2022年11月27日

「リフトフォース」エラッタのお知らせ



 「リフトフォース」のサマナーカード2枚について誤りがありましたので下記のように訂正いたします。

◆サンダー
訂正前:
この土地の先頭の敵に
2ダメージを与える。

サンダーが敵を破壊した場合、
上記の効果をもう1度だけ使用する
(さらに敵を破壊しても繰り返さない)。

訂正後:
この土地の任意の敵に
2ダメージを与える。

サンダーが敵を破壊した場合、
上記の効果をもう1度だけ使用する
(さらに敵を破壊しても繰り返さない)。



◆アイス

訂正前:
この土地の先頭の敵に
1ダメージを与える。

もし、その敵がこの土地の最後尾の
敵だった場合、1ダメージではなく
4ダメージを与える。


訂正後:
この土地の最後尾の敵に
1ダメージを与える。

もし、その敵にダメージトークンが
置かれている場合、1ダメージの代わりに
4ダメージを与える。



 上記の2枚を含むサマナーカードにつきまして、現在、差し替えカードの印刷を進めています。後日公開する専用フォームにご登録頂いた方へ送付させて頂く予定ですが、記入方法等につきましてはその際に改めて告知させていただきます。

 また、当該カードの印刷データをご用意させて頂きました。差し替えカードの到着までこちらを印刷してご利用頂ければ幸いです。

サマナーカード差し替え.pdf

posted by 円卓P at 22:28| Comment(0) | マニュアル改訂・エラッタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月27日

ゲーム紹介「リフトフォース」



 数寄ゲームズは10種のギルドから4種を選んで対戦する2人用ゲーム「リフトフォース」を販売します。プレイ人数2人、対象年齢10歳以上、プレイ時間30分で、小売希望価格は税込3300円となります。


 10月29日、30日のゲームマーケット2022秋にて先行販売を行います。こちらはイベント価格3000円でご提供させていただきます。
 その後、数寄ゲームズ通販サイトでの販売、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。



 「リフトフォース」はオーストリアの1 More Time Gamesという新興出版社が出版したゲームで、ひねりのある神経衰弱ゲームとして人気を博した「メモアァール!」(ゲムマで3団体が英語版・日本語版を販売するカオスを生み出したことで一部で有名)の作者でもあるイタリア人デザイナーCarlo Bortoliniの2作目となります。新興出版社かつキャリアの浅いデザイナーの作品ということで、発売前はさほど注目を集めてはいなかったのですが、じわじわと評価を高めた結果、なんと2021年のドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門推薦リスト入りを果たしています。

 ちなみにこの時の推薦リスト入りタイトルは他に「バラージ」「グルームヘイヴン:獅子のあぎと」「イーオンズエンド」と高評価のゲーマーズゲームが勢揃い。これらの中で「リフトフォース」は2人用かつ軽量級ということで浮いた存在にも見えるんですけども、それだけこのゲームには確かな地力があるのだとも言えます。

 ゲームの見た目としてはTCGでよくある2人用の殴り合いゲームなんですけども、アメリカンな特殊効果でハデハデな攻防を楽しむゲームではなく、計画的な選択と適度な運要素を織り込んだ典型的なユーロスタイルのゲームです。ボクシングというよりは柔術というか。野球というよりはサッカーというか。出会い頭の一発ではなく試合運びの巧みさが勝敗を分けるテクニカルなゲームです。


◆10種のギルドから4種を選択。最強のチームを作り上げる!

 ゲームの初めにプレイヤーがまず行うのは、今回使用するギルドの選択です。このゲームには火、水、風、土など10種のエレメンタルを使役するサマナーのギルドがありまして、プレイヤーはそれらから4種のギルドをドラフトして選択し、それぞれのチーム同士で対決するのです。



 各エレメンタルはそれぞれ異なる能力を持っています。
 例えば火のエレメンタルは相手に与えるダメージが大きいですが、バックファイアとして味方を傷つけてしまうおそれがあります。風のエレメンタルであれば、戦場を自由に移動してダメージをばら撒くことができます。

 


 こうしたエレメンタルの特徴や能力をうまく組み合わせて自分なりの戦略を模索できるところがこのゲームの醍醐味です。各能力はシンプルなテキストでまとめられているもののよく考えられていて、組み合わせによって思いもよらない強力なエンジンとなることもあります。

 それぞれ自分のチームを組み上げたら対戦です。先に12リフトフォース(得点)を獲得したプレイヤーがゲームに勝利します。

 得点を得る手段は2つ。相手のエレメンタルにダメージを与えて倒すか、自分のエレメンタルだけがいる土地で決算を行うかです。



 手番では3つのアクション「手札のプレイ」「場札の起動」「手札の補充と土地の決算」のいずれかを行います。アクション1つを行ったら手番を相手に渡し、それを交互に繰り返していきます。

 「手札のプレイ」では最大3枚までの手札をプレイして場札にできますが、プレイするすべてのカードの色か数字が同じでなければなりません。できるならば1手番で多くのカードをプレイしたいところです。

 「場札の起動」ではコストとして手札を1枚捨てて、相手のエレメンタルに攻撃をしかけます。プレイヤーは最大3枚までの場札を起動することができるのですが、コストとして支払ったカードと同じ色か数字の場札しか起動できません。

 「手札の補充と土地の決算」では手札を7枚まで補充し、自分のエレメンタルだけがいる土地から得点を得ます。

 基本的な流れは「手札をプレイして場札を増やす」→「場札を使って相手を攻撃」→「手札が減ったら補充しつつ決算」とシンプルながら、それぞれのアクションは「まとめて実行できる」というところがポイントです。手札はまとめてプレイしたいし、場札はまとめて起動したいし、手札補充は一気に7枚ドローしたい…… それができればベストなんですけども、刻々と移り変わる戦況の中では理想的な動き方は難しく、プレイヤーは手札をどのように使うか、起動コストをどのように支払うかで終始頭を悩ませることになります。



 基本的にはこのように箱裏に書いてあるのがルールのほぼすべてとも言っていいほどのシンプルさで、用意された多種のギルドによって肉付けがなされている感じです。ルールは簡潔ながら発見や研究余地の多い、遊びごたえのあるゲームと言えるでしょう。


◆あらゆる場所から滲み出る小粋なデザインセンス

 このゲームは小品ではあるのですが、遊んでて思わずニヤリとしてしまうデザインの巧みさが垣間見えるのが魅力でもあります。

 例えば、エレメンタルのカード構成もその一つです。
 各ギルドは実際に戦闘を行う9枚のエレメンタルと、それぞれのエレメンタルの能力が記されたサマナー1枚からなります。エレメンタルはその両肩に数字が記されていて、これがエレメンタルの持つ体力(タフネス)となります。

 エレメンタルの体力は5,6,7と3種類あるのですが、カード構成は5が4枚、6が3枚、7が2枚と統一されています。これがどういうことかと言えば、5のエレメンタルはデッキ内に多くあるので攻撃に使いやすく、反面、体力は少ないので防御力はひ弱なのです。7のエレメンタルはその逆になります。
 シンプルなカード構成をエレメンタルの性格付けに結びつけているところなど気が利いていて、いやあ、職人技だなと感じ入ってしまいます。



 他にも、「手札の補充と土地の決算」のアクションは手札が7枚の時には行えない、というのもよく練られたルールだったりします。最初にルールブックを読んだ時には単純に「手札7枚の時に補充するのは損だからやめようねー」というだけの話かと思っていたのですが、実際に遊んでみると手札の補充はどうでもよくて土地の決算だけを続けてやりたい局面が出てくるんですね。

 しかしながらルール的には「手札のプレイ」なり「場札の起動」なりで手札を減らさないと再び「手札の補充と土地の決算」のアクションを行うことはできず、その一手番の間に相手が体勢を整えてしまうかもしれない……といった運びがあり、一度作った有利な状況でそのまま押し切ることが難しい作りになっているんですね。言い方を変えれば逆転の余地を持たせた作りと言いますか、攻守の状況が頻繁に入れ替わるテンポ感が心地よいゲームでもあります。


 ボードゲームの魅力の一つに「ルールの行間に隠された意図の発見」があると思います。ルールを読んだだけでは全くなんのこっちゃとなるゲームを実際に遊んでみて「ああ、そういうことだったのか!」と気付かされる経験こそが、ボードゲームを鑑賞する最大のご褒美であるとさえ思っています。

 古典的なドイツゲームはそうした行間に潜む相互干渉を活かしたゲームが多かったのですが、インタラクションが薄いゲームが主流となってきた昨今ではそうしたルール読みの楽しさを味わえるゲームが減ってきたように思います。「うん、ルールに書いてある通りの楽しさだね」というような。

 その中で「リフトフォース」は久々に「そういうことか!」と膝を叩いた小気味よいゲームだったんですよね。これは、2人用ゲームがマルチプレイゲームと違ってインタラクションを薄める必要が少ないことが理由の一つとしてはあるとは思うのですが、デザイナーの工夫と手腕を読み解くことに楽しさを覚える人、ゲームデザインの奥深さを探究したい人にとっては、望外のプレゼントになるタイトルだと思っています。


◆新定番となりうる優れた2人用ゲーム

 まあ、そういう研究者的な目線でなくても、このゲームには多くの魅力があります。ルールはシンプル、随所に気の利いた工夫があり、組み合わせにもバラエティがある、と長所に富んだこのゲーム、出版に至ったのは「今の時代に必要とされているゲーム」と感じたのが理由の一つとしてあります。

 実は今年の1月に、東京は上野のコロコロ堂さんでゲームカフェのスタッフとして働かせて貰ったことがありまして(コロナの影響などもあって短期間ではありますが)、そこでの経験がこのゲームの出版に密かに結びついていたりもします。


 ゲームカフェで実際にお客様と触れ合ってみて思ったことの一つは「良質な2人用ゲームっていくらでも欲しいな」ということです。コロコロ堂さんの「パッチワーク」なんかはめちゃくちゃ遊びこまれてタイルの印刷が剥げかけているのにビックリしたんですけども、実際にゲームを案内する立場になると「パッチワーク」のようなゲームってすごく紹介しやすいんですね。

 良質、という言葉をもう少し噛み砕くと、ルールはシンプル、テーマに普遍性があって、プレイ時間はほどほど、なおかつ研究余地があって繰り返し遊びたくなるゲーム、と言い換えることができるかもしれません。特にインストの負担とそれに伴うプレイ時間の比率のコストパフォーマンスがゲームカフェではとても重要だなと感じたんです。


 例えば、数寄ゲームズでは2人用ゲームとして「ウォーターゲート」を販売していますけども、これがゲームカフェ向きかと言えばちょっと難しいところがあるようにも思うんですよね。まず、絵面がいかめしい……(笑)

 ゲームとしては抜群に面白いですし、遊びこむ余地も膨大なんですけども、インスト負荷もまあまああって、ファーストチョイスとしては中々選びにくいタイトルなのではないかと客観的に見ています。


 それに比べると「リフトフォース」は、まさに理想的なゲームカフェ向きの2人用ゲームだと思うんですよね。それはもっと広く言えば、ご家庭内でゲームを遊ぶ人に楽しんで貰える2人用ゲームという意味でもあります。

 もちろん「リフトフォース」の一番の魅力は面白いゲームであることそのものなんですけども、面白いゲームには事欠かない昨今、その中で生き残るにはより現環境に適した長所が必要なのではないかと思っています。ゲームの戦国時代ですな。

 そんなワケで数寄ゲームズから提案する「ゲームカフェに一番ピッタリな2人用ゲームはこれだ!」というのが、「リフトフォース」でございます。海外ではすでに拡張が発売されていて、人気もますます加熱しております。

 ぼく個人としても拡張の新しいギルドやルールを遊んでみたいなーという気持ちが強いので、拡張の発売に繋がるような皆様のご支援、ご声援を頂ければありがたいです。そのためには広く遊んで貰うことが第一だと思いますので、ゲームカフェでもどちらでも、どうぞ一度試してみて頂きたいと思っています。


◆数寄ゲームズは2人用ゲームに注力します!

 数寄ゲームズと言えば、先日紹介記事を書きました「パーラ」のようなトリックテイキングゲームに力を入れている出版社というイメージをお持ちの方もいるかと思います。そういうイメージを持って頂けていたらありがたいなあとも思うのですが、今後は同様に2人用ゲームの発掘にも力を入れていきたいと思っています。「リフトフォース」はその1つ目のチャレンジという形にもなります。

 これは以前発売した「ウォーターゲート」が思った以上の好評を得たことも影響してまして、ぼくが思っている以上に2人用ゲームへの要望って大きいんだなと気付かされたことが一因としてあります。ボードゲームを遊ぶ人の母数が以前と比べて増えていることで、2人用ゲームをメインに遊ぶ層も形成されてきているのかしら……と。

 もちろん、2人用ゲームであればなんでもいいというワケではなく、確かな魅力を備えていて、しかしなかなか知られていない、そんなダイヤの原石のようなゲームを発掘して届けられればベストです。先程も少し触れましたが、様々なゲームが溢れる昨今、出版社により求められているのはゲームの面白さを見抜く力、相馬眼ならぬ相ゲーム眼なんじゃないかなと考えています。

 自分自身の相ゲーム眼をより磨いていくためにも、新しいチャレンジは必要でして、2人用ゲームの世界という新しいグラウンドは自分にとっても魅力的な分野です。マルチプレイでは実装が難しい2人用ゲームならではのエレガントなシステムやルールって本当に多いんですよね。「ヨーロッパディバイデッド」の得点システムとかよかったなあ。パオロ・モリの「ブリッツクリーグ!」や「カエサル!」もえがった……

 そういったアイディアの数々に触れられるのは、単純に1ゲーム好きとして楽しいし、嬉しいので、優れたメカニクスに触れる感動みたいなものを多くの人と共有していければいいなあと思っています。お前もシステム派にならないか?



リフトフォース

プレイ人数:2人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:30分

ゲームデザイン:Carlo Bortolini
アートワーク:Miguel Coimbra
小売希望価格:3300円(税込)
posted by 円卓P at 12:36| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月25日

ゲーム紹介「パーラ」



 数寄ゲームズはスート色を混ぜるトリックテイキングゲーム「パーラ」を販売します。プレイ人数3-5人、対象年齢11歳以上、プレイ時間30分で、小売希望価格は税込2200円となります。


 10月29日、30日のゲームマーケット2022秋にて先行販売を行います。こちらはイベント価格2000円でご提供させていただきます。
 その後、数寄ゲームズ通販サイトでの販売、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。



 「パーラ」は、「もっとホイップを」「汽車は進むよ」などで知られるジェフリー・D・アラーズが2012年に発表したトリックテイキングゲームです。アラーズ作品はその多くがユニークな個性を発揮しているのですが、このゲームもその例に漏れず、トリテの基本的な要素であるスート色の概念を拡張した実に独創的な作品となっています。色をテーマにとったゲームですが、この1作自体がすでに1つの芸術品として、多くの鑑賞に耐えうる強いメッセージを持っています。


◆色を混ぜるトリテとは?

 「パーラ」の、その最大の特徴は「スート色を混ぜるトリテ」という一言で表現できるでしょう。トリテを知っている人であれば、これは「ぐにゃぐにゃ曲がる電柱」のような、なんとも不思議な響きに聞こえるかと思います。そう、このゲームはめちゃくちゃ奇妙なゲームなんです。


 リードプレイヤーが赤のカードをプレイしたとします。そうするとリード色は赤になります。他のプレイヤーは以後、赤のカードをプレイしなければなりません。いわゆるマストフォローのルールです。

 しかし! 「パーラ」において、続くプレイヤーはリード色の赤とは異なる青のカードをプレイし(!?)、それを赤のカードに重ねて置いて(!!?)、「これからスート色は紫になります」と宣言し(!!!?)、さらに紫のカードをプレイする(!!!!!???)といった、とんでもねえプレイが発生するのです。どーなってるのー!?

 まあ、全部が全部こんな塩梅だとさすがに空中戦過ぎてゲームとして成り立ちませんので、このスート色の混ぜ合わせには様々なルール、縛りがございます。縛りのないグチャグチャなトリテも世の中にはあるかもしれませんが、このゲームを作ったアラーズという人はコッテコテのユーロ畑のデザイナーでございまして、そうしたカオスなゲームを作る人ではないのです。

 まず、マストフォローのルールはこのゲームでも依然として有効です。なので、赤のカードを持っているのにリード色の赤を無視して青のカードをプレイするといった暴挙はできません(が、色を混ぜるのが楽しくなっちゃうゲームなので、このリボークはやりがちです。色を混ぜる前にマストフォロー、マストフォロー、マストフォローと3回唱えましょう)。

 そして色を混ぜるのはいわゆる「色の三原色」に則る必要があります。赤+青=紫、赤+黄色=橙、青+黄色=緑の式が常に適用されるので、紫と橙を混ぜたり、紫と黄色を混ぜることはできません。カード色は原色となる赤青黄の3色と、二次色となる紫橙緑の全6色です。



 なので、そもそも二次色である緑がリードされれば、そのトリックでは色の混交は起きないんですね。ただ、二次色がリード色の場合、「黄4と青4を混ぜて緑8としてプレイします」と2枚プレイする選択肢が増えたりもして、まったく一筋縄ではいかないゲームとなっています。

 これらのルールのおかげで「初手で赤5を出したのにリード色が橙に変えられて負けた」とか「緑9を出したのに青5+黄5の緑10に負けた」とか「負けるつもりで出した赤2に青5を足された紫7で勝ってしまった」とかポルナレフ状態に陥る場面が頻発するのです。おそろしいゲームやで……

 また、普通のトリテならディスカードしたカードはもはや用無しなのですが、このゲームでは「死亡確認!」に過ぎないので、後から再利用されて復活する可能性さえあります。ネクロマンシーみたいですね。

 とは言え、この色を混ぜるチャンス、実際のところ、そう多くはありません。当たれば一撃必殺なんだけどコマンド入力が難しいし、ゲージを溜める必要もある超必殺技のような位置づけです。ただ、この色の混ぜ混ぜをうまーく利用してトリックに勝ったり押し付けたりできると超気持ちいいので、ぜひ皆様にはこの不思議な体験を味わって頂きたいですね。


 また、色を混ぜるという大技を御するアラーズの工夫は得点体系にも及んでいます。

 このゲームはビッド式のトリテでして、ディールを始める前にビッドを行います。これも色というテーマを生かしたちょっと変則的なビッドで「こういうやり方もあるのか」と刺激を受ける内容です。

 ビッドというのは基本的にはスタビライザーと言いますか、不均衡なゲームを御するために持ち込まれるものなので、それだけでもこのゲームの暴れ馬っぷりが窺えます。とかく頭から尻尾までアラーズの工夫の数々を味わえるゲームとなっています。

 「スート色を混ぜる」という、口にするだけなら物凄く簡単なワンフレーズに対して、ゲームとして成立させるための様々な技術が凝らされた一作なんですね。それだけトリテの様式というのは強固と言いますか、その一要素を付け替えるためには様々な要素の付け替えを同時に行わなければならないということがわかる労作でもあります。相当な大仕事ですよこれは。


◆……ってことは難しいんでしょ? それがですね、奥さん!

 さて、このように「パーラ」はトリテの中でも屈指の変化球、大変化球と言っていいタイトルです。で、よく落ちるフォークボールがキャッチャーにとって捕球しづらいように、様式から大きく逸れたゲームが遊びづらいのは事実です。

 例えば普通のトリテなら、プレイヤーが手番で守るルールはマストフォローに従えるか否かの二択だけです。しかしながら「パーラ」では、マストフォローの可否に加えて原色と二次色という要素があるため、手番では「1枚プレイ」「2枚プレイ」「破棄」「色の変更」という4つもの選択肢があり、しかもそれらは状況によって選べる・選べないが決まっているため、非常に難解になっています。

 さらにさらに! このゲームにはなるべくトリックを取ることを目指す「点描画法」ルールと、なるべくトリックを取らないようにする「印象派」ルールの2つのルールが用意されています。これらのルールにも運用に微妙な差異があるため、原版のルールの完全読解は結構な難度だったんですね。


 で、ここからがアピールポイントなんですが、日本語版ではこうしたゲーム自体の持つ複雑性を紐解いて整理し、手軽に遊べるように努めています。

 例えば、根本となる手札のプレイングについてはそれぞれの状況でどのような選択肢を取ることができるのか、サマリーカードを用意して手元で確認できるようにしています。このサマリーカードで、プレイングの場合分けは完璧に整理されたんじゃないかなと自画自賛しております。



 また、ルールブックについても、そもそもの原理原則をまとめた「基本概要」、トリックを集めることを目指す「点描画法」、トリックを集めないようにする「印象派」の3冊に分冊して、まずは「基本概要」を読んでね、と。その上で「点描画法」ルールも読んでねと。そうしたら「点描画法」ルールが遊べるよと。さらに慣れたら「印象派」ルールも読んでみてね、と情報の出し方も整理しました。

 おかげで内容物の点数も増えて、コストに跳ね返ってくるわけですが、大きな目で見れば遊びやすさの確保のためにコストをかけるのは正しい投資であると考えています。この投資が正しい投資であったという証明にしたいので、皆様ぜひともお買い求め頂けますと幸いです。


◆普通のトリテに物足りなくなったあなたにぜひ!

 ということで、クセの極まった変化球トリテ「パーラ」、ここまでの紹介を読んで「俄然興味が湧いてきたぜ!」というチャレンジングスピリッツ甚大な方には滅法オススメします。が、逆に言えば、「一体なにを言ってるかわからない……」という方には、まだその機が訪れていない作品と言えるかもしれません。

 少なくとも「トリテに興味があるんですが、最初の一作としてこれはどうでしょうか?」という問いかけには全力でNO!!!!!と答えます。

 これじゃないよ。「パーラ」を遊ぶ前に触れておくべきゲームは色々あるよ。えっと、そうだね、「ブードゥープリンス」とかどうでしょうね?


 実際、ぼくが印象派ルールを遊んでみての感想は「地獄トリテやんけこれ!(歓喜)」でしたから。なんというか、激辛メニューみたいな感じで、刺激が凄まじくて病みつきになるのはわかるんだけど、辛さに慣れてからじゃないとしんどさが先立つんじゃないかなあという感じもあり。逆に言えば、トリテに慣れてる人にとってこのゲームの素っ頓狂ぶりはメチャクチャ刺激的だと思います。

 最近出版した「乗り間違い」なんかはちょっと変な風体を装っているんだけど、実際に喋ってみると「あ、この人マトモな人なんだなー」ってなるんですけども、「パーラ」は徹頭徹尾ヤバい人です。ヤバい(語彙)。

 まあ、辛さの耐性が人それぞれなように、トリテの親和性も人それぞれなので、最初にぶつかってみて「イケるわこれ」となる可能性もあるにはあります。必要なのはチャレンジ精神。それだけだと思います。


 さて、日本語版では6スートのイラストそれぞれを別々のイラストレーターさんに描いて頂いております。バラエティがあって目に楽しく、同時に統一感のある出来栄えで素晴らしいですね。アートをテーマに取ったトリテのアートが素晴らしいというのはもう素晴らしいの一言。素晴らしいbotです。

 以前にも数寄ゲームズでお世話になったことのある方々に今回ご依頼させて頂いたこともあり(たかみまことさんのみ今回が初依頼)、ある種の大乱闘数寄ゲームズブラザーズ的な趣もあるアートワークです。このタイトルは数寄ゲームズの名作トリテシリーズの第6弾となるワケですけども、これまでの集大成の一作とも言える作品なんじゃないかなと思っています。

 完成まで大変長い長い長いお時間を頂いてしまったこともあり、監督としての申し訳なさはあるんですけども、なんとか完成に漕ぎ着けることができて安堵しております。


 ということで、ルールは実に激辛な濃厚玄人仕様。アートは実力派勢ぞろいということで、トリテ好きの期待に応える一作になったのではないかと思っています。首を長くして待ち続けた方にも待った甲斐があったと思って貰えれば幸いです。




◆実は出版したくなかった「パーラ」の話

 さて、以降はゲームそのものとはあまり関係の内容です。ゲームの出版の周辺の事情に興味があるという方だけお読み頂ければと思います。

 ……2019年12月18日、ある男のツイートがトリテ界隈を騒然とさせました。後にぼくの中で12・18事件と呼ばれることになる事件の勃発です。


 私のトリックテイキングゲーム、Palaの新バージョンに日本のパブリッシャーが興味を持っているようです。日本以外の国で興味のある方はいらっしゃいますか?彼らはパートナーになることに前向きです!(Deepl翻訳)

 「パーラ」の作者、ジェフリー・D・アラーズのこの言葉に、トリテ界隈(狭い)は「すわパーラ日本語版発売か!」と色めき立ちました。

 これに対して、リアクションを見せる2人の男。





 やめましょうよ、そうやって犯人を絞っていくのは! 消去法でなんか色々出てきちゃうでしょ!!!

 ちなみにこの日、偶然にもぼくは東京に上京していまして、このツイートのことを全然知らなかったのです。なので、反応が遅れまして、傍から見ると黙秘権を行使する容疑者みたいなクソ怪しい立場に陥ってしまっていたのです。あと、杉木さんはちゃんと買ってくれるんですかね?

 では、ぼくが全くの無実の身であったかというと、えーと、それは、そのお……

 まあ、事実として! 事実としては、アラーズにメールしました! それは事実! 事実です!

 しかしながら、これはアラーズのツイートを見て貰えれば分かる通りに、「どこか別の会社が出版する予定ない? あるんだったら相乗りさせて欲しいなあ」程度のことを伝えただけで、「数寄ゲームズでの出版に興味があります」みたいなことは全然言ってないんです。少なくともこの当時は!

 それなのに「数寄ゲームズがパーラの日本語版出すんだって!」みたいな希望的観測がなんか勝手に形成されていきまして、ううっ! やめろお! そんな予定は全然ないんだよお! と一人悶えておりました。辛い。

 自分のとこでゲーム出すのと、人のとこでゲーム出すのに相乗りさせて貰うのって、全っ然違うからね!? っていうかそもそも相乗りさせて貰う土台すらもないんだからね!!!!

 挙げ句の果てに「乗り間違い」の出版に際して新作予想クイズを行ったところに寄せられた圧倒的な「パーラ」の回答数…… まあ、この時には「ガハハハ、『パーラ』じゃないんだワ、ガハハハ!」と開き直ってましたけども。


 で、結局のところ、「パーラ」を出版したいという奇特……もとい気骨のある出版社というのは出てこなかったんですよねー。その中で数寄ゲームズへの期待感だけが膨らみ続けるという状態が続いておりました。うへー。

 まあ、期待を寄せられるのは悪いことではありません。それから1年後、そう言えばあの話って進展があったのかなあ、と改めてアラーズにメールをしました。

 でまあ、前述の通りに進展がないとのことだったので、仕方ない…… 日本語版…… やりますか…… ということでアラーズとの契約を結んだのです。

 でも、この時にアラーズには「日本語版の契約結んだとか絶対に言うなよ! 絶対に言うなよ!」と言い含めました。なんせこの時にはいつ完成するかとか全く見えてませんでしたし、アートワークについても原版のものを利用できるかどうか確認中だったのです。

 とりあえずアラーズがダチョウ倶楽部を知らなかったようなのは幸いでした(いや、言って欲しかったワケではないです)。


 ともあれ、そんなこんなで制作が始まりました。制作はなんというか順調でしたね。

 今回アートディレクターをお願いした別府さんがうまく回してくださったのでオモシロエピソードとかもなく、すんなりと進みました。ただ、関係者が増えるとスケジュールの調整が大変になるなーということは覚えたので、今後に活かしたいと思います。


 とまあ、そんな感じで、実は「パーラ」は自分から「やるぞ!」と積極的に挑んだ企画ではなく、周囲からの圧力に負けて渋々始めた企画だったりもします。

 もちろん、やると決めたからには全力で取り組みますし、その結果が原版からの大幅な改修と言いますか、遊びやすさへのテコ入れです。数寄ゲームズのトリテシリーズとして出版するからには手抜きはできないワケで、毎回毎回が全力投球なのは今回も変わりません。


 では、なぜ「パーラ」の出版にイマイチ乗り気じゃなかったのか、と言えば、それは単純にゲーム性の問題でして、このゲーム、数寄ゲームズのトリテシリーズとしては変化球過ぎてクセがあまりにも強すぎると感じていたのです。

 数寄ゲームズのトリテシリーズって基本的には王道的な速球派投手を揃えています。これは偶然そうなっているのではなく、意図してそのように選んでいます。

 なぜ、そうしているかと言えば、日本ではトリテがそもそも知られていない現状があり、その状況を少しでも改善するために、初めてトリテを触る人にトリテの楽しさが伝わるゲームを揃えてきた背景があるワケです。

 誤解されやすいのですが、数寄ゲームズのトリテシリーズの目的は「レアな絶版トリテの復刻」ではありません。それだったら「ブードゥープリンス」を選ばないですよね?

 ビッドもまたそうした要素の一つで、これまでのトリテシリーズにはビッド要素のあるトリテはありません。ビッドってめちゃくちゃ強力なメカニクスで(トリテに革命を起こしたメカニクスなのでそりゃそうなんですが)、ビッドありのトリテから入るとビッドの楽しさが伝わるものの、トリテの楽しさが伝わらないということがままあります。なので、ビッドも意識的に避けてきたんです。

 巷の創作トリテを見てると、型なしのトリテが多いなーと感じます(これは日本に限った話ではなく、世界全体の話です)。これは型となるクラシックに触れられる機会が余りにも少ないせいだと考えています。

 「パーラ」は型破りのトリテです。型を知った人が敢えて様式を崩しに行ったトリテです。型を崩すというのは容易なことではないですから、単純にフォローの規則を変えました、というだけではなく、全面工事と言っていいほどの大規模な改修が必要とされます。それをやり遂げているトリテです。

 でも、知らない人から見たら型なしと型破りの違いってわかんないですよね。だから「パーラ」を出版することで「あれがOKならこれもOK」という誤解を招くんじゃないかという危惧を抱いていたんです。
 奇抜なだけのトリテがよいものとされる世界はぼくの好みの世界ではないので、ぼく好みの世界に世の中を近づけるためにはどうしたらいいか、それなりに考えていたワケです。


 そんなワケで、「パーラ」を出版する価値のあるユニークなゲームであることは認めつつも、その出版時期を考えると、数寄ゲームズのトリテシリーズが運良く10作くらい続いて、そろそろネタ切れだな〜、ってなってから考えても遅くはないだろうな〜とか考えていました。

 とは言え、物事には時期というものがありますので、念の為に出版の予定はないかアラーズに問い合わせたところ、12・18事件が勃発してしまったのです。藪をつついて蛇を出すとはまさにこのことですね。


 さて、そうこうしていたところ、ぼくの努力とは別に、世の中がぼくの好む方向に進んでくれた出来事がありました。それが「ザ・クルー」のヒットです。

 正直なところ、「ザ・クルー」以後、トリテ用語が通じるか否かのラインは大幅に引き下げられたと考えています。ヒット作の影響とはそういうものです。

 で、ありがたいことに「ザ・クルー」は極めて真っ当なトリテでございました。トリテを初めて遊ぶ人に妙な誤解なくトリテを知ってもらえる点で本当にオススメできるゲームだと考えています。その上で他のトリテとは一線を画す協力ゲームなので、「ザ・クルー」が好きだから他のトリテはいらない、とはならないのはありがたいですね。


 そんなワケで、ぼくが考えていたのとは別の形で、世の中がぼく好みの世界に近づいてきました。で、これだったら「パーラ」いけるんじゃない? という雰囲気が生まれてきたんです。

 「パーラ」は決して王道のトリテではありません。ヘンテコなトリテです。でも、ヘンテコさって基準線と比べて初めて価値がわかるものなので、受け手に相応のリテラシーを要求するきらいがあるワケです。

 「パーラ」が初めて世に出た10年前と何が違うかと言えば、まさにそのトリテへのリテラシーであると考えています。この数年でゲーマーのトリテのリテラシーは相当に高まっていると思います。とは言え、もっと広い層への浸透は全然叶ってないとも思うんですけども。


 そんなワケで今回の「パーラ」は、ヘンテコトリテをアグレッシブに世に問う作品という位置づけなのです。タナカマさんも言ってる通り「それほど売れなかったタイトル」が、果たして10年の時を経て世に受容されるようになったのか、それともやっぱり早すぎたゲームだったのかが、これから審判されるワケです。

 願わくは、このヘンテコなゲームが、ヘンテコであることに価値を見出して貰い、ヘンテコなゲームだね、と笑って貰えることを期待しています。正しく評価されることで次のヘンテコトリテの舞台が整うかもしれないのです。



 「脚色なしに異色で出色」、30分で考えたにしては、なかなかよいコピーになったのではないかと思っています。


パーラ

プレイ人数:3−5人
対象年齢:11歳以上
プレイ時間:30分

ゲームデザイン:Jeffrey D. Allers
アートワーク:坂本奈津希、SEIMI、たかみまこと、別府さい、Makiko Kodama、ママダユースケ
小売希望価格:2200円(税込)
ラベル:パーラ
posted by 円卓P at 14:18| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする