2024年07月01日

ゲーム紹介「スマートフォン株式会社 拡張:Update1.1」



数寄ゲームズは、「スマートフォン株式会社 拡張:Update1.1」を発売します。プレイ人数1-5人、対象年齢14歳以上、プレイ時間90分で、小売希望価格は税込4400円となります。

7月1日から数寄ゲームズ通販サイトにて先行販売の予約受付を始めます。その後、全国のボードゲームショップさんへのご案内、流通を予定しております。

「スマートフォン株式会社 拡張:Update1.1」は、スマートフォンの製造販売というホットなテーマと、パットを組み合わせてアクションポイントを割り振りする洗練されたアクション選択システムで人気を博した経済ゲーム「スマートフォン株式会社」の待望の拡張セットとなります。

「スマートフォン株式会社」の初版は2018年に発売と、すでに6年もの月日が過ぎているのに個人的には驚きを隠せないのですが、考えてみれば4G通信が最新技術としてフィーチャーされている時代のゲームではありましたねえ、と思い直しました。今の時代だと、1からスマホ会社を立ち上げて先行者からシェアを奪うのは難しいかもしれませんねえ…… バルミューダフォン的な……

そうした時代設定も含めて一世代前のゲームとも言えるのですが、奥深さと遊びやすさを両立させたゲームデザインは今もなお先進的な存在と言えますし、アートワークもバッチリキマっていて、今回の拡張セットのパッケージアートも素晴らしい出来栄えです。今でも衰えない人気があり、時代を越えても古びない、稀有なゲームと言っていいんじゃないかなと思います。



さて、そんな「スマートフォン株式会社」の拡張キット「Update1.1」では、「2−3人プレイ用ボード」「新技術タイル」「指令タイル」「ハードコアモード」の大きく分けて4つの要素が登場します。各要素はモジュール式になっているため、それぞれを加えるかどうかを細かく調整することも可能です。

それでは、各要素について詳しく説明していきましょう。



◆少人数でも申し分なし! 贅沢な専用マップ

「スマートフォン株式会社」は世界中のスマートフォンの需要を奪い合う対戦ゲームです。各プレイヤーはスマートフォン製造会社のCEOとなり、世界各地で市場争いに血道を上げるのですが、やはり舞台が広大な「世界!」ということもあり、熱いバトルを繰り広げるにはそれなりのプレイヤー人数が必要という前提がありました。

そのため、このゲームのポテンシャルを引き出せるのは最大人数の5人というのもよく聞こえてくる言説です。ソロプレイにも対応し、AIプレイヤーのスティーブをプレイヤーとして追加するオプションもあるとは言え、プレイ人数の制約が強めのゲームなのは否めません(また、後発の「モバイルマーケット」はそうした少人数プレイのニーズに応える形で開発された側面もあるでしょう)。



今回追加される2-3人プレイ用ボードは、その名の通り2-3人プレイ専用の新しいマップとなります。「スマートフォン株式会社」は、全体ボードがダブルレイヤー仕様という大掛かりな設計のゲームなだけに、新マップの追加は結構な難しさを感じさせるのですが、ルールの変更で対応するのではなく「新マップを作ります!」という大胆さには大きな意気込みを感じます。

そのため、少人数で遊ぶ機会が多い方にはまさに念願の拡張セットと言えるのではないでしょうか。体積が箱の半分を占めるこの新マップを存分に楽しんでいただければと思います。



また、新マップは単純に少人数向けにアジャストしただけでなく、予算か技術かのどちらかの条件を満たすことでスマホを購入してくれる新タイプのバイヤーも登場します。個人的には少人数で遊ぶ機会が少ない側のプレイヤーなので、なかなかこのマップを楽しむチャンスを得られなさそうなのが歯がゆいところですが、どこかで折を見て試してみたいなと思っています。

ちなみに新マップでは改善ブロックの数が絞られ、各ラウンドで3枚だけしか改善タイルが公開されないのですが、このルールは基本ゲームのマップに流用することもできます。

また、基本ゲームの日本語版とは異なり、マップに貼り付ける地名用の和訳シールはありませんので、ご注意ください。


◆よりシャープな体験をもたらす新技術タイル

それじゃ普段から4-5人で「スマートフォン株式会社」を遊んでいる人にとって「Update1.1」はバリューの薄い拡張セットなのか、と言われれば、いいえ、そんなことはありません。熟練プレイヤーにとっては待望の新しい技術タイルが登場します。


「スマートフォン株式会社」ではゲームごとに5枚の技術タイルが登場します。これらの技術の組み合わせによってゲームの展開は大きく変化します。

ただ、基本ゲームの10種類の技術は組み合わせのパターンが限られているため、繰り返し遊ぶ上ではもう少し新味が欲しいというニーズがありました。



今回の拡張セットでは新しく10種類の技術が加わるため、組み合わせパターンも大きく増加します。基本ゲーム以上にリスクとリターンが顕著な「尖った」技術が数多く登場するため、プレイングにはより高度な判断力が求められるようになります。



中でも白眉なのはゲームに同梱されたCEO駒を盤上で動かし、CEO駒がいる地域に大きな影響力をもたらすCEOテクノロジーでしょう。この技術は他社を圧倒する強烈な効果をもたらす一方、CEOの移動のためにコストを支払う必要があり、効率的にCEOを働かせるという新しいレイヤーの思考が必要になります。


◆指令モジュールで早取り達成要素がプラス



指令モジュールでは、プレイヤー全員の共通目標となる指令タイルがゲームに加わります。他プレイヤーに先んじて目標を達成することで大きなVPを得ることができるので、各プレイヤーの動きにはより細かく目配せする必要があるでしょう。

指令タイルはゲーム開始時に規定枚数が用意されるだけで、ゲーム中に補充されることはありません。獲得の機会は限られるため、指令タイルを目指してプレイするか、それとも自分の戦略を貫き通すかでジレンマが発生することもあるでしょう(もちろん自分の戦略を構築しつつ指令タイルを確保できればベストなのですが)。


指令タイルは多くのゲームでよく目にする早取りの目標達成要素なので、要素自体にはさほど新味はないのですが、手番順がキモな「スマートフォン株式会社」での「早取り」は少し味わいが異なるところがあります。

例えば、指令タイルの目標を複数のプレイヤーが同時に達成した場合です。その場合、タイブレーカーとしてはアクティブな手番プレイヤーが優先され、誰もアクティブではない場合はスマホの設定価格が低いプレイヤーがより優先的に指令タイルを獲得することになります。

そのため、(手番順にしても設定価格にしても)基本ゲームに比べて値下げによりベネフィットを与えた作りと言え、要所での価格競争がより激化するモジュールという性格も持っています。


◆これぞ熟練者向け。コストに頭を悩ませるハードコアモード

「スマートフォン株式会社」の優れた部分は、現実の経済活動を簡略化、抽象化し、複雑なうねりを持つ社会活動を遊びやすくゲーム的に表現しているところにあります。それは大きな美点の一つですが、一方でそうした抽象化によってシミュレーション的な精緻さを失っている側面もあります。



ハードコアモードは「スマートフォン株式会社」の力学を少しシミュレーションに寄せたルールと言えます。具体的には各アクションにそれぞれ費用が発生します。ノーマルモードでは無料で作れるだけ作ったスマホを売れるだけ売り捌き、売れ残りはそのままポイしてきたのが、これからは無駄なく作り、無駄なく売り切ることを目指すようになります。潤沢に予算をかけることができた研究開発や支店開設もこれからは社内の金食い虫と揶揄されることになるかもしれません。

「スマートフォン株式会社」では売り上げはすべてVPとして処理されてきたので、コストの支払いとはすなわちVPの喪失となります。ゲーム開始時の売り上げが立ち行かない時期にはVPがマイナスの領域に飛び込んでしまうこともあるでしょう。

そうした場合には「利子」が発生し、追加でVPを支払わなければなりません! 逆に潤沢にVPを獲得している企業はボーナスとしての「利息」を得ることができます(ただ、支払う利子に対して、得られる利息は小さく、銀行業への暗い感情を抱きそうになります)。ならば先に売り上げを立ててから技術なり販売網なりを拡充するほうがいいのか……? と戦略の立て方が大きく変わってきます。


こうしたコストの概念の登場によって、「スマートフォン株式会社」は大きく様変わりします。技術が全てをいい方向に動かしていくという技術至上主義のゲームが、現実との折り合いをつけるゲームに変貌するのです。コスト周りの計算によって手間は増えますが、よりリアルな経営ゲームを遊びたいという方にお勧めのルールと言えます。スピンオフタイトルの「モバイルマーケット」でもコストの概念が取り入れられていましたが、やはりこの辺りを意識したものなのでしょう。


ハードコアモードがお届けするのはスマートフォン株式会社の持ち味である「心地よいゲーム体験」とは一風異なるものとなります。より世知辛い、苦みの籠ったゲーム体験を味わえると思いますので、こちらもぜひ遊んでみて頂ければと思います。


なお、ハードコアモードでは指令タイルの達成によって即金が手に入るので、基本ルールと比べて指令タイルの重要度がかなり高くなるかもしれません。


◆様々な遊び方が広がる拡張セット

この拡張セットは大幅なルールの刷新といった要素はなく、基本ゲームにある要素を活かしてゲーム展開のバリエーションを増やした内容と言えます。まさに「Update1.1」の名の示す通りの内容と言えます(とは言え、ハードコアモードはゲーム哲学的には結構大胆な変更だとも思います)。

「スマートフォン株式会社」を楽しんでいる方にとっては選んで間違いのない拡張ですので、ぜひとも一緒に楽しんで貰えればと思います。

また、発売までファンの皆様には大変長い時間お待たせしましたが、やはり、ここが拡張セットの難しいところでして、こちらが出したいと思っていても版元の都合によって実現が難しいということは本当に本当によくあることなのです。

そういう細い糸を掴んでなんとか出版に漕ぎ付けたタイトルになりますので、今後も拡張セットの販売を続けられるように皆様のご助力を頂ければと思っています。どうぞよろしくお願いします!
posted by 円卓P at 11:59| Comment(0) | ゲーム紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月25日

「エヴァキュエーション」のプレイヤーエイドを公開します



世界の破滅が迫る中で、旧世界から新世界から避難を行う戦略ゲーム「エヴァキュエーション」のプレイヤーエイドを公開します。数寄ゲームズ通販サイトの直販分に付属するものと同一内容となります。

各アクションはシンプルながら、それぞれの要素の結びつきや、各フェイズの詳細など一見してわかりにくい部分もあり、ゲーム全体の概念がなかなか飲み込みにくいゲームではあります。こちらのサマリーではゲーム全体の要素を抜き出し、全体を俯瞰する際の一助になればと思いまして作成しました。

なお、こちらはBGGユーザーのSpin氏作成のプレイヤーエイドを日本語化し、独自にサイズを変更し、訳注等を加えたものとなります。

サイズはA4サイズとなります。
両面印刷して折りたたむことで4Pの冊子として利用できます。

Evactuation_JAP.pdf
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2024年04月28日

[H-01 数寄ゲームズ]ゲームマーケット2024春のお品書き

数寄ゲームズブースはブース番号「H-01」にて両日出展。
下記の新作2タイトルの先行販売+αを行います。

エヴァキュエーション(イベント特価 9500円)


シップヤード2版(イベント特価 9500円) ※箱傷み品は別途割引


シップヤード2版用木製駒(イベント特価 2500円)



「エヴァキュエーション」は「アンダーウォーターシティーズ」「メッシーナ1347」などの作者ウラジミール・スヒィの最新作で、滅亡する地球から新世界へ避難するお引越しのゲームです。旧世界の縮小再生産と新世界の拡大再生産が同時進行する仕組みは非常にユニークで目的は明瞭ながら歯ごたえのあるリソースパズルを楽しめます。
ゲームマーケット販売分にはプレイを補助する特製のサマリーをおつけいたします。

「シップヤード2版」は2009年に発売された同作のリメイクとなります。
ダッチオークション的なワーカープレイスメントで船の装備や乗務員を集め世界で最高の船を建造しましょう。「プラハ 王国の首都」「ウッドクラフト」に受け継がれたアクション選択システムの始祖となる存在でもあり、内容物の一新でプレイアビリティの向上が計られています。
「シップヤード2版」はアップグレードパーツとなる専用の木製駒も販売します。


その他、アンダーウォーターシティーズ用ミニ拡張を少量販売します。

アンダーウォーターシティーズミニ拡張(イベント特価 800円) ※写真は英語版ですが、製品は日本語版です。



両作品とも箱の大きさから持ち込み量が限られるため、売り切れの際はどうぞご容赦ください。



エヴァキュエーション
プレイ人数:1-4人
プレイ時間:60-150分
対象年齢:12歳以上
イベント特価:9500円



シップヤード2版
プレイ人数:1-4人
プレイ時間:40-120分
対象年齢:12歳以上
イベント特価:9500円
posted by 円卓P at 11:51| Comment(0) | 告知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする