲームの勝利者は演者の格を示す「スター」を最も集めたプレイヤーと、最もお金を稼いだプレイヤー、そしてスターとお金を集めたプレイヤーの3人となる。
 本来的には勝利者は「一番多くスターを集めたプレイヤー」と「一番多くお金を稼いだプレイヤー」の2名だけなのだが、この日のルールは若干の修正が加えられて「お金とスターを集めたプレイヤー」という3人目の勝利者が設定されていた。詳しいルールは知らないが、お金とスターの順位をそれぞれ出して、低い方を基準にするクニツィアライクな算出方法なんではなかろうか。
 ともあれそんな形で勝者が選出された。2度のアカデミー賞を獲得し栄華を極めたプレイヤーがいる一方で、わずか2ドルで脚本を落札したはずの「トレインスポッターと秘密の部屋」のプロデューサーはなぜか1文無しでゲームを終えていた。映画ビジネスの光と闇である。

◆18:00(----) 終演


 そんな形でハリウッドライヴスはこの日の公演を終えた。時間は18:00。当初のタイムスケジュールピッタリの終幕である。これはディレクターを務めたスタッフの苦心の成果だ。
 出演者全員が劇団員という壮大な試み。何をもって成功とみなすか、人によって物差しは違うだろうけど、「来てよかった」「見てよかった」というのがぼくの素直な感想だ。緊張感に満ちた、とても刺激的な時間と空間だった。
 同種のイベントが今後も開催されるのかはわからないけれど、もし次回があるのならぼくはまた見に行きたい。



 その道の熟達者は難しいことをいとも容易くやってのけてみせる。高橋名人がプレイするシューティングゲームは、敵が自殺するかのように自弾に吸い寄せられていき、まったく簡単なゲームに見えたりもする。
 それを見て思うのは、これなら自分にもできるんじゃないか、という錯覚だ。事実それは錯覚でしかないのだけど、その錯覚は挑戦へのハードルを著しく下げる働きがある。
 自分が同じようにハリウッドライヴスに挑んでも同等のクオリティを発揮するのはそりゃ無理な話だろう。無理なのは前提として、そこから学べることは幾つもある。大事なのはそういうことなんじゃなかろうか。
 ……とまあ、そんな感じで開き直ることはできたので、ハリウッドライヴス、どこかでやれたらいいなあと思ってはいるのだけど、なかなか実現のハードルが高いのもまた事実なんだよなあ。
 ということで、また軽率に願望を垂れ流すけども、ハリウッドライヴスやってみたい、という話があったらぜひ誘ってください。お願いします。

 追記:
 見てた側の感想としては楽しかった、というのは伝わったと思うんですが、演じた方の感想もちょっとお伝えしておきます。終演後、役者の方々のテンションは総じて高く「またやりたい」「普通に遊びたい」「仲間内に広めたい」という声を色々な方からお聞きしましたよ。























posted by 円卓P at 21:01| Comment(0) | ゲームデザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする